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『理想通りの俺が嫁』

活動本格再開第一本目は「TSもの」・「調教もの」となりました。
これもまた私らしい作品といえると思います。

それでは、続きからどうぞ。
『理想通りの俺が嫁』


 それは、俺の理想を体現したかのような姿だった。
 画面の中には、俺の動きに連動して動くバーチャル上のモデルがいる。俺の好きな要素をこれでもかと詰め込んだ、理想の女性。
「これが詳しい知識も要らずに、数値を設定するだけで作れるんだから、いい時代になったよなぁ」
 しみじみと呟く。
 昨今のバーチャルユーチューバーブームに感謝するしかない。
 俺は昔から漫画やアニメが大好きだった。好きな女性キャラ、いわゆる推しというものも何人も抱えている。ただ、好きは好きなのだが、やはり人の作ったキャラだけに、どこか一点か二点は好みから外れた特徴が存在し、どこか残念に思っていた。
 自分で考える究極の理想の嫁。そんなものが作れたらどんなにいいかと。
 かといって絵心が壊滅的だった俺には、他の奴がやっていたように、自ら自分の嫁を作り出すことは遠い夢の話だった。
 そんな俺にとって、外見だけとはいえ、完全に理想の女性キャラを簡単に作れるこのツールは、まさしく救いの手そのものだった。科学技術の発展に感謝するしかない。
「いや-、それにしてもこんだけ細かい数値を入力するのは大変だったな」
 実のところ、パーツを選んで理想のキャラを作るというだけなら、いままでいくつものソフトが発売されていた。
 俺がいま使っているツールがそれらと違うのは、本当に細かいところまで設定できるところだ。まつげひとつとっても「長さ」「固さ」「本数」「角度」などあらゆる項目が存在する。髪ともなれば二百項目くらいあった。それが全身分あるわけだ。
 そこまで細かい調整が利くツールなど、他に存在しない。
 それを一から十まで妥協することなく、何ヶ月もかけて記入し続けた自分の執念と努力を褒め称えてやりたいくらいだ。
 その甲斐あって画面の中の女性は俺の好みドンピシャに仕上がっている。
 これ以上はない、『俺の嫁』だった。
「ふー、しっかし、いまの世の中はどうなってんのかね。これだけ素晴らしいツールが、無料配布ってさ」
 キャラを造るソフトの中には有料なものも数多ある中で、ここまで細かい調整が利くにも関わらず無料というのは、もはや逆に支払えない詐欺のような感覚にさえなる。
「ま、金欠大学生にはありがたいけどな」
 理想の彼女を造るために、やり遂げた達成感があった。
「これでようやく、次の段階に進めるな」
 思わず舌舐めずりをしてしまう。下品だとは思ったが、そんな心境であることに間違いはないのだから仕方ない。
 このツール。ただキャラを造るだけでは終わらない。
 なにせ、十八禁の表示があるのだ。作成時に裸の表示があることがその主な理由ではなかった。
 これから、この自分で造り出した理想の嫁を『調教する』という段階がある。
 説明書きには『内面もアナタの理想とするために、徹底調教を施されましょう!』という文言がある。若干日本語がおかしい気もするが、元々海外のツールのようなので、そんなものだろう。
 キャラクリエイト画面の一番下に『調教部屋に入る』というボタンが点滅している。
 ちなみに、ダウンロードした直後に試しで適当なサンプルキャラで調教シークエンスに進んでみたが、その部分だけでも金が取れそうなほど作り込まれていた。
(あの調教ゲームをこの理想のキャラで出来るなら、それだけで値千金の価値がある!)
 俺は流行る気持ちを抑えつつ、『調教部屋に入る』ボタンにカーソルを合わせ、そしてマウスでそれをクリックした。
 その瞬間、視界が暗転した。




