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『あなたの望みを叶えてあげる』 ~復讐賛歌~ 最終章

この話は以前書いた『あなたの望みを叶えてあげる』 ~復讐賛歌~の続きです
以前の話はこちら 第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章 第八章 第九章
 
 
では続きからどうぞ
 
 
『あなたの望みを叶えてあげる』 ~復讐賛歌~ 最終章



 神々しい光を纏っているにも関わらず、そこから感じるのは悪寒にも似た悪い予感だけだった。姿は天使そのものであるが、愛美からすれば悪魔にしか見えない。
 そんな天使のような存在は、冴美に呼ばれたことを不思議に思っているようで、首を傾げている。
「冴美、どうしたの? もう大体の改変は終わったから、あとはもう新しく願うしかないって言ってたのに」
「そうね。学校と愛実に対してのことは終わったわ。あの通り、愛実にもう歯向かう気持ちは残ってない。だから……」
 天使はその言葉を聞いて、笑みを浮かべる。
「それじゃあ、次は世界に対する復讐に移るのね。任せておいて。あなたを救わなかったこの世界を滅茶苦茶に改変してやりましょう!」
 世界滅亡を囁く魔神のように。
 天使は翼と手を広げ、全てを手中に納めるかのように高らかに宣言する。
 テンションの高い天使に対し、冴美はあくまで冷静だった。
「ところで……天使。一応聞くけど、愛実に着けた首輪。私が外したいと強く願っても外れないの?」
「……? それは無理よ。だってあなたが『天使の力を使っても外れないように』って願ったんじゃない」
「確かにそう願ったわ。けど、天使の力は望みを叶える力なんでしょう? 矛盾した二つの望みがあったとして、どちらが優先されるの?」
 天使は言葉に詰まる。
「それは……ちょっと待って、天使長に確認するから」
 暫し目を閉じて動きを止める天使。その時間はほんの数秒だった。再び目を開いた天使はバツの悪そうな顔で頭を掻く。
「あー、そうなんだ。ごめん。望みは基本的に先に叶えた方が優先されるけど、それを覆すほどに強い望みなら、覆ることもあり得るんだって」
「…………そう」
 小さな声で冴美は呟く。それを見た天使は不思議そうな顔を再度浮かべた。
「それがどうかしたの? もしかしてひょんな拍子に彼女が解放されるんじゃないかって思ってる? 大丈夫よ。気の迷いとかそんな程度で解放できるわけじゃないし――」
「天使。まずは世界に対する改変よ」
 冴美は天使の話を断ち切り、願い始める。
「これからこの学校には全国から虐めの主犯格が集まるようにして。男子も女子も関係なく。特に、男子の中でも最低の苛めっ子は愛実の友達と同じ扱いにすること。……他の学生の話に戻るけど、学校以外の日常生活では常に人のためになることか、健全な勉強しかできないようにして。当然休日はボランティアに従事ね」
「お安いご用よ……それだけ?」
「まさか。三年間の学内テストの合計順位で、最下位から数えて百人は人権を放棄した奴隷……いえ、道具として販売し、全世界から購入者を募ることにしましょう。殺す以外の全てを受け入れるし、世界もそれで納得する道具として認識するように。決して解放されることのないまま一生を道具として過ごすようにしましょう」
「オッケー。いい感じじゃない?」
「……ついでに、苛めを傍観している人は、一時的な体験入学としてこの学校に招くの。扱いは男子女子共に一番最低な扱いと同じで。その人達に関しては記憶は弄らず、ただ罰を受けに来たっていう認識にしてちょうだい。一時的な編入が終わったら元に戻すこと」
「学校内で一人だけまともってわけ? いいわね、そういうの」
「……こんなところかしら」
「うん、過たず全てを反映したわ。中々大きな望みね」
 この調子なら大天使になれる日も遠くないわね、と天使は楽しげだ。
 しかし、それで終わりではなかった。
「天使」
 静かに冴美は天使を呼ぶ。
「なに? まだ望んでくれるの?」
「愛実に今つけている首輪。もう一度作り直してくれる?」
 冴美は愛実を見下ろしていた。空中に浮かぶ天使には彼女の顔が見えない。
「機能はほとんど同じでいいわ。ただ――心も存在も、全部犬に変える力を追加して。人としての心も、人としての存在も全て消えてなくなるように」
 その願いを聞いた天使が不可解な顔をする。
「それは……」
「おねがい」
 天使は望みを叶えるもの。
 冴美が広げた掌の上に、天使は新たな首輪を生み出した。
「ありがとう、天使」
 近付いた冴美は天使から首輪を受けとる。渡した天使は釈然としない顔をしていた。
「完全に犬にしちゃうの? でも、そいつはすでに首輪つけてるから、その首輪はつけられないわよ? ……あ、もしかしてだから外せるかどうか聞いたの? だったらそんな面倒なことしなくても、普通にいまそいつが身に付けている首輪に効果を追加すればいいのに」
 天使の言葉に、冴美は苦笑を浮かべる。
「愛実に付けるんじゃないわよ」
「……? あー、もしかして、さっきの元男用? それならあたしに願ってくれればそれだけで装着できるわよ」
 願いを期待する目で天使は冴美を見ている。そんな天使に対し、冴美は苦笑からにっこりとした笑みに変えた。
「いいのよ。天使の力を借りるまでもないわ」
 なぜなら。

