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死神輪舞13

死神輪舞12の続きです。
いよいよ、物語が動き始めます。

前回の話はこちら↓
         10
11 12

 では続きからどうぞ。


死神輪舞13




「俺さ、生まれつきの病で死んだんだよ」
 彼は笑っていた。
「だから、こうやって誰かと一緒に街で遊んだりするの、初めてなんだ」
 僕の方をしっかりと見て、本当に楽しげな表情で。
「生きてる頃は、親を含めた皆に疎まれてた」
 悲しさなんて感じないほど。
「だから、死んでこうなってからの方が――よっぽど生きてるって感じがするぜ。お前にも会えたし」
 彼は、とても嬉しそうに、とても幸せそうに笑っていた。

「なあ、亮。俺の――友達になってくれないか?」




 ふわふわとしたレースで彩られたワンピースを閃かせて、その少女は僕の前を歩いている。
 きらきら輝くアクセサリーショップで、一つ一つその煌めきを確かめている少女の姿は、道行く人が思わず振り返ってしまうほどの可憐さだった。
 その忙しなく動く視線が、あるアクセサリーを見たところで止まり、微かに目を見開いたあと、僕の方へと向いた。
「亮! こっち来いって! いいのあったぞ!」
 瞬間、周囲からざわめきが湧く。当然だ。いまのいままで完全無欠、可愛らしい仕草で男達のみならず女の子達の視線すらも集めていた可愛らしい少女が、外見に全く似合わない男みたいな言葉使いで声をあげたのだから。
 僕はため息を吐きながら彼女の――いや、正確には彼の――傍に行った。
「星斗、だから言葉使いに注意しなって何度言わせるのさ」
 そういう僕自身も言葉使いに注意してないから、偉そうなことは言えないけど……。
 ちょっと眦を釣り上げて『本気で怒っています』という顔になるように心がけたんだけど……全く星斗は動じない。
「別にいいじゃん、こっちの方が話しやすいしさっ。それよりこれ見ろよ。絶対亮に似合うから」
(…………アクセサリーが似合うって言われても)
 中身の僕は男である以上、あんまり嬉しくない。でもまあ、確かにこの体には――シェルちゃんの体には、似合いそうなアクセサリーだったけど。
(……嬉しくないわよ、似合うなんて言われても)
 頭の中で、不機嫌なシェルちゃんの声が響いた。その頑なな態度に顔には出さず苦笑する。
(そこまで嫌わなくても……)
(嫌よ! アルミールアラミーナの体を奪い取っておいて……こんなに幸せそうにしているなんて許されざることだわ!)
 星斗はシェルちゃんの親友だというアルちゃんの体を乗っ取ってしまっている。だからシェルちゃん的には星斗は敵で、もしも僕がおらず身体を自由に扱えればすぐにでもアルちゃんの体から星斗を引き剥がそうとするだろう。
 そのことを僕は…………良かった、と思う。あんな話を聞いてからではなおさら星斗を敵視なんて出来ないし、むしろ少しでも楽しんでくれるならこうやって一緒に遊びに出ることくらいはしてあげたいと思ってしまう。
 ひょっとしたら、彼の行動・言葉の全ては嘘で、自分と同じような力を持つ僕を、情という無視しがたい戒めによって縛りつけようとしているのかもしれないけど……やっぱり僕にはそう思えない。
 星斗の言動に嘘はない。そう思えてしまう。
 僕は甘いんだろうか?
 そんな僕の心中などわかるはずもない星斗は楽しそうな笑顔を僕に向けてくる。
「こっちはどうよ? なっかなかいいじゃん?」
「…………そうだね」
 僕は彼に合わせるように笑顔を浮かべて頷くことしか出来なかった。
 心のどこかでひっかかりを覚えながらも、僕は星斗と一緒に楽しいショッピングを続ける。
 そうして長い時間を過ごし、日が暮れ始めた時――『それ』は起こった。

 沢山買った荷物を整理するために、通りに面した喫茶店でお茶を飲みながら休憩を取ることにした僕ら。
 星斗は注文したロイヤルミルクティーを飲みながら、名残惜しそうに話を切り出す。
「さて……そろそろ帰るか。日も暮れるしな。これだけ買ったんだし、暫くは大丈夫だろ」
「そう、だね……」
 僕が軽く頷くと、星斗は不審げな顔になって僕の顔を覗き込んできた。
「元気ねえなあ…………疲れたか? あんなことがあった直後だったし……連れ回し過ぎたか」
「あ、ううん。ごめん。大丈夫だよ」
 いけない。考え込むあまり、星斗に心配させてしまったようだ。
 あまり不信感を抱かせるのはよくない――そう思って何とか笑顔を浮かべてみせた、その時。

