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『スライドール』 第七章

『スライドール』の第七章です。
それでは、続きからどうぞ。
 
 
 
『スライドール』第六章
 



 自分という存在について語ることは難しい。
 ゆえに、わたしは自分という存在についてを直接語らず、周りの者のことについて語ることで、婉曲的に自分を語ることとしよう。
 まず語るべきはなにより、わたしのパートナー・カエデという存在についてだろう。


 カエデというスライドールは戦闘狂である。
 これは自他ともに認めることであり、カエデはそれを誇りにしている節さえある。戦闘狂であることを誇るというのはどうかと思わなくもないが、それでこそカエデというべきだろう。
 彼女は遠距離攻撃も存在するスライドールの戦闘スタイルの中で、あえて格闘術を選んだ。それが一番戦っている感覚が強いという理由だというのだから、どの程度戦闘狂なのかということはよくわかるだろう。
 カエデが使用しているボディは格闘術を使用するにしては小柄だ。スライドールのボディは一般的に十代半ばくらいの体格を模しているが、その中でもカエデのボディは小さい。体つき自体も華奢で、決して格闘に特化しているとは言い難い。それでもいまのところ無敗を誇るのだから、カエデの技術自体が非常に優れたものであることは間違いない。
 なお、カエデは好んで格闘術を使うが、別にそれだけしか出来ないというわけではない。剣も銃も扱いこなすセンスを持つ。パートナーとしては非常に心強いことこの上ない。
 基本的にスライドールは出番がない時は自由にすることを許されているが、カエデは特別自由にすることを許されている。それだけオーナーに信用されているというか、戦闘狂ゆえに下手なことはしないだろうという風に思われているのだ。
 だから今日もカエデはのんびりと廊下を目的もなく歩いていた。
 セミロングの金髪と、フリルのついた赤いワンピースの裾が揺れている。いまの状況だけを見ればとてもカエデが戦闘狂には見えない。カエデの元の体はそういう服装が似合わなかったらしい。そのため、カエデは普段そういう服装を好んで着込む。
 そういう辺りは不思議と乙女らしい。
 わたしはそんなカエデの背後から近付く。声をかける前にわたしの気配を察知したのか、カエデが振り向く。その血のように赤い瞳がわたしを捉えた。
「ん……? なんだお前か。何か用か?」
 カエデの目がわたしを見下ろしている。
『いや、特に用事があったというわけではない。たまたまカエデを見かけたから背後より忍び寄ってみただけだ』
 そう応えると、カエデは面白そうに目を細める。
「はっ、なんだそりゃ? いいけどよ。あんま不用意に近付いたらわかってるよな?」
 カエデはにやりという笑みを浮かべる。
『気をつけよう』
 下手に近付けば反射的に破壊されかねない。それはよくわかっている。
 それはさておき。
『どこに行くんだ? 同行しても構わないか?』
 カエデは不思議そうにしながらも、わたしの提案を拒まなかった。
「オーナーんとこだよ。付いて来たいんだったらお前の好きにしろ」
『感謝する』
 基本的にカエデはわたしのことを拒むことはない。カエデにとって拒む必要もない程度の存在だというだけのことなのだが、わたしはそれでいいと思っている。
 カエデと並んで歩き出す。カエデはわたしと歩く時も特に歩調を変えたりはしない。あくまでマイペースに歩き続ける。わたしはカエデに合わせて少し歩くスピードを速めた。
『オーナーのところに何の用なんだ?』
「別に用なんかねーよ。なんだよ、用がないと行っちゃだめなのかよ?」
 言葉だけで判断すると怒っているように感じるが、カエデの顔は笑っている。
『いや、構わないだろう。恋人の元に行くのに理由はいらないからな』
 ジョークを言ってみると、どうやら正解だったらしく、カエデは楽しげに笑った。
「お前もちょっとは言うようになったじゃねえか」
 最初のうちはカエデが喜ぶノリがよくわからなくて、理不尽に殴られたものだ。懐かしい記録である。
 カエデは腕を組んで少し不満げに唸った。
「まぁ、あいつも忙しい奴だからなぁ。行ってもつまんねーことの方が多いんだけどなぁ。でも、傍にいるだけでも嬉しいっつーことはあるよな」
『羨ましいことだ。カエデは乙女だな』
