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死神輪舞4

 死神輪舞3の続きです。

 前回の話はこちら→   

 では続きからどうぞ。

死神輪舞4




 生暖かい空気が淀んでいたイソギンチャクの中に、一陣の風が吹く。
 驚いて目を開けた僕の目の前に、信じられない光景が広がっていた。
 僕をすっぽり包んでいたはずのイソギンチャクの袋のような口内……その壁に、穴が空いていた。
 体中を這いまわっていた触手が、まるで痛みに震えるかのように悶え、僕の体から外れていく。
 その瞬間、僕は咄嗟にその穴から外に転がり出た。
 一緒に口内に溜まっていたどろりとした粘液が零れ出す。
「うわぁ……気色悪い……!」
 どろどろする粘液に辟易しながら、僕は何とかイソギンチャクから逃れようと地面を這う。
 餌が逃げようとしていることを感じたのか、イソギンチャクがその長い触手を伸ばしてきた。
(つかまってたまるかっ!!)
 全力を振り絞って立ち上がり、何とかその触手を避ける。
 けど、思っていたより数が多い。しかもさっきまでの全身への刺激で足に上手く力が入らなかった。
 また足に触手を掴まれてしまう。
 今度釣りあげられたら、今度こそ全てが丸見えになってしまう。それだけは嫌だ!!
 全力を込めて巻きついた触手を掴まれている足とは別の方の足で蹴飛ばす。べちゃり、と気色の悪い音がしただけだった。
 ぐい、と足が引かれる。
「嫌あああ!!」
 どんな格好にされるのか嫌でも想像できて、思わず悲鳴を上げた。
 その時、鋭い風が吹いた。
 僕の足に巻きついていた触手が切断され、のたうつ。
「!?」
 何が起こったのかわからず、思わずその切断面を見る。決して綺麗な切り口ではなかった。刃で斬ったのではなく……力で引き裂いた、というのが正しいかもしれない。
 イソギンチャクの本体の方を見る、さっき僕が出てきた穴は不思議な形に開いていた。
 こう、鋭く尖ったものを突き刺した、というよりも、円筒形のパンに横からかぶりついた時のような……開き方だ。
「ど、どうなってるんだ?」
 何がどうなっているのかわからず、混乱する僕。
 触手はこちらにその手を伸ばしてこようとしているようだが、なぜか伺うような動きでこちらに向かってこない。
「シェルフェールフール!」
 その時、上の方から誰かの声がした。
 しかもいまの名前は……シェルちゃんの?
 上を見上げかけた僕の目の前に、誰かが降り立つ。黒い服に黒い大鎌。
 これは、ひょっとしなくても。
「死神!?」
 シェルちゃんの、同類か!
 その目の前に現れた死神――女の人だ――は、不思議そうな顔でこちらを見た。
「シェルフェールフール? どうしたの?」
 どうやらシェルちゃんの知り合いらしい。
 うう、どう説明したものか。
「え、えっと……」
 おろおろ狼狽する僕を、その死神は少しの間観察し、肩に羽織っていたマントを僕に渡してくれた。
「体をそれで隠しなさい。詳しい話はあとで聞くわ!!」
 大鎌を振りかぶる女性の死神。
 鎌の刃先が光り出した。
「猫ちゃん! 退いて!!」
 その人はなぜかそんなことを言いながらイソギンチャクに向けて突進をかけた。残像が残るほどの高速移動。
 イソギンチャクが触手を伸ばそうとするけど、遅い。
 すでに死神はイソギンチャクに触れるほどの位置にいた。
「はあああああああ!!」
 気合いと共に、大きく振りかぶった鎌をまずは真横に一閃。そしてその勢いを止めないまま、間髪入れず縦斬りに切り替える!
 その軌道はあえて名付けるなら、

