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『雑貨店へようこそ』 ~丸薬~ その2

 これは前に書いた『雑貨店へようこそ』シリーズの『丸薬』の続きです。
 投票数的に指輪とか針とか瓶とかの続きを書きたかったのですが、こっちの方が書きやすかったので記念すべき『雑貨店』シリーズ初の続きは『丸薬』で。

 ちなみに続きものは大体5000字程度で次々更新していく形式をとりたいと思います。
 ある程度長さが溜まったら纏めたいとも思いますが……とりあえずどんどん更新していくことを目標にしたいと思います。

2011/11/14
追記:間違いがあったので修正しました。
指摘してくださった方、ありがとうございます。

前の話はこちら→ 

 では、続きからどうぞ。

雑貨店へようこそ ~丸薬~ その2



 女子剣道部主将、桜坂美咲。
 その比類なき強さはかつて戦場で活躍したと言われる女武将『巴御前』と同列に語られるほどのものだ。
 もっとも、本人は「あの時代の人間と同列だというのは言いすぎだ」と苦笑する。曰く、自分と巴御前とでは覚悟のレベルが違うとのことだった。
 確かに剣道は命を賭けることこそない。けど、俺から見ても先輩の覚悟はそれに勝るとも劣らないものであると思っている。
 目つきが違う、といった人もいるけど、確かに試合中の先輩の目は他の誰と比べても違う。
 視線だけで人が殺せるなどという「それはどこの魔眼だ」と言いたくなるような噂が横行するのも納得いくくらいだ。
 試合中はそれだけで人を殺せそうな先輩のその目が――こんなに優しい光を放つことを知っているのは、きっと俺だけだろう。
 そう思い、至福に満たされていると、こちらが見ていることに気づいた先輩がにやり、と意地の悪い笑みを浮かべた。
「真樹。私の顔に何かついてるか?」
 その先輩の言葉にじっと見つめていたことに気づいた俺は慌てて首を横に振る。
「い、いえ! なんでもないです!」
 慌てる俺を見た先輩はますます意地の悪い笑みを深くする。
「そんなに見つめられると緊張してしまうじゃないか」
 絶対に嘘だ。
 先輩がどんな状況でも冷静なのは、剣道の試合中と同じで日常生活でも変わらないらしく、俺はまだ先輩の慌てふためいたり、緊張したりしている顔を見たことがない。
「そ、それより、次はどこに行くんですか?」
 話を逸らすために質問してみたが、実際に気になっていることでもあった。
 今回のお出かけのルートは全て先輩に一任しているので俺はまだ知らないのだ。
 すると先輩はにやりとした笑みを、にっこりという表現が出来る笑顔に変えて答えてくれた。
「うむ……そうだな。次はショッピングだ。真樹の可愛い服を探しに行こう。それから……ホテルにチェックイン?」
 最後の言葉に思わず呑んでいたコーラを吹いた。
 咳き込む俺を笑いながら先輩がハンカチを出して唇から垂れたコーラを拭いてくれる。
「大丈夫か? 真樹」
「けほっ……ちょっと、美咲先輩……っ。そーいうことはこういうところで言わないでくださいって……言ってるじゃないですか」
 こういうところ、とは極普通のファーストフード店だ。
 周囲のテーブル席にも人はいるし、聴かれたらどうするつもりなんだ?
 しかし美咲先輩は澄ました顔で応じた。
 この人は絶対に俺の反応を楽しんでいる。何度も言われてなれない俺も俺だが。
「誰も人の話など気にしていないものだ。もし聴かれたとしても冗談の類だと取られるさ」
「……いや、それはどうでしょう」
 美咲先輩は女にあるまじき精悍な顔つきをしているからな……もちろん、体つきとかを見れば一発で女だとはわかるけど……。
「先輩、そういうことは、ひた隠しにしていたんじゃないんですか?」
 確かにそう聴いた覚えがあるのだけど……気のせいだったのか?
「ん? まあ、確かに自分から言う必要はないとは思っているが、別に知られるのは構わないさ。――私には真樹がいるしね」
 こういう台詞をさらっと言える辺りが、真樹先輩は本当に男らしいんだよな……元が男の俺よりずっと。
「……恥ずかしいこと言うの、禁止です」
 拗ねた振りをしてそっぽを向きながら、明らかに赤くなった頬には気づかれているだろうな、と思った。


