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『ドール・メイカー』 後編

50万ヒット記念50本リクエスト
リクエスト17『MC・人形化もの』後編です。

それでは、続きからどうぞ!
 
『ドール・メイカー』 後編
 


 部長は新しく生み出した人形達を引き連れて、大きな観光バスに乗り、とある有名なグランドホテルに向かっていた。
 現在人形達は素材本来の性格や人格を有した状態であるため、全員が全員、それぞれ思い思いの言動を取っているため、バス内は姦しいというレベルの騒ぎではなかった。不良じみた女子や真面目な委員長系の女子まで、幅広い女子が同じ車内に閉じこめられているのだから、その姦しさも仕方ないといえるが。
 部長はその姦しさの中、唯一の男子として喧しさに時折顔をしかめながらも、あえてそれを遮ろうという気はないようだった。彼が一声命じれば呼吸音一つ立たない無音の車内に出来るのだが、それをあえてしようとは考えない。むしろ、彼女たちのそんな姦しさも新鮮でいいとでも言うような態度で、彼はその喧噪を受け止めていた。
「変人ぶちょー。なによんでんのー」
 礼儀など知ったことではないと言うかのように、とある女子が部長の読んでいる本を脇からのぞき込む。部長は苦笑して背表紙をその女子に示した。
「んー……? ヨメナイー。アメリカ語?」
 投げやりな態度でその女子は唸る。
 実にいい加減なその女子の言い分に、部長はさらに苦笑を強める。
「いや、ドイツ語だよ。たぶん英語のことをいいたいんだと思うけど、アメリカ語なんていったら笑われるぞ?」
「別にー。アホなのは事実だし」
 いっそ清々しい言い分だった。部長は呆れるしかない。
 そんなアホな女子を、横に座っていた別の女子が窘める。
「ミナトさん。人の読書の時間を邪魔してはいけませんよ」
 理知的なめがねをかけた、典型的な優等生タイプだ。めがねのツルを指先で押し上げる仕草が嫌みなく決まっている。
「テルちゃん、うざーい。いいじゃんちょっとくらいー」
「誰がテルちゃんですか! 私は照山だと何度申せば理解してくださるのです? いいかげんその子供じみた呼び方はやめてくださいと何度も何度も――」
 憤懣やるかたないといった調子で、照山は文句を言う。ミナトの方は興味なさげに目を閉じた。
「テルちゃんがうるさいから寝るー。変人ぶちょー、もたれ掛かってもいい?」
「構わないけど」
「ありがとー」
「こら、ミナトさん! 話はまだ――」
「テルちゃんうるさいー。読書の邪魔しちゃだめなんじゃないのー?」
 そのミナトの言い分は理不尽なものだったが、照山は思わず口を噤んでしまう。ミナトよりもずっと賢いであろう照山がやりこめられている様子に、思わず部長は笑ってしまった。
「相変わらずだな、二人は」
「……お恥ずかしい限りですわ」
「幼なじみなんだっけ?」
「不本意ではありますが、そうですわね。幼稚園の年少組からずっと一緒です。……幼馴染というより、腐れ縁という言葉のほうがしっくり来ますわ」
 ため息を吐きながら照山は眠るミナトを睨みつけている。それを気にしていないのか、単に気づいていないだけか、ミナトはすやすやと眠り続けていた。
「そんな調子じゃ、喧嘩が絶えないだろ?」
 何気なく部長が尋ねて見ると、照山は少し考えて首を横に振った。
「いつもこんな調子ですわ。喧嘩しようとしても、ミナトさんがのらりくらりとかわしてしまわれるので、実はそこまで激しい喧嘩はしたことがないんですの」
「へえ? じゃあ取っ組み合いとかも?」
「あり得ませんわね。私はそういう野蛮なことが嫌いですし、ミナトさんはミナトさんでそういう痛いことは避けたがりますし」
 その話を聞きながら、部長は唸る。
「ふーん……なるほどね」
 なにがなるほどなのか。その部長の真意は誰にもわからないまま、バスは目的のホテルにたどり着いた。
 窓の外を見ていて、ホテルを見た女子達から歓声があがる。
「うわーっ。すごいホテル!」
「ものすごい豪華じゃん! すごーいっ!」
「あっ、見て見て、プールもあるよ!」
「きれー……っ」
「これはすごいなぁ……学校の行事なんかで来ていいところなの、ここ?」
「そんなの、どーでもいいじゃん! 早く部屋いきたいなー」
 何十倍もの騒がしさで賑わう女子達に向け、部長が口を開く。
「おい、お前達。降りたら地下の特設会場に向かうんだからな。遊んでる時間はないぞ」
 その無慈悲な言葉に対し、女子達から不満の声が大きくあがる。
「えー、なんでーっ」
「せっかく来たのに……」
「遊べるんじゃないの……? なんだー」
「仕方ないかぁ……でも……ぷーる……」
 女子らしく不平不満を遠慮なく口にする彼女達であったが、一定以上の不満を抱いている者はいなかった。仕方ないという体ではあったが、全員部長の言葉を受け入れている。
 それは考えてみれば異常な状況であったのだが、誰もそのことを気にしていなかった。
 バスがホテルの前に停まり、部長が立ち上がる。
「さて、行くか」
 修学旅行生のように、バス一台分の女子生徒達が手厚い歓迎を受けながらホテルの中に吸い込まれていく。


