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『スライドール』 第六章

『スライドール』の第六章です。
それでは、続きからどうぞ。
 
 
 
『スライドール』第六章
 


 目を覚ますと、そこは暗闇だった。
 目を開けようとしても瞼に覆い被さっている何かに邪魔されて、そもそも瞼を開くことさえ出来なかった。体を動かそうとしても、立ったまま両腕を後ろに回したポーズのまま動かすことが出来ない。
 普通ならばパニックに陥るところだが、その身動き一つとれない本人――ツキは冷静だった。
(……このパターンか)
 ツキにとって、目が覚めた瞬間から身動き一つ取れない状態に置かれるというのは、いくつも考えていたパターンのうちの一つでしかなかった。何せスライドールは自動で動かせるのだ。本来ならば所有者の権限ーーひいては意志ーーがなければ無理だが、この裏社会でその常識は当てはまらない。ほとんどのスライドールの所有権はオーナーにあり、スライドールに意識を移している者達にはないことが大半だ。だから、自分の意識が落ちている間にボディに対して何かされるのではないかということは、考えておくべきパターンの一つでしかなかった。
(……身体の権限を奪われた……って感じじゃないな。不自由だけど微妙には動かせるし……拘束具か何かで固定しているって感じか。それに……っ……どうやら、責め具も使われてるみたいだな……)
 かすかな身じろぎしか許されなくても、ツキはその身体の至るところになにやら不愉快な感覚があることに気づいていた。それらはツキの身体の中に潜り込んでいたり、じわりと滲むような快感を発していたり様々だ。
(……意識を取り戻させたってことは、なにかしらの準備が整ったってことだろう……このまま試合になだれ込むつもりか)
 ツキはそう結論づけた。そしてその心を戦闘時の備えに切り替えていく。
 それはツキの戦士としての本能がさせたことだったが、それを邪魔する要素が出現する。
 ツキの股間付近が、急に震えだしたのだ。その刺激にさすがのツキも心中で驚愕する。
(まさか……っ、あのバイブを? ……いや、それにしては刺激が弱すぎる)
 あくまでもあのバイブに比べればという意味で、快感としては十分に強い者だった。試合に備えて集中しかけていた意識が霧散する。
(ぐ……っ、まずい……堪えられなくはないが……このままじゃ)
 何も見えず、何も聞こえず、ほとんど何も感じず、身体が動かせない状態で刺激を与えられるのは、いかにツキでも快感を逃がす先がどこにもなく、それに意識が集中してしまう。
 そうなると全く同じ刺激でも遙かに感じてしまうようになり、ますますツキの身体はできあがっていく。
(くそ……っ、……ふっ、……くぅ……!)
 じわじわと快感がわき上がってくる。股間に当たっている何かが震えることで、身体の中に潜り込んでいる何かにまで影響が伝播しているのだと理解することは出来たが、それに対処できない以上、ツキはただ生じる快感を堪えるしかなかった。
(なんでも……っ、いい、から……はやく始まってくれ……!)
 下半身を中心とした刺激によってすっかり出来上がってしまったツキは、とにかく事態が次の段階に進むことを祈っていた。快感を堪え続けることなど出来なかったし、また刺激自体は小さいこともあって、容易に絶頂に達せれるほどではないことを理解していたからだ。快感に溺れてしまえば戦うことなど出来るわけもない。
 だから、早く事態が進むことを待ち望んでいた。
 だがそんなツキの願望も空しく、長々とツキは散々地味な快感を与えられ続けた。試合でなくとも何かが起こるであろうことはわかっているのに、それに備えるよりも快感を堪えることの方でいっぱいいっぱいだ。
 そんな時、唐突に瞼の裏に光を感じ、身体を動かすことが出来るようになった。快感を堪えていたツキだが、自分の脚に体重がかかったのを感じ、目を開ける。
 そこは、闘技場のど真ん中だった。すでにたくさんの観客が観覧席を埋めている。
 目の前には銃を構えたサンがいた。にこりと微笑み、ふわりと舞い上がる。やかましい実況の声が響いた。
『それでは! エキシビジョン開始です!』
 開幕の合図は、サンの銃撃だった。引き金を引き絞る指先が見え――

