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死神輪舞14

死神輪舞13の続きです。

前回の話はこちら↓
         10
11 12 13

 では続きからどうぞ。


死神輪舞14




 触手を伸ばして迫ってくるクラゲから逃げる。

 本当に出来の悪い怪獣映画の一幕のようだった。おまけに周りの人達は巨大なクラゲには気づいていない。一心不乱に街中を走る僕と星斗に不思議そうな顔を向けてくるくらいだ。
 顔のすぐ脇を触手が掠めても、眉ひとつ動かさない。本当に気づいていないのだ。クラゲの存在自体が見えていない。
 あのクラゲは幽霊と同じようなものなのだろうか?
 考えながら走っていたからだろう、小さな段差に足が引っ掛かった。
 体のバランスを崩し、地面に倒れ込む――寸前で手を繋いでいた星斗がその手を引いて助けてくれた。
「走ることに集中しろ! 後でいくらでも説明してやるから!」
 確かに余計なことを考えていられる状況ではなかった。僕は慌てて頷く。
「わ、わかった!」
 星斗は人気のない方向へと向かっていた。通りを暫く走った後、裏路地に飛び込み、さらに走る。
 僕はすっかり息が上がって、星斗についていくのがやっとだった。けど、星斗の方は全く問題ないように、平然と走り続けている。外見的には星斗の方が体力がないように見えるのに。
 気にはなったけど、質問はあとでと言われていたし、なによりその余裕がなかった。
 なおも星斗は走り続けて、いよいよ僕がギブアップする寸前――その足を止めた。
 危うくぶつかりそうになるのをなんとかこらえながら、僕は呼吸を整える。じっとりと汗が服を湿らせて、肌に張りつく感触が気持ち悪い。
 周りの様子を確認すると、そこは取り壊し予定の廃ビルの近くだった。なんらかの理由で作業が中断されているのか、置きっぱなしになっている鉄骨や重機が寂れている印象を際立たせている。もちろん人気はなく――奥まった所にあるので通りがかる人もいない。
 星斗はそれを確認すると、持っていた荷物を僕に渡してきた。
「それを持って離れてろ。たぶんそろそろ来る」
 そう言った瞬間、見計らっていたかのようなタイミングで、建物の隙間から例のクラゲの触手が蠢きながら湧き出してきた。思わず数歩下がった僕とは対照的に、星斗は一歩前に出る。
「星斗……!」
「大丈夫だ。心配すんな」
 星斗はゆっくりと手を真横に伸ばす。
「すぐ終わる」
 その掌に光が集まり、その光は大きさを増して空中にある形を作り出していく。光は大きな鎌の形になって、結晶化する。はっきりしていなかった輪郭が定まり、見た感じでも質感が生まれたように見えた。
 クラゲと戦うつもりだろうか。僕はハラハラしながら星斗とクラゲが徐々に近づくのを見ていた。心の中で、シェルちゃんに話しかける。
(シェルちゃん……あれは、なに?)
 明らかに普通じゃないクラゲについて、死神であるシェルちゃんなら知っているのではないかと思ったのだ。
 頭の中でシェルちゃんが答えてくれる。
(私もよくは知らないわ。でも……この世界には『魔』が存在していて、それに捕らわれたものは存在を取り込まれて消えてしまう――というような話を聞いたことがあるわ)
(消えてしまう!?)
 危険なものであることは薄々わかっていたけど、消えてしまうという具体的な脅威を聞かされると危機感は嫌でも増す。
 思わず僕は星斗にそのことを伝えそうになったが――遅かった。
 すでにクラゲの触手は星斗の目の前まで迫っていて、その瞬間、いままでの緩慢な動きが嘘のような速度で星斗に向かってその触手を閃かせる。
「星斗!」
 咄嗟に叫んだ僕。
 だけど――その叫びはすぐかき消されることになった。
 星斗に絡みつこうとしていた触手が断ち切られ、空中に投げ出される。
『キイイイイイイイイイ!!』
 耳障りな金属音のようなものが響き渡った。咄嗟に耳を押さえた僕は、それがクラゲが発している悲鳴であることに遅ればせながら気づく。
 見ると、星斗はその手にした鎌を振り切ったような態勢で止まっていた。
「はっ! クラゲのくせに悲鳴なんざあげてんじゃねえよ!!」
 吼える星斗の気迫に押されたかのように、空中に浮かぶクラゲの本体が後ずさる。だけど、すでに遅かった。
 まさに一閃。
 星斗が振り上げた鎌の一撃は、遥か空中にいたクラゲを真っ二つに両断していた。
 もちろん鎌の刃が届いたわけじゃない。はっきりとは見えなかったけど、どうやら鎌を振った時の軌跡に沿って何か光の筋のようなものが飛んだようだった。
 それが普通なら手の届かない空中にいたクラゲの本体を切り裂いたのだ。真っ二つに切り裂かれたクラゲはあっという間にその形を失い、水のようなものになって地面へと滴り落ちていく。
「す、すごい……」
 こういうのを、瞬殺というのだろう。
 圧倒的な星斗の強さに呆然としていると、頭の中でシェルちゃんも呆然とした声をあげた。
(うそでしょう……なに、あの力…………上位死神レベル……いえ、もっと……?)
 どうやら星斗の力はとんでもないレベルにあるようだ。元々死神じゃなかった人間がそこまでの力を振るうことができるという事実。
 それは何を示しているのだろう。
「やれやれ……さすがに街中でこれを振り回す度胸はねーからな。色々面倒だし」
 そう言う星斗の手の中で、大鎌が光の粒子となって消える。
「ね、ねえ星斗……その、鎌は他の人にも見えてるの?」
「ん? ああ、よくはわからねえ。玲奈の魂に洗脳かけた時はどうだったかな……見えてた、気がするな。怯えてたし。ただ、あの変なクラゲの方は見えねえからよ。周りには刃物を振り回す奴にしか見えねえはずだからな。キチガイ扱いされるなんてごめんだし」
「そ、そうだね……」
「きっとお前も使えるようになると思うぜ? なんなら教え――っと、その前にここを離れよう。あのクラゲのことについても話さないとな」
 そう言って、僕の手に預けていた荷物を受け取った星斗は、僕の手を引いてホテルへと向かった。
 僕は大人しく従ってついていくしかなかった。




~15へ続く~

Comment

No.160 / toshi9 [#YK3S2YpI]

クラゲとの戦いはあっけなかったですが、緊迫感があって情景が目に浮かぶような描写がいいですね。
>それは何を示しているのだろう。
私が聞きたい(笑
いえ冗談です。執筆がんばってください。

2009-03/08 22:33 (Sun) 編集

No.161 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

描写に対するお褒めのお言葉、ありがとうございます。
いい加減、死神輪舞は謎を放出しすぎたので、そろそろ回収していくつもりです。
気長にお付き合いくださると、幸いです。

頑張ります!

2009-03/08 22:55 (Sun)

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