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『あなたの望み、叶えます』~天使空間~ エピローグ

『あなたの望み、叶えます』~天使空間~のエピローグです。
天使の力によって生まれた楽園と、その日常。

それでは、続きからどうぞ。
 
 
 
『あなたの望み、叶えます』 ~天使空間~ エピローグ
  


 朝目覚めた時、そこは地上の楽園だった。
 右を見れば愛らしい顔で眠りについている綾歌が、左を見れば凛々しい顔で眠りについている芹菜がいる。
 どちらも顔付きこそ違うが、警戒心を一切持っていないのは変わらない。そんな美少女と美女の寝顔を毎朝見られる俺は幸せ者だ。
 起きぬけで少しぼんやりする頭を意識しつつ、俺は二人の寝顔を眺めながら和む。すると、芹菜の方が目を覚ました。
「ん……」
 小さく呻いた芹菜は、瞼をゆっくりと開く。その視線が俺を見た。
「……くぁ……おはようございます」
 噛み殺すような欠伸の仕方は芹菜らしい。
「ああ、おはよう。……んっ」
 思わず声が漏れそうになったが、それをなんとか堪える。芹菜はまだ眠そうな顔のまま、その手を動かしてこちらに触れて来ていた。寝転んだまま体をずらし、芹菜は俺の胸の位置に自分の顔が来るようにする。
「……いただきます」
 そして、小さく呟くと同時に、俺の乳首に吸い付いて来た。ぴりぴりとした快感が生じて、俺は声をあげるのを堪えなければならなかった。
 芹菜は舌使いが群を抜いて上手く、あっという間に乳首は硬くなり、内側から膨張した乳房が張って、準備が整った。
「よし……いくぞ……っ」
 出そう、と俺が思った瞬間、乳房の先から母乳が噴き出した。それを芹菜は抵抗することなく飲んで行く。
 俺はいま、三奈崎さんの身体に憑依していた。元の自分の身体のままの時は朝起きたらまずは一発フェラチオで抜くのだが、女の身体に憑依しているときは当然それは出来ない。
 そこで三奈崎さんに憑依している時は、代わりに母乳を出すことにしていた。母乳を出す際には快感が伴うため、ちょうどいい代替行為になっている。ちなみに綾歌や芹菜に憑依して寝た時は一緒に寝た誰かの手によって絶頂を迎えることにしている。
 芹菜はひとしきり母乳を呑むと、一度口を離して舌を使って乳房全体や乳首を舐めあげて行く。全体に刺激が与えられることで、再び母乳が生成され、乳房が張っていく。やろうと思えばいくらでも快感を続かせられるこの行為は、やりようによっては無間地獄のそれにも近くなるだろう。それくらいこの行為は終わりの見えない快感にひたすら浸る行為だった。
「ふっ、ぁっ、さすが、だな……っ」
「恐縮です」
 舌で乳房を下から上まで舐めあげられて、俺は身体を跳ねさせられた。
 そんな風にしていたら当然、もう片方で寝ていた綾歌も目を覚ました。まだ眠いのか、目元をごしごしこすり、大きく口を開けて欠伸をする。
「ふわああぁぁぁ……おふぁよう、ござい、ます……」
「ふふっ、おはよう。駄目よ、女の子がそんな大口開けちゃ」
 三奈崎さんの口調を真似て綾歌に注意してみた。綾歌はまだ寝ぼけているのか、言葉にならない呟きを口の中で繰り返す。
 もぞもぞと体の位置を調整した綾歌は、芹菜と同じようにもう片方の乳房に吸い付く。まだこちらの準備も出来ていないうちから乳首を吸い出し、そのくすぐったさに思わず笑ってしまった。
「ふはっ、あ、綾歌、もうちょっと、落ちつけよ」
「はぁい……」
 返事はしたものの、まだ半分夢の中にいる綾歌は乳首への吸い付きを続ける。
 ちゃんと前準備をしなかったとはいえ、どんな形であれ、刺激を与えれば自動的にこちらの準備は整う。本当の赤ん坊のように乳首を吸う綾歌が愛しくなった俺は、母乳を出してやることにした。そう意識するだけで綾歌の口の中に白い液体が大量に流れ出す。
 綾歌は少し驚いたようなそぶりは見せつつ、ただ黙々と母乳を吸い続けた。芹菜も再び吸い始める。
 左右二つの乳房から同時に発生する密度の違う快楽は、逆にそれぞれの快感を際立たせ、俺を高みへと導いていく。
 強い快感に、視界が白く瞬いた。
「っ、くぅ、あぁ、あぁっ」
 激しい絶頂を迎え、一際強く母乳が噴き出すのがわかった。二人は心得た物で、噴き出した物を全て呑み込む。少しいつもより量が多かったのか、噴出が終わって喉を鳴らした後、芹菜も綾歌も小さく咳き込んでいた。
「……ふぅ……ごちそさまでした」
「……お腹一杯……です」
 さすがに量が多すぎたらしい。栄養が豊富なため、問題はないだろうが、それだけでお腹を満たしてもらっては困る。
「ちゃんと朝ご飯も食べろよ? まあ、吸収が早いから身支度とかしている間にそこそこマシになるはずだけど……」
「はぁい」
「わかってます。……綾香、手早く着替えていきましょう」
「うん、わかった芹菜さん」
 二人は頷き合うとベッドから降りて身支度を始める。最近、毎朝の恒例行事として、二人には――正確には三奈崎さんも含めるが――体操をするように命令してある。それは彼女たちの理想的な体型の維持が目的の一つであり、同時にもう一つの別の楽しみがあった。
 その楽しみを三人分味わうため、俺は三奈崎さんの身体から出て、三奈崎さんに身体の主導権を返す。
「……? あら? もう朝?」
 三奈崎さんからすれば急に朝になっていたのだから驚くのも無理はない。混乱しかけた彼女に、綾歌が元気に声をかける。
「朝の体操の時間だよ。三奈崎さんも行こう?」
「え。あ……そうね。その時間ね。ありがとう綾歌ちゃん」
 戸惑いつつも、時間の経過を受け入れた三奈崎さんは、体操に誘った綾歌に笑顔を浮かべる。
 三人仲良く揃って庭に向かうのを尻目に、俺は自分の部屋に寝かせている自分の身体へと向かった。
 部屋で一人寂しく寝ていた自分の身体に滑り込む。
 元の身体に戻った俺は、首を回したり肩を回したりして具合を確かめた後、ベッドから降りる。少し時間をかけて服を着替えた後、部屋の窓に近づいてカーテンを開いた。この部屋は二階にあり、窓は庭に面している。そのため、庭の様子が一望できるのだ。
 窓の下、庭では毎朝恒例の光景が広がっていた。
『……両手を前に上げて、背伸びの運動ー』
 お馴染の号令と音楽に合わせて、三人の女性が体操を行っている。それだけならただの健康的な日常だ。だが、いま俺の眼下で行われているそれは、異質で淫靡な光景になっている。行為が異常なのではない。格好が異常だった。
 三人は全裸の上にシャツを一枚羽織っているだけの姿で体操しているのだ。
 白いシャツの前ボタンを止めていないため、身体を伸ばしたり腕を広げたりする度に、白い裸身がその隙間からちらりと見えたり、大胆に開帳されたり、ただの全裸よりもよっぽどエロく感じる光景となっていた。際立って豊満な体つきの三奈崎さんなんかは常に胸がシャツから溢れているので余計にエロく感じる。綾香の場合は逆にほとんど閉まっているのでチラリズムが素晴らしい。芹菜は際立った特徴こそないが、他の二人と違ってその動きは機敏かつ凛々しいものなので、エロいだけではない清々しさを感じさせる。健康的なエロさという意味では芹菜が一番だろう。
 もちろん、そんな格好で三人に体操するように命じたのは俺だ。
 ただ体操させるだけでは味気ないと感じたので、日替わりのエロい格好で体操するように命じているのだ。今日は全裸の上にシャツ一枚という格好だったが、もっとゆるい格好からもっと際どい格好まで色々な格好で体操をするように命じている。下着姿や水着姿は基本として、亀甲縛りのパターンやボンデージファッションの時なんかもある。もっというなら絆創膏で要所を隠すだけのパターンも作っている。
 この毎朝恒例行事は、三人のそれぞれ魅力的なエロさが際立ち、中々いいアイデアだったのではないかと自画自賛している。そのため、俺はそんな三人の朝の体操の光景を窓枠に肘を突いてのんびりと眺めるのが日課になっていた。
 これが一日の始まりで、日々の楽しみの一つだ。
 