 そうジョークのつもりで口にした。カエデは笑みを深くする。
「なーに言ってんだ、よっ!」
 言葉と共に繰り出された蹴りは、空気を切り裂く音がするほどに鋭かった。
 跳んでかわさなかったら脚部が破壊されていたことだろう。カエデなりの照れ隠しだということは理解できるが、それで破壊されてはたまらない。
 幸いカエデは激情家だが感情を後に引くタイプの人間ではないので、すぐに元通りになった。
「全く、こんな私に対して何言ってんだか」
『すまない。不用意な発言だった』
「さっさと行くぞ」
 カエデはオーナーの部屋に向かって歩き出した。
 エレベーターに乗って上階に昇っていく。カエデは何でもないことのようにエレベーターを使っているが、実際エレベーターの使用権限は通常のスライドールにはない。通常のスライドールは許可が無ければ特定の階から動くこともできないのだ。
『この時間帯であれば、オーナーも忙しくしていないだろう』
「私に構ってくれりゃいいけどな。あいつ、暇なときでもなんだかんだやることがあったりして忙しそうだからなぁ」
 上階に着いてエレベーターから降り、オーナーの執務室に向かう。
 カエデはノックもなしにそのドアを開けた。これも普通のスライドールならあり得ないことだが、まあ、カエデだから構わない。
「ちぃーす。オーナー、暇ー? 一発やろうぜ☆」
 不必要なほどに明るくカエデが室中に向けて呼びかける。それに対し、大量の書類を処理していたオーナーは苦笑いを浮かべる。
「そこまで色気もなにもない誘い方をされると、対応に困りますね」
 オーナーの本名はわからない。通称しか公表していないからだ。
 そしてわたし達のように彼に所有されている者はオーナーとしか呼ぶ必要がないので、通称で呼ぶこともない。
 ちなみにオーナーは裏のスライドール所有者の中では、世界で最大規模の勢力を誇る。通常所有するスライドールは一人十数体というのが相場だが、オーナーは五十近くのスライドールを常に確保している。無論、その中には試合で敗北して戦えなくなったスライドールも含むため、実際に試合に出せるスライドールは三十体がせいぜいだろうが、それでも破格の数であることに代わりはない。
 元は実業家で、有り余るほどの資産を使って裏の世界に参入してきたという話だが、わたしの参照できるデータベースにはそれ以上の詳細な経歴は載っていなかった。
 年齢は三十代前半……あるいはもっと若いかもしれない。その辺りの詳しい年齢も不明だ。
 謎の多い人間ではあるが、割と常識人であるとわたしは捉えている。裏の世界でスライドールを使った怪しげな興業を行っている時点で常識的かどうかは怪しいところだが、そこはおいておくことにしよう。
 カエデはそんなオーナーの常識的な対応に不満そうだった。
「えー、一発やればいいだけじゃん。暇だろ?」
 カエデは机を回り込んでオーナーの背後からその腕を彼の首に絡めた。一瞬首を締め上げる気なのかと予測してしまったわたしの思考を責められる者はいないだろう。もちろん、実際にはカエデは恋人に甘えるように腕を絡めただけで締め上げたりはしない。
「暇じゃないですよ。急いで処理すべき案件がいくつも溜まってるんですから……」
 オーナーがやるべき仕事は多い。それはカエデもよくわかっていることだが、それでも不満は募るだろう。わたしはオーナーの執務机の前からオーナーに呼びかけた。
『オーナー。単純な処理作業ならばわたしがやろう』
 声をかけるまでわたしのことに気づいていなかったのか、少しオーナーは驚いたようだった。
「おや……? なんだ、あなたも来ていたんですか」
 オーナーはしばらくわたしを見ていたが、いくつかのデータチップを分類して机の端にずらした。
「ではこれらのデータを処理しておいていただけますか? これらの案件は単純な処理作業ばかりなのであなたにお任せできると思います。それと、不要なデータの処理を。その間休憩させていただきますから」
 休憩という言葉がその言葉通りの休憩というわけではないだろう。カエデの表情が輝いた。
『了解した』
 わたしは前足をオーナーの執務机の端にかけ、頭部を机の上に乗り出した。データをスキャンするための機能は鼻先に付いているので、データチップを処理しようと思うとこうしなければならないのだ。
「では、よろしくお願いしますね」
 オーナーはわたしの頭部を撫でる。犬に対する手つきだったが、仕方あるまい。

