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死神輪舞17

死神輪舞16の続きです。

前回の話はこちら↓
         10
11 12 13 14 15 16

 では続きからどうぞ。

死神輪舞17




 僕とシェルちゃんは暫くの間、色々なことを話していた。
「そういえば、なんでアルちゃんはそういうことが……僕とシェルちゃんが危うい状態ってことがわかったの? 死神と人間の魂の同化なんて、滅多にあるものじゃないんでしょ?」
「魂の原理と体と言う器の関係性について考察すれば大体の予測はつく。シェルフェールフールはそういう学習を敬遠するタイプだったから、考えが至らなかったのだと思われる」
「…………もしかして……シェルちゃんって結構死神の中でも……えーと」
「言いたいことはわかる。言わなくていい。確かにシェルフェールフールはあまりそういう面で優れた才能は発現しなかった。けれど、彼女は死神の力を使いこなすことが上手い。だから、決して落ちこぼれというわけじゃない」
「へえ……じゃあひょっとして、アルちゃんはシェルちゃんとは逆に実技が…………」
 そこまで口にして、先ほどアルちゃんが大して苦労する様子もなく魔術を使いこなしていたことを思い出した。
 案の定、アルちゃんは沈黙を数秒間続けた後。
「…………わたしは、死神の中でも歴史ある系譜を持つ死神に属する。ゆえに、発生して間もない頃から厳しい訓練を受けていた。シェルフェールフールとはそういう違いがある。比べるのは無意味なこと」
「……そうだね」
「それに、最近の風潮でいえばシェルフェールフールの方が好まれる傾向にある。わたしのように伝統に縛られた振る舞いを重視する死神の方が現在では少数派」
 シェルちゃんはそう教えてくれた。卑屈になっている様子はない。ただ事実を述べている、というような感じだ。
「へえ……そうなんだ」
「さすがに死神大王は伝統と格式を重んじているけど、時代に合わせた変化を望んでもいる」
「アルちゃんはどうなの?」
「どう、とは?」
「変化を望む派? それとも、伝統を重視する派?」
「…………」
「あ、言いたくないならいいけど……」
「わたしは、変化を望んでいる。こうして赤城星斗に身体を貸し与えているのも、その一環なのかもしれない」
「……そういえば、そうだね」
 仮に彼女がガチガチに死神の伝統や誇りを重視しているなら――そもそも星斗に身体を貸し与えるなんてことはしなかったはずだ。シェルちゃんでさえ、容認しない身体を貸し与えるという行為。それを自分からしているのだから、答えは目に見えているようなものだった。
「アルちゃん……気になっていたんだけど……」
「なに?」
「……死神の体を人間に貸し与えるって……やっぱり、悪いこと? アルちゃん、怒られたりしないの?」
「消滅させられるかもしれない」
 あっさりと。
 アルちゃんはそう言った。
「あ、アルちゃん!?」
「前例がないことだから。死神大王の協議によっては、罰として消滅させられるかもしれない。人間の言葉で言い表すと、死刑という言葉が当てはまる」
「なんでそんなに落ち着いてるのさ?!」
 信じられなかった。
 もちろん、無事で済む訳はないと思っていた。何らかの罰か何かが与えられるんじゃないかな、と心配していたのだけど……。
 まさか、死刑の可能性もあるなんて。
 アルちゃんはその身体に相応しい、冷たいほどの無表情のまま続けた。
「わたしは赤城星斗に身体を貸し与えることを決めた。自分の行為に自分で責任を取る覚悟はある」
 矜持、というものだろうか。
 アルちゃんは言葉の端に誇りさえ滲ませていた。