 
 さて、数日前から新しく家族となった愛するペットの様子を見に行くことにしよう。
 朝の体操タイムが終わったあと、それをじっくり堪能した俺は部屋を出て階段を降り、玄関に向かう。サンダルに足を入れて家の外に出て、前庭に新しく設置した犬小屋を覗き込む。
 中ではその小屋の主が体を丸めて穏やかな眠りについていた。
「起きろ、ルル。朝だぞ」
 呼び掛けても反応はない。数日ですっかり馴染んだのか、熟睡していた。まぁ、元々朝には弱かったみたいだが。俺はやれやれと思いつつ、これも愛嬌かと考えることにしている。
 そこに、玄関のドアを開けて三奈崎さんが現れた。
「あ、ご主人様。おはようございます」
「ああ、おはよう」
「ルルちゃん、まだ寝てます?」
 苦笑ぎみに問いかけてくる彼女に対し、俺は頷きながら場所を三奈崎さんに譲る。三奈崎さんは犬小屋の前にしゃがみ、中のルルに向かって優しく呼び掛けた。
「ルルちゃん、朝よー」
 それほど大きな声ではないはずだったが、まるで大声で呼ばれたときのようにルルの耳がピクリと動いた。そしてうっすら目を開ける。主人の呼び掛けには無反応だったくせに三奈崎さんに呼ばれたらこの反応の速さ。全く、本当にルルは三奈崎さんが好きすぎる。
 反応こそしたものの、まだ眠いのは変わらないのか、ルルはもぞもぞと体を動かし、丸まりをさらに固める。まだ寝たい、という声無き意思表示に三奈崎さんがさらに苦笑を深めた。手を伸ばしてルルの体を揺さぶる。
「ほら、ルルちゃん。起きて! ……美味しいご飯もあるのに」
 そう言って三奈崎さんが持ってきていたお皿をルルの犬小屋の前に置く。香りが届いたのだろう、ルルは勢いよく反応し――頭を犬小屋の天井にぶつけた。
 痛がるルルには悪いが、俺は三奈崎さんと一緒になって笑ってしまった。ルルは涙目になりながら、のそのそと犬小屋から這い出てくる。
「……わぅ」
 小さな鳴き声が彼女の口からはっされる。それは少し抗議しているような響きを有していた。
 三奈崎さんは笑いを噛み殺しながらルルの頭を撫でる。
「ごめんね、ルルちゃん。あんまりにも思いっきりぶつけるから……痛くない? 大丈夫?」
 優しい手つきにルルはその表情を綻ばせ、少し複雑そうな顔になった。数日経っても実の母親からペット扱いされる複雑な思いは変わらないらしい。
 割りきってしまえばいい話だと思うが、ルルにとっては簡単に割り切れることでもないんだろう。この辺り、ルルらしいというかなんというか。
 もちろん、そんなことを意識しない三奈崎さんはルルをただのペットとして接する。
「はい、ルルちゃん。朝御飯よ」
 ルルの目の前に、まだ暖かいご飯と多少のおかずを混ぜた物が差し出される。基本はドッグフードなのだが、今日は三奈崎さんの料理が出される日だった。
 目を輝かせるルルに対し、三奈崎さんがその手のひらを翳す。
「ルルちゃん、『待て』」
 犬に餌を与えるときは躾の時間でもある。ルルは相変わらず複雑そうな表情だったが、大人しく三奈崎さんの指示に従った。
「『おすわり』」
 続けて出された指示に、ルルは躊躇しかけたものの、仕方なくといった風情でおすわりの姿勢を取る。しかし、全てが開帳されてしまうそのポーズを取るのは抵抗が強いらしく、腕で大事な場所が見えないように必死だった。
 その行動はおすわりの理想系からずれてしまうため、三奈崎さんがルルの姿勢を注意する。
「ルルちゃん、前足はもうちょっと前について、背はしゃんと伸ばすのよ」
 実の娘に対し、ペットとしての正しい姿勢を指導する実の母。
 後ろで見ていた俺は思わずにやけそうになって、それを押し殺した。別に大笑いしたって問題ないんだが、やはり支配者然とした態度で見ていたいのだ。
 ルルは恥ずかしそうな顔で三奈崎さんにすがるような目を向けていたが、三奈崎さんが折れることはないことを良く知っているので、渋々正しいおすわりのポーズを取る。それを見て、三奈崎さんがルルの頭を撫でる。
「よしよし。ルルちゃんはいい子ね」
 例えペット扱いであろうと、三奈崎さんに褒められるのが嬉しいのか、ルルの尻尾が左右に揺れる。顔は複雑そうな表情のままだったが、犬の尻尾は表情以上に正直だ。目は口ほどに物を言う、ならぬ、尻尾は口ほどに物を言う、という奴だ。
 三奈崎さんは続けてルルに芸を仕込んで行く。右の掌を広げてルルに差し出した。
「『お手』」
 これは割と抵抗少なく出来る芸だろう。ルルも右手を三奈崎さんの掌の上に置く。
「『おかわり』」
 今度は左手。
「『おまわり』」
 ルルがその場でくるりと回る。まだぎこちない動きだが、いずれはこの動きも機敏に出来るようになるはずだ。
 ここまでは問題ない。問題はここからだ。
「『ちんちん』」
 三奈崎さんが卑猥な言葉を口にする。犬に対して言うならば普通のことだが、この状況だとやはり卑猥に聞こえる。
 ルルはぴたりと動きを止めてしまった。おすわりの時以上の躊躇を見せる。一般的な女子がするには恥ずかしすぎるポーズを取ることを躊躇うのは本来ならば普通のことだ。
 とはいえ、いまのルルはもう犬なのだからこの躊躇はしてはいけない。
「もう、ルルちゃんってば、他の芸はともかく、これだけはいつまで経っても覚えないのよね……」
 三奈崎さんは溜息を吐いた。ルルの尻尾は元気なく垂れさがっている。ちんちんのポーズを取ろうと言う気配は見えない。飼い始めてから数日経って、三奈崎さんの方もルルの扱いを心得て来ていた。ルルの前に置いていた朝ごはんの皿を手にする。
「芸も出来ない子には、ご飯をあげません」
 無理して出していると思われる厳しい声。それを聞いたルルは大慌てでちんちんのポーズを取った。両足を広げ、身体を起こし、両手を胸より上に上げて、拳を軽く握る。もろに局部や乳房を見せ付けるような体勢で、腕をあげているから隠すことも出来ない。見ている方には最高の、やる方にしてみれば最悪の恥辱にまみれたポーズ。
 しかも、うちではそれに加え、口を開けて舌を出すようにも躾けている。いままではポーズを取ってもそれを忘れていたが、今日はよほど必死だったのかきちんと舌も出していた。赤く染まる頬に、荒い呼吸があいまって、中々に魅力的な姿になっている。
 三奈崎さんはそんなルルの様子を見て、にこりと笑みを零した。
「偉いわ、ルルちゃん。良く出来ました」
 再び餌皿をルルの前に置く。
「よし」
 食べていい許可を出され、ルルは餌皿に近づく。僅かな躊躇の後、犬食いで朝ごはんを食べ始めた。ドックフードの時はよしと言われても中々食べ出せなかったのだが、今日はその時間が短い。それだけルルは三奈崎さんの料理を食べたいのだろう。
「ふふふ……いい子ね」
 三奈崎さん特性の餌を食べるルルの頭を、三奈崎さんは撫でる。食べ始めてまた揺れていた尻尾の速度がさらに上がった。
「ほんと、好きすぎるなぁ……」
 もはやこれに関しては呆れの笑いしか出て来ない。俺の笑いを馬鹿にされたと感じたのか、ルルが強気な視線を向けてくる。唸り声さえ聞こえてきそうだ。三奈崎さんに向ける好意を少しでもこちらに向けてくれればありがたいのだが。俺はさらに苦笑するしかない。
 だが、これでも随分マシになったのだ。なんだかんだいって人間の時は素直になれていなかった自覚があるのか、三奈崎さんとこんな風に触れ合えるのが嬉しいらしい。時々ペットとして三奈崎さんに甘えていることもあり、御褒美として用意している『親子として三奈崎さんと触れあえる』時間が本当に御褒美として機能するのか心配になるほどだ。三奈崎さんにもう少しルルをペットとして扱うように命令しておくべきかもしれないが……これもまた三奈崎さんの魅力だから悩めるところだった。
 いずれ問題になった時に改めて考えることにしよう。俺は考えるのが面倒になり、ひとまずどうするかは保留とした。
「さて……と、俺達も飯にしようか。三奈崎さん」
 俺が呼びかけると、三奈崎さんは頷いて立ち上がる。
 ちなみに、ルルは基本外で飼っている。最近は室内で犬を飼うことも多いが、俺はやはり犬は外で繋いで飼うのが普通だと思っているからだ。もちろん犬になっているルルは寒さに強いので風邪をひく心配はない。
「じゃあな、ルル。またあとで散歩に連れてってやるよ」
 その俺の言葉に対し、ルルに反応はなかった。ただ、揺れていた尻尾がぴたりと止まってしまったくらいだ。
 嫌がっているルルの心中が見えるようで笑えてくるが、それは隠して家の中に入る。
 