 実際、わたしのボディは犬を模した形をしているからだ。

 わたしはスライドールではなく、犬型ロボットの一種だ。オーナーがカエデのパートナーとして開発した。カエデは戦闘狂であるがゆえに、人型だと敵も味方も関係なく蹂躙してしまう。その点、犬型であるわたしならば無視される。カエデのパートナーは普通のスライドールには勤められないのだ。
 わざわざ犬型のロボットを作ってまでパートナーをあてがわなくてもいいのではないかと思うが、その辺りにはわたしには知ることのできない様々なやりとりがあったと聞く。まあ、知ることのできないことならば知る必要もないことだろう。
 わたしは早速オーナーが分類したデータチップの解析にかかる。内容を参照してみると、どうやら活動不可になったスライドールの本体についての処理についてのデータが詰められているらしい。消去対象のデータチップにはそのスライドールの人格データが入っている。
 オーナーがカエデと共に執務室の隣にある休憩室へと向かう。
 わたしは一人、執務室でデータの処理を続けた。




 ツキはその日もオーナーに呼び出されていた。
 その顔は実に不満そうだったが、ツキにオーナーの呼び出しを無視することはできない。出来たとしても、代わりにサンが呼び出されることになるだけだから、ツキにとっては自分が呼び出されているうちに行くしかないのだ。
 執務室の前まで来ると、ツキはひときわ大きくため息を吐き、扉をノックする。すると勝手に扉が開いた。いつもと違う様子に少し眉を潜めたが、開いたと言うことは入室を許可されたと言うことなので室内に踏み込む。
 部屋の中では一匹のロボット犬が執務机の上に置いてあるデータチップをスキャンしているところだった。それが敵味方関係なく蹂躙してしまうカエデのために作られたパートナーロボットであることはツキも知っている。
 ロボットらしい機械的な外見をしたそのロボット犬は、スキャンを中止してツキの方を振り向いた。
『ツキか。オーナーなら休憩室の方にいるぞ』
「……ああ、そう。わかった。あんたは何をやってるんだ?」
 ロボットに対してはツキも通常の口調に戻る。犬は机の上のデータチップを鼻先で指し示す。
『見ての通り、データの処理中だ。活動できなくなったスライドールの人格データを破棄している』
 その事も無げに言われたことに、ツキの眉が寄る。
「それは……つまり用済みになった奴を殺してるってことか?」
『その表現は正確ではない。スライドールを動かしているのはあくまで元の人間の体であり、脳だ。スライドールのボディに記録されている人格データはあくまで補助的な働きをするもので、それ自体に命はない。ゆえに、これは処理であると表現するべきだ。チップのクリーンアップを行っているだけにすぎない』
「だけど、その人格データがあれば、その人と話は出来るだろ」
『改竄可能なデータを人と認めるならな。そもそも人格データをデータの通りに動かそうと思えば、やはり実際の脳の機能が必要だ。そのレベルのコンピューターはいまだに開発されていない』
 ロボットらしい理性的な物言いに、ツキは少し苛立ちかけ、何か引っ掛かりを感じた。
 だがその違和感の正体を探る前に、ロボット犬が話しかけてきたため、その引っ掛かりは永遠に不明のままになった。
『オーナーに呼び出されていたんじゃないのか?』
 ロボットの言葉に、ツキは小さく舌打ちをする。
「……そうだな」
 作業に戻ったロボット犬をおいて、ツキは休憩室に入る。
 中には大きなベッドが置かれており、その上で裸の男女が絡み合っていた。
「ああ、来ましたか。もう少し待っててくださいね」
 その男女はツキもよく知る人物だった。
 オーナーとカエデが、普通のオーナーとスライドール以上の関係性を有していることはツキも知っている。明言されたわけではないが、明らかにカエデに与えられた権限は大きなものなため、察するのは容易かった。
 カエデも戦闘時には決して見せない艶のある表情でオーナーに身体を開いている。
「部屋に入って扉を閉めていただけますか?」
「……ああ」
 情事がおこなれている部屋の扉を開けっぱなしにするのも躊躇われたので、ツキは素直に応じた。
 ツキが休憩室に踏みこんで扉を閉める。