 一瞬、画面が真っ暗になったのかと思って周囲を見渡してみたが、部屋も真っ暗だった。
 停電、の一文字が頭をよぎる。
(まじかよ! 嘘だろ? データ消えてないよな)
 数ヶ月間の苦労が水の泡になってしまったのではないかと思い、嫌な汗が流れる。
 だが、事態は停電など比ではないくらいに、深刻だった。
 最初に違和感に気付いたのは、自分の体がなぜか立っている状態にあったからだ。
 俺は椅子に座ってパソコンを操作していたはずで、停電した後に立った記憶もない。
(というか、自分の手すら見えないってどういうことだ?)
 目の前に掌を翳してみると、なんとなく気配はするが、全く見えない。
 光源がひとつもないにしても、おかしな話だった。まるで眼を瞑っているような、あるいは光ひとつない部屋に閉じ込められたかのようだ。
 さらに手を動かしてみて、気付く。
(なんで俺、服を着てないんだ?)
 確かにラフな格好はしていたが、俺は裸族というわけじゃない。俺しかいない部屋の中でも、ちゃんと服くらいは着ていた。
 思わず両腕を擦ってみて、さらに違和感は強くなる。妙に腕が細い、ような気がする。
 何気なく自分の胸に両手をやり、魂消るほど驚愕する羽目になった。
 そこに、確かに柔らかい感触があったからだ。
 すこしひんやりとした脂肪の塊。
 男の俺、肥満体というわけでもない俺には、絶対にあってはならないもの。
 おっぱいが、俺の胸についていた。
「えぇっ!? あ、えっ!?」
 反射的に声をあげ、さらに驚く。耳に聞こえたその声は、俺の声ではなかったからだ。
 どう考えても、それは女性の声だった。
「な、なんだこれっ!?」
 それは聞き慣れない声のはずだった。
 けれど、俺にとってその声は馴染みのあるものでもあった。
 この数ヶ月、何度も調整に調整を重ねて自分好みの声にしたのだから。
「ま、まさか、これって」
 嫌な予感を覚えて呟いた俺の目の前に、光り輝く妙な四角形が現れた。
 その四角い何かは明らかに空中に浮いていて、不思議な力が働いているとしか思えない。
 それにも驚いたが、それよりも俺が驚いたのは、その光り輝く四角形が映し出しているものだ。四角形の表面は磨かれた鏡のようになっていて、光を発しているのは四角形の枠だけだった。
 だから、その鏡に映っているものが、はっきりと見えた。そこに映っているのは、毎朝嫌というほど見ている自分の慣れ親しんだ顔、ではなく。
 この数ヶ月に限っていえば、親の顔より見た、俺が調整したキャラクターの顔だった。
 俺が調整した通りの、俺の理想そのものの姿で、そこにいた。
 手を動かすと、それも手を動かす。頬を引っ張ってみると、普通に痛かった。
 鏡の向こう側のそれも、涙目になっている。