 リビングに行くと、そこではすでに身支度を整えた綾歌と芹菜の二人が食卓についていた。
 この二人とはすでに三奈崎さんの身体の時に挨拶を交わしているので、挨拶はすることなく、俺は四人がけの四方形の食卓についた。俺の席から見て左手に綾歌、右手に芹菜が座っている。毎朝毎晩のことながら、美少女と美女を眺めながらの食事は最高だ。
 三奈崎さんが朝食を用意するまでの間、手持無沙汰になった俺はあることを思いつき、綾歌に尋ねる。
「綾歌、今日は学校で体育はあるのか?」
「いえ、ないです」
「そうか。じゃあ今日は遠隔操作出来るバイブを入れて学校に行け」
 俺の命令に対し、綾歌はぴくりと肩を震わせたが、従順に頷く。
「は、はい……」
 これは俺の命令を聞くのが嫌だからではない。綾歌が懸念しているのは、バイブを入れて行き、それを動かされた時、周囲の友達にそれがばれないかと心配になっているのだ。いくら認識をずらしているとはいえ、性的な行為が友達に知られてはいけないことであるという認識は綾歌にもある。それを考えればその躊躇は当然だった。
 そこでふと、もう一歩進んだ思いつきが脳裏に去来し、俺は思わず笑みを深くしてしまう。
「どうしたん……ですか?」
 それに気付いた綾歌が不安そうな声で俺に聞いてくる。どうやら、俺がこういう笑みを浮かべる時はさらに恥ずかしいことを言われる時だと理解しているようだ。俺も割と読まれやすいのかもしれない。支配者としてそれはどうなのかと思い、俺は笑みを消しながら綾歌に命じる。
「今日の服装だが――全裸にバイブで行け」
「っ!?」
 さすがの綾歌も目を見開いて俺を見る。そんな顔をするのも仕方ないだろう。何せ俺は基本的に綾歌の学校のクラスメイトや教師の認識は弄っていない。もし綾歌が全裸で登校すれば、それは大騒ぎになる。いつもの命令と違い、隠すとか隠せないとかいうレベルではないのだから。
 つまり俺の命令は綾歌にとって『人生を破壊しろ』というのと同じ意味を持つ。色々認識をずらしているとはいえ、綾歌も一般的な認識を有している。それでも、綾歌が俺の命令を拒否するということは出来ない。
 震えながら綾歌は頷いた。そのあどけない目に涙さえ浮かべている。その表情にそそられた俺は、思わず命令をそのまま実行させそうになったが、寸前で思いとどまる。
「綾歌、安心しろ。ちゃんと学校の奴らの認識も、それ以外の奴らの認識も弄ってやる。だから、お前が全裸であることに気付かれることはない」
「……っ! は、はいっ」
 この世の終わりかと言わんばかりの表情から一変、綾歌が輝く笑みを浮かべる。
 そんな綾歌の笑みを見ながら、俺はさらに笑みを深めた。
「ただし、その効果はバイブが膣に差さっている間だけだ」
 驚き、絶望、それから羞恥。
 目まぐるしく綾歌の表情が動く。さすが成績優秀な綾歌だけあって、俺の言わんとすることをすぐに理解したようだ。
 バイブが膣に差さっている間だけ効果があるということは、バイブを膣から外さなければいいということだ。感じ過ぎずに締めつけを緩めなければ十分可能なことだろう。最初の奴隷だけあって、散々開発された身体で耐えきれるのかはわからないが……それも含めてのスリルだ。
 感じ過ぎて皆の前でバイブを落とす瞬間も見てみたい気がするが……さすがにそれは可哀想というものだ。まあ、本人が頑張れなければ同じことになるのだが。
 今日は時間を見て綾歌の様子を見に行くことにしよう。
 綾歌に命令し終わった俺は、次に芹菜を見る。
「芹菜は今日はどこに行くんだっけ?」
「電車で三十分ほどの所にある市民病院です」
「じゃあ今日はナースコスだな。わかってるとは思うが……」
「はい。色は白でナース服のサイズはギリギリ、ミニスカートでヒール着用ですね」
 俺の理想のナースの姿を的確に言い当てる芹菜。俺は満足して頷いた。
 最近、芹菜には『出張』と称した新たな素材探しに赴いて貰っている。市役所や飲食店、一流会社に病院、果てには神社など、様々な場所で理想の女性がいないかを探して回っている。というのも、いままで芹菜にやらせていた設置カメラの選別にいい加減飽きてきたからだ。偶然に頼る方法では中々いい素材に出会えない。それがわかったので芹菜にはよりアクティヴに素材探しに出回って貰っている……というわけだ。芹菜には俺の『女性の好み』が組み込まれているため、そういう方法が取れるというわけ。
 まだ始めてから間がないということもあり、いまのところ目立った成果は上がっていない。だが、そうして集めてきた情報の中には中々いい者の情報もあり、時にはそれを味わいに俺自身が出張することもある。いまの四人のように毎日味わうほどのものではなくても、たまに味わいたい女性は沢山いる。
 ただ行かせるのも味気ないので、芹菜にはその行く先に合った服装で出かけるように指示していた。市役所や会社にいくならスーツスタイル、飲食店ならその店の制服、神社なら巫女服など、様々な格好を自然と取ることになるので、それもまた刺激になっていい。芹菜の場合、俺の好みを熟知しているのでそのコスプレも俺の趣味にあったものになるというのが嬉しいところだ。今日のナースコスも、普通であればそんなに細かくは決めないだろう。俺の趣味に合わせた結果なので、俺にしてみれば最高のコスプレをしてくれることになる。
 この運用方法を思いついて良かった。もしもこれを思いつかなければ芹菜をどう扱って良いのかわからなくなっていたところだ。芹菜自身には飽きなくても、普段遊ばせているだけではもったいない。
 出張させていれば俺の楽園のさらなる拡充にも繋がって一石二鳥というわけだ。
「お待たせしました。今日は和食です」
 日本の朝ごはんとして紹介されそうな和食が食卓に並べられる。
 早速揃って手を合わせ、食べ始めた。相変わらず三奈崎さんの料理は一級品だ。
 全てにおいて満ち足りた、理想的で最高の生活。
 俺はその幸せをしみじみと噛み締めながら箸を進めた。