 その腕が、突然真横から掴まれた。

(っ!?)
 ツキは驚きつつもその腕を振り払おうと体を動かした。
 だが、それは叶わなかった。ツキの腕はその何者かの腕に掴まれたまま動かせない。
「なっ――」
 息をのむツキをその腕の持ち主は力任せに引き倒す。
 思わず息が詰まったツキは、自分を引き倒した者を見て、驚愕した。
「さ、サン……!?」
 ツキは自分を押し倒しているサンに驚愕しつつも、抵抗しようとしたが、サンの腕はまるで万力のようにツキの腕を掴んでおり、いくら揺すろうとしてもびくともしなかった。
(っ……いくらスライドールっていっても……これは異常だぞ……!)
 スライドールである以上、元々の力が強いことは確かだが、同じスライドールである以上はここまでの差がでるわけがない。
 サンは光の消えた瞳でツキを見ていた。その意思の感じられない瞳から、彼女に対して何を言っても無駄だということをツキは悟る。
 ツキがオーナーの方を睨むと、オーナーは騎乗位のカエデを突き上げて嬌声をあげさせながら、にやりと笑った。
「お察しのとおり、少々身体能力を弄らせてもらいました。サンの力を強く、ツキの力を弱く。いまの二人の力には大人と子供以上の差があるはずです」
 それではさすがのツキでも抗うことができない。
「オーナー……! これは、なんのつもりだ!?」
 殺意を込めてツキはオーナーを睨みつけるが、オーナーは余裕の表情だ。
「いえいえ……ちょっとした余興でしてね。二人に思う存分愛し合ってもらおうかと。あなたもサンの相手が自分であれば少しは気が楽でしょう?」
「……っ!」
 歯を食いしばるツキに対し、オーナーはあくまで楽しげだ。
「ちなみに、今回サンには後で自分自身の体験ではなく、あなたの体験を夢という形で味わってもらう気でいます」
「……?」
 その意味を理解できなかったツキだが、オーナーが重ねた説明でその悪魔の思いつきの意味を理解する。
「つまり、あなたがそれをレイプと思えばサンもレイプとして受け取りますし、逆にそれが双方合意のプレイとして受け入れれば彼女もそのつもりで体験するわけです」
 それは、いまのツキに対してあまりにも残酷な事実だった。
「夢とはいえ、サンにレイプの恐怖を味合わせたいか、それとも双方納得した円満なプレイを味合わせたいかは――あなたのご自由にどうぞ」
 いくらスライドールとして活動している期間が長かろうと、ツキの元は男性である。それに対して犯されることを受け入れろと言うのは、彼自身の男としての矜持を打ち砕く残酷な行為だった。歯を食いしばってツキは唸る。
(くそ……っ! サンにレイプされたなんて記憶を与えるわけには……けど、受け入れろったって……そんな……!)
 サンを守りたいという気持ちと、自分自身の男としての誇りがぶつかり合う。
 オーナーはそんなツキの葛藤を眺めながらご満悦の様子だった。
「まあ、暴れようと何しようと結局は犯される結末には変わりないのですから……あなた自身も楽しんだ方が賢明だと思いますよ?」
 そして、オーナーがツキを押さえつけているサンに向けて命令を下す。
「やってしまいなさい、サン」
「はい、オーナー」
 普段の陽気な口調とは打って変わって機械的に応じたサンが、容赦なくツキの服を破こうと手を伸ばす。それをツキが押しとどめた。
「ちょ、ちょっと待って! 自分で、脱ぐ、から……っ」
 顔を赤くしながらツキが言う。いくら試合で肌を晒すことに慣れているとは言っても、試合中に肌を晒すのと現状で肌を晒すのとは全く別の感覚だ。元々自発的に自慰をすることはほとんどないツキである。人前で服を脱ぐという行為にすら、まだ羞恥心が色濃く残っていた。
 人の記憶を体験させるということがどのような形になるのか、ツキには分からなかったが、服を破かれるよりは自分で脱いだ方が精神的な衝撃は和らぐのではないかと考えたのだ。
 ツキが服を脱いでその裸身を晒しても、サンはあくまでその機械的な対応を変えようとはしなかった。
 裸のツキを押し倒した姿勢のまま、その胸部に舌を這わせる。
「っ……」
 ツキの体が小さく震えた。声を堪えはしたが、感じているのが明白な反応だ。
(おかしい……っ、いきなり、こんな……っ)
 ほとんど突然だというのに早速快感を覚えた体を異常だとツキは捉えた。
(もしかして……また、強制的に快感を引き上げられて……! ……んぁっ!)
 乳首を吸われてより激しい快感がツキの頭を襲う。ツキは自分の体の感覚器官を敏感にさせられているのだと判断した。