 そして、銃口から弾丸が射出された。

 ツキの身体が動いたのは、これまで何千何万回と繰り返してきた修練の賜物だった。不自由な体を駆使し、身体を回転させながら跳ぶ。銃撃を辛うじて避けた。サンが放った銃弾は先ほどまでツキが縛り付けられ得ていた棒にぶつかり、軽い破裂音を立てた。
「あはっ、さすがツキ!」
 サンが楽しげにそう笑いながらツキめがけて銃弾をいくつも射出する。ツキはそれを避けながら周囲の状況を把握する。
 舞台はスライドールの試合で使われる基本的なフィールド設定だった。平坦な舞台に、いくつかの遮蔽としての壁が立っている。立っているとはいっても、いつもに比べればその高さは半分以下だ。それは恐らく観客に見えやすいようにという配慮のうちなのだろうが、逃げ回る側にしてみれば隠れる場所が減ったということであり、ハンデキャップ以外の何者でもない。
 ツキとサン以外にフィールドにいるのは十体。どうやら全て普段はコンビを組んでいる者達のようだった。同じオーナーに所有されているスライドールのことは間違いなくわかるため、ツキにとってはそこからの類推でしかなかったが、外れてはいなかった。
 逃げ回る側はそれぞれ、革のボンテージや手錠、手枷足枷、普通の縄などなど、様々な方法で身体を拘束されており、若干移動を阻害していた。ツキは自分の身体にからみついている責め具の存在を認識していたが、意識しないように逃走に意識を向ける。
 自分の格好を意識すると、さすがのツキも恥ずかしかったからだ。いくらそのボディが元の自分とは似ても似つかない女の子の姿だったとしても、ずっとそのボディで過ごしていれば認識的には自分の身体と大差ない。恥ずかしいという気持ちも自然と沸いてくる。
 ツキは素早くターンを利かせながらサンの銃撃を避け続ける。サンは決して下手くそではないが、警戒しているツキを捉えるのは難しい。
(いける……この調子なら!)
 そんなに簡単にはいかないだろうことはツキが一番よくわかっていた。
 そして、それを証明づけるように、ツキは背後から肩に衝撃を感じた。
「グッ……!」
 バランスを崩して転びそうになるのを、スライドールの機動力を活かして凌ぐ。ツキの内心にも衝撃は走っていた。
(撃たれた……っ? くそっ、流れ弾か……!)
 狙われたのなら気づけたはずだとツキは考えたが、突然わき上がった強い快感に考えが散らされた。
「ぅ……クッ……!?」
 それまでの快感の積み重ねとはまるで関係なく、一気に快感が高まり、ツキの頭を痺れさせる。一瞬だけ絶頂に達してまた元に戻ったのだと気づけたのは数秒経ってからだった。
(な……なにが、起きた?)
 呼吸が乱れ、ボールギャグを噛まされた口元から涎がこぼれ落ちる。それを感じながら、ツキは周囲を見渡した。見ると、すでにやられてしまったのか、一人のスライドールが地面にはいつくばっていた。何度も銃弾を撃ち込まれているーーが、その身体から血がこぼれる様子はない。ただ、その代わりというように、撃たれる度にその身体が激しく痙攣していた。それが絶頂に達し続けているのだということを理解するのは容易い。
(オーナーめ……! さては銃弾を通常弾から変えやがったな……!)
 普段の試合で使われている銃弾は、限りなく普通の銃弾に近い。といってもスライドールのボディを破壊することに特化した銃弾で、それ以外のステージや観客席などにはほとんど害を与えないように作られている。
 麻痺弾や毒弾といった変わった銃弾も存在するが、今回使われている弾丸はそれとは全く性質を異にする銃弾だった。
 強制絶頂弾とも呼ばれるその銃弾は、本来聞き分けのないスライドールに対するお仕置き用だ。それに撃たれたスライドールはどんな状態でも一回逝くことになる。何度も打ち込むことで快楽責めとなるわけだ。もちろんその快楽は凄まじく強いものなので、それを何十発も撃ち込まれていればいずれ気が狂う程度には危険な代物だが、その直接的な危険度は通常の弾丸よりも遙かに劣る。
(まずい……! まさかこんな弾丸を撃ち込んで来られるなんて……っ!)
 通常弾であれば、ツキは避けることが容易だった。だが、絶頂弾のような変化球になると、通常よりも察知が遅れる。撃つ側の気負いがないため、殺気が滲まないのだ。
 全ての銃口の向きや銃撃者の位置取りを把握しなければならず、逃げ切ることの困難さは段違いである。
 ツキは素早く視界を広く取って全方位からの銃撃に備える。
 そこでツキはサンが消えていることに気付いた。先ほどまで低空飛行しながら銃弾をばらまいていたのに、いまその場にいない。
 咄嗟に真上を見ると、その先にサンがいた。楽しげな笑みを浮かべている。
「気付かれちゃった」
 そう可愛らしく呟いたサンは、ツキの頭上から数多の弾丸を降り注がせた。
 ツキが見上げる中、銃弾の雨はツキの立っている場所を中心に数メートルの範囲に降り注ぐ。