 ある時、俺は不思議な雑貨店で『願いを叶えてくれる丸薬』を手に入れた。
 それを呑んで『美咲先輩の傍にいられるように』と願った俺は、なぜか女になってしまい、時折発作を起こす心臓病まで患うことになった。
 でも、それらを代償として美咲先輩の一番近く……『恋人』のポジションを得ることが出来たのだ。
 美咲先輩は同性愛者という奴で、だからあの『丸薬』は俺の体を女としたのだろう。
 全然意識はしていなかったけど、案外男の体というのは楽だったようで、女の体となってからは様々な苦労があった。その苦労の細かい説明は……勘弁してほしい。美咲先輩にも散々迷惑をかけたし、思い出したくない。
 なにはともあれ、ようやく落ち着いてきた頃、俺と美咲先輩は何度目かのデートに出かけているのだった。


「うーん、やはり真樹にはワンピースが似合うね」
「そ、そうですか? ……ちょっと子供っぽい気がしますけど……」
 ある店にやってきた俺達は、のんびりとショッピングを行っていた。
 いまは試着していいものがないかどうか探している。
「いや、真樹だから似合うんだよ。考えても見てごらん? 私がこんな服を着ても絶対に似合わないよ」
 ワンピースを着ている美咲先輩を想像してみる……いや、似合うんじゃないかな。
 というか、美咲先輩はすらりとした長身で、しかも顔が中性的な感じだから基本的にどんな服でも似合う。
 スカート系は好きじゃないらしく、あまり穿いているところを見ないけど。
「そういえば……今日はあの店員さんはいないんですね」
 ふと思い出したことを言ってみると、美咲先輩は苦笑気味に頷いた。
「そのようだね。……この前は本当に申し訳なかったと思っている」
 珍しく殊勝な態度になっている美咲先輩を励ますために、首を横に振った。
「いえ、いいんです……あれはあれで楽しかったですし」
 以前、この店に来た際、お手洗いに行った美咲先輩と別れて、一足先にこの店に来たのだけど……パワフルな店員さんに促されるまま、色んな服を着せ替えられ、ほとんどおもちゃみたいな扱いを受けてしまったのだ。
 自分が強く拒絶出来なかったせいだし、美咲先輩のせいではないのだけど、先輩は責任を感じてしまっているらしいのだった。
「ほんと、気にしないでください。あの府湖さんっていう店員さんも、親切でしてくれたんですし」
「……うむ……真樹がそう言うならいいんだが……」
 ちなみに、真樹先輩が不本意だったのは無理やり着替えさせたこともなんだけど、なにより自分が着せ替えて選びたかったのに先を越されたから、だそうだ。
 ……子供か。
 たまに美咲先輩はこういう子供っぽいことを言う。
「ほら、今日は美咲先輩が選んでください。色々着てみたいですし」
「ああ。任せろ」
 男らしく請け負った美咲先輩は早速服を選びだした。
「ふむ……ノースリーブは季節的にな……ブラウスは色々着てもらったし……ここはシンプルにシャツという手も……」
 うきうきと呟きながら美咲先輩は楽しそうだ。
 こういう美咲先輩の姿を見れるのは俺も楽しくて嬉しい。
 感慨深く美咲先輩の姿を眺めていると。
「……相変わらず、ラブラブね」
 突然そんな声が背後からかけられて驚いた。
 振り返ると、そこにはスーツを着た、まさに『できる人』な女の人が立っていた。
「お久しぶり。また買いに来てくれたのね。この前はうちの店員が失礼なことをしてしまったから、もう来てくれないかと思っていたわ」
「あ、どうも」
 この人は三輪美紀というこの店の支配人で、先日おもちゃにされていた俺を助け、殺気立つ美咲先輩に真正面から堂々と渡り合った……なんというか、凄いけどちょっと怖い人だ。
「このお店、品揃えがかなりいいですし……それに、先日のあれは親切でしてくれたことですし……」
「そう言っていただけると店の支配人として嬉しいわ」
「……こんにちは」
 美咲先輩がひじょーに警戒した表情で俺の背後に立った。
 三輪さんはほんのわずかに苦笑して踵を返す。
「どうぞごゆっくり。新作なども取りそろえていますので」
 一介の店舗の支配人とは思えない堂々とした態度で歩き去る三輪さん。
 ……っていうか、むしろ女王?
「私もあの人は苦手だ……」
 そう美咲先輩が呟き、俺の肩に頭を乗せてきた。
「美咲先輩?」
「すまない。少し疲れた。充電させてくれ」
 充電て。何か吸い取ってるんですか?
 数秒間そうしていた美咲先輩は、顔を上げたときにはいつもの美咲先輩だった。
「さて、じゃあ気を取り直して次の服行こうか。これから先の季節、寒くなるだろうからこの温度調節が容易なカーディガンを一着は買っておこう。特に真樹の場合、体のこともあるし」
「あ、はい。すいません、気を使わせて……」
 女になったことはともかく、この心臓病に関してはどうにも不便という気しかしないな。
 まあ、この心臓病がなければ女になっても美咲先輩とこんな関係になることはなかったのだけど……下手な行動をして発作を起こしたら本気で苦しいし、死ぬことはないとわかっていても怖くなる。
 発作を起こして美咲先輩に迷惑をかけたことも一度ではないし……。
 なんとか治ればいいのだけど、どうも不治の病だと診断されているらしい。
 そんなことを考えて少し暗くなっていると、不意に美咲先輩がキスをしてきた。
 一瞬だけだったけど、こんな周囲に人もいる店内で!!
「な、ななななにするんですか!!」
 驚きすぎて心臓が止まるかと思った。
 抗議しようと声をあげたら、意外に真剣な美咲先輩の視線が向けられていて、何も言えなくなった。
「気にすることはない、と言ったはずだ。真樹。病気のことは真樹の責任じゃないし、誰の責任でもない。だから真樹が気にする必要はないし、病気の人に気を使うのは人として当然の行為であり、真樹が謝ったり引け目に感じたりする道理はない」
 少なくとも私には気にする必要なんてない、と優しく美咲先輩は言ってくれる。
「だって、私達は『恋人』なのだから、ね?」
 にこり、と笑いながら言われた台詞に、思わず感動してしまった。
 まだ病気持ちになってから数カ月だけど、こういう反応をしてくれる人は実のところ少ない。
 人間社会というものは大多数と違う者に対しては非常に厳しいものであることを嫌でも実感せざるを得なかった。
 もちろん面と向かって「迷惑だ」とまでいう人はいないが、表情や動作に「面倒だな」という感情が透けて見える人が多いのだ。
「ありがとうございます……」
「ん、構わないよ。そんなことはともかく、さあ、着てみて」
 おどけた調子はきっと俺を励ますためのものだろう。
 全く、本当にいい人だ。美咲先輩は。
 俺は服を受け取り、試着室へと入って行った。