 しかし、実のところオーナーは力を引き下げた以外のことは今回ツキのボディに何もしていなかった。
 考えてみれば当たり前のことだが、これまで散々な形で性的に嬲られたツキの体は、望むと望まざるに関わらず開発されていた。正確には快感を受け取る側のツキの脳が快感を感じやすくなっているのだが、大した差異はない。
 感じてしまっているという事実は変わらない。
 ツキはサンの責めに歯を食いしばって耐えるべきか、悩んでいた。普段ならばそうするが今回はこの体験をサンも味わうことになると思うとうかつなことはできない。
(……感じることを堪えるのも、下手をするとレイプされている、って思うんじゃ……いや、これは単に恥ずかしいからってだけってことになれば……っ)
 必死に無理のない理由を考えるツキだが、受け入れるのにも拒むのにも中途半端な状況で快感を堪えることができるわけもなかった。
 サンが乳首を甘噛みしたことで、ひときわ強い快感が走り、ツキはその体を波立たせて絶頂に達する。
「……く、ぅああああっ!」
 腰を揺らし、声をあげて絶頂するツキ。サンはそんなツキの口にその唇を合わせてきた。
「はぁ……ふぁ……ぅ」
「ふっ……んっ……っ」
 二人のスライドールの艶めかしい吐息が室内に響く。サンの方は単に義務としての呼吸だったが、ツキの方の吐息からは明らかに官能的な響きが感じられた。二つの息の違いが際だってしまい、余計にツキの羞恥心を煽る。
 二人の絡みを肴に昂っていたオーナーが、カエデの中で射精に至ったらしく、彼女の中からペニスを抜き取り、カエデを優しくベッドに横たえながら、オーナーが二人の方を見る。
「おや、まだまだ躊躇いがあるみたいですね。そんな調子では犯されているのだと認識してしまうことになるかもしれませんよ?」
 白々しい調子でオーナーがそう煽る。ツキは彼に対しての怒りも覚えていたが、それ以上にサンにそんな思いをさせるわけにはいかないという思考が勝った。
 自分から積極的に舌を伸ばし、サンのそれと絡める。
(少なくとも、自分から動けば……犯されているという感覚じゃなくなるはず……!)
 果たして本当にそうなるかはわからなかったが、それに賭けるしかなかった。
 意識して舌を動かしていると、当然そこから感じる感覚も強くなる。
「ふぅ……く、ぅ……ふぁ……」
 激しいディープキスの間に貪るように空気を含む。それがまたいい喘ぎ声として自身の耳に届いた。
(や、ば……っ……これっ……やば……!)
 体が震え、頭が痺れる。
 長い時間ディープキスは続き、サンがようやく離れた頃には、ツキの方は精神的に参ってしまっていた。
 サンがその体を覆っていた服を脱いでいく。どんな状態になっても男性人格であるツキは、そのサンの裸体を見て、精神が高揚するのを感じた。
(やっぱ……サンって……きれい、だよなぁ……)
 幼なじみの贔屓目もあるとはいえ、それを差し引いてもサンという女性は綺麗な体つきをしていた。いまのサンの体はスライドールのボディだが、それは彼女本人を模したものだ。多少の調整は入っているかもしれないが、実際にいまツキが目にしているサンの体はとても整っていて、浮き世離れした美しさと言っても過言ではない。
 着ていた上着をサンが脱ぎ捨て、完全な裸になる。その股間部を見て、ツキは息をのんだ。
「な……っ!? サン……っ、それ……!」
 サンの股間部、つまりは彼女の秘部からは、グロテスクな外見をしたペニスに似た何かがそそり立っていた。それは肌色をしていたが微かに透明で、その一部がサンの秘部を広げ、彼女の体内に潜り込んでいるのが見えていた。
 ツキが言葉を失う中、オーナーが自慢げにそれについての説明を行う。
「すごいでしょう? 私が新しく開発した責め具の一つなのですけどね。使いようによってはそのように双頭バイブのようにもなるのですよ。いまのサンは人形モードなので特に反応していませんが、本来それを埋め込まれれば立っていられないほどの快感を与えてくれます」
 おわかりですね、とオーナーは続ける。
「それによって犯されれば、当然あなたは立っていられないほどの快感を与えられることになり――サンのなすがままになることでしょう。サンの力は増大していますし、実にいい感じで男性に犯される女性の感覚を体験することができるでしょう」
 それが嫌ならば、とオーナーは笑う。
「逃げてもいいですよ? 追いかけさせて犯させるだけですから。そうすれば、君自身は多少男としての矜持は保てるかもしれませんね。けれど、その体験を味わうことになるサンはレイプされているとしか思えないでしょうねぇ」