 食後、のんびりとリビングのソファーで休んでいると、綾歌と芹菜が挨拶にやって来た。
「い、行って来ま、す……」
「行って参ります」
 俺はそんな二人の姿を見て、思わず本気でにやけてしまった。
 綾歌は俺が命じた通り、全裸に膣にバイブを入れただけの格好だった。すでに少し感じてしまっているのか、微妙に内股になって膝が震えている。軽い気持ちで言い出したことだが、それで本当に今日一日耐えられるのかどうか心配だ。周りの認識はともかく本人は全裸であることを理解しているので、その表情には羞恥が浮かんでいる。全裸に通学カバンだけを持っているという姿は中々見られるものじゃない。当たり前だが。飽きが来ないように普段は色んな格好をさせているので、全裸は全裸で新鮮だった。
 対して、芹菜も芹菜で魅力的な格好になっている。俺の好み通りの色のナース服はワンサイズ小さいものを来ているのか、明らかに胸のあたりが窮屈そうだ。さらにスカートの丈も俺の好みドンぴしゃであり、魅力的な白い脚が輝いている。凛々しい芹菜独特の雰囲気がナースのそれにマッチしていて、つくづくこれは綾歌にも三奈崎さんにも出せない芹菜独特の魅力であると再認識する。
「ああ。二人とも、気を付けて行ってこい」
 俺はなんとか愉悦を堪えて真剣な表情で二人を送り出す。
 二人が出て行った後、俺はその二人のせいで自分の気持ちが高ぶっていることを理解せざるを得なかった。
「……やれやれ、仕方ないな」
 俺は胸ポケットに入れておいた笛を取り出す。それを咥え、吹いた。ただし音は鳴らない。
 暫くして、のそのそとルルが部屋の入口に現れた。その表情は不満そうなもので、嫌々なのが言わずともわかる。
「よう、ルル。ちゃんと脚は拭いたか?」
 玄関にはルル用の足ふきマットが置いてある。家の中に入る時にはそれを使って足を拭くように躾けてあった。
「……わんっ」
 ルルは不満そうに鳴いて、掌をこちらに向けるようにする。それはちゃんと吹いたという意思表示だ。
「よし、偉いぞ。……さて、ルル。早速だが、ちょっと興奮してしまってな……」
 立ち上がりながらズボンを降ろし、ちょっと怯んだルルに命じる。
「ルル、『フェラチオ』」
 ルルに教えている芸の内の一つ。芸の形を取ってはいるが、要するに奉仕しろということである。
 いまだに躊躇するルルは初々しくていいが、とりあえず目的を達成しないと俺が落ち着けない。
「一回十分、忘れてないよな」
「……ッ」
 褒美のことを口にすると、ルルは急いで俺の傍に寄って来て、あんなに嫌がっていた俺の物を咥え込んだ。
 ペットとして三奈崎さんと接している様子を見ていて、親子として接することの出来る時間が褒美にならないんじゃないかと思っていたが、どうやらそんなことは全然ないようだ。
 ここまで来ると母親好きも天晴れ過ぎる。
 しかしさすがに意気込みはあっても、技術がまだまだ追い付いていない。
「ただ舐めるだけじゃ駄目だぞ、ルル。もっと丹念に、舌でしごくくらいの力を込めろ。そしてたまにこっちの先端と舌の先端を合わせたり、溝を舐めあげたり……裏筋を刺激したりするのも忘れるな」
 ルルは大人しく俺の言うことを聞き、つたなく舌を動かす。
 そこそこ気持ち良くなれたので、適度なところでルルの口内に射精した。ルルは顔を歪めながらも、なんとか精液を全部呑み込んだ。
「よーしよし。中々気持ち良かったぞ。精液も全部飲んで偉いな」
 軽く頭を撫でてやると、ルルは嫌そうに身を竦ませた。だが、同時に尻尾が左右に揺れたのを俺は見逃さなかった。どうやら、頭を撫でられたことを少し喜んだようだ。犬耳によって犬化した人間は撫でられることを一種のご褒美と思うようになる。順調にルルの精神は変化しているようだった。このまま何カ月も飼っていれば、しまいに人間であったことも思い出せなくなるかもしれない。少なくとも動作に思わず犬の習性が出るようにはなるだろう。そうなりつつある時、戸惑ったり驚愕したり嫌がったりするのが楽しみだ。
 俺がズボンを上げて服装を整えると、入口に三奈崎さんが現れた。
「ご主人様。私、ちょっとお買い物に行って来ますね」
 三奈崎さんの申し出に、俺は思わず首を傾げる。
「ん? あれ、もう買い置きなくなったの?」
 少し前に買い出しに行っていたような気がするのだが。三奈崎さんは少しはにかむように笑った。
「いえ、少し挑戦してみたい料理が出来て……ちょっと特殊な材料が必要なんです」
「なるほどね、そういうことか」
 この家において、三奈崎さんには自由に料理に打ち込んでもいいことにしている。何か作ってみたい料理があれば、素材の値段に頓着せず自由に作ってもらっている。大概そういう料理は想像を絶する美味しさになるし、良いことづくめだ。天使の力があれば資金を気にする必要はないし。
「どんな料理か、期待してるぞ」
「はい。それでは……」
 送り出しかけて、俺はふと思い立った。
「待った。三奈崎さん、俺も行くよ。荷物持ちで」
「え? そ、そんなご主人様にそんなこと……」
 慌てて断ろうとする三奈崎さんだが、その必要はない。俺は身体を鍛えているし――自動的だけど――何より思いついてしまったからだ。
「いいって。ついでに……ルルの散歩も出来るしね」
 丁度部屋にいたルルはその申し出に非常に複雑そうな顔をした。母親と一緒に行けるのは嬉しい。けど犬として町中を引き回されるのは嫌――ってところだろう。
 散歩と言えば尻尾を振りまわして喜ぶ犬の境地に達するにはまだまだ時間がかかりそうだ。
 俺はリードを持って、三奈崎さんとルルを伴い、玄関へと向かった。
 