 そこはグランドホテルの地下。
 照明が絞られた広い空間に、たくさんの人の気配が蠢いていた。かなりの広さがあるようだが、具体的にどれくらい広いのか、はたまたどれほどの数の人間がそこに集まっているのか、それはわからない。
 かすかな人のざわめき声が満ちる空間に、一筋の光が差し込んだ。
 そのスポットライトに照らされたのは、学校内では変人として名高い科学部の部長だった。学校の制服をきちんと着ているが、その態度にはどこか覇気のなさが滲んでいる。この瞬間だけを見れば、たまたま他に立候補するものがいなかったからという理由で生徒会長になってしまった生徒が、文化祭などの宣誓をしなければならなくなったのかと思うほど、彼には覇気がなかった。マイクを手にしていた彼は、たどたどしい様子で言葉を放つ。
「えー……お集まりのみなさん、ようこそ。お馴染み、ドールメイカーです。えー、今回も多種多様な人形を用意させていただきましたので、えー、お気に入りの人形が見つかることを祈っております。ということでー、えー、あ、どうぞ心行くまでお楽しみください」
 始まりの挨拶というには、あまりにも投げやりな挨拶に、至る所から苦笑が零れ、それ以上の拍手で空間が満ちた。
 スポットライトが自分から離れていくのを感じ、部長は一つ大きなため息を吐く。そんな彼に笑いながら話しかける者がいた。
「相変わらず、口下手だな。君は」
 部長は話しかけてきたその人を見て、苦笑いを浮かべる。
「だから嫌なんですよ……なんで毎回俺が挨拶しないといけないんですか?」
「様式美、という奴かな。あと、顧客だって生産者の顔くらい見ておきたいものさ。別に長々と数分間のスピーチをしろと行っているわけじゃないし、これくらいはがんばってくれよ」
「まあ、いいんですけど……この展示会に関しては全部あなたに一任してますし」
 そういって部長はホテルの地下に広がる会場を見つめる。
 先ほどまで部長を照らしていたスポットライトは別の場所にいた司会者らしき女性に当たっていた。その女性は笑顔を浮かべているが、その目に光はなく、淡々とした声で話し続けている。
『と、いうことで――今回、新しく出展される20体の人形をご紹介しましょう』
 そういって女性が手を広げると、その先の会場の一角がライトによって照らされた。
 そこには雛壇のように足場が組まれており、真正面から全員の顔が見えるように高低差をつけながら、二十人の女子達が並んでいた。女子達は全員一糸纏わぬ全裸で、その若さあふれる健康そうな肢体を惜しげもなく晒している。個人によってはスポットライトの光が反射され、眩しいほどの輝きを有している者もいる。
 並べられた女子達は一様に感情を見せず、張り付けたような無表情でその場所に立っていた。年頃で恥ずかしく思う気持ちもないわけではないだろうに、そんな様子は微塵も見せず、体を隠す訳でもなく、ただその場に並んでいる。
『この粒ぞろいの新作達をご覧ください。様々な趣味嗜好にお応えすることが出来るよう、身長百五十センチ弱の個体から百八十近い長身までを豊富に――』
 視界役の女性が人形達の説明を行っている間、部長はすぐ傍に立つ青年と話していた。
「そういえば……この前直接注文されてた特別仕様の人形。あれには満足していただけましたか?」
「ん? ああ、以前頼んだあの人形ね。いや、実に大満足だったよ。ダメもとでお願いしたんだが、まさか本当に手足の切り離しを可能にするなんてねぇ。全く君の技術は末恐ろしいね」
「……あれも、もう少し気軽に取り外せるようにしたかったんですけどね。切り離した手足を漬けておくための維持液のせいで割高になっちゃってますし」
「それは仕方ないんじゃないかな? 普通に考えて胴体から切り離された四肢がそんな長時間保つ訳ないしね。維持液が必要とはいえ、やろうと思えばずっと切り離したままにも出来るようにしただけでも十分だと思うよ。おかげで最近、夜が楽しくてね」
「……それは、何よりです」