「これを身に付けるのはわたしだから」

 その瞬間、天使だけでなく、愛実もまた固まった。冴美が何を言ったのか理解できていない眼で彼女を見ている。
 天使は浮かんでいた中空から降りて、冴美と視線を揃える。慌てた様子で冴美の肩を掴んだ。
「え……? なにを、言って…… そんなことしたら」
「もう元には戻れないでしょうね」
 心も犬になるということは、もはや人として望みを持つこともない。
 天使に願う張本人がいなくなるに等しいのだから、それはその通りだろう。それをわかって冴美は実行しようとしていた。
「わかってるなら、なんで……! じ、時間制限とか付けるのよね? いつまでとか、そういう条件があるんでしょう? 自分でも体験したくなっちゃっただけよね?」
 力を込めて冴美の身体を揺さぶる天使に対し、冴美は冷めた瞳を向けた。
「……天使のくせに頭が悪いの? 一から説明しなきゃわからない?」
「なっ」
 溜め息を吐いた後、冴美は説明を始める。
「私がもう元に戻れないってことは、もうあなたに誰かが望むことがない。つまり、何が起きようと絶対に愛実達も学校も世界も元に戻れない……ってことじゃない」
 百万が一にも彼女達を逃がさないように。
 冴美は自らをも破滅させることで完全無欠の地獄を完成させようとしていた。
「……!」
「心変わりも不慮の事故もない。絶対的な地獄はそれで完成するの」
「ま、待ってよ。そんなことされたら……あたし、あたしが大天使になれないじゃん」
「……そうなの?」
「そうよ! あたしたち天使は、望みを叶える相手を途中で変えられないの! 一度その人間の担当になったら、その人間の望みを叶え続けて大天使になるしかないの!」
「……そうだったの。でも、ごめんね。もう決めたことだから」
 断定する冴美の言葉に、天使は動揺を隠せない瞳で体を震わせる。
「そんな……勝手な……っ」
 なおも詰め寄ろうとした天使に対し、冴美は冷めた目を向けて淡々と言う。
「それでも、これは貴女の望んだことでしょう?」
「はぁ!?」
 目を見開く天使に、冴美はただの事実を突き付ける。
「だって最初に復讐を叫んだのは、あなたじゃない」
 出会ったときの会話を天使は思い返す。
 最初に冴美が天使に電話をかけた時、天使は自分のことを信じず、中々望みを言わない冴美に焦れて彼女の部屋に直接やって来た。その時、冴美が陰湿な虐めにあっていることを知った天使は、高々と『復讐』を叫んだのだ。
 確かに冴美から復讐がしたいという望みを聞いたわけではなかった。天使はあくまで冴美が苛められているという事実を知って、復讐を望んでいるはずだと考えたからだ。
「で、でも、あんただって、復讐を望んでたでしょ……?」
「全く望んでなかったと言えば嘘になるけど」
 けれど。
「あの時、私が望んでいたのは未練なく死ぬことであって、復讐じゃないわ」
 そもそも冴美がインターネットで『天使の店』を見つけたのは、自殺の方法を探していたためだ。復讐を望んでいたわけではない。もしも冴美がいじめっ子達への復讐を第一に望んでいたとすれば、復讐の仕方を探していたはずだった。
 天使はそれでも納得がいかなかった。
「……そ、そんなのおかしいわよ! そんなの、天使の力を使うまでもなく叶う願いじゃない! 首でも吊るか腕でも切れば叶う願いでしょう! ふざけないで!」
 ヒステリックに叫ぶ天使に対し、あくまで冴美は落ち着いていた。
「至って真面目よ。私があのサイトを見たとき、貴女に望みたかったのは――」

