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『雑貨店へようこそ』 ~犬耳~ その4

 これは以前書いた雑貨店シリーズの『犬耳』の続きです。
 以前の話はこちら→   

 では続きからどうぞ。

雑貨店へようこそ ~犬耳~ その4






 詩織はとても賢い。
 しかし、無防備なほど素直な面があるため、嘘などを吐かれても気付かない場合がある。
 これまではなんて危ういんだと思っていたが、その詩織の性質に感謝する時がくるとは思っても見なかった。
 ペットプレイの愛好者同士交流がある正樹くん。詩織よりも若い彼と私との関係は詩織に対して『ネット上の掲示板で知り合った友人』と説明してある。嘘ではない。どこのサイトの掲示板で知り合ったのかを言っていないだけだ。
 むしろ、詩織はそこまで気にしなかった。ただ「そういう時代になったんですね」とインターネット上で顔も知らずに知り合った相手とリアルでも会うことがあるのだということの方に関心していた。私よりも二、三歳は若いのだが、どうも詩織はネットに対して偏見を持つ家庭に育ったようだ。実家にはパソコンすらないという話だったが、それはさておき。
 正樹くんは私の家に時々遊びに来るため、詩織も彼の存在に慣れている。
 だから連休の中頃に彼がやって来ても、それは日常の延長であり、詩織にとっては警戒することではなかった。
 彼と私は私の自室で話し合いをしている。
「正樹君、お昼ご飯食べていきますよね?」
 そこに台所で昼食の用意をし始めていた詩織が、ドアをノックしながらそう訊いてきた。私はドア越しに答えを返す。
「ああ、用意してあげてくれ」
「すいません。ごちそうになるっす」
「はい。わかりました。チャーハンですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫っす。むしろ大好物っす」
 そして詩織が昼食の準備をしに台所へと向かった後、彼は楽しげな表情でこちらに向き直る。
「いやー、ほんっと楽しみっすねー。昼食もっすけど、なにより『その後』が」
「ふふ、今日のために準備をしてきたからね」
 そうっすね、と答えてくれる彼と私の間。そこに置かれたテーブルには、ところ狭しというように『その後』のための道具が広げられていた。
 まず用意したのはこの近辺の地図。様々な印が書き込まれている。これは辿るコースを書き込んだものだ。いくつかコースの候補はあったが――その中でも特に面白そうなコースを選んだ。
 ほかに用意したモノは、いつもの首輪とリード。それに軍手を改造して作った手袋。普通の手袋と違って、この手袋には指がない。拳を丸めた状態で手を入れる手袋だ。
 さらに膝小僧に当たる部分を分厚く加工したサポーター。尻尾がついたアナルプラグ。
 そして、夢を現実としてくれた『犬耳』。
 それを見つめた正樹くんはふう、とため息を吐いた。
「いいっすよね、こんないいものを手に入れて。俺もこういうの欲しいっすよ」
 私達のようにコアな趣向を持つ人間には夢のようなアイテムだろう。
 正樹くんの気持ちはよくわかったし、あまり自慢ばかりして彼を敵に回したくなかったので、私はこう言ってあげた。
「私がこれを買った店の場所を教えてあげるからそこに行くといいよ。君も誰かを犬にして、詩織と二人でじゃれあいさせたりするのも楽しそうだ」
 想像してみて、それはとても楽しそうだと思った。彼も同じだったのか、同じように笑みを浮かべる。
「それも面白そうっすね。まあ、でも、今回は津田さんのプレイに協力するっす!」
 少々お調子者の気はあるが、いい青年だ。
 私は協力者も得て、これからするプレイのことに思いを馳せた。




