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死神輪舞2

 死神輪舞の続きです。
 ここまでは前置きみたいなもので、設定の説明が多いですが、この先は物語がどんどん展開していく予定です。
 設定を考えるのが好きなので、設定の説明がつい多くなってしまう癖があるのですが、なるべくそれは控えめにして、物語を楽しんでいただけるように頑張ります。

 前回の話はこちら→ 

死神輪舞2




 死神と同化してしまった僕――青木亮は、どうすればいいのか途方に暮れた。
「この体じゃあ、『僕です』って言っても信じてもらえないだろうし……」
 家に帰ることは出来ない。それに今頃は事故の連絡が行っている頃だろうし、死んだというなら騒ぎになっているはずだ。
 頭の中で死神ちゃんの声が響く。
(だからさっさと成仏してよ!)
 それは嫌だ。
 成仏したらどうなるのかわからないけど、まだ成仏したくはない。
「うーん……どうしよう」
 とりあえず生きていたいという意志はあるけど、だからといって何かしたいわけでもない。
 誰かに聞かれたら、優柔不断といわれるだろう。
 でも、それが僕の本心だった。
 それに。
「どうやればこの体から抜け出れるのかわからないし」
(……この体から出たいって念じればいいじゃない)
「そうか……でも思わないよ」
 そんな単純な口車には乗せられないぞ。
 抜け出たら即行で成仏させられるのは火を見るより明らかだ。
 案の定、死神ちゃんは盛大に舌打ち(実際には舌はない筈だから口で言ったんだろうけど)をした。
 僕は苦笑する。
 いま自分の顔となっている頬を片手で撫でながら言った。
「こんな可愛い顔した女の子が、そんな思いっきり舌打ちするものじゃないよ?」
 元凶の僕が言うのもなんだけど。
(うるさい馬鹿)
 吐き捨てるようにして応じられた。
「ところでさ、死神ちゃん」
(ちゃん、なんて言わないで、馴れ馴れしい)
 あー、これは盛大に嫌われてるなあ……当たり前か。
「名前を教えてくれないかな。確かに死神ちゃんって呼ぶのもなんだし。あ、僕は青木亮って言うんだけど」
(……知ってる。死者名簿で見た)
 死者名簿、か……なんというか、人間の勝手なイメージって、結構当たってるんじゃないかな。死後死神が迎えにくるってよくある設定だし。
「で、君の名前は?」
(…………シェルフェールフール)
 ながっ。
「シルフールフル?」
(違う、シェルフェールフール!)
「…………どこまでが苗字で、どこまでが名前?」
(死神に苗字や名前の概念はない)
 そうなのか。ん? ちょっと待てよ?
「ところで、普通に話が通じてるけど……死神の言語って、日本語なの? でも……えーと、シェルフェールフルっていう名前は日本のものじゃないよね」
 いまは見えないけど、顔立ちは日本……というか、アジアっぽかったけど。
 シェルフェールフールちゃんは仕方ないなっていうめんどくさそうな雰囲気を隠そうともせず、答えてくれた。
(……私は日本担当の死神だから、日本の概念を大王様から貰ったのよ。名前は生まれた時に決まるから)
 日本語の概念を貰った? 大王様って閻魔大王のことかな?
 よくわからないけど、まあ通じるならいっか。
「それとさ、シェルちゃん」
(しぇ、シェルちゃん!?)
 ひっくりかえったような裏声を上げるシェルちゃん。
 そこまで動揺しなくても。
「だっていちいちシェルフェールフールちゃん、って言うのも長ったらしいでしょ? だからシェルちゃん。……ダメ?」
 短くて言いやすいと思ったんだけど……。
(……勝手にしなさいよ)
 呆れられてしまったのか、シェルちゃんは投げやり気味にそう言った。
 まあいいや、本題に入ろう。
「服を何とかしたいんだけど……この、『がいとう』みたいに服を出したりは出来ないの?」
 いまはこの『がいとう』とかいう布を体に巻きつけることで何とかしているけど、時々ほどけてしまいそうになり、その度に慌てて巻きなおしていた。