 『十文字斬り』。

 きっちり四等分に分断されたイソギンチャクは、地面に崩れ落ち、そのまま水になるように溶けていった。
 ざあっという効果音が聞こえてくるような消滅の仕方だった。
「す、凄い……」
 イソギンチャクをあっさり倒してしまったその女性死神は、鎌を掌の中に吸い込ませるようにして消してこちらを向いた。
「さて……シェルフェールフール。あなたがこんな雑魚にやられるなんておかしいわね。何かあった? 説明してもらうわよ」
 そう言われても、本人(本死神?)は気絶中だ。どう説明すればいいのやら……。
 途方に暮れていると、頭の隅で『声』がした。
(う、うーん……しょ、触手が……うねッて…………うう……)
(シェルちゃん! シェルちゃん起きて!!)
(うう…………っ!! あ、あれ? しょ、触手は……?)
(死神みたいな人が現れて、倒してくれたよ。知り合いみたいだけど、あの人誰?)
 そう僕が水を向けると、ようやくシェルちゃんがその人に気づいたみたいだった。
 途端、頭の中で黄色い声が弾ける。
(っ!! きゃああああああ!! コルドガルド様じゃない!!)
 頭の中に弾けた甲高い声に思わず顔をしかめる。
(こ、コルドガルド?)
(上位死神の一人よ! 知らないの!?)
 知るわけないでしょうが。
(もうかっこよくて優しくて穏やかで強くて綺麗で……全ての新人死神の憧れなんだから!!)
 そ、そうなのか。
 そのコルドガルドさんは傍目から見たら沈黙している僕を、訝しげな顔で見ていた。
「シェルフェールフール?」
(ああ! 私なんかの名前を覚えていてくださったのですね!! 感激です……!!)
 駄目だ、完全にミーハーな女の子状態になっちゃってる……しかたない。
「ええと……コルドガルドさん、実は……」
(さん!? コルドガルド様を『さん』付けで呼ぶなんてなに考えてるの!? ぶっ飛ばすわよ!?)
 訂正。これはミーハーというよりは、フリークって感じだ。
(ちょっと静かにしててよ、シェルちゃん!)
 どう説明しようか考えてるんだから。
 なおもうるさく騒ぎ続けるシェルちゃんを放置して、僕はコルドガルドさんに現状を説明するべく、話しかけた。
「実はですね、僕はシェルちゃんじゃなくて、青木亮と言います。どうやら、シェルちゃんの体と同化してしまったらしく……」
 コルドガルドさんが驚きに目を丸くする。
「……死神と同化? 人間の魂が?」
「はい。信じてもらえないと思いますけど……」
 シェルちゃんの様子から言っても、初めて聞くことだったみたいだし、普通じゃない状態を理解してもらうことは難しい。
 最悪、悪ふざけか冗談の類と思われるだろう、と僕は覚悟を決めていたのだが、コルドガルドさんは複雑そうな顔をしていた。
「昨日までなら、シェルフェールフールが悪ふざけをしているのかしら、と思うところだけど……」
 驚いた。なんだか信じてくれそうな雰囲気だ。
「信じてくれるんですか?」
 何の証明もないし、きっと信じてくれないだろうと思ったんだけど……。でも、『昨日までなら』の部分が気になる。
 昨日、何があったんだ?
 コルドガルドさんは、困ったような顔になったのち、言った。
「シェルフェールフールの指導教官だったのは数日の間だけだけど、実際に悪ふざけを言う子じゃないっていうのはわかっているから」
 なんか頭の中でシェルちゃんがこの上なく感激しているのが伝わってきたけど、とりあえず放置。
「では、信じていただけるんですね?」
「もちろんよ。とりあえず、詳しい話を聞くためにも、落ち着ける場所に行きましょう。……霊体化は出来ないのかしら?」
「……たぶん」
「じゃあこっちが具現化するわ」
 そういうコルドガルドさんの体が一瞬だけ光に包まれた。
「――これで私も周りから見えるようになっているはず。猫ちゃん、あなたも変化を解きなさい」
 コルドガルドさんが後ろを振り返り、何もない空間に向かってそんなことを言う。
 僕には何が起こっているのかわからなかったけど、何もない筈の場所で突然光が弾けた。
 思わず手で顔を庇う。
 光が治まったのを確認して手を降ろすと、何もなかったはずの空間に一匹の猫が登場していた。
 しかも、その猫は。
「僕があの時助けようとした……?」
 事故の時、僕が助けようとした猫だった。
 結局助けられなかったその猫が、なぜここに?
 あ、でもひょっとしてさっきイソギンチャクから助けてくれたのはこの猫だったのか? 何かが噛みついたような穴の開き方と、刃物ではない力でねじ切ったかのような切断面。それらは猫の牙と爪でなされたことだと考えれば、納得がいく。
「……どうやら、あなたは、この猫ちゃんの傍で死んでた男の子の霊みたいね。まあ、詳しくはあとで聴くわ」
 ぶわさっという音と共にコルドガルドさんの手の中に服が一式生み出されていた。
 具現化は難しい、という話だったのにきちんとシェルちゃんのサイズに合わせた服を一式即座に生み出すコルドガルドさんは、確かに死神として優れているのは間違いないようだ。
 コルドガルドさんはそれを僕に向けて差し出してくる。
「とりあえずこれを着なさい。それから移動しましょう」
「は、はい」
 素直に答えて、僕はその差し出された服を手に取った。




~5に続く~

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