FC2ブログ
  1. Top
  2. » スポンサー広告
  3. » 『雑貨店へようこそ』
  4. » 雑貨店 ~人形~
  5. » 『雑貨店へようこそ』 ~人形~

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • ジャンル :

『雑貨店へようこそ』 ~人形~

この話のジャンルはMC系です。





 ようこそいらっしゃいました。

 この店は様々な物品を売る店です。
 色々な品物がございます、ぜひごゆっくりご覧になってください。
 おや、お客様、それに興味がおありですか?
 これはお目が高い。それはとてもよい品ですよ。
 商品の説明をさせていただきましょうか。

 その『人形』の使い方は――――
雑貨店へようこそ ~人形~




 島崎トワは、手紙で呼び出され、校舎裏の広場に来ていた。
 その場所は告白スポットとしてこの学校では有名で、こんなところに呼び出された以上、相手の目的は知れている。
 大体、トワはこの高校に入学して以来、この場所に何度も呼び出されていた。
「……もう、今度は誰よ。部活もあるのに早く来なさいっての」
 トワは水泳部のエースとして活躍しており、その整った容姿や竹を割ったような気持ちのいい言動で男女問わずよく好かれていた。
 多少物言いがきつい時もあるが、トワがきついもの言いをするときには大抵が相手に非があるときで、若干のマイナスにこそなっても、致命的な傷とまではいかない。
 結果的にたくさんの男子生徒から告白の嵐を受けているトワだが、水泳に命をかけているといっても過言ではない彼女は彼氏をいうものに興味がなかった。
 手紙を受け取った以上、呼び出しに応じないわけにもいかず、トワはここで待っているというわけだ。
 しかし、その相手が中々来ない。
 呼び出しておいて遅れるとは、とかなりトワは苛立っていた。
(たくっ……昨日はキャップがなくなったし……ろくなことがないわね)
 昨日、水泳の途中でキャップを外して休憩していたトワだが、風にさらわれたのか置いてあったはずのキャップがなくなってしまったのだ。
 周囲に荷物を置いていた水泳部員にも訊いてみたが誰もキャップを見ておらず、見つからなかった。
 そのせいで顧問の先生に管理不行き届きと怒られたのが一番腹立たしいことだった。
(誰か盗んだんじゃないかしら……でも、水着本体ならともかく、キャップを盗むってのもおかしいわよね……)
 仮に盗まれたのだとすれば、よほどの変態か……。
「あー、もう! さっさと来なさいよ!!」
 怒りのままに吠えるトワ。苛立ちは頂点に達しようとしていた。
 と、その時、校舎の中から一人の男子生徒が慌てた様子で走り出てくる。
「島崎さーん!」
 それもトワに向かって手を振りながら、だ。
 トワはその男子生徒が近くに寄ってくるのを待った。
 そいて、その顔に見覚えがあることに気づく。
(確か男子水泳部の……)
 あまり目立たない感じの部員だ。レギュラーでもなく、副部長や会計などの役職にもついていない至って普通の一般部員。
 顔は悪くないが、印象が薄いのですぐ忘れてしまう。
「……あなたが手紙の人?」
「は、はい――ぃ!?」
 息も絶え絶えの中、必死に頷いたその男子生徒は、頷いた瞬間、トワに胸倉を掴まれて情けない悲鳴を上げた。
「あなたねえ、人を呼び出しておいて遅れるなんて何様のつもり?」
 本気の怒りが籠ったトワの恫喝に、男子生徒は両手を上げて弁明する。
「すいません! 先生に雑用を押し付けられてしまって……断りきれず、こんな時間に……」
「……そうだったの」
 ぱっ、とトワは手を離す。
「それなら仕方ないわね。まあいいわ。さっさと要件を言いなさい。部活が始まっちゃうじゃないの」
「は、はい! あの、島崎トワさん! 俺と付き合っていただけませんか!? ずっと島崎さんの泳ぎを見てて、それで!」
 ベタに過ぎる告白の台詞だった。
 少なくとも、トワは三度ほど同じようなセリフを聞いた覚えがある。
 トワはため息を吐いた。
「悪いけど、私はいまのところ誰とも付き合うつもりはないわ。話はそれだけ?」
「ええ、もうちょっと考えてくださいよ!」
「大体三年間はこれで通してるから、今更考え直す必要はないわね。で? 話はそれだけなの?」
 にべもないトワの態度に、男子生徒は力なく俯いた。
 トワは少し申し訳なく思いつつも、考えを変えるつもりはなかったので沈黙を守った。
 もう少しくらいついてくるか、それとも潔く諦めるか。
 この男子生徒はどちらを取るだろうとトワは考えていたのだが。
 男子生徒の次の言葉はトワの予想とは違っていた。
「わかりました……この話は終わりにします。あと、もう一つ話があります……」
 男子生徒はポケットの中から、水泳のキャップを取り出した。
 トワの目が険しくなる。
「……それ、まさか、私の?」
「はい。昨日俺が盗りました」
 曲がったことを嫌う性質のトワの表情は、さらに険しくなった。
「……それで? まさか盗ったはいいけど、やっぱり悪い気がして返すってこと?」
 言いながらトワはキャップに手を伸ばしたが、男子生徒はその手をかわした。
 トワの眉がぴくり、と歪む。
「なんのつもりかしら? 私の我慢にも限界はあるわよ?」
 男子生徒は俯いたまま、ぽつりと言った。
「これは俺が盗りました――――だから、所有者は俺です」
 そして男子生徒が顔を上げる。
 一瞬、トワは背筋が凍るような思いがした。
 男子生徒の目。
 トワは、そこに狂気の光を見た。
 男子生徒の口が、ゆっくりと開く。

