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『全てが俺になる』

50万ヒット記念50本リクエスト
№02『何かの薬で主人公が「感染すると頭の中が主人公になるウイルス」になってしまい、家族から学校、町中へ広がってしまう』話です。
 
それでは続きからどうぞ!
 
 
『全てが俺になる』



 どうやら季節外れの夏風をひいてしまったみたいだった。
 特に風邪を引く原因に思い当たることはなかったけど、体が重いし、頭も重くて、それは明らかに風邪だった。
 それはとても性質の悪い風邪で、よっぽど酷い顔をしていたんだと思う。いつもなら授業が終わった後は部活に行くけど、部活のコーチに早く帰って寝るように言われてしまった。
「体調管理は基本よ。しっかり寝て治しなさい」
 そう言われても仕方ない。いつもキツいコーチの命令に従って今日は真っ直ぐ家に帰ることにする。
 普段、こんな早い時間に帰ることなんてないから、出迎えてくれたお母さんにも驚かれてしまった。
「あらあら……大丈夫なの? 病院行く?」
 娘の私から見てもおっとり美人のお母さんはそう心配してくれたけど、そこまで酷くないからと病院は行かないことに決めた。薬が嫌だったわけじゃない。本当。
 食べて寝れば治るはずだと思ってた。これまで体調を崩した時もそれで治して来たんだし。それでも一応大事を取ってお風呂は止めて、パジャマに着替えて早い時間にベッドに入った。
 明日の朝には治っていることを祈りながら目を閉じる。
 けれど、私のこの考えは甘かった。この時眠りに着いたのを最後に、私は――

 二度と目を覚ますことがなかったんだから。




 翌朝。
 目を覚ました『私』は、起きあがってすぐに自分の身体の状態を確認した。
 体や髪を触り、その形状や感触を確かめる。柔らかな胸の感触に艶やかな髪の感触。細い手足に白い肌。
「あー、あー。ごほん。あー……よし。良い声」
 軽く声を出してみて声の調子も確認する。これが今の自分の声か。
 思わず笑いが零れてしまう。
「くふっ、ふっ……っと。いかんいかん」
 咄嗟に出たものとはいえ、いつもの笑い方では不自然極まる。気分が萎えてしまう。『私』は改めて咳払いを一つ落とし、気持ちを切り替えて立ち上がる。
 パジャマを脱ぎ捨てながらクローゼットの扉の裏にある姿見に自分の姿を映した。そこには当然だがショーツ一枚の女の子が映っている。たわわに実った乳房が、寝起きということもあって肌が若干汗ばんでいて、それもまた実に扇情的だった。
「……ふふっ、いい感じ」
 その姿を堪能しながら、胸を両手で持ち上げる。皮が引っ張られるような独特の感触は新鮮で、奇妙な感覚を胸の内に灯す。
 これが女性が胸を弄ることによって覚える『快感』というものなのだろう。乳首を触る感触はともかく、こういう膨らみを触ることによって生じる快感は、普通は女性にしかない。
「……っ、結構……来る……ッ」
 思った以上の快感で驚いた。所詮は胸を触る程度のこと――と正直思っていたのだが……これは予想以上に気持ちがいい。胸に触るだけでイけるというのも納得の感覚の強さだ。
 この身体でも開発すればそうなるように出来るかもしれないが、とりあえず今日のところは開発に時間をかけるつもりはなかった。折角この身体を手に入れることが出来たのだ。他にもっと楽しむべき場所はある。
 『私』は最後の砦、ショーツに包まれている『その場所』を見下ろして、にやりとした笑みを浮かべた。きっと、元の『私』では決して浮かべない表情だろう。
 最後の一枚をあっさりと脱ぎ捨て、一糸まとわぬ全裸で鏡の前に立つ。
 『初めて』目にする女性の肢体にもっと興奮するものかと思ったが、案外落ち着いている。
 まあ、実際には何度も見たことのあるはずのものだから仕方ないのかもしれない。その慣れが『私』の感覚にも影響を与えているのだろう。
「楽しみが半減してしまうかもな……」
 思わず元の口調で呟いてしまった。気を取り直して口調を改める。
「……こほん。まあ、いいかな。『自分』がやったことのないことをすれば、十分楽しめるものね」
 そして『経験したことのない』ことは山のようにある。これから先の楽しみは無限大だ。
 普通なら出来ないこともたくさん出来るだろうから。
 
