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『私の名前はまだない』 第一章

この話は『黎明境界』にて公開していた作品のまとめです。
ジャンルは雌犬化、便利道具、常識変換、女性視点などです。

それでは、続きからどうぞ。
『私の名前はまだない』 第一章



 私がオフィスでデータをパソコンに打ち込む作業をしたいた時のこと。
「古早先輩。XP-345版の資料なんですけど……どこにありましたっけ?」
 そんな風に、新人の久川くんが訊いて来た。私はパソコンから顔を上げ、彼を見る。彼はその純朴そうな顔にすまなさそうな表情を浮かべている。憎めない性格というのが適切かもしれない。
「XPシリーズ? それ関連の書類なら、そっち側の棚に入ってると思うけど」
 オフィスの壁際にそびえ立つ大きい棚を示す。最近の仕事に必要な書類は大体そこに収められているはずだった。資料によっては、別室の資料庫に行かないといけない場合もあったけど、XPシリーズの資料ならそこにあるはずだった。
 久川くんはその棚を見て、その膨大な量を実感したのか、途方に暮れたように再度こちらに向き直った。
「あ、そうなんですか……すいません、どの辺りでしょう?」
 フロアの壁一杯の棚に入っている資料の量は、確かに半端じゃない。だから途方に暮れるのもわかるのだけど。
「背表紙を見たら大体わかるでしょう? ……もう、仕方ないわね」
 私は椅子から降りて棚の方へ向かう。久川くんの顔を見上げて、ついてくるように手で指示する。
「すいません、先輩。お手数おかけします」
「全く。少しは自分で探してから聞きなさいよ。えーと、XP-345だったわね……」
 私は覚えている範囲で棚の範囲を絞り、棚に入っているファイルの背表紙を見る。その棚は、XP-200番台が一番下に来ていた。
 つまり、345版の資料は横の棚にずれて……一番上辺りにあるということになる。
「…………」
 私は棚の上の方を見上げ、その辺りから300番台が始まっていることを確認する。
「…………あった」
 そのさらに下の辺りに、345版の資料が入ったファイルを見つけた。それを見つけた私は、まず棚のガラス戸を開いて、そしてそれに向かって手を伸ばす。
「…………くっ」
 精一杯背伸びをしたけど、棚の上の方に私の指は届かない。私の動きから、伸ばした指の先に345版のファイルがあることに気づいた久川くんが、私の頭の上を越えて手を伸ばし、その資料を手に取る。
「ああ、これですこれ。ありがとうございます。先輩」
 必要以上にニコニコとした笑みで、久川くんが言う。その笑顔は『資料が無事に見つかった』ということに喜んでいるだけではない。そのことは聞かなくてもわかる。私と関わった者がよく浮かべる笑みの一つだったから。
「……ずいぶん、楽しそうじゃない」
 高い位置にある久川くんの顔を睨みつける。必然的に上目使いになってしまって子供っぽい仕草になっていることは理解していたけれど、抑えることが出来なかった。
 案の定、久川くんはニコニコとした笑顔を崩さず、私を見下ろしている。
「そんなことはないですよ?」
「……はぁ。もういいから、さっさと仕事に戻りなさい」
「はい、ありがとうございました!」
 そそくさと逃げ出す久川くんの背中を軽く睨みながら、私は溜息を吐く。
「私だって……好きでこんな小さいんじゃないっての」
 ちょうど棚のガラス戸に、自分の姿がうっすらと映っていた。
 その自分の姿を見て――正確には写っている鏡像の小ささを見て――私はもう一度溜息を吐いた。