 俺は、ツールで造った理想の嫁そのものになっていた。

 どういう理屈か、どういうわけかはわからない。
 わからないガ、ヤバい状況にあるということだけは本能的に理解できていた。
 この状況に陥る前、俺が何をやっていたかを思い返せば、誰にだってわかる。
 俺は『調教部屋に入る』というボタンを押して、こうなったのだから。
 不意に、周囲の景色が一瞬で切り替わった。さっきまで真っ暗な、それこそクリエイト画面のような殺風景な場所に立っていたにも関わらず、今度は誰もがイメージするような、座敷牢の中に立っていた。
 一瞬前までなんともなかったのに、冷たい空気が流れるのを感じられるようになり、思わず体を両腕で庇う。
 自分で触れた自分の体の柔らかさに戸惑う暇もなく、またも周りの景色が一変した。
 今度は、冷たいコンクリートがうちっぱなしになっている部屋で、ひんやりとした床の冷たさが足裏から伝わってくる。部屋は入り口が鉄格子で区切られていて、明らかに一定の目的を持って創られた部屋だった。
「や、やっぱり、これって!」
 この光景も見覚えのあるものだった。
 数ヶ月前に、とりあえずサンプルキャラクターで調教段階を見てみようと、起動した体験画面。
 その時もこうして、様々な「調教をするための部屋」を好みで選べたのだ。
 寒さゆえか、それとも恐怖ゆえか、歯の根が合わなくなって音を立てる。
 俺は体を縮み込ませるようにして、耐えなければならなかった。
 この後の展開も、当然俺は知っている。
 部屋の扉が開いて、そこから頭から足下まで黒づくめの男達が入ってきた。個性のない服を着ていたが、服越しにも筋肉が盛りあがっているのがわかる。ボディビルダーのような逞しい体躯をしているのは明らかだった。
 たとえ男のままだったとしても、抵抗を考えることも馬鹿らしく思える存在。ましてや、いまの細腕に設定した俺の体では、とても抵抗なんて敵わない。
 男達が鉄格子の鍵を開け、部屋の中に入ってくる。頭を全部覆うマスクを被っているため、表情とか髪型とかで個性すら判別できない。背丈も全員同じくらいだから、余計に不気味な無個性の集団だった。
 そんな男達が蹲る俺を取り囲む。筋肉の壁に取り囲まれ、逃げることもできない。
 俺の背後に回っていた男の一人が、俺の腕を掴んだ。万力のような、抗い難い凄まじい力で引かれ、関節を決められながら引き起こされる。
「イデッ、イデデデデ! や、やめろよ! 俺は違うんだって! 俺は」
「汝の一人称は『私』と設定された」
 やめるように言おうとすると、いきなりそう言われた。
 そう言われても、俺は俺だ。
「だから俺は、ギャァッ!」
 俺の前に立っていた男が、いきなり俺の胸の膨らみを、つまりはおっぱいを鷲掴みにしてきた。
 エロ漫画じゃよくある、興奮する表現だったけど、この行動はやられる立場になるとめちゃくちゃ痛い。おっぱいがもげそうになって、頭が焼けそうなほどの痛みを感じている。
「汝の一人称は『私』と設定された」
 男は同じ言葉を繰り返しながら、徐々にその腕を持ち上げていく。
 当然、その手に掴まれた俺のおっぱいも、上に引き上げられていくということで。
「イダイイダイイダイ!! ヤメッ、イギイイイイッ!!」
 涙が後から後から溢れてくる。涙声になるとか、鼻水が出るとか、そんなことを気にしている余裕はなかった。
 おっぱいを千切り取られそうな激痛と、恐怖だけが頭の中を埋め尽くす。
「汝の一人称は『私』と設定された」
 壊れた動画のように、同じ言葉を繰り返す男。
 その腕がわずかに捻られて、俺に与えられる激痛の質がまた変わった。
「アギャアアアアア!! わか、わかった! ンギッ、私! 私でいいんだろ!?」
 痛みに耐えかね、そう叫ぶと、男はおっぱいを掴んでいた手の力を緩め、解放してくれた。重力に従って元の位置に戻ったおっぱいが大きく揺れる。それに伴ってじんわりと広がるような痛みが生まれて、呻いてしまった。
「従順たれ。さもなくば激痛が与えられるであろう」
「あ、与えてから言うなよっ」
 あまりの理不尽に俺は声を荒げる。だが、与えられた激痛は確かな効果を発揮していた。
 男が何も言わずに掌をこちらに向けて翳しただけで、思わず体が竦んでしまったのだ。
(く、くそっ! 完全にびびっちまってる!)
 わずか数十秒のやりとりで、すっかり反抗心がへし折られていた。それほどまでにおっぱいをねじ取られそうになった衝撃は凄まじかった。
 男は淡々と、言葉を続ける。
「汝の性格は『おしとやか』と設定された。ゆえに、男言葉を禁じる」
「お、女みたいに喋れってか!?」
 絶対嫌だ。俺にも男として生きてきた意地がある。
 そう思っていた俺の尻あたりで、凄まじい音がした。
「へ?」
 一瞬、何をされたのかわからず、恐る恐る体を捩って尻を見ると、そこに赤い筋が一本走っていた。
 斜め後ろに立っていた男が、細長い紐のようなものを手に持っていた。
 それは、一本鞭と呼ばれる、絵に描いたような調教道具だった。
 認識するとほぼ同時に、自分の尻が焼けるような痛みを発する。
「あぐっ、てめっ」
「汝の性格は『おしとやか』と設定された」
 また鞭の一撃。今度は正体がわかっていた分、すぐに痛みを覚えた。
「や、やめっ」
「汝の性格は『おしとやか』と設定された」
 続けざまに二撃。痛い。
 俺が拒否すれば拒否するほど、鞭の回数は増え、白かった尻は瞬く間に真っ赤に染まった。振るわれている鞭は本物のようだった。SMプレイ用の、音だけが派手な鞭とは全く違うようで、皮膚は裂け、血は滲み、肉が抉られる。
 傷に向けて鞭が振り下ろされ、さらに深く鞭の痕が刻まれ、骨まで響く痛みがずっと残り続ける。泣き叫び、もがいていた俺の心が折れるのは必然だった。
 一際強い一撃を受け、生暖かい液体が脚の内側を濡らしていくのを感じた時、俺は自然と許しを請うていた。
「も、もう、やめ、て、くだ、さい」
「汝の性格は『おしとやか』と設定された」
「わかり、ました、から、むちは、やめ、て」
 もう反抗する気にもなれない。
 すればするほど痛めつけられるのだから、する意味もない。
 俺が認めると、男達はぴたりと止まり、気付けば、あれだけ痛みを発していたお尻の傷が一瞬で治っていた。
 それで助かった、と思えるほどおめでたい頭はしていない。
(死ぬこともできないってことかよ、ちくしょう)
 最終手段として舌を噛むことも考えていたのに、これでは例えかんだところで無駄だろう。今後自死を選ぶことがないようにと、より苛烈な仕置きが待っている可能性すらある。
 どうしてこんなことになってしまったのか。
 俺は自問自答するが、答えなど出るはずもなかった。