 ツキが弾丸の雨の中に飲み込まれていくのを、特別な観客席で眺めていたカエデは、ひっそりとため息を吐いた。
「あーあ、こりゃ終わったかな?」
 つまらなそうに呟く彼女に対して、オーナーが苦笑いと共に応じる。
「ちょっと厳しすぎたんでしょうか? 責め具とかもそんなに厳しくはなかったと思うんですが……」
「んー、どうだろな……これは結構利くけど……駆動に支障を来すかっていうとそうでもない気がするけどな」
 そういって身体を揺するカエデには、ツキが現在身につけているのと大差ない責め具が着けられていた。口枷はない。それを味わっておきながらも、カエデの表情はあまり普段と変わらない。ほんの少し頬が赤くなっているが、それ以上の変化は見られなかった。オーナーの目に触れているということも、カエデにとってはさほど恥ずかしがる要素ではないようだ。
「どちらかっていうと……あの弾丸のせいじゃねえか? 強制絶頂弾だっけ。中々えげつないもん作るよなぁ」
「そうでしょうか。まあ、それなりに効果があるみたいですね。ツキでさえ一瞬脚が止まってましたし」
「私も味わいたいな。オーナー撃ってよ」
 そう期待を込めたカエデの台詞に、オーナーは苦笑を返した。
「一応色々な要素を加味して、あの弾丸は便利なものですけど、個人的にはさほど使いたいものじゃないんですよね……じっくりと時間をかけてでも、自分の手で逝かせたいタイプなもので」
 にっこりと笑うオーナーに近づいたカエデが、その不自由な体にかまわず、オーナーの膝の上に座った。
「……じゃあ逝かせてよ」
 普段の蓮っ葉な声音と全く違う、甘ったるい声音を作ってカエデがオーナーに求める。オーナーは笑顔で応じた。
「いいですけど、それはエキシビジョンが終わってからですね」
「ちぇっ。せっかく身につけたのに」
「気がはやりすぎなんですよあなたは……あ、ほら、ツキはまだやれそうですよ」
 カエデを膝の上に乗せて、その身体を手慰み程度に愛撫しながら、オーナーがステージを指し示す。
 そこでは、ツキが降り注ぐ銃弾の雨の中から脱出していた。
 
 
 