 140センチにも満たない小柄な私にとって、この世界は大きすぎた。




 身長が140センチにも満たない私は、特別な病気でこうなっているというわけではない。単に遺伝だった。
 実際父親は160に届いていなかったし、母親はさらに低くて150に満たなかった。その間に生まれたのだから私がある程度低くなるのは必然だった。出来れば、マイナスとマイナスをかけたらプラスになるように、私の身長は高くなってくれれば言うことはなかったのだけれど。
 でも、私はこの低身長をそこまで嫌っていると言うわけじゃない。
 確かに不便ではある。日常的な行動をする時もそうだし、年齢不相応な身長と年齢相応なスタイルに合う服を探すのは一苦労なんてものじゃない。満員電車では人に押しつぶされそうになるし、毎日会社に着ていくスーツなどは、どの店を探してもなかったから特注で仕立てて貰ったものだ。せめて人並みの身長があれば、と思った事は数えきれない。
 けれども、この小さな体は確かに両親の血を引いている証。両親は私が中学に上がってすぐに交通事故で亡くなってしまった。だから、私は普通の人より両親との繋がりを意識している。
 だから二人から受け継いだとも言えるこの低身長は、不便ではあっても不快なものじゃない。
 それに低身長を除けば、私の体はそれなりに誇れるものなのだから。出るところはきちんと出ているし、締まるべきところはしっかり締まっている。肌の艶や髪の質だって日本人の美しさというのがしっかり出せている。学生の頃には言い寄ってくる男子に困ったことはない。……大人になってからは逆に皆無なのはおいておいても! 十分に自身を誇れるだけの事実と実績はあると思っている。
 小柄なのは変わらないけど。




 この小さな体について、人に何か言われるのは慣れている。
 居酒屋などでは絶対に年齢確認を求められるし(飲んでいる間も常に免許証を机の上に出しておかないといけない。店の人間全員に確認されてしまう)、自動車を運転していたら白バイに呼び止められて免許の確認をされたこともある。子供扱いされることは数え切れないけど、それはほとんど受け流すようにしている。キリがないし、私の体が子供みたいに小さいのはどうしたって事実だから。
 とはいえ。
「ジュリちゃんジュリちゃん~、お姉さんの膝の上においで~」
 そんな風に言われたら、さすがに何事もなかったように受け流すのも難しいと言うものだ。
 私は自分の正面に座って両手を広げている相手を軽く睨みながら、手にしていたコップの中身を口に流し込んだ。甘ったるいアルコールの味が喉を刺激する。コップを机に戻す際、わざと大きめに音を立てた。
「嫌よ。七美は私と同い歳でしょ。誰がお姉さんよ」
 たまに会うとすぐに私を子供扱いしてくる高校時代の友人の七美は、子供のように頬を膨らませて不満を表す。これじゃあ、どっちが子供だかわかったもんじゃない。
 七美はかなり明るい性格の明るい美女だ。蓮っ葉なところがあって、仕事の後輩たちには姉御と呼ばれて慕われているらしいし、それも道理だろう。スタイルは抜群に良い。ちょっと酒癖が悪いところを除けば、性格的なところも非常にいい。
「もー、ジュリちゃんってば、つまんないんだからー。甘えていいのよ~?」
 堂々と両手を広げて、ハグを求めてくる七美。
 私は横を向いてそれを無視するが、七美は手を広げたまま「ほらほら~、おいでおいで~」と繰り返す。その様子を私の隣から見ていたもう一人の友人の風葉が、私の方を見ながら呟いた。
「……樹理ちゃん。やらないと七美ちゃんはいつまでもうるさいと思う」
 私より七美と長い付き合いの風葉が言うことだから、それは間違いないことだった。……まあ、これまでもずっとそうだから風葉に言われなくてもわかっているんだけど。
「ここは、犠牲になると思って……膝の上に座ってあげて。そのために座敷の個室にしたんだから……」
 この店を予約したのは風葉だった。
「犠牲って……というか、座敷で個室なのはそのためだったの……あのねえ、風葉。あまり甘やかすと七美のためにならないわよ」
「……だいじょうぶ。私はいつも七美のことを考えてる」
 何が大丈夫なんだろう。
 相変わらず高校の時からまるで変わらない陰気さで風葉は言う。
 陰鬱な表情を浮かべている彼女だけど、それを上手く誤魔化す術を知っていた。昔は私や七美は見抜けていたけど、いまでは私たちの目から見ても彼女はミステリアスな雰囲気を持つ女性にしか見えなかった。腰に届くほど長い黒髪はボリュームも多く、日本人形的な不気味さを感じさせるものだったけど、それを綺麗に見せる編み込みが絶妙に施されていた。
 この二人を見ているとちゃんと会社で働けているのか心配になる…………私も二人に同じような印象を持たれているのは知ってるけど。
 私は一つ溜め息を吐き、コップを持ったまま席を立って七美の側へ移動する。そして彼女の膝の上に腰を降ろした。背中越しに七美が驚くのを感じる。
「ありゃりゃ? 今日はやけに簡単に折れてくれたじゃない?」
 座れと言った張本人が不思議そうな声を発する。私はもう一度溜め息を吐きながら応えた。
「仕事で疲れてるのに、これ以上疲れたくないのよ」
 背を向けている私には見えないけど、七美がにやりと笑ったのが何となくわかった。後ろから腰に手を回して抱きつかれ、頭をわしわしと撫でられる。
「ほんっと、ジュリちゃんってちいちゃくて可愛い~! うりうりうり」
 髪の毛が乱れることも構わず、七美が私の頭を撫で回す。飼い主に撫でまわされる犬の気持ちが少し分かった。セミロングで切りそろえている髪がぐしゃぐしゃになる。あとで七美には責任を取って整えてもらわないといけない。
 撫でられながら、私は手にしていたカクテルを喉に流し込む。
 なんだかんだ言って、この二人と飲むのは楽しい。気兼ねしなくていいし、よく知っている相手だから信頼も出来る。酒に酔った振りをしてもたれ掛かって甘えることも出来る。
 早くに両親を亡くした私にとって、誰かに『甘える』ということは一番安らぐことだった。
 普段は一人でもちゃんとしなければ、という意識が邪魔をして出来ないことだけど、気の知れたこの二人の親友に対してだけは気を抜ける。酒に酔った振りはきっと二人には見抜かれているだろうけど、それを含めて私は二人に甘えているのだった。