「僕は非力だからね。女の子を持ち上げたままセックスってのが中々難しかったけど、手足を取り外してしまえばずいぶん軽いから助かるよ。ペニスケースみたいな感じで使ってるんだ。あれは実に気持ちいいね」
 笑顔でそんなことをいう青年に対し、部長は少し考えた後で口を開いた。
「望まれるのであれば……外見は変えずに、筋力を強化することが出来ますよ」
 その提案に、青年の目が輝く。
「えっ? 本当かい? それはちょっとぜひ詳しく――」
 思いがけない部長の提案に食いついた青年だったが、新作の人形達のデモンストレーションの時間が始まりそうだったため、いったん話を中断するしかなかった。
「おっといけない! ごめん、あとできちんと聞かせてもらってもいいかい? 僕も色々動かないと」
「構いませんよ」
「それじゃあ後で! あ、君はもう自由に会場を歩いてて!」
 それだけを言い残すや否や、青年は素早く会場内に溶け込んでいった。それを見送った部長は、にわかに活気立つ会場を見渡し、その中を適当に歩いてみることにする。今日は人形の性能を見せるといった体で、様々な見せ物が行われる予定だった。もちろん人形の制作者である部長は全ての人形のスペックも、出来ることも、それがどんな人形なのかも全て知っているが、こういうところでその性能をショーという形でみるというのは、また別の面白さがある。
 また、集まった顧客の様子や反応を見て今後の開発傾向を探るというのも、彼がするべき大切なことだった。
「とりあえず……どっから見て回ろうかな」
 適当に目に入ったところからでいいかと会場を歩き出した部長。その道中、たくさんの顧客から声をかけられた。自らが所有する人形を傍に侍らせた顧客達は、皆一様に彼に向けて感謝の言葉を口にする。それに対して適当に応じながらも、部長はこれだけでも来たかいがあったと満足していた。
 研究者としての面が強いとはいえ、彼も商品を提供する立場にある人間として、顧客が喜んでくれているという事実は嬉しいことなのだ。
 そのとき、顧客の相手をしていた彼の視界に、ふと新商品達の様子が入ってきた。
「お……? これは……」
 出し物については全てあの青年に一任しているため、部長はどんな出し物があるのか把握していなかった。だから部長が出し物を見るのはこれが初めてだったのだが、その出し物の様子に感心してしまう。
 現在彼の前で行われている出し物は、数人の人形達が並んで走るリレーのような競技だった。
 ただし、普通に走るのではなく、四つん這いになっての競争だ。膝を地面につかないように大きく足を広げて、転ばないようにバランスを取りながら進んでおり、その滑稽ともいえる様子は見る者の眼を楽しませる。大きく足を開いているので、当然股間も丸見えで、滑稽でもあり、卑猥でもあった。移動するたびに彼女達の胸やお尻が揺れ、見ている者は快哉をあげる。
「四つん這いレース、か……おもしろいことを考えるな」
 感心して見ていた部長に、顧客の一人が話しかけてくる。
「おお、ドールメイカーどのではないですか。楽しませていただいてますよ」
「それはどうも、ありがとうございます」
「いやいや、全くあなたの作る人形はどれもすばらしいですよ。……ところで、私はぜひ人形を犬のように扱いたいのですが、語尾のみを変えることは可能ですかな」
 その突然の要望に、部長は眼を丸くする。
「その程度のことでしたら、容易いことです」
「左様ですか! なるほど、では今回の新商品を一体手に入れた暁には、ぜひともそのオプションを追加していただけますか。その分の価格は上乗せしてください」
「いえ、それくらいのことなら、別に追加料金なんていりません。サービスでおつけしますよ」
「なんと! これは太っ腹な方だ! これからも楽しみにしておりますぞ!」
 愉快そうに笑うその男性は、部長に向かって礼をすると、その新商品の目星をつけようとしているのか、いままで以上に真剣な眼差しで四つん這いレースを眺め始めた。
 一方、部長はさっそく得られた発想をメモする。