 
 頭上から雨霰と降り注ぐ強制絶頂弾を全身に浴びながら、ツキはボールギャグを噛みしめて絶頂に意識を持って行かれないようにしていた。
 絶頂、とはいえここまで連続で、しかも暴力的なものになるともはや殴られているのと大差ない。視界の中で星が瞬き、勝手に全身が痙攣して倒れそうになる。それを何とか堪えながら、ツキは一足飛びで銃弾の雨の中を脱出した。
(かっ……はぁ、はっ! はっ!)
 絶頂に達しすぎて呼吸困難を起こしかけていた。スライドールのボディには酸素など必要としないはずなのに、無駄なまでの再現性だ。
「ぐぅ……!」
 ツキはさらに襲いかかってくる銃弾を何とか避け、壁伝いに走り抜けながら快感に痺れている頭を何とか奮い立たせた。
(このままじゃ……やられる……っ)
 いかにツキが強力な戦士であろうと、その精神が崩壊しては何の意味もない。サンは通常の銃とは別に、連射の利くガトリングガンを装備しているようだった。本来の戦闘であれば重すぎて防御主体のパートナーと一緒にいる時にしか使い道がないガトリングガンだが、サンは今回それを躊躇なく使ってきた。他のスライドールならともかく、360度の立体的な攻撃が出来るサンがそれを使うと、その驚異は凄まじいものになる。
 サンはツキが遮蔽物に隠れてしまったからか、別のスライドールに向けてそのガトリングガンの威力を遺憾なく発揮していた。もはや動くことも出来ずガトリングガンによる絶頂の渦に叩き込まれたそのスライドールは、物理的にも精神的にも翻弄され、ボロ布のようにされていた。
 ツキはまだ絶頂の渦の衝撃から完全に回復していなかったが、それを見て休んではいられなかった。遮蔽物の影から素早く駆けだして、サンの視界に入るようにする。
 ボールギャグのせいで呼びかけることは出来なかったが、幸いサンはすぐに狙いをツキの方に切り替えた。
「ひゃっほーーーッ!」
 襲いかかる銃弾の雨をツキは辛うじてかわしていく。両腕が拘束された状態での高速移動はバランスが取りづらく、下手をすれば障害物にぶつかって自滅しかねない行為だったが、ためらっていることは出来ない。両腕が使えなくてもツキは存分に高い機動力を見せつけた。
 サンが自分を見失わないように気をつけながらも、ツキはフィールド上を駆けめぐる。そこに、実況者の耳障りな声が入り込んできた。
『さー、残り時間を大きく残しながらも、逃走側はもはやツキ選手ただ一人! 対する攻撃側は六人! 六対一という非常に不利な状況かで、ツキ選手は残り時間を逃げきれるのか! 注目です!』
 どうやら全ての攻撃側のスライドールが、ツキ狙いに切り替えたようだった。一斉にツキに殺到するスライドール達。ツキは全員から逃げまどいながらも、なんとかしなければならないと必死に頭を絞っていた。
(まずいな……これ以上は、さすがに……っ)
 ツキの懸念は一体多数の状況だけではない。動き回れば回るほど、ツキの身体を締め上げている責め具達の力が徐々に発揮され始めていたのだ。乳首に取り付けられている小さなピアスですら、いまのツキにとっては非常に強い刺激になっている。
 試合開始前からずっと地味な快感を生じさせ続けているクリトリスも、かなり厳しい。身体の中に入り込んでいる何かも、ツキが動けば動くほどその存在を主張してくるのだからたまったものではなかった。
 ここから先、多数の一斉攻撃に晒され続ければ、その動きも激しさを増すことだろう。そうなれば時間切れの前に生じる快感に耐えきれず、動きが止まってしまう可能性があり得る。そうなればそれこそ多数の銃によって、ある意味ではガトリング以上に翻弄されかねない。
 そうなればツキも正気を保っていられるか怪しいところであり――それは避けなければならなかった。そのためにも、少しでも相手の戦力を削がなければならない。
 ツキは悩んだ。
(反撃禁止の制約がなかったら……余裕なんだけどな)
 悔しげにツキはボールギャグを噛みしめる。実際もしも攻撃してもいいということであれば、ツキは両腕を封じられたこの状況でも数人倒していける自信があった。腕は封じられていても脚は使えるのだから、それで十分だからだ。格闘術に特化するカエデほどではなくとも、ツキもそれなりに格闘術の心得がある。
 とはいえ、攻撃自体を封じられては、どうしようもない。
 絶対的に不利な状況の中、逃げまどい続けるしかない。ツキはそう腹をくくり駆けて、すでにやられたスライドールが痙攣しているのを見た。精神が無事かどうかはわからないが、少なくとも強制絶頂弾は殺すための弾丸ではない。まだ息はあるようだった。
 それをみたツキは、単純な突破法を思いついた。
 迫り来る五人のスライドールと空中のサン。ツキはサンがガトリングガンのリロードを終えたのを見て、走り出した。サンの銃弾の雨が降り注ぐ。ツキは他の五人のスライドールの内の一体に高速で接近した。そのスライドールは距離を置こうとしたが、それを許すツキではない。つかず離れずの距離を取り――そして急速にその場から離脱した。その激しい動きはツキ自身の身体で自身の快感を高めてしまうが、それ以上の戦果をもたらした。
 ツキを追いかけてきたサンのガトリングの雨が、その攻撃役のスライドールに命中したのだ。全身に強制絶頂弾を受けたそのスライドールは、あっという間に行動不能に陥り、銃を取り落としてその場に崩れ落ちる。
「あっ、しまっ」
 もろに攻撃側の仲間を打ってしまったサンが狼狽する。
 攻撃役が一体減ったことで、ツキは余裕を持って銃撃を避け続ける。サンのガトリングは味方への誤射を気をつけるようになったため、それもずいぶん避けやすくなった。
 ツキは徐々にリミットが近づいて来ているのを感じながら、それでも避け続けていた。