 程よい酩酊感に浸りつつ、私は家まで辿り着いた。今日は警官に呼び止められることがなかったからいい日だ。
 私はマンションに独り暮らしをしている。両親が亡くなってからはずっと祖父の家にお世話になっていたけど、一年前に祖父が亡くなったのをきっかけに祖父の家は売りに出し、私はこのマンションに引っ越した。祖父の家を手放すのは嫌だったけど、古い家であり、セキュリティに不安が多かったため止むを得なかった。維持費も結構大変だったし。
 兄弟も親戚もいないため、私は現在完全に天涯孤独だ。とはいえ、七美や風葉のような親友もいるし、仕事の上司や部下にも恵まれている。そこまで不幸であるという感覚はなかった。
 鍵を開けて靴を脱ぎ、家にあがるとようやく帰って来たという実感が湧いて一息つく。
「まず、お風呂入ろう……アルコール抜かないと」
 私はそれなりだったけど、七美や風葉は相当な量を呑んでいたし、体は相当酒臭いはずだ。お酒を呑んですぐお風呂に入るのは良くないけど……いまはもうそれなりに時間が立っているから、程良く酔いを醒ますことが出来るだろう。
 仕事帰りに二人に呼ばれたから、私はいつものスーツを着ていた。それを脱いで適当な場所に吊るし、消臭用のスプレーを吹き掛けておく。スーツは特注だからかなり高くついている。家計も貧乏とまでは言わないが余裕がすごくあるとはいえないし、こういうものは大事に着回してなるべく長持ちするようにしなければならない。
 スーツの処置を終えた後、ふと壁のカレンダーが目に入る。そのおかげで今日が金曜日であることを思い出した。そもそもだからこそ呑みに行ったんだから。
「……そっか、今日は金曜日だった」
 金曜日は『あること』をしてもいい日。自分で決めたルール。そのことを思い出した途端、心臓の鼓動が速くなった。お酒が入っているせいか、あっという間に身体が火照り、興奮が沸き上がる。
 あまりに興奮しすぎていることに、頭の冷静な部分が気付く。ゆっくりと深呼吸をして、まずは冷静になることに努めた。
「とにかく……準備をちゃんとしないと」
 私は玄関の鍵がきちんと閉まっていることを確認し、チェーンロックもかけた。それから窓を一つ一つ点検して、鍵が空いていないか、カーテンが隙間なく閉まっているかを確認する。
 異常がないことを確認したら、次は部屋を整える。一番肌触りのいい布団のシーツを用意して敷いておき、空調を操作して一番過ごしやすい温度にする。布団の傍に道具も置いておいて。
 これで準備は完了。
「さて、と……お風呂入ろう」
 足取りは自然と軽くなる。脱衣場に来た私は、着ているものを全て脱ぎ捨てて風呂場へと入った。熱いシャワーを頭から浴びて酒気を飛ばす。よく石鹸を泡立て、念入りに身体を洗っていく。酒気と一緒に一日で掻いた汗も洗い落ちて、ずいぶんすっきりした。
 お風呂でさっぱりした私は、脱衣所に出るとまずは髪の毛を乾かして行く。大きなバスタオルを使って大まかに水気を拭い、体の方もざっと拭く。それからバスタオルを体に巻き付け、ドライヤーを使って髪をちゃんと乾かす。湯冷めして風邪を引いたら、独り身の私には辛いからこの作業は念入りにしないといけない。
 ドライヤーと併用して小さめのタオルも使い、念入りに髪を乾かす。しっかり乾いたのを指先で調べてから、ドライヤーを片付ける。
 普段ならここで下着やパジャマをきっちり身に付けるのだけど、今日はそれを省略。
 裸にバスタオルを巻いただけの格好で部屋に行く。普段なら絶対にあり得ない格好で、部屋までの短い道のりを歩く。家の中ではいつもラフな格好で歩き回る人なら、なんて言うことはないことだろうけど、普段は家の中であってもだらしない格好をしないようにしている私にとっては、ものすごく特別なことだったし、心臓が張り裂けそうなほどドキドキすることだった。
 ベッドのおいてある部屋まで来た私は、部屋の扉を閉めて鍵もかけ、バスタオルを部屋に入ってすぐのところで落とす。
 自分以外に誰もいないことはわかっていたけど、部屋の中で素裸でいるというその事実だけで、私が興奮するのには十分なことだった。
 なんとなく必要以上に身体を小さく丸めながら、私はベッドの方へと歩く。そしてそのふかふかのシーツの上に体を投げ出した。
 素肌と柔らかな布が擦れる感覚。それは自分が裸であるということを強く自覚させる。