~その3へ続く~

Comment

No.98 / tamago [#K8enJE0I] 続きが読めて嬉しいです

あの、雑貨店シリーズは短編だと思っていたので、
続きが読めて嬉しいです。衣服買い物デートですか。良いですね。微笑ましい光景ですね。

僕が続きを読んでみたいものは、
やはり瓶もでしょうか。あとリクエストしたものも
お願いします。

ところで光ノ影さんは僕よりお若いのかな?と思っています。僕は、20代後半です。
toshi9さんは、アニメ、「エヴァンゲリオン」の庵野監督と同世代だそうです。
toshi9さんに承諾していないので、大体の年齢を公開して良いのか分かりませんが?
駄目だとしたら、toshi9さん、ごめんなさい。もし駄目なら、光ノ影さん、
削除してください。では

2008-10/04 10:08 (Sat) 編集

No.99 / 光ノ影 [#-]

 Tamagoさん、こんばんは。
 感想ありがとうございます。

 雑貨店シリーズは自分でも短編にする予定だったんですが、やっぱり短編で切っちゃうのはもったいないかなー、と思ってしまいまして。
 かなりスローペースな更新だとは思いますが、続きを書いていければいいかな、と思って書きました。
 瓶なども書く予定ですのでお楽しみに!
 基本的に最初の分の流れは動かさないつもりです。純愛物が突然鬼畜物になったり、鬼畜者が純愛物になったりはしない、という予定です。

 リクエストも忘れていないのですが、中々筆が進まなくて……頑張って書きます。

 えーと、歳ですか?
 一応、tamagoさんよりも若いですね。
 若輩者ですが、どうぞよしなに……。 

2008-10/05 00:16 (Sun)

No.150 / [#] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2009-02/20 14:51 (Fri)

No.153 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

 その展開もありえます。
 どうなるかはまだ神のみぞ知るところですが……要するに作者本人も考えてないということです(笑)。

2009-03/06 13:10 (Fri)

No.450 / [#] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2011-11/14 16:31 (Mon)

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