 それを裂けたいのならば、とオーナーが言うその先の言葉はツキにも簡単に予想することができた。
「自ら股を開き、受け入れることです。そのサンが身につけているものを恋人のもののように受け入れることです」
 オーナーは残酷な二者択一を迫る。
「あなた次第ですが、さて、どうしますか?」
「…………っ」
 外道が、と思っても口には出さない。ツキは目の前のサンを見る。うつろな目で、自分が何をしているかも理解しないまま、ただオーナーの合図を待っている。その股間にそそり立つものは、これまでツキが入れられてきた物よりも遙かに大きく、それを突き入れられた時の感覚が想像できない。だが、凄まじい感覚になるであろうことは容易に想像することが出来た。
 それを拒絶しながら受け入れ、激しいレイプの感覚としてしまうか。自発的に受け入れ、少し辛いだけのセックスの快感としてしまうか。
 ツキにとっては、選ぶべき道は一つしかなかった。
(これは、サンを助けるため……助けるため、だから……!)
 自分自身が望んだわけではないということを念じながら、ツキはゆっくりとその股を開いていった。
 M字開脚で無防備に秘部を晒し、顔を真っ赤にしながらも、サンに向けて言葉を放つ。
「そ、その……き、来て……いい、よ……」
 そのツキにあるまじき弱々しい声音にも、精神も人形と化しているサンは特別な反応を示さなかったが、オーナーの方がごくりと生唾を飲み込んだ。
「……いい、ですね……ツキがそんなにいい声を出すとは思いませんでしたよ」
 単純に感心しているがゆえの言葉であったが、だからこそ、ツキはより深く羞恥心を煽られた。
 首の辺りまで真っ赤にしたツキをオーナーは思う存分楽しげに眺めてから、サンに許可を出す。
「さあ、サン。ツキの望み通り、入れてあげなさい」
「はい、オーナー」
 サンがツキの膝に手をおいて、M字開脚の状態を固定しつつ、その体を寄せる。その股間からそそり立つ物が、ツキのお腹に触れた。ゼリーのように冷たい感触を予想していたツキだったが、それはまるで本物のペニスが勃起した時のように、高い熱を有していた。その熱が強い刺激となり、ツキに襲いかかってくる。
「ひぁ……っ」
 怯えたような声をあげるツキの体内に、それの先端が入り込んでいく。柔軟に形を変え、体内に入り込んでくるそれは、かなり強い快感を生み出す。
 ほとんど組み敷かれるような体勢のまま、ツキは背中を仰け反らせて絶頂に導かれる。
「やばっ……これ……っ、すご……ぃ……!」
 思わずツキが我を失うほどに、その疑似ペニスが与えてくる快感は強かった。膣内の隅々まで余すところなく刺激される感覚は以前にもバイブで味合わされた感覚ではあったが、その時はただの道具だった。いまは曲がりなりにも反対側に人がいて、その体温がすぐ近くに感じられるのだ。
 まるで本当にサンとセックスをしているかのような感覚に、ツキの頭は半ば混乱する。その混乱に乗じるようにサンが腰を前後に動かし、さらにツキの中を刺激してくる。
「ふあぁっ、あぅ、ああっ!」
 もはや理性的な行動など出来るはずもなく、ツキは突かれるままに嬌声をあげた。サンは片方の手で身体を支えつつ、空いた片手でツキの乳房に刺激を与える。さらに首筋を舐め上げ、執拗なまでにツキを責め立てていく。
 どんどん激しさを増して行く二人の様子を眺めながら、オーナーは一度出して収まっていたはずの興奮が膨れ上がっていくのを感じた。
「サン。立ってツキを持ちあげなさい」
 サンは素直にオーナーの言うことに従って、立ちあがりながらツキを持ち上げた。
「うぁっ!」
 結果として、自重によって身体の奥まで突かれることになったツキは大きく呻き声を上げた。
 その背後にオーナーが立つ。
「すいませんね。見ているだけのつもりだったんですが、ツキの姿を見てたら我慢出来なくなってしまいました」
 サンによって抱きあげられたツキの背後、肛門目掛けてオーナーがペニスを突きあげる。
 前後から突き刺されることになってツキは、ますます大きな悲鳴をあげる。
「おやおや、あっさりと呑み込んでしまいましたよ。さすがはツキですね」
「く、ぅ……っ、きつ、い……っ」
 さすがに両方の穴を埋められれば、スライドールといえども辛い。だが、それもツキは快感として受け取ってしまっていた。
 二穴挿しを経験することになってしまったツキは、その後オーナーの気が済むまで、彼とサンによって犯され続けたのだった。