(なるほど……全体の変化じゃなくて、語尾のみの変化か……これは盲点だったな。確かにそれだけでもずいぶん感じは変わるだろうし……問題はこれをどうやって実現するかだけど……)
 ぶつぶつ呟きながら部長は会場内を歩く。
 あるところでは、どうみても華奢な少女が二百キロはありそうなバーベルを苦もなく持ち上げていた。その状態で性感帯を責められても頭上に掲げたバーベルはびくともしない。外見はそのままに、筋力を極限まで鍛え上げた人形だった。以前部長が実験した人形はオーダーメイドの一品であったが、そういった需要もあると感じた部長が何体かの人形に実装した機能である。
 他にも、関節などの部位を柔らかくした人形がいて、自分の性器に顔がつくほど体を曲げたり、両足を頭の後ろで交差させ、両手でそれを固定し、非常にコンパクトな空間に収まることをアピールしたりもしていた。
 また、呼吸や心拍数を限りなくゼロにした長期保管状態を実現した『スリープモード』を実感してもらうために、十分間全身を水に浸からせてから取り出した人形が何事もなかったかのように動き出すというショーも執り行われていた。
 まさに多種多様。様々な方法で人形のすばらしさを顧客に伝えていた。部長はそんな会場内を満足げに眺める。
(さすがは元大企業の広報員ってところかな……俺じゃこうはいかなかっただろうし……よくまあこれだけ色々な出し物を考えつくもんだ)
 そこまで考えた部長は、不意に大事なことを思い出した。
「あ、いっけね。そういや忘れてた」
 普段こういった時の出し物は全てあの青年に一任していたが、今回に限って急遽出し物に追加して欲しいと頼んでいたものがあったのだ。
 慌ててその出し物を探そうとしたとき、それを見計らっていたようなタイミングで最初に司会をしていた少女が部長の前に現れた。
「ドールメイカー様。ご主人様がお呼びです」
「わざわざ呼びに来てくれたのか? ありがとう」
 礼を言った部長はその司会の少女の後についていく。ほどなくして部長は人垣が出来ているスペースにたどり着いた。最初女子達が並んでいた雛壇が観客席代わりのようだ。くの字型におかれた雛壇の前に出来たスペースでは二人の女子が向かい合って立っている。向かい合っているのは、ホテルに来るまでの道中、部長の傍にいたミナトと照山だった。照山の方はトレードマークである理知的な眼鏡だけはかけたままであったが、二人とも他の人形と同じように一糸纏わぬ全裸で、無表情のままお互いを見るとはなしに見ている。
 雛壇の脇に今回の展示会の責任者である青年が立っていた。
「おっ、待ってたよ。これから始めるところだ」
「突然の提案ですいません」
「なにを言ってるんだい。急な要望に応えてこそプロというものさ。……とはいえ、さすがにそれ用の設備はなかったからちょっと急拵えではあるけどね……出来ればリングを用意したかったところなんだけど」
 そう青年が言う間に、司会をしていた少女が再びマイクを握っていた。
『それでは、サプライズイベントの開催です』
 大きな拍手が巻き起こる。
『イベント名は、キャットファイト。人形同士の激しい攻防をとくとご覧ください。それでは……ready――fight!』
 急いで準備した割には、きちんとしたゴングの音が鳴り響いた。
 その合図を皮切りに、向かい合っていた人形が――ミナトと照山が同時に動き始める。
 開始早々、照山がいきなり大上段の蹴りを放った。大股開きになってしまうのも厭わない鋭い蹴りは、ミナトがわずかに身を屈めたことで空を切る。ミナトが無防備になっている照山の足に向けて鋭いローキックを放った。
 軸足に蹴りを叩き込まれれば下手をすれば骨折ものだ。それをわかっているのか、照山は強引に片足で飛び上がり、ミナトのローキックをかわした――どころか、その勢いを殺さないまま体を回転させて、先ほどは振ってかわされた蹴りを、今度は踵を鋭く突き出すようにして放つ。
 その速さは先ほどのそれとは比べものにならないほど速い。ミナトは咄嗟に顔の前で両腕を交差させ、その蹴りをガードした。骨が軋むような鈍い音がして、ミナトの体が十センチ後退する。