 想定以上の出来だ。
 俺は画面内でひたすら陵辱の限りを尽くされる理想の嫁を見ながら、自慰に耽っていた。
 自分の理想の嫁が作れるだけでも凄いのに、これだけ濃密な調教シーンまであるなんて本当にこのツールを作った奴は凄いと思う。
(最初はなんか変な感じだったけど、調教方針を決めれば決めるほど、俺の好みになってるんだよな)
 大満足というのはこういうことを言うのだろう。昨今の金だけ取ってろくなゲーム性のないゲームには見習って欲しいものだ。
 少なくともこのツールは無料で配布していいものじゃない。
「これだけ凝ってるなら、制作費もとんでもないことになってるだろうにな」
 しみじみと呟く。
 どこかでカンパを募集してくれたなら、すぐにでも支払いにいくのだけど。
 自慰で中断したりもしつつ、調教パートの最後まで終わったのか、クリアの文字画面に浮かぶ。
(設定することをゲームに例えて、設定終了でゲームクリアとは、洒落てるじゃないか。もしくは、元々はツールじゃなくてゲームとして開発されていたのかな?)
 俺はできあがった理想の嫁の姿を見て、思わず笑顔になるのを止められなかった。一般人には気持ち悪いと言われてしまいそうだが、実際嬉しいのだから仕方ない。
(気付けばいい時間だな。そろそろ寝るとするか)
 夢中で設定している間に、いつの間にか時間が経っていたようだ。
 俺はパソコンを終了するためにツールを閉じようとして、ふと、ツール上のウインドウでなにやら妙なアイコンが光っていることに気づいた。
「なんだこれ? クリア、特典?」
 何気なくそれをクリックすると、いきなりパソコン画面が目映く光り始める。明るさを最大にしてもこうはならない。
「な、なんだぁ!?」
 眩しすぎて眼を開けていられない。手を翳して顔を庇った。
 すると、俺の体に何かがぶつかって来て、俺は座っていた椅子ごとひっくり返った。頭を打たなかったのは軌跡だ。
 なにやら体が重い。
「い、いてて。なんなんだよ、いった、い?」
 目映い光はもう消えていた。
 そして俺の体の上に、俺の嫁が乗っかっていた。
 たったいままで俺が弄くり回していた、俺の理想の嫁が。生まれたそのままの姿で。
 咄嗟に何も言葉が出なかった。
「は?」
 やっと絞り出した言葉はそれだけだった。
 俺の戸惑いなど構わず、その画面から飛びだしてきた俺の理想の嫁は、しばらく俺の事を眼を見開いて見つめていたが、不意にその顔にとろけるような笑顔を浮かべた。
 理想の顔でそんな表情を浮かべられ、心臓の鼓動が激しく高鳴るのを感じる。その厚くもなく薄すぎでもない、色気のあるふっくらとした唇が動き、言葉を紡ぐ。
「ご主人様。どうぞ私を好きなように使ってくださいまし」
 それは、俺が設定した通りの呼び方で、声音で、性格だった。
 どういうわけだか、どんな理屈だかわからないが、俺は。

 俺は、俺の理想の嫁を手に入れたのだ。
 
 
『理想通りの俺が嫁』 終わり

Comment

No.1642 / 結衣 [#-] No Title

良いですね。面白い。

2019-04/21 06:46 (Sun)

No.1646 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

> 良いですね。面白い。

結衣様、ご感想いただきましてありがとうございます。
お褒めのお言葉、ありがとうございます。
久しぶりに書いた作品ですが、それなりにまとまった感じで書けたと自負しております。
それでは、またどうぞお越しくださいませ。

2019-05/02 10:21 (Thu)

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