「おやおや……これは思ったよりも早くに対応されてしまいましたね」
 観客席でオーナーはそう呟いた。膝の上に座っているカエデも同感なのか少しつまらなさそうな顔をしている。
「味方同士の誤射なんてすぐ思いつく対応だもんなー。あれのせいで攻撃側全体的に萎縮しちゃった感じだな。巻き込まれないように、巻き込まないようにするあまり弾幕が薄くなってる。あれじゃあツキにとっちゃ楽勝だろうよ」
「ふむ……これは勝負ありましたね。ツキが時間まで逃げ切って終わりそうです」
「まあ、そうなるんじゃね? ちょっとつまんねーけどな……」
 そう言った後、カエデは少し顎に手を当てて考え込む。
「んー。そうだオーナー。一回やってみたいことがあるんだけど。たぶん理論上は可能だと思うんだけどさ」
 そういってカエデがした提案に、オーナーは楽しげに了承を出した。
 
 
 
 
 ツキは辛うじて銃撃に晒されないように逃げまどいながら、時間まで逃げることが出来ることを確信しつつあった。
 一度誤射で仲間を一人減らしてしまったことを受け、サンの攻撃はずいぶん単調なものになっているし、他四人も必要以上に遠慮しあってうまく攻撃することが出来ていないでいる。延々と避け続けるのは無理だが、時間制限いっぱいまで逃げるのは可能だった。
(このまま……いけば……っ!)
 両足を広げ、うまくバランスを取りながら地面を滑る。遮蔽に隠れ、銃撃を避けた。