 寝返りを打ってベッドの上で大の字になった。体の前面や股間の一番敏感なところに僅かな風が当たる感触に脳が痺れる。
「ふわぁ、っ……ぁ……きもちいい……」
 この、全てのしがらみからから解放されたような強い開放感は、何度経験しても慣れることはなく、自然と『気持ちいい』と感じられることだった。
 普段は自制している『あること』――それは、いわゆる『自慰』という物だった。一週間に一日だけ、金曜日の夜にだけ解放するその行為は、うっかりすると病みつきになってしまうほど気持ちよくて。私にとっては親友に甘えることに次ぐストレス解消法だった。
 一週間溜めこんでいた性的な衝動を解放するべく、私は手を動かす。
 手を身体の上で這わせ、自分が素裸でいることを強く意識する。ゆっくりと乳房に触れ、小柄な身体にしてはかなり大きなそれを優しく揉んでいく。這い上がってくる快感の波に、私は歯を噛み締めて堪えないといけなかった。でも、声を上げるのは、まだ早い。
 片方の手はお腹やふくらはぎを触って、裸であることを意識する足掛かりにし、もう片方の手では執拗に乳房を触る。そっと先端に指をあてがうと、それだけでぴりぴりとした感覚が走った。
「んっ…………」
 声を押し殺し、乳首を指先で摘まむ。軽く力を込めて抓った。
「ふぁああっ!」
 そうすると、いままで以上に激しい快感が走って思わず、声が零れてしまった。いつもの自分の声とはまるで違う、鼻にか かった甘い可愛らしい声。自分で上げたその声が、凄く恥ずかしくて、顔が焼けるように熱くなっていた。
「はぁ……はぁ……」
 一度クールダウンをするために、どこも弄らず、手を動かさず、暫く動かないでいた。
 けど、裸であるという感覚は消えてなくなることがなく、僅かな室内の空気の動きが、それを意識させてくる。
 胸は触らなくても、先端が痛いほど硬くなっていることがわかったし、あそこは、まるで湯気が昇っていてもおかしくないほどに熱を感じていた。触りたくて仕方ない。手で触れて、指を突き入れて、掻き回したい。
 そんな甘い誘惑が湧きあがってくる。まるで自分の頭の中に、もう一人の自分がいるかのよう。その自分は「早く早く」と私を急かす。 自分の中にそんな衝動があることが、なんだか意外に思える。その誘惑をなんとか堪えて、私はベッドのすぐ傍に準備しておいた瓶を手に取った。
 それはインターネットで購入した『大人のおもちゃ』の一つで、ローションと呼ばれるもの。これを使うと、普通に触るより何倍も気持ち良くなれる。
 私は寝転がったまま、そのローションの瓶を開けて手の平の上にそれを取り出す。粘りのあるその液体は、私の指と指の間で糸を引いていた。適量を掌に出したら、瓶は置いて、両手を使ってそのローションを刷り伸ばしていく。思い切って、その手で二つの乳房を同時に掴む。
「ひゃッ!」
 熱を持った身体に、そのひんやりとしたローションの感触は刺激が強過ぎた。ビクビク、と身体が勝手に跳ねてしまう。心臓麻痺が起きないかちょっと心配になったくらいの温度差の衝撃だった。
(あ、危ない危ない……落ち着いて……)
 これくらいなら大丈夫だろうけど、万が一この状態で死んだら恥ずかしいなんてものじゃない。死んでるのに死にたくなる。
 暫くじっとして、ローションが体温に馴染むのを待つ。やがてじんわりと体温がローションに移り、そして今度はそれが触れている部分が熱く感じられるようになってきた。
「っ、うぅ……ぁ……っ」
 快感の炎に炙られているような心地だった。ゆっくりと手を動かすと、何もなしで触れた時より、肌の感度があがっているような気がした。ローション独特の、触覚に直接作用するような感じが私は好きだった。
 先程と同じように胸を揉んでいるつもりなのに、ローションがそこに介在するだけで全然違う感触になる。そしてそれはとても気持ちのいい方向への変化だった。
「んぁっ、はぁっあう、ああっ……んっ!」
  意識が快感に浸食されていく。快感を求めるあまり、身体が自分の意思とは別に動いているような気がしてくる。動かそうとしてないのに、動いている。それは予想できない不可思議な動きのように錯覚させ――手によって与えられる快感に私の意識が翻弄されていた。
 先程のように乳首を摘まもうとして、ローションのせいで摘まめない。代わりに、するり、と指が表面で滑ることで、摘まむのとはまた別種の快感が湧く。ローションに塗れながらも、乳房の先端にある乳首が、硬くなって存在を主張しているのがわかる。