 不便だし、なによりちょっと恥ずかしい。
 女の子が布一枚の裸でうろうろするっていうのも危ないし……。
(出せなくはないけど、無理よ)
「無理? なんで?」
(『外套』みたいに単純な造形のものを具現化するのは簡単だけど、服みたいな複雑な形をしたものを具現化するのは難しくて無理なの。少なくとも、私は成功したことがないわ)
「イメージすれば出てくるの?」
 頷いているような気配が伝わってくる。
(そうよ。死神の力は想像力によって使われるから。――でもそんな単純な話じゃないのよ。質感、重量、形、感覚……全てを正確に想像しないと、無理。それも頭の中で考えるだけじゃダメで、『実際にそこにある』って錯覚するくらいの具体的な想像を働かせないと具現化は――)
 ばさり。
 目の前に、黒色のワンピースが落ちた。
 頭の中のシェルちゃんの声が途切れる。
(……え?)
 呆然としたシェルちゃんの声。
 僕は落ちたワンピースを手に取った。
「なるほど、こうすればいいんだ。……どう? かなり形はシンプルだけど、これなら傍から見てもおかしくないでしょ?」
 広げて見せる。うん、ほとんど飾りっ気はないけど、可愛い感じになったと思う。
(ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!)
 急に叫ばれて思わず身をすくませた。
「な、なに?」
(なんでそんな簡単に具現化が出来ちゃうわけ!? あり得ないわよ!! いくら単純な形のワンピースとは言え……!!)
 僕はどう答えるべきかちょっと迷った。
 迷ったけど、結局正直に話しておくことにした。
「えーと、さ。僕は昔から、『夢見がち』って言われてたんだよね」
(?)
 シェルちゃんが、不思議そうに首をかしげた。実際は精神だけだから、そんな感じがしたっていうことだけど。
「実際その通りでさ。本を読んだら空想の世界にどっぷりハマっちゃって……気づいたら自分がその世界で活動しているような感覚になっちゃうわけ。恐ろしい火の描写が出てきたら本当に熱風に巻かれているような感じがしたり、料理の美味しそうな匂いの描写があったら本当にその匂いがしているように感じたりね」
 病気になる話を読んで、次の日実際に病気になったこともある。
 医者にかかったら精神的なものですってきっぱりと言われてしまった。
「だから、想像するのは得意分野なんだ。それに……」
(……それに?)
「いまはさすがにやってないけど、中学生のころにはさ、架空の人物を想像して遊んでたんだ。実際にそこにいるような想像をして、話しをするんだ。いま思えば凄く病んでるけど、まるでそこに人がいるかのように想像するのが楽しかった」
(……それって)
「さっきシェルちゃんが言った感じのことを、僕は前からやってたわけ。だから具現化も出来たんだと思うよ」
(信じられない……)
 呆然とした声を漏らしているシェルちゃん。自分が出来ないことを僕があっさりやっちゃったからショックなんだろう。
 話を逸らした方がよさそうだ。
「ねえ、シェルちゃん。これからこのワンピースを着ようと思うけど……着替える時、見ちゃうけど我慢してね?」
(…………)
 僕がワンピースを具現化出来たのは、シェルちゃんにとってかなりの衝撃だったらしく、返事がなかった。
 仕方なく、僕は体に巻きつけている布を一度取り去り、裸になってからワンピースを着る。
 ノーパンとノーブラはかなり奇妙な感覚だった。
(うーん……でも、さすがにブラジャーとショーツのイメージは出来ないし……)
 ワンピースは単純な形だから男物の服の応用でいけたけど、さすがに下着は応用できない。
 どこかで買うしかないかな。
 お金は……持ってるわけないか。
「弱ったなあ……」
 考え込んでいた僕は。

――背後の茂みが、がさり、と音を立てたのに気づかなかった。




~3へ続く~



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