 誰からも忘れ去られること。

「誰にも私のことなんて覚えていてほしくなかった。親も、クラスメイトも、愛実も、先生達も、道端ですれ違う人も……誰からも忘れられて、私の存在自体なかったことになって――その上で、私は死にたかったの」
 それだけが彼女の心を安らぎで満たす。仮にただ首を吊って死んだら、人々の中に彼女の存在が残る。苛めによる自殺である以上、仮に問題になれば何年も引き摺るかもしれない。無論、記憶は風化して行くものであるし、百年もたてば誰も冴美のことなど覚えてはいないだろう。しかし、冴美は自分が死んだ後、一時でも誰かに『覚えられている』ことが我慢出来なかった。だが、それはどう望んでも無理だということもわかっていた。
 だから、もしも天使などという超常的な存在が願いを叶えてくれるのであれば、『自分の存在の忘却』を願うつもりだったのだ。
 冴美の本心を聞いた天使は、絶句するしかない。
「そんな……そんな、人間……いるわけない。生きたいって、生き汚いくらいに望むのがあなたたち人間でしょう……?」
「そうね。ほとんどの人はそうだと思う。人を踏みつけ、人を騙し、人を傷つけ、それでも生きたいと願うのが普通なんでしょうね」
 でもね、と冴美は諭すように言った。
「私はたくさんの人を破滅させた後、のうのうと生きていられるほどに人間じゃないの」
「……破滅させられるだけのことをやってきた奴等じゃない」
「人殺しを殺していいわけじゃないのと同じよ」
 間髪入れない返答に、冴美の結論を覆せないことを天使は知る。
 力なく項垂れ、力が抜けたのかその場に膝をつく。
「後悔、するわよ……」
「後悔する機会もないわ」
 地に堕ちた天使は、地面に這いつくばって力なく項垂れていた。
 首輪を手に冴美はその横を通りすぎる。
「……あなたにこの学校の管理をお願いするわ。なんだったら、こんなことになった腹癒せに私を嬲ったっていい。だから――ごめんね」
 ありがとう、と冴美は天使に言い残し、茫然と固まっていた愛実の目の前に立つ。
「愛実。さよなら。あなたには狂うことも死ぬことも出来ないままで、この地獄に居続けて貰うわ。……後悔しても、反省しても。何したってもう遅いの。自分が犯した自分の業を噛み締めて、永遠を頑張って」
 愛実は何かを言おうとした。しかし、それを許されていない彼女の言葉は、ひとならざるもので、意思は冴美に伝わらない。
「ばいばい、愛実。あなたのことが――大嫌いだったわ」
 冴美は躊躇うことなく自分の首筋に手にしていた首輪を巻き付ける。

 そして全てが終わり、地獄が始まる。
 
 
 
 
『あなたの望みを叶えてあげる』 ~復讐賛歌~ エピローグに続く
 
 
 
 

Comment

No.998 / Torainu [#CNtCm3fU] No Title

執筆ご苦労様です

まだエピローグは読んでいませんが…
全く予想できなかった展開ですね
でも、これはこれで理にかなった面白いストーリーだと思います

今からエピローグを読んできますが、“冴美”のいなくなった世界がこれからどうなるのか、非常に楽しみです

2013-03/25 10:07 (Mon) 編集

No.1001 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

Torainuさん、いつもコメントありがとうございます!

> まだエピローグは~
ありがとうございます。予想外のところを突けたようで良かったです。それを目指して書いてましたから……目指し過ぎて、ちょっと騙しうちみたいになっちゃってすいません……。

> 今からエピローグを読んできますが~
支配者のいなくなった地獄が果たしてどうなるのか?
それはまたいつか別の話でじっくり書いてみたいかなと思っています。
自らそういう奴隷区を作ってそこに飛び込んで行く女王の話とか……ああ、一杯あり過ぎて困ってしまいますね(笑)

それではどうもありがとうございました!

2013-03/25 23:09 (Mon)

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