「そして、いまやお前自身もこの俺の『所有物』だ。島崎トワ」

 咄嗟に怒鳴ろうとしたトワ。
 だが、その喉が声を発することはなかった。
「――!?」
 声が出ないだけではない。体が、指の先端、爪に至るまで――動かなかった。
 男子生徒が低く笑う。
「無駄だ。お前の体の全ては俺の命令なくして動かない。『人形』とは、そういうものだろう?」
(あ、あなた、いったい私に何を……!!)
 理解できない現象が起こっていることに、トワは混乱する。
 自分の体が自由に出来ない不安と恐怖に、心が塗りつぶされそうになる。
 男子生徒はゆっくりとトワに近づいてきた。
 その手がゆっくりと伸ばされ、トワの髪に触れる。
「キャップを盗んだのは、髪が欲しかったからだ。お前自身を手に入れるために」
 そういう男子生徒の顔は、先ほどまでの純朴そうなものから、恐ろしい笑顔を浮かべる悪魔のようなものに変貌していた。
(何を……何を言ってるの?!)
「怖いか? 恐ろしいか? 安心しろ、誰が主人かわかれば、その恐怖は消えてなくなる……」
 男子生徒はまたポケットの中に手を入れ、『それ』を取り出した。
 それは『人形』だった。
 藁人形や泥人形のように不細工なものではない。
 それはまるで最新技術の粋を結集させて作られたような人形……今風にいえば、フィギアという言い方の方がしっくりくる人形だった。
 そして、そのフィギアは、大きさだけを変えた、島崎トワそのものだった。
 トワの心臓がどくん、と鳴る。
(な、なに、いまの感じ……)
 何か、変な気分だった。
 嫌な予感は治まらず、いますぐこの場から逃げ出したくなる。
 しかし、体は動かない。
 男子生徒はにやり、と笑った。
「この人形……買った時は唯の関節人形でな……デッサンの練習とかに使う木製の人形……って言ったらわかるか? それだったんだが、トワ、おまえの髪の毛をこの人形に入れたらこの通りだ」
 男子生徒は人形の手を持ち上げ、カタカタと揺らす。
 トワは、自分の手に生じた感覚に震えていた。
 男子生徒が手に持つ部分――そこと同じ場所に、何かに掴まれている感触があった。
(なに、なんなの!? いったい――)
「安心しろよ、別に恐怖を与えるのが目的じゃない。さっさと済ませてしまおう」
 男子生徒はトワの目の前に人形を突き付ける。
 トワの呼吸が止まった。
「『この人形はお前であり、お前はこの人形だ。そして、この人形は俺の物、だから――』」
 男子生徒は、核心の言葉を口にする。


「『この人形であるお前も、俺の物だ』」


 トワの中で、何かが壊れる音がした。
 いや、新たに築き上げられたというべきか。
 表情がうつろになったトワに向かって、男子生徒は畳みかける。
「お前は俺のもの――だから俺の言うことを聞かなければならない。わかるな?」
「……はい」
「お前は俺の所有物だから、どんなことをされても文句は言えない。わかるな?」
「はい」
「よし――それでは早速最初の命令だ。今日のクラブは休む旨を顧問に伝えたのち、いまは使われていない旧体育館裏に来い」
「はい」
「不自然に思われないように行動しろ、わかったな?」
「はい」
「よし、行け」
 頷いたトワは、くるりと男子生徒に背を向ける。
 次の瞬間、トワはいつもの表情を取り戻し、プールに向かって走って行った。

 男子生徒の忠実な人形になったという点以外は、いままで変わらない。

 だがそれは――大きすぎる違いだった。




~その2へ続く~



Comment

Comment Form
コメントの投稿
HTMLタグは使用できません
ID生成と編集に使用します
管理者にだけ表示を許可する

Page Top

Trackback

Trackback URL

http://kuroitukihikari.blog60.fc2.com/tb.php/5-b4ef4afe

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Page Top

カウンター
投稿先サイト
『小説家になろう』ノクターンノベルズ
(ユーザーページに飛びます)
運営サイト
暁月夜色
 どんなジャンルでもOKな投稿小説サイトです。お知らせには必ず目を通してください。

黎明境界
 自己満足小説の展示サイトです。
 注意事項には必ず目を通してください。
 以下、連載中の作品概要


『私の名前はまだない』
(MC物、ペット化、女性視点)
(最終更新日:2013/12/07)

『思い通りになる世界 ~forガール~』
(カオスジャンル、世界改変系)
(最終更新日:2016/02/28)

最新記事
カテゴリ
最新コメント
リンク
プロフィール

光ノ影

Author:光ノ影

連絡先は kuroitukinokage×yahoo.co.jp (×を@にしてください)

つぶやき
作品紹介
検索フォーム
FC2アクセス解析
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。