 天使に頼めば、無限に材料の出てくる冷蔵庫だって可能だろうが、それはあえてしていない。
 買い物という要素を残しておきたかったというのもあるし、何よりこうしてたまに一緒に買い物に出るのも楽しいからだ。
 三奈崎さんは外に出る時でも裸エプロンである。それを問題視する者はいないため、俺も気にすることなく堂々と歩き続ける。唯一それを気にするのはルルくらいだ。三奈崎さんの足元を四つん這いで進みながら、時々三奈崎さんを見上げてはすぐに目を逸らしてしまう。きょろきょろと落ち着きがないように見えたのだろう、三奈崎さんがルルに話しかけた。
「どうしたのルルちゃん? ちゃんと前を見て歩かないと危ないわよ」
 その呼びかけに対し、ルルは小さく鳴く。それは三奈崎さんのことを想っての鳴き声だったのだろうが、三奈崎さんにその意思が通じることはない。
 四つん這いに慣れていないルルが一緒にいるとはいえ、最寄りのスーパーには数十分も歩けば着いた。俺は邪魔にならないところにルルのリードを巻き付ける。
「じゃあルル、ここで暫く待ってろ」
「良い子にしてるのよ、ルルちゃん」
「……わおん」
 ルルを置いて、俺と三奈崎さんはスーパーの中に入った。賑やかで活気のあるスーパーの中では、買い物に来ている主婦の他に一部男性もいる。その中の誰も三奈崎さんの格好を気にすることはない。極普通のスーパーで、異常な格好をしている三奈崎さんがいるのは視覚的に中々そそるものがあった。これまでの買い出しの時にも同じ光景は展開されていたはずだが、それを自分以外の誰も意識出来ていないという事実に、俺は多少の興奮と非常に強い優越感を得る。
 三奈崎さんは目的の物を探すのに手間取っているようだった。家事スキルレベルMAXの三奈崎さんにしては珍しい。
「見つからないの?」
「ええ……すいません、御主人様。さがしてるのはスパイスなんですが……缶の表示が英語で……読めなくて」
「ああ、そういうことか」
 家事スキルがマックスの代わりに他のレベルが低い三奈崎さんは、当然のことながら語学も日本語しか扱えない。
 かといって俺も英語は得意な方じゃなかった。いっそ天使に頼んで世界中の言語を即座に身につけさせてもらおうか、なんて反則技を俺が考えていると、三奈崎さんはいつの間にか店員さんに声をかけて連れて来ていた。普段は人見知りな三奈崎さんなのに、こう言う時は聞きにいくのに躊躇いがない。プロ根性というかなんというのか、本当にスキル一点振りという言葉がしっくりくる。
 三奈崎さんが連れて来たのは、三奈崎さんと同年代くらいの女性だった。その女性はなんと、三奈崎さんに負けず劣らずの巨乳で、もしも先に三奈崎さんに出会っていなかったらハーレム候補に入れていたかもしれない。生憎今は三奈崎さんという至上の存在がいるのでその女性をハーレム要員にする必要を感じなかったが。
 その店員と三奈崎さんは顔見知りなのか、仲良さそうに会話を交わしている。
「そんなマイナーなスパイス使う料理を作るなんて、やっぱ三奈崎さんは凄いねぇ」
「いえ、そんな……まだまだです」
「何を言ってんの! テレビにも出てたじゃない」
「あれは……たまたま、プロデューサーさんが薦めてくださっただけで……」
 お客さんであるはずの三奈崎さんの方が下に見えるのは三奈崎さん自身の性格もありそうだが、なにより相手の性格が大きいようだ。相手は中々に豪気な性格をしているらしく、笑う仕草も快活で見ていて気持ちがいい。これはうちの女性陣にはない要素だ。
 やっぱり候補に入れておくのもいいかもしれない。
 そんなことを俺が考えているとはつゆ知らず、その店員は棚の端に置いてあったスパイスの瓶を手渡す。
「ほら、これだよ。よかったねうちで扱っているもので。普通は置いてないよ、こんなスパイス」
「ありがとうございます。助かりました」
 ぺこりと頭を下げる三奈崎さんの背中を、その店員がバチバチと叩いた。全面はエプロンで覆われているが背面は素肌が露出している。そのため非常にいい音がした。しかし、その違和感に店員は気付けない。そういう風に認識が歪んでいるからだ。
「何を言ってるんだい全く! あたしとあんたの仲じゃないか! 困ったことがあったらいつでも聞きにおいで! あたしは平日は大体ここで働いているからね!」
「は、はい。ありがとうございます」
 豪気な店員さんに見送られて、俺と三奈崎さんはレジへと向かう。
「……なんというか、元気な人だったね」
「え、ええ。悪い人じゃ、ないんですよ?」
「それは何となくわかるけども。それにしたって客に対する態度じゃないっていうのかな」
「あの人は……ああいう人ですから」
 それで納得していいのかどうか。
 まあ、三奈崎さんが何も思わないのなら俺としてもいうべきことはない。
 目的のスパイスを買った俺達はスーパーを後にする。