 その箱を抱えてマンションの廊下を歩いている際、偶然通りかかった住民に声をかけられた。
「あら、津田さん。こんにちは」
「あ、どうも」
「こんにちはっす」
 二人がかりで運んでいるダンボール箱を見て、その住民は感心したような顔をした。
「凄い大荷物ね。テレビか何か?」
 確かに、こんな大きな荷物はその類に見えるだろう。だが、外見的は何の表記もないダンボール箱だ。少し不審に思われているかもしれないが、言い訳はちゃんと考えてある。
「古いテレビなんですよ。これが重くて重くて……処分するのも一苦労です」
「だから、俺が手伝いに来たんすよね」
「大変ねー。今どきのテレビは凄く薄くて、軽いのにね」
「そうですね」
 そんな当たり障りのない会話を交わして、その住民とは別れた。エレベーターに乗り込み、一階まで降りる。駐車上に運び出し、六人乗りのワゴン車の後部ドアを開いて、その中に箱を入れた。
 運ぶのを手伝ってくれた正樹くんは、肩を回しながら溜息を吐く。
「津田さん。いまさらですけど、普通に連れ出すことはできなかったんすか?」
 彼を後部座席に乗せ、私は運転席に座る。
 シートベルトを締めながら答えた。
「一応、ここのマンションはペット禁制だからね。真昼間に堂々と連れ出すのはちょっと無理なんだ。近所づきあいもあるし……いずれ、一軒家に引っ越すつもりだけど。中々いい物件がなくてね」
「そっか……周りから見たら大型犬ですものねー。そんなの連れてるのを見られたらやっぱまずいっすね」
 言いながら正樹くんは段ボールの蓋が勝手に開かないように結んでいた紐を解いていく。私はそれを慌てて止めた。
「おっと。まだ待ってくれ。車を動かしてからだよ」
 いつどこから見られているかわからない。せっかく苦労してここまで連れ出したのだ、念には念を入れるべきだろう。
 了解っす、と軽く応じる正樹くん。
 私は車を出し、ある程度家から離れた場所へと車を移動させる。十分マンションから離れたところで、正樹くんは紐を解いて段ボールの蓋を開いた。
「さ、出てきていいっすよ」
 段ボールの中に正樹くんが呼びかけたが、反応はない。
「…………ダメっす。全然動く気配がないっす」
 私は少し優越感を覚えながら、声を投げかける。
「『よし』。詩織、出てきていいぞ」
「わん!」
 途端に嬉しそうな声を弾かせて、段ボールから詩織が飛び出してきた。危うく私の方にきそうになった詩織を、慌てて正樹くんが止める。
「わわっ、ダメっすよ詩織さん! 運転の邪魔しちゃ!」
 詩織は行動を邪魔されて不満そうだったが、私が軽く『待て』と声をかけてやるとぴたりと静まった。
 正樹くんはそんな詩織を見て、つまらなさそうに唇を尖らせる。本気で気分を害した、というより拗ねているような仕草だ。
「んー。やっぱり詩織さんの主人は津田さんなんすねー」
「飼い主冥利に尽きるよ」
 今回、詩織に『犬耳』をつける際、正樹くんにも手を添えて貰っていた。前日何度か実験してわかったことだが、そうすると彼にも詩織の姿がちゃんと認識されるのだ。
 そうした場合の主人の認識がどうなるのか、少し不安だったのだが、どうやら詩織は私を主人として認識してくれているらしく、正樹くんの命令はあまり聴かない。
 この辺りがどういう基準になってるのかはわからないが、詩織本人の意思が関わっているといいと思う。つまり、彼女にとってより大事な人物が主人と認識される、という奴だ。実際、一度正樹くんに『犬耳』を付けてもらった際、彼には詩織がそのままの姿で見え、私は彼女を犬としか認識できなくなったのだが、その時も詩織は私の方の命令を聞いてくれた。いずれこの辺りの詳しい法則をあの雑貨店の店主にでも聴いておかなければならないだろう。
 少なくとも、詩織に関しては私の言うことを最優先で聴いてくれるということであり、それは純粋に嬉しい。
 昼間から詩織に寝てもらうために、今回は睡眠薬を使った。彼女は昼飯が終わった後で突然発生した強烈な眠気を訝しんでいたが、疲れていると解釈したらしく、素直に寝てくれた。正樹くんはいたが、私がいたから安心していたというのもあるのだろう。寝ている間にこんなことになっているとは思っていなかっただろうが。