 ゆっくりと、右手を胸からお腹、そしてさらに下へと滑らせていく。ローションのおかげで、その動きは普通より遥かに容易かったし――同時に通った後にはその筋が残り、そこを嫌でも 意識せざるを得なかった。そうして、私の右手はその茂みへと到達する。人と比べたことがないからわからないけど、人並みには生えているであろうその恥毛に、ローションが染み込み、しっとりとした感触へと変化していく。
 左手で胸を揉み、右手は恥部を探っている――自分の格好を客観的に想像してしまった私は、かっと頬が紅くなるのを感じた。それでも手は止まらず、恥ずかしいという想いを置き去りにして、手は快感を求めて勝手に動く。
「っ、……ぅ、ん……っ、あっ……ああ……ん……ぁ……ふぁ、あ……っ」
 つぷり、と右手の指が割れ目へと入り込む。外から中へ物を受け入れる感覚が身体を這い上がってくる。声が漏れそうになるのを、必死になって堪えた。それでもどうしても声は漏れ、熱い 蒸気のような息を吐いてしまう。
 指先に意識を集中し、さらに奥へと、中へと進む。
 指の第一間接まで埋まると、そこの中の熱さで指が溶けてしまいそうだった。そんなあり得ないことを思ってしまうほど、その中はすごく熱くて、ドロドロしていた。
(すごい、濡れてる……)
 ローションを付けるまでもなく、その中は濡れていた。十分以上の潤滑油の役割は果たしてくれるだろう。
 その感触を覚えるにつれ、中をいじってしまいたい気持ちはさらに増した。けど、中は弄らない。というのも、私はまだ経験がなかったからだ。別に初めてに殊更こだわる気はないけど、自慰で喪失するのは違う気がする。違うというか、負けた気がする。だから少なくとも自慰の時にそこを破らないように注意はしていた。
 外側を撫でて間接的な刺激を与えつつ、私は私にとってのメインの場所に指を這わせた。そこは割れ目の少し上、クリトリスと呼ばれる場所だ。
「っ……」
 直接触れているわけでもないのに、強い快感が沸き上がる。触れるか触れないかの位置で指を動かすだけでも、程よい快感が生じる。
 暫くそうやっていると、徐々にその場所が熱をもって存在を主張し始めた。あそこの方は体内で高まった快感のおかげですっかりいい具合に出来上がって来ている。
 私はその場所を覆う皮を捲り、クリトリスを露出させる。それだけで、外気が触れただけで背筋が泡立った。
「ゃっ……!」
 思わず漏れた声は普段の私からは有り得ないほど弱々しく、甘い声。それがまた自分を解放しているような気分にさせてくれて、とても気持ちのいい感覚が走る。
(……もう、我慢出来ない……っ)
 理性が振り切れ、慎重にさわっていた指を勢いよく動かす。十分以上に感覚が高まっていたクリトリスを摘まんだ。
「…………っっっっ!!」
 声が出そうになった私は、咄嗟にうつ伏せになって、枕に顔を押し付ける。柔らかなそれに顔がうまるようになって、上げた嬌声は全て枕が吸収してくれた。そうしていなかったら他所に聞こえてしまっていたかもしれない。それくらいの声をあげてしまっていた。
 でもまだ体は落ち着いてくれない。私は枕が声を吸収してくれることを信じて、さらに指を動かして快感を貪る。
 膝を立てて腰を浮かし、手が動きやすいようにしておく。胸がシーツにおしつけられ、潰れて少し苦しかった。顔を枕に押し付けるということは呼吸も苦しくなるので、二重の苦しみが私を襲う。けれど、その苦しみは逆に快感を与えてくれてもいた。
 頭がぼんやりとして、快感だけが鋭く響く。
「っ、ぁ、くぁっ、ぅあっ……!」
 あとはもう無我夢中で快感を貪るだけだった。
 一際強い波が生じて通りすぎてようやく、私の体は止まってくれた。嵐に翻弄される木の葉の気分を余すことなく味わった。
「はぁ……はぁ……」
 私は倒れこんだまま暫く動けなかった。獣のように体を丸めて、心地よい倦怠感に身を任せる。このまま眠ったらきっと気持ちいいのだろう。
(起き、なきゃ……片づけ……ないと……)
 そう頭の端で思うものの、体が動いてくれなかった。そのうちに、睡魔が襲ってきて、抵抗は諦めた。空調を稼働させているので風邪を引く心配はない。電気代か気になりはするけど、一日くらいなら問題ないはずと開き直った。
(…………後片付けも、明日ね)
 そう思ったら一気に睡魔が意識を侵食していった。私は幸せな気分で目を閉じる。