 
 スーパーから出た時、ルルは大人しく俺達を待っていた。
 いや――大人しくならざるを得なかったというところだろうか。
 なぜなら。
「おおぅ、これはまた……」
「わっ、わっ、わうぅっ」
 俺や三奈崎さんの姿を見つけたルルがかなり慌てた様子でこちらにこようとして、首輪に引っ張られて仰け反って倒れる。自分で自分の首を絞めてルルは咳き込んだが、その間抜けな姿を笑うことは出来なかった。
「……でかいな」
 ルルの隣には別の大型犬が一匹繋がれていたのだ。恐らく俺達と同じようにスーパーの買い物客の中に犬を連れて来た者がいて、その人がその場所にこの犬を繋いだのだろうが……リードの長さ的に届かない位置とはいえ、自分より身体の大きい犬を隣に繋がれたルルは生きた心地がしなかっただろう。
 三奈崎さんは倒れて咳き込むルルを心配して駆け寄っていた。
「あらあら……大丈夫? ルルちゃん」
「わぅぅ、わぅっ、わぅっ」
 近づいて来た三奈崎さんに擦り寄るルルは本当の犬のようだ。案外精神の犬化が進んでいるのかもしれない。
 それはそれとして。
「しかし、この犬、なんて犬種だったっけ?」
 どこかで見たことのあるような犬種なんだが……。
 記憶の隅から思いだそうと奮闘していると。
「あいりっしゅ・うるふはうんどだよ」
 舌足らずの声で教えてくれる者がいた。
 俺が視線を下に落とすと、そこには幼稚園に通っているんじゃないかと思うくらいの小さな女の子がいた。
「あの犬、君の?」
 ルルでさえ体格で負けるような超大型犬をこの子が連れて来たんだろうか。そう思って思わずそう言うとその女の子はこくりと頷いた。
「アレクなの」
「アレク? ……ああ、あの犬の名前か」
 アレクサンダー大王とかその辺りから取っているんだろうが、この犬にはなんとも似合っている。確かに日本でこの大きさはまさに大王という感じだ。
 身体の大きさに反して――あるいはだからこそなのかもしれないが――アレクは大人しい犬だった。ルルが転ぼうと騒ごうと三奈崎さんが近づこうと何をしようと全く動く気配がない。
 時々周囲の情報を探るように耳を動かしていなければ置物と勘違いしてもおかしくないだろう。
「アレクはとってもかしこいんだよ!」
 自慢の家族を紹介する調子で女の子はアレクに近づき、その首筋に抱きついた。抱きつかれてもアレクは全く動じず、されるがままになっている。
「ほう……確かに。凄く大人しくていい犬だね」
 さすがにアレク並みの大型犬に近づいて撫でるような度胸は俺にはなかったが、素直にそう感じた。
(アレクという名前なら……雄か)
 ルルの様子を窺うと、ルルは不安そうに俺を見ていた。どうやら嫌な予感は覚えているらしい。
 さすがにこの幼い飼い主がいる前で一瞬考えた『それ』をやらせようという気にはならなかったが。
「行こうか。三奈崎さん、ルル。…………またな、アレク」
 さりげなく付け足した言葉に、アレクは特に反応せず、ルルの方がびくりと身体を震わせた。
 狙い通りの反応を引き出せたことに満足し、俺はアレクの飼い主である子に手を振って、三奈崎さんとルルを連れ、家へと向かって歩き出した。