 休憩室の扉を開け、わたしは休憩室に足を踏み入れる。
『オーナー。処理が終了したぞ』
 中では実に凄惨な光景が広がっていた。
 床に倒れているツキは虚ろな目で前から後ろから大量の液体を垂れ流している。目は空いていても意識を失っているのか、わたしが部屋に入って来ても何の反応も示さなかった。
 その傍には全く表情を動かしていないサンが立っていた。股間には何やら太い触手のような物が突き刺さっていたが、直立不動の体勢から動かない。恐らく精神まで人形化しているのだろう。こうするとスライドールもただのロボット変わりはない。
 オーナーは疲れたような顔でベッドに腰掛けていた。普通に休憩するつもりはなかったのだろうが、ここまで消耗してしまっては業務に支障が出るのではないかと少し不安に思った。
 カエデはベッドの上で幸せそうに眠っている。こうしていれば戦闘狂も少しは可愛く見えるのだが。
 唯一俺の言葉に反応したオーナーは、穏やかな様子でわたしに向かって声をかけてくる。
「ああ、御苦労さまです。カエデかツキが起きたら後始末をさせておいてくれますか?」
 栄養ドリンクのようなものを飲み、オーナーがそう言ってくる。
『任されよう。ところで――』
 わたしは気になることを聞いてみた。
『本当にいまのツキの体験をサンに体験させるのか?』
 色々と不都合な点があるのではないかと思っていたが、オーナーは悪い笑みを浮かべる。
「もちろん、しませんよ。いまの技術じゃ、都合のいい部分の体験だけを味合わせることは出来ませんからね。ツキの心情とか、私の言葉とか……変な情報がサンに入るのは避けたいですし」
『やはりな。どうせそんなことだろうと思っていた』
 ツキを追い詰めるためのブラフでしかなかったのだろう。それに振りまわされたツキは気の毒というほかない。
『……こんなことをやったということは、そういうことなのか?』
 わたしが部屋の惨状を見て呟くと、オーナーは微かに笑みを浮かべた。
「やはり、気付いてしまいますか? サンは人形化してますし、ツキはそれどころじゃなかったでしょうし、カエデはそういう予測はしませんからね」
 最初に気付くならあなただと思ってましたよ、とオーナーは言う。
 そして、様々な意味で最も重要言葉を口にした。

「ツキとカエデ。二人の試合の日程が決まりました」

 ツキは最速の呼び声の高いスライドール。以前のエキシビジョンで初めて敗北したが、スライドールとしての試合で敗北したことはない。
 カエデは最狂といわれるスライドール。初めてこの裏の世界で戦った時から一度も致命的な傷を負うことなく勝利し続けて来ている。

 そんな二人が戦う日が決まった。
 
 
 
 
~『スライドール』第八章に続く~
 
 
 
 

Comment

No.1262 / 名無しさん [#-] No Title

マニアックかもですがスライドールの登場人物中で人形状態のサンが一番好きなのでうれしかったです
ただもうちょっと人形状態のセリフがあればなぁ・・・

2013-08/07 01:32 (Wed)

No.1264 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

コメントありがとうございます!

> マニアックかもですが~
人形状態のサンが一番好きと言ってくださってありがとうございます。
普段が陽気なキャラなので人形状態とのギャップが凄いキャラです。
実のところ、色々と可哀想なキャラではあるのですが……(笑)
最終話までには、人形状態の出番があるのでその時はセリフ多めでお送りしますね(笑)

それでは、どうもありがとうございました!

2013-08/07 22:26 (Wed)

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