(……アルちゃんに言われてるし……星斗にアルちゃんのことを話すわけにはいかないけど)
 僕が出来ることは、彼女が望んだように星斗に生きるという実感を与えること。つまりは。
 星斗を騙したり、星斗に嘘をついたりしないでいいように。本音で語り合い、心を通わせること。
「星斗。実は僕……この体のこと、ちょっとだけ知ってるんだ」
「なに?」
 訝しげに星斗が顔を顰める。
 僕は少し慌てて。
「いまから本当のことを話すから、落ち着いて聴いて?」
 星斗に嫌われたら困る。
 ここは誠実に、自分が隠していたこと、隠していた訳を全部話すしかないだろう。
「まず、謝らせて。僕は星斗に助けられる前に、この体について知る機会があった。それをすぐ話さなかったのは……星斗が敵か味方かどうかわからなかったからなんだ」
 そんな話の切り出しから、僕は僕が経験してきたことを包み隠さず話した。アルちゃんが星斗に身体を貸し与えたということと、アルちゃんが星斗の寝ている間に活動できることは除いて。ほとんど全部。
「…………つーことは、俺の体もその、死神とかいう奴のものだと?」
「たぶん。似ているところが多いし」
 幸い、僕が黙っていた理由を、星斗は納得してくれたらしく、すぐに話してくれなかったことを不愉快には思ったみたいだけど、それほど大きな怒りは買わずに済んだ。僕としても、黙っていたほとんど全てのことを話せたので胸の内がすっきりした。
 星斗は顎に手を当て、考え込んでいる。
「今は、シェルとかいう死神の声はしてないんだな?」
「うん。なんでかはわからないけど……」
 これは嘘だけど、それ以外に説明のしようがなかったから仕方ない。
「ふうん……時間が経つことで、身体に亮の魂が馴染んで、死神の方の魂が消えたか、あるいは奥底に沈んで出て来れなくなったか……まあ、とにかくよかったじゃねえか」
 ほんとに星斗って頭がいいんだなぁ。すぐさまそんな風に推論をあげられるなんて。間違ってるけど、それはこっちが情報を隠してるせいだし……。
 それにしても、『良かった』という言葉には僕は首をかしげざるを得ない。
「よかった……かなあ?」
「ああ。体を奪っちまった時点で、俺達は恨まれて当然だ。だけど、消えたくはないだろ? それなら、いつまでも頭の中で騒がれてたら溜まらんだろ」
 それはそうかもしれないけど。
「そう割り切れることでもないかもしれねえけどよ。……そういう意味では、俺はこの体の持ち主と会話出来なくて正解だったのかも知れねえな」
 こんなに星斗はいい奴なのに。
 心のままに自分勝手なことをしているわけじゃなく、その行動にはちゃんと理由があって。その行動がどれほど罪深いか、される方から見れば理不尽なことをちゃんとわかっていて。
 自分の行為が人を苦しめていることすら理解しない、想像しようともしない人たちに比べたら……よっぽど星斗の方が生きるに値する。
 どうして、彼が死ななければならなかったんだろう。
 僕だって死ぬほどの理由はなかったはずなのに。
 なんで僕達は死んでしまったんだろう。僕に至ってはそれが原因で死神のシェルちゃんを苦しめた。
「…………なんで、僕達は死んじゃったんだろ」
 想いが溢れて、そんなことを口にしていた。
 よっぽど情けない顔をしていたのだろう。星斗は僕の傍に来ると、椅子に腰かけていた僕の頭を胸に抱え込むように抱きしめる。柔らかな胸と腕に包みこまれる感触。思わず力を抜いた僕の耳に、小さな星斗の声が滑り込む。
「運が悪かったのさ」
 それはきっと真実で。
 だからこそ、残酷だった。
「……割り切れないなあ」
 自分からも腕を回して、星斗の胴に抱きつくようにして頭を星斗の胸に押しつける。
「世界なんて、そんなもんだろ」
 生まれつきの病、という最大の悪運を実感として知っている星斗はそう呟く。
「そうかな」
「そうさ」
 軽く僕の疑問を肯定する星斗。
 僕も、それに同感で。どうしようもなく理解出来たから。
 なんだか無性に悲しくなって、僕は溢れ出した涙を堪えて泣いた。
 その時、星斗がどんな顔をしていたのかわからないけど。

 僕は自分の後頭部に注がれる、とても優しい視線を感じていた。




~18につづく~

Comment

No.170 / toshi9 [#YK3S2YpI]

ちょっと遅れましたが、16と17を読むませてもらいました。
相変わらず面白いですね。静かな展開でもキャラが生き生きしてるなあ。
ところでアルのほうが星斗を高い目で包み込んでいたことがわかって、今までと話の認識ががらっと変わってしまった印象です。となると今後は死神界が今の二人に(というよりもアルちゃんに対して)どう対応していくのかでしょうか。
いろいろ書かれていて大変でしょうが、次回も楽しみにしてます。

2009-05/02 10:42 (Sat) 編集

No.173 / 光ノ影 [#-] toshi9さん

「面白い」と嬉しいコメントありがとうございます!

彼らがこれからどうなるのか、死神大王や死神達がどう動くのか、今後の展開がどうなるのか、ご期待ください。……まだほとんど何も考えてないのですが(苦笑)。
色々書いてて大変……というか、ちょっと欲張って色々手を出し過ぎましたね。首が、というか手が回らなくなってきているような気がします……。

とにかく全力で頑張ります!

2009-05/02 18:48 (Sat)

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