 家に戻って来た俺は、一人でリビングのソファに腰かけていた。
 ルルは外の犬小屋だし、三奈崎さんは家事に取りかかっている。俺はのんびりと娯楽にでも耽るつもりだった。
(今日はビデオでも見るかな……)
 そう思ってリモコンを手に取り、テレビの電源を付けようとした時。

 『それ』はやってきた。

 いきなり俺の目の前が光り、目が眩むような閃光が弾ける。思わず目を瞑った俺の耳朶に、柔らかな翼を打つ音が滑り込んで来た。
「なっ……」
『突然申し訳ありません』
 驚く俺の目の前に、いつの間にか天使が現れていた。俺が呼んだわけでもないのに天使が現れるのは初めてのことだ。
 天使は輝く二対の羽を広げて――ん?
「あれ、天使? お前、翼……」
 四つもあったっけ?
『今日はそのことでご報告がありまして。勝手ながらお邪魔させていただきました』
 礼儀正しく一礼する天使はいつもの無表情ながらどこか嬉しそうだった。
 その理由はすぐに教えてもらえた。
『実は私、この度大天使に昇格出来ることになりました』
「だい、てんし……? あ、ああ、つまり昇級、ってこと?」
『はい。それも貴方様が沢山願ってくださったおかげです』
 ありがとうございます、と天使は再度さっきよりも深く一礼する。
『つきましては、私は別の仕事につくことになりますので、いままでと同じようには参りません』
 え。
 それってまさか。
 俺は大慌てで天使に詰め寄った。
「おいおいおい! まさか全部なかったことにするとか言わないよな!? もう力貸してくれないとか言わないよな!?」
 そう聞くと天使はこくりと頷く。
『もちろんです。いままで叶えさせていただきました願いの結果はそのままですし、今後力を貸さないというわけではございません』
「そ、そっか……良かった……」
 ふぅ、と一息吐く。もしも『無事昇級出来たので全部なかったことにしますね』とか言われたらどうしようかと思った。
 折角ひとまずの完成をみた俺の楽園がなくなったら、俺は躊躇なく自殺しそうだ。
「あ、でも……だったら、今日は何の連絡に来たんだ?」
『はい。私はこれまでのように貴方様に呼ばれても出てこれません。ですので、これをお渡しします』
 そう言って天使が差し出してきたのは、一個の綺麗な宝石だった。
 俺はそれを受け取りながら聞く。
「これは何? なんか凄いオーラを感じるんだけど……」
 少年漫画的なあれではなく、雰囲気があるという意味だ。億の価値を持つ宝石をそれだとわかって掴む時の感覚に近いといえばわかるだろうか? 有体にいえばちょっとビビっていた。
 天使は淡々と説明してくれる。
『それは私の天使の力を結晶化したものです。それを手にして願えば私に願ったのと同じ結果を生み出すことが出来ます』
「……どこぞの七つ集めたら願いが叶うボールかよ」
 一個で時間制限も回数制限もなく願いを叶えられるのだからそれ以上か。
『今後は貴方様が望むようにその力をお使いください』
「ああ、ありがとう」
 俺は宝石を握り、頷いた。
「……もう、あんたと会うことはないのかな?」
 別に何を話すと言うわけでもないし、何をするという訳でもない。
 けど、時々は会っていた天使と全く会えなくなるのは素直に『寂しい』と思った。
 正直な気持ちを口にすると、天使はその無表情を崩し、微かに、ほんの微かに微笑む。
『あなたがそれを望むのであれば――』
 いつでも。
 何度でも。