 と、観客には見えたが、気づけばミナトは照山の目の前に迫っていた。先ほど蹴りを受けたとき、ミナトは器用に上半身だけを逸らして反動を受け流しつつ、下半身はむしろ前に進んでいたのだ。足で地面を掴み、後ろに下がった反動も乗せたミナトの頭突きが、まだ空中にいた照山の胸部に叩き込まれる。
 空中の照山は踏ん張ることも出来ずにその衝撃をもろに受け、吹っ飛ばされる。まるでダンプか何かに弾き飛ばされたかのような激しい飛ばされっぷりだった。だが、照山は崩れた体勢を体を丸めながら回転することで修正。足から着地した。足を器用に曲げて着地の衝撃を軽減する。そして次の瞬間には前に飛び出し、右に左にフェイントをかけながらミナトに迫る。
 迫ってくる照山に対し、鋭い右ストレートを繰り出したミナトだったが、それは照山に読まれていた。体を反転させながらミナトの拳をかわした照山が、その伸びきった腕をからめ取り、一本背負いの要領で投げ飛ばす。地面に叩きつけられるあでの一瞬で、ミナトは体を捻って体勢を立て直し、足から地面に接地する。目にも止まらないやり取りだ。
 二人はプロレスラーがよくやるようにがっしりと真正面から指を絡ませ合い、見る者にも伝わってくるほどの力強さで、力比べに移行した。
 その間、ぽかんとした顔で眺めていた青年が、満足そうに二人の様子を眺めていた部長に慌てて耳打ちをする。
「ちょ、ちょっと! 戦わせてみるって、こんなガチ戦闘になるなんて聞いてないよ!? なにこの二人、武道の達人か何か!?」
「いや、体つきを見ればわかると思うけど、そんなことはないですよ。単に武道の経験をインプットしただけです。本来武道っていうのは積み重ねが大事なものですけど、その経験も体に組み込めば問題ないですよね」
「理屈はそうだけど……」
「いけませんでしたか?」
 少し不安に思って部長が尋ねると、青年の方は慌てた調子で手を横に振った。
「いや、ごめん。ここまでガチ格闘になるとは思ってなかったから……もっとこう、いやらしい感じというか、卑猥な感じで戦うのかと思ってて……」
 苦笑いを浮かべる青年に対し、部長はなるほどそうした方が良かったのかと反省する。今後の課題としてメモに残しておくことにした。
 観客の期待は青年のいうような性的なキャットファイトだったのだろう。まさかここまで本気の戦闘になるとは思っていなかったらしく、半ば放心してしまっている。
 しかし、ここでただで起きあがらないのが、青年がこの会場を任されている所以だった。司会役の少女に近づき何かを耳打ちする。
 すぐに司会の少女が喋り始める。
『ご覧ください! この見事な攻防を! これからの人形はただの愛玩物では終わらないのです!』
 あえてなのだろう。声に抑揚を付け、煽るような口調で司会者の女性は続ける。
『これぞ、万が一の時、身を呈してご主人様をお守りする『戦闘モード』です! この武道の達人がごとき動きを見せてくれている二体には全く武道の経験がありませんが――』
 続く説明を聞きながら、部長は感心していた。そういう目的があると思えば、この不要なまでに本気の戦闘も非常に魅力的に映る。
「さすがですね」
 柔軟に物事に対応する青年の手腕を部長が誉めると、青年は笑みを持って応じた。
「いやいや。君の技術ほどじゃないよ」
 嫌味のない言葉の応酬を二人が交わしているうちに、ついにミナトと照山の戦いに決着が訪れた。
 照山の一瞬の隙をついて、その背に回り込んだミナトが裸締めをかけ、見事照山の意識を刈り取ることに成功したのだ。ミナトが照山を離すと、力なく照山は地面に倒れ伏す。
 固唾を飲んで見守っていた観客達から割れんばかりの歓声がわき起こる。
「すごかったな!」
「ああ、すごかった! 見たか最初の蹴りの鋭さ! 私は武術やってるけど、あんな蹴り、相当なものだぞ!?」
「組み合ってからの攻防がすごかったな! 息を吐く暇もなかったというか……!」
「あれうちの人形同士でも出来るのか? ぜひやらせたいぞ!」
 ざわざわ、と大盛況であることを示すように騒ぎは収まらない。