 信頼してくれている詩織を騙しているような罪悪感はあったが、欲望に勝てなかった。
 同じ欲望を持つ正樹くんは、詩織の姿を見て感心したように小さく息を吐く。
「うーん……ほんと、いい格好っすよねえ……普段の詩織さんなら、絶対しないでしょうね」
「そうだね」
 首輪に手袋、あとは膝を覆うサポーター以外の何も身に着けてない詩織は、私達の言っていることがわからない、とばかりに首をかしげた。そのお尻の下で柔らかそうな毛で覆われている尻尾が揺れる。それはアナルプラグに接続されていて、詩織が肛門の括約筋でそれを締め付けると左右に振れるようになっている。犬の状態の時、詩織にはその尻尾である程度の感情を示すように命じてある。
 こんな風に詩織が犬の姿をしているなんて……普段の知的な詩織からは想像できない。嬉しそうに顔を綻ばせながら可愛い舌を出して「ハッハッ」と呼吸を繰り返している。そんな姿でも本来の可憐さが損なわれていないのだから、詩織は犬になる素質というものがあるのかもしれない。
 正樹くんと今後の計画を再確認しながら、車を運転して、目的の場所へとたどり着く。
 運転席から降りると、途端に周囲の騒がしい音が耳を打つ。
 そこは大きな運動公園で、大型犬の散歩に適している場所だ。いま詩織は傍から見ればゴールデンレトリバーやセントバーナードのような大型犬に見えているはずだ。ちなみに、詩織が犬の姿で見えているときの犬種はゴールデンレトリバーだ。ふわふわの毛と、高貴な印象、それに愛らしい表情が詩織の犬の姿としてはぴったりだと思う。もっとも、私はほとんど人の姿でしか認識しないから、あまりそれは関係ないのだけど。
「さて、行こうか」
 私は外から車の後部へと周り、後ろのドアを開いた。とたんに詩織が飛びついてきそうなのを抑える。
「『待て』。ちゃんと確認してからだよ」
 彼女の体に傷をつけるわけにはいかない。膝のサポーターがちゃんと固定されているのを確かめる。足にはこのために買っておいたシューズを履かせた。出来れば素足のままが良かったが、そんな状態で地面を歩かせたら怪我をするに決まっている。手袋もちゃんと嵌っていることを確かめる。
 なお、これらの装飾具が周りからどう見えるかは実験済みである。その結果、犬耳をつけたその瞬間に身に着けていた服などは周りから認識されないということがわかっている。今回は『犬耳』をつけた後、この格好に着替えさせ、そのあとで『犬耳」をつけ直している。だから周りからは何も身に着けていない状態の犬と認識されているはずだ。シューズやサポーター、手袋はないものとして扱われている。尻尾に関しては詩織が動かすのに合わせて周りも本物の尻尾が動いてると認識するはず。
 この機能はありがたかった。普通の犬の膝にサポーターがあったり、シューズを履いていたりすればいくら犬と認識されていても妙だからだ。かといって全裸で歩かせるわけにもいかない。この機能のおかげで気がねなくサポーターやシューズを身につけさせることができる。
 首輪を一度外してまたつける。そうすると、周りからもちゃんと首輪が装着されていると認識されるようになる。ちなみに、そこからぶら下がっているネームプレートにはちゃんと『しおり』と記入してある。最近は犬に名前をつけるときにも人の名前と大差ない名前をつけることが多いのでこの名前も不自然ではない。
 認識されない状態になっているのは詩織が身に着けている間だけであり、外すと周りもその装飾具を認識出来るようになる。
 詩織の体を守るための装飾具がきちんと整っているのを確認して、頷いてやる。
「問題はなさそうだね。じゃあ行こうか」
「わん!」
「ういっす! 津田さん、リードっす」
 正樹くんが差し出してくれた赤いリードを、私は礼を言いながら受け取り、早速詩織の首輪に取りつける。
 リードを軽く引っ張ると、詩織は四つん這いで危なげなく車の外へと降りた。白昼堂々、こんな風に犬の格好をした詩織を引きまわせる日が来るとは……本当に、夢のようだ。
 車のドアを閉めて鍵をかけ、私達は散歩を始める。




~その5へ続く~


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