――喫茶店の外で、大きな衝撃が起きた。

 ガラスがビリビリと震え、悲鳴と叫びがあがる。
 思わず身体を震わせて外を見た僕の目に、大きなトラックが横転して、何かの店に前面が埋まっているのが映る。
「事故……!?」
 立ち上がり、事故の様子をもっとよく見ようと窓際に寄りかけた僕の手を、星斗が掴む。
「待て!」
 手が引かれたことと、鋭い制止の声に硬直する。
「ど、どうしたの?」
「下手に外に近づくな。こんな直線的な通りでトラックが横転するのはおかしい。たぶん、『あれ』が関係してる」
 言いながら星斗は隣の椅子に置いていた荷物を手に取り、立ち上がる。
 今だに手を掴まれたままの僕は、咄嗟に自分の分の荷物を持った。星斗は焦った足取りで僕の手を引きながら店の入口へと向かう。
「ちょ、星斗! 『あれ』って何!?」
 相当焦っているのか、星斗は僕の問いに答えてはくれなかった。
 でも――すぐに星斗が『あれ』と呼んだ物の正体を、僕は知ることになる。
 喫茶店の入口は同じように外に出ようとしている人で混雑していたけど、星斗はそこを上手くすり抜けて外へ出た。そして、事故現場に向かう人達とは違い、事故現場から離れる方向に向かって走り出す。
 ちらりと見た事故現場は酷いものだった。ガラスが散乱し、何人かの人が倒れている。ところどころに見える赤い『何か』は血だろうか。
 ただ、僕がそれらを見たのは一瞬だけだった。なぜなら、自然と視線が別のモノに引き寄せられたからだ。引き寄せられたというよりも、それは圧倒的な存在感を持って、僕の視界を占領したという方が正しい。
「なに、あれ……!!」
 思わず叫んでしまったのも仕方ない。
 僕の目に映っていたもの、それは。

――空中に浮かぶ、体長数メートルはあるだろう、巨大なクラゲ。

 それは現実にはあり得ない、異常な存在だった。
 海には二、三メートルくらい……いや、もっと大きなクラゲもいるかもしれないけど、空中に浮かぶことからして普通のクラゲではあり得ない。その上、大きさは五メートルはあるだろう。丸い球体が空中を漂っている様は、バルーンが浮かんでいる様子に似ていたけど、浮き方は本物のクラゲが水中に浮かんでいる時のように傘みたいなひらひらした部分が動いて浮いているようだ。
 それにやけに触手みたいなものが長い。それらは運動会で使われる綱引きの縄ほどの太さで、最低でも二十メートルくらいの長さはあった。その触手はトラックが突っ込んだ店の中に入り込んでいて、何かを探っているように動いている。
 まるで怪獣映画のような情景だったけど、奇妙な点はもう一つあった。
 事故を見物しようと事故現場に近づいている人たち。その誰もが、明らかに目立つクラゲに視線を向けていないのだ。みんな横転したトラックや店の中を覗き込んでいて、すぐ上に浮かんでいるクラゲには反応していない。
 そのことに気づいた僕は、星斗に手を引かれて走りながら、ある存在のことを思い出していた。
 僕がシェルちゃんと同化してすぐ、河原で襲ってきたイソギンチャク。思えば、あれも異常な存在だった。
 ひょっとしたら、このクラゲはあれと同じような存在なんじゃないだろうか?
 あの時は自分に起きている状況を把握するので精一杯で、あのイソギンチャクについては何もわからないままだった。
「ね、ねえ星斗! あれはいったい」
「いいから走れ! 俺もよくはわからねえけど、なんでか『あれ』は――」
 そう星斗が答えた時、僕はなぜ星斗がこんなにも焦ってこの場を離れようとしているのか理解する。

――空中に浮かぶクラゲが、僕達に向かって移動を始め、その長い触手を伸ばして来ていたのだ。



~14へ続く~

Comment

No.151 / 名無しさん [#-]

突然襲って来た謎のクラゲ
彼等はやつにどう立ち向かうのかッ!

次回ッ!死神輪b(うぼぁ

2009-03/04 20:01 (Wed)

No.152 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

 次回予告的なコメントありがとうございます(笑)。
 もう次の分はほとんど書けているので、近日中にアップできると思います。

2009-03/06 13:08 (Fri)

No.155 / toshi9 [#YK3S2YpI]

空中にクラゲですか、これはかなり怖い(笑
さてその正体は?戦うしかないのか?
楽しみですね。
ということで、遅くなりましたが読ませていただきました。

2009-03/07 09:04 (Sat) 編集

No.158 / 光ノ影 [#-]

遅くなろうが構いません。むしろありがとうございます。
クラゲの正体については次で大体判明します。ほとんど掻き終わっているので今日中、あるいは明日にはアップできると思います。

2009-03/07 17:53 (Sat)

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