 翌朝、ベッドの上で裸で目覚め、冷静になった頭で昨夜のことを思いだし、赤面してしまうのだけど、それも含めて一週間に一度のお楽しみは私にとって最高の娯楽のひとつだった。
 後片付けに動きながら私はいつも思う。
 後のことや先のことを考えず、ただ気持ちのよいことだけを考えて、生きていければいいのに、と。
 けれど、それは叶わない願いだ。彼氏ができたってそこまでしてくれるような、尽くしてくれる人がいるとは思えない。いたらそれはそれで嫌だし、私だってそれでいいとは思っていない。
 全てを誰かに任せて生きていくことを許されるのなんて、幼い子供か、介護が必要なご老人か、あるいは――ペットくらいのものだろう。いくら私が小柄とはいえ、幼い子供のようにはいかないし、介護が必要になるのはずっとずっと先の話だ。
 下らない考えを放棄して、私は今日の休みをどうやってすごそうか考える。

 最後の可能性について私は考えなかったし、そもそもそんな発想もなかった。
 けど、その可能性について思い付いていた時点で――私の未来は決まっていたのかもしれない。
 
 
 
 
その2に続く
 
 
 
 

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 以下、連載中の作品概要


『私の名前はまだない』
(MC物、ペット化、女性視点)
(最終更新日:2013/12/07)

『思い通りになる世界 ~forガール~』
(カオスジャンル、世界改変系)
(最終更新日:2016/02/28)

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