 そんな騒ぎを押さえるように、司会の少女が大きな声を張り上げた。
『さて、見事な攻防には決着がついた訳ですが……敗者には当然、罰ゲームがあってしかるべきだとは思いませんか?』
 その言葉が意味することを理解した観客達が、一斉に本来の目的に添った顔つきになる。
 司会者の女性が倒れている照山に近づくと、無造作にその身体を引き起こす。小さく耳元で何かを言うと、照山の意識が戻り、自力で立ち上がった。何を言っているのか部長のいる一からは聞こえなかったが、司会者が何やら続けて照山に向けて言った後、その眼前に三本の指を立てて見せていた。すると、虚ろだった瞳に意思の光が灯る。
「あ……れ……? ここは……どこですの……?」
 自分の置かれた状況がわからなかったのか、照山が不思議そうな声を上げる。その数秒後、自身のおかれた状況の異常さに気付いたようだった。
「え……? な、なんで裸なんですの!? ミナトさんまで! こ、これはどういうことなのです!?」
 慌てて手で身体を隠して蹲る照山に対し、司会者の女性がにこやかな笑みを浮かべる。
『あなた、その場でオナニーをしなさい』
 その唐突かつあり得ない指示に、照山が目を見開く。
「そ、そんなこと出来るわけありませんわ!」
『あら? そういう割に……あなたの身体は素直みたいですけど』
 わざとらしく司会者が言いながら照山を指し示す。照山が目線を自分の身体に向けると――その身体は自分の性器をさっそく弄り出していて、指示通りオナニーを始めてしまっていた。
「う、そっ、何で――っ!」
 左手が乳房を揉みし抱き、その先端の乳首を捻りあげる。その動きに反応して、彼女の身体がびくり、と震えた。
 さらに右手はよく濡れている秘部をまさぐり、わざと大きな音を立てるように刺激を与えていた。
「はぅっ、こんなっ、私、やってなっ……ひぁっ!」
 身体が勝手に動く恐怖も、徐々にその身体自体が生み出す快感に流されていく。程よく時間を置いたところで、司会者の女性が見ていた顧客達に向けて呼びかけた。
『皆さんの中で、罰ゲームに協力してくださる方はいらっしゃいませんか?』
 その言葉に、顧客達が我先にと手をあげる。普段、購入していない人形に手を出すことはNGであり、こういう機会でもなければ購入していない人形に手を出すことは出来ないのだから、その反応も当然であった。
「こういう反応も新鮮でいいね」
「ああ。見た目はそのままで腕力だけ増強するオプションに並んで、最高のオプションだな」
 照山にとっては勝手なことを言いながら、顧客達はペニスを取り出し、照山に迫る。
「ひぃ……っ」
 恐怖で戦く表情を浮かべる照山だが、その表情がまた彼らを刺激するのだと気付いていないようだった。
『さあ、あなたの全身を使って皆さんを満足させて差しあげなさい』
「い、いやぁ……っ」
 口では刃向かっても身体は素直だった。
 周りに集った顧客達のペニスを手でしごき、口に咥え、胸で挟み――涙をぼろぼろ流しながらも照山は顧客達に奉仕を続ける。
 彼女に群がる顧客達を楽しげに眺めていた青年に対し、同じようにその様子を見ていた部長が声をかけた。
「すいません、俺はもう部屋に行きます。あとは全てお任せしても構いませんか?」
 いきなりの申し出に、青年は驚く。
「え? どうしたんだい? 元々君にしてもらう予定だったのは最初の挨拶だけだったから、もう問題はないけど……どうかしたのか? まさか、気分でも悪くなった?」
 その青年の心配そうな言葉に、部長は笑いながら首を横に振る。
「いえ。違います。ちょっとインスピレーションが湧いてきちゃって……この発想を詳しく書きとめておきたいんです」
「ああ、なんだそういうことか。そういうことなら遠慮なく部屋に行ってくれ。新しいオプションを楽しみにしているからね」
 朗らかな青年の言葉に、部長は歳相応な笑みを浮かべる。
「任せてください。……それでは」
 青年の傍を離れ、部長は会場から去っていく。
 彼が去った後も、『人形』の展示会は続いた。