『あなたの望み、叶えます』

 そう言って天使は――消えた。
 彼女自身の力を俺の手に残して。
 俺は掌に残った宝石を光りに翳し、思わず笑う。
「なんつーか……最後まで真面目な天使だったなぁ」
 天使のくれた物には感謝しかない。
 俺は天使の力を手に、さらにこの楽園を広げて行くことを決意した。

 俺の望みは――まだまだこれからだ。
 
 
 
 
『あなたの望み、叶えます』 ~天使空間~ 終
 
 
 
 

Comment

No.953 / ごんべー [#-] No Title

お疲れ様でした。

別作の悪魔や大天使のスタンス、雑貨屋さんの接客をみる限り、力の提供者は契約者に関してだけ誠実一直線でブレないようですね。いいと思います。
……人を悪に導いても昇格するあたり天使は天使でもやっぱりルシファーの部下なんじゃないかと疑いたくなりますねw

みちるちゃんが出てきたあたりからなんとなくは察していましたが、彼女たち親子は締め要員も兼ねてましたか。
キレイな終わり方とは思いますが、個人的には綾歌の出番があと一回くらいは欲しかったかな、と。
最初の同居者ですし、彼女だけ職場出張が無かったので。

また次の作品を楽しみにしています。

2013-03/03 18:57 (Sun)

No.954 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

ごんべーさん、毎度コメントありがとうございます!

> 別作の悪魔や大天使のスタンス、雑貨屋さんの接客をみる限り~
彼らはあくまで誠実で契約を破ったりしません。
人を裏切るのはいつも人なのです(笑)

> ……人を悪に導いても昇格するあたり~
たぶん、超常的存在にとっては善行も悪行も等しく平等なのでしょう。
彼らのような存在からすると、どっちでもあんまり変わらないのではないかと思われます。

> みちるちゃんが出てきたあたりからなんとなくは~
彼女らが揃った時点でひとまずハーレム完成といいくらいに要素は出揃いましたからね。最初から『天使空間』はここで一端幕を降ろす予定でした。

> キレイな終わり方とは思いますが~
実は私も綾歌にはもうちょっと出番をあげたかったんです。
ただ、学校でのシーンを書くと、思い通りになる世界の番外編みたいにそこだけでシリーズが出来ちゃうレベルで長くなりそうだったので、今回は削らせてもらいました。
続きを書く時には彼女の学校生活の様子なんかも書きたいと思います。

> また次の作品を楽しみにしています。
ありがとうございます。
また楽しんでいただける作品を提供できるように、頑張って行きます。

それでは、どうもありがとうございました!

2013-03/03 21:07 (Sun)

No.955 / Torainu [#CNtCm3fU]

執筆お疲れ様です

「噴き出すのあわかった」ではなく、「噴き出すのがわかった」ですね
憑依からの母乳はなかなか良かったです
母乳までも思い通りにできるということが、この作品をさらに素晴らしくしている気がします

「最後は正義が勝つ」も悪くはないですが、自分は悪堕ちやバッドエンドの方が好きですね
最後に力を得たのは良かったと思います
これって、続編への布石ですよね??(笑顔)
以前、バッドエンドで良かったと書いたら、光ノ影さんに「主人公にはハッピーエンド」なんて書かれましたっけ

ルルという名前を与え、あくまで普通の犬として生活させたのは上手かったですね
ここで犬と交尾させていたら、折角いい流れだったのに急に不自然になっていたでしょうから
まあ、人間でないものとの交尾や受精、さらには産卵・出産もまた一興ではありますが

復讐の方も楽しみにしております(特に身体改造)

2013-03/04 01:58 (Mon) 編集

No.956 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

Torainuさん、いつもコメントありがとうございます!

> 執筆お疲れ様です
ありがとうございます。四年以上かかってようやく書きあがりました。

> 「噴き出すのあわかった」ではなく~
おおぅ……いつもご指摘ありがとうございます。
一応見直してはいるのですが、やっぱり見落としてしまいますね……気をつけます。

> 憑依からの母乳はなかなか~
なんでも思い通りに出来る万能な力を上手く使って楽しむためには……と結構頭を悩ませました(笑)

> 「最後は正義が勝つ」も悪くはないですが~
最終的には皆を幸せにするのですから、これもまた一つの正義です!(笑)
私はどっちもどっちで好きですね……救いようがないのも、救われるのも。悪いのも善いのも。

> 最後に力を得たのは~
伏線でございます(笑)
ここで得た力を使って色々……考えてはいるのですが。いつ書けるやら……。

> 以前、バッドエンドで良かったと書いたら~
基本私の書く話はハッピーエンドであると自負しております。ハッピーエンドの定義については少々議論が必要かもしれませんが……(苦笑)

> ルルという名前を与え~
普通の犬として扱われていますので、いつかは雄犬と交尾させて子犬を産むことになるかも知れません。
その時にはきっとルルも犬として扱われることに慣れてしまって、子犬を産むことにもそこまでの抵抗がなくなっているかも……(笑)

> 復讐の方も楽しみにしております(特に身体改造)
そちらもいま続きを書いておりますので、頑張ります。
身体改造も要素として結構入る予定ですので、お楽しみに!

2013-03/04 22:21 (Mon)

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