 その目の前に、銃口があった。

「――ッ!」
 咄嗟に身体を捻りながら交代するが、その動きにあわせて銃口は的確に追いかけてくる。その銃口から放たれた弾丸の内、数発がツキの腹部に命中し、絶頂の衝撃をツキの全身に走らせた。
(ぐ……っ! バカな……! どうやって……!)
 身体をくの字に曲げ、後退しながらツキは攻撃してきたスライドールを見る。その顔には誰かを彷彿とさせる狂気的な笑みを浮かべていた。
(……っ、カエデ……? じゃなかったはずだけど、これは……っ)
 確信を持って睨みつけると、そのスライドールはそれを受けて声を放ってくる。
「はっ、いまの大多数を避けるかよ。さすがはツキってとこか?」
 その乱暴な言葉遣いにはツキはよく聞き覚えがあった。
(やっぱりカエデか! なんでおまえが……っ)
「なんでおまえが、って面だなおい。ご名答だぜ。私はカエデだ。スライドールの操作をジャックさせてもらった」
 あんまりにも楽勝ムードだったからよぉ、とカエデは笑う。
「急遽参戦させてもらうぜ!」
 カエデは超近接タイプ。それも格闘術の使い手であり、スライドールの試合で銃系統の武器を使ったことは一度もない。だが、カエデはまるで常に使っているかのような銃捌きでツキに向かって銃弾をばらまく。その弾幕を避けきろうとしたツキだが、空中からサンが追加で銃弾をばらまいて来たため、さすがに避けきれなかった。
 脚や肩に銃弾がいくつもヒットする。その弾数分、ツキの身体に快感が駆け抜ける。腰砕けになりそうになるのを必死に堪えて、ツキは駆ける。カエデが操作するスライドールから距離を取ろうとするが、カエデも近接タイプである以上、その機動力はツキに勝るとも劣らないものだ。振り切ろうと考えても中々振り切れるものではない。
「ふっーー!」
 背中を打ち抜かれてツキが仰け反りながら地面を転がる。即座に体勢を立て直したが、すでにカエデは目の前にいた。両手にハンドガンを握り、その銃口がはっきりとツキの腹部に照準を定めている。
「わりぃな、ツキ。ま、攻撃禁止な上、両腕が使えないハンデもあって、責め具まで着けられてちゃしかたねーよ。それで粘られたら私の立場がねえし」
 カエデが唇の端を持ち上げて笑う。
「次はお互いちゃんとした状態でやろうぜ」
 そして銃口が火を噴いた。
(うあっ! っ、あああああああっ!)
 撃たれる度にツキの身体が跳ね、首を振り、涎をまき散らす。カエデは容赦なく身体の各部、胸の先端やクリトリスにも銃撃を加えた。その度に絶頂へと押し上げられるツキは、その扇情的な姿で観客たちの目を大いに楽しませた。
 やがて盛大に潮を噴いたツキが意識を失い――エキシビジョンは終わりを告げる。

 試合ではないとはいえ、ツキという名のスライドールが初めて敗北した瞬間であった。
 
 
 