 そして、ここで得た発想を元に、ドールメイカーはまた新たな『人形』を生み出すのだ。
 
 
 
 
『ドール・メイカー』 終
 
 
 
 

Comment

No.1160 / 名無しさん [#-]

前中後にわたる大作お疲れ様でした!
読みごたえがあり、シチュエーションも様々、人形化好きとしては非常に使える作品となっており満足致しました!
特に後半のガチバトルは良かったですね。
一切格闘とは無縁の少女が幼なじみにプロ顔負けの容赦ない攻撃!
それが全てインプットされた情報、行動なんて正に人形化、洗脳物ならではといった感じで面白かったです。

もういっそシリーズ化してもらいたいくらい気に入ってしまいました!
筋力増強といった人体改造系のシチュエーションも含まれてましたし、まだまだいけそうな気がしますし!
それでは次回の更新も楽しみにしております!

余談ですが、筋肉娘好きとしては見た目は文系少女にも関わらず脱いだら格闘家ばりの引き締まった肉体なんかに改造されていたほうがギャップがあって良かったのではないでしょうか?


2013-06/17 20:20 (Mon)

No.1161 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

コメントありがとうございます!

> 前中後にわたる大作~
ありがとうございます!
私も感想をくださる方がいるので頑張れます。本当にありがとうございます!


> 特に後半のガチバトルは~
ガチバトルをお褒めいただきありがとうございます。
ぶっちゃけ、今回書いてて思わず一番力を入れてしまった部分です(笑)
なぜここに力を注いだのか、と言われなくて良かったです。

> もういっそシリーズ化して~
ぎくり。
実はシリーズ化したいと考えてしまっている自分がいたり……(笑)
ドールメイカーシリーズとして、今後は顧客側の視点とか、人形側の視点とか書きたいなー……とか。
思ってるんですよねぇ……(汗)
リクエスト書き終わるまで自重するつもりですが、ひょっとしたらしれっと短編書いてるかもしれません(笑)

> それでは次回の更新も楽しみにしております!
ありがとうございます!
またぜひどうぞお越しくださいませ!

> 余談ですが~
あー、実は今回、リクエスト内容が外見は変えずにというものだったんです。
最近某アニメで可愛い筋肉娘がいることもあって、そういう娘も書いてみたいなー、とは思っているのですが……見た目文学少女中身筋肉娘ですかぁ……そのギャップ萌えは大事ですよね。
アイデアの中にメモっておきます。

それでは、本当にありがとうございました!

2013-06/17 22:43 (Mon)

No.1166 / けーさん [#-] No Title

素晴らしい大作、お疲れ様です!

特に中編の展開は、人形化好きの私にはたまらん描写ばかりで大興奮でした。
性的経験の少ない子にエッチなデータをインプットして、手慣れた娼婦に仕立てあげるとか。
簡単な命令一つで意識を奪い、主人公の都合・気まぐれで自意識を戻して様子を見るとか。
自意識を消去するか残すかという大切なことを、主人公の気まぐれやビジネスの都合で決定されてしまうとか。

シリーズ化、ほんのり期待しちゃいます!

2013-06/18 15:31 (Tue)

No.1167 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

けーさん様、コメントありがとうございます!

> 素晴らしい大作、お疲れ様です!
正直、疲れました……いや、自分が書きたいだけ書いたつもりですので、そういう意味ではいい疲れなんですが。普段の二倍書いたので結構しんどかったです。

> 特に中編の展開は~
お気に召していただけたようでなによりです。
今回書いてて、人形化は奥が深いとつくつぐ感じましたね。
シチュエーションもそうですが、素材の設定次第でも大きく展開が変わったりしますし。
まだまだ書けるシチュエーションも私が考えるだけでもありますし……。
今回私が書いたものなんて、まさに氷山の一角に過ぎないと思います。

> シリーズ化、ほんのり期待しちゃいます!
が、頑張ります。出来るとしても相当先の話にはなりそうですが……(汗)

それでは、どうもありがとうございました!

2013-06/18 22:20 (Tue)

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