 
 元のボディに意識を戻したカエデは、清々しい気分で身体を伸ばそうとして、拘束具に阻まれた。
「おっと。そういえば責め具を着けてたんだったな」
「お疲れさまです、カエデさん。少しは楽しめましたか?」
 興業の事後処理を行いながら、オーナーがカエデに尋ねる。カエデは満面の笑みで否定した。
「ぜんぜん。まあ、自分用以外のスライドールを操作するのは面白かったけど……あんまりにもあっさり終わっちまったし。ツキとの戦いもあれじゃあ意味ないな。さっさとあいつとマジでやりあいたいぜ!」
 そのときが待ちきれない、とばかりにカエデは両足を振ってだだっ子のように吠えた。それをオーナーは苦笑いで受け止める。
「もう少しだと思いますので、もうちょっとだけ待っててくださいね」
「わかってるけどさ……ん? もう少しって何が?」
 カエデの問いに対し、オーナーは相変わらずの笑顔だった。
「お二人の最高の舞台の準備が整うのが……ですよ」
「おっ、さては新フィールドを一番最初に使わせてくれるってことか? そいつは楽しみだ」
 カエデの獰猛な笑みに、オーナーは苦笑するしかない。
 ツキとの戦いに思いを馳せていたかと思えば、カエデは急にオーナーに対して甘い目を向ける。
「ところで……それはそれとして、興業の後処理はまだ終わらないのか? 女を待たせるなんて二流だぜ」
「ああ、はいはい。もう少しだけ待っててくださいね。いま片づけてしまいますから……それまでの間、ちょっと一人で楽しんでください。ついでにちょっとしたモニターもお願いします」
「モニター?」
 カエデが首を傾げるのと、オーナーが小さなボールのようなものを、カエデに向けて放り投げるのはほぼ同時だった。
 そのボールはカエデの胸あたりにぶつかったかと思うと、転がり落ちることなくその場所に張り付いた。
「うひゃ! なんだこれ冷た……わっ!」
 そのボールが弾けて、無数の透明な触手にばらけた。
 これには、さすがのカエデも驚く。
「なんだこりゃ! すげえなこれ!」
 うねうねと広がった触手は、不自由なカエデの身体に絡みつき、さっそく要所の愛撫を始めた。カエデはその絶妙なタッチによって快感を得られたのか、楽しげに身体をくねらせる。
「ふぁ、……いいねえ。最初は冷たいかと思ったけど、体温と同じ温度になってぜんぜん気にならなくなったぜ。それに、この絶妙な柔らかさが気持ちいいし……何より色んなところを同時に触ってくれるのが最高だな」
「気に入ってくださって嬉しいです。それは携帯用ですが、もっとでかいのだと丸飲み機能もついてたりしますよ」
「へえー。それはすげえな。そっちもちょと体験してみたーーんっ」
 ぴたりとカエデの声が止まった。触手がカエデの口にまで行動範囲をを伸ばしたからだ。カエデが口をあけた瞬間に中に入り込んだ触手は、決して噛み切れはしない。口内を刺激しながら、さらに奥へと触手が伸びていく。呼吸が出来なくなったカエデがイスの上でもがくが、すでに触手はカエデをイスに縛り付けるようにして広がっていたため、身動きが取れない。
「もうちょっと改良の余地はありますが、これなら一般人にも販売できるんじゃないかと思っています」
 オーナーは得意げに言うが、カエデは答えられない。口を塞がれているのもあるが全身に絡みついた触手がここぞとばかりに動き始めたからだ。いかにツキに並び立つほどの実力者でも、その刺激の前には翻弄されるしかない。
「んっ、んぁ、ふぁっ……!」
 大半は触手によって吸収されてしまうが、それでもカエデが甘い嬌声をあげているのはオーナーにもわかった。普段は気の強いカエデがなすがままになっているのを見て、オーナーは満足げに呟く。
「中々いい感じに仕上がってるみたいですね。このように携帯触手型責め具を使えば面倒な前戯もしなくていいし、いい具合に仕上げてくれるって寸法ですよ。スライドールじゃない普通の人間だと絞め殺してしまったり窒息させてしまいかねないので使い辛いんですが……」
 オーナーは残りの事後処理を続ける。
「あと五分くらいなので、触手と遊んどいてください」
「んあっ、うぅ……ふぁっ!」
 触手に翻弄され、幾度となく身体を跳ねさせ、カエデは悶え続ける。
 その後、オーナーが事後処理を終えてみた時には、カエデは十分なほど仕上がっていて、それまでのどんな時よりも気持ちよく二人は繋がることが出来たのだった。
 
 
 
 
~『スライドール』第七章に続く~
 
 
 
 

Comment

No.1235 / Torainu [#CNtCm3fU] No Title

執筆お疲れ様です

非常に面白かったです
快感がダメージというのはいい発想ですね
今回の話は時間の流れも結構サクサクで、読んでいて飛ばしたくなるような飽きる部分が全くなかったです

ちょっと登場人物がゴチャゴチャになってしまっているので、過去の話を読まないと…
数話に1度、もし「章」という形をとるのであればその頭にでも軽い人物紹介を入れるといいかもしれませんね
ライトノベルなどのように

次の話も楽しみにしています

2013-07/13 01:58 (Sat) 編集

No.1236 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

Torainuさん、コメントありがとうございます!

> 非常に面白かったです
ありがとうございます!

> 快感がダメージというのは~
こういう設定の話でもない限り出来ないネタ(仮想現実とかでも出来ますが)なので、やってみました。
そういって頂けると書いた甲斐があります!

> ちょっと登場人物が~
登場人物紹介ですか……確かに、すでもうキャラは大体出揃っていますし、一度ここらで整理した方がいいかもしれませんね。
アドバイスありがとうございます。

> 次の話も楽しみにしています
楽しみにしていただけるよう、次回も頑張ります!

それでは、どうもありがとうございました!

2013-07/13 23:36 (Sat)

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