 勘の鋭い者なら言わなくてもわかるだろうが、『私』はこの身体をしていた女子大生であるところの『崎山咲』そのものではない。厳密にいえばの話だが。
 オカルト好きの人ならば、まず霊魂による憑依などを思い浮かべるかもしれないが、これはそんな一人分しか楽しめないものとは全く違う。
 
 改めて気を取り直し、自分の身体を観察する。
「しっかし、細い手足だなぁ……」
 すらりと長い手足は少し力を入れたら折れてしまいそうだ。ガリガリに痩せているというのとは少し違う。細いことは細いが、これは華奢という表現が的確なものだ。
 指先に至るとそれはもう見てて不安になるほどの細さだ。こういう点を見ると、女子というのは守ってあげなくてはいけない存在なのだということがよくわかる。
 いまや自分がその『守ってもらえる』側にいるわけだし、今後はそんなことは関係なくなるだろうから問題はないのだけど。
 とりあえずその細い指先を使って自慰に没頭することにした。
 まだそんなに体を弄っていはいないのだが、気分だけで体は準備を整えていた。触るとその場所がじんわりと湿っているのが感じられる。いわゆる『濡れている』状態だ。
「んっ……」
 じりじりと快感が這い上がって来る。これはやみつきになりそうだ。ずっとオナニーしていたいと思うくらい。こんな身体を持っていて、世の女性達は堕落せずよく過ごせているものだと感心する。
 さらに指を増やしてより強い刺激を楽しもうとした時――部屋のドアが急に開かれた。
「咲ちゃん何してるの!」
 普段おっとりとして声を荒げることなど――『記憶』にある限りは――ない母親が声を荒げて、いつもは垂れ目がちな目の端を吊り上げていた。
 突然の事態に思わず心臓が跳ねたが、すぐに問題ないことを思い出し、余裕を取り戻して笑顔を向ける。
「どうしたの? お母さん?」
 わざとらしくそう問いかけてやると、母親は目を吊り上げたまま部屋のなかに入って側に近づいてきた。その間にも手は止めない。むしろ見せ付けるように指を動かし続ける。
 娘の自慰を目の当たりにした母親はその場所をじっと見ながら口を開いた。
「どうしたのじゃないの! もう!」
 母親が手を伸ばしてこちらの腕を取り、弄れないように抑えてくる。彼女は器用にこちらの手を抑えながら、ベッドの上に押し倒す。裸の背中に感じるシーツの感触がこそばゆい。
 仰向けに倒れたまま、彼女の次の行動を待った。
「全く……駄目じゃない、朝っぱらからこんなことして」
 母親は身体の上に覆い被さってくる。それなりの年には達してるはずだが、十分美人と言える顔が近づいて来た。
「もっと、ちゃんとしないと」
 耳元で囁くのと同時に、ペロリと耳を舐められる。不思議とそれが凄く気持ちよかった。
「ふわっ……!」
「うふふ、かわいい。やっぱり咲ちゃんも耳が弱いのね。私がそうだからそうじゃないかと思ってたけど」
 親子の繋がりは人が思うより遥かに深い――ということなのかもしれない。
 まあ、そんな下らないことはともかく、母親による娘への責めは唐突に開始され、その年齢相応なテクニックにこちらはただ翻弄されるしかなかった。
「はむ」
 乳首を甘噛みされ、思わず体が跳ねる。
「すっ、ごい……っ」
「ふふふー……咲ちゃん、ほんと、可愛いなぁ」
 荒い呼吸を繰り返すこちらに感化されたのか、母親の方も息が荒くなって来ていた。目を閉じて体中を弄られる感覚に身を委ねる。
 触れられる度に感度があがっていくようだった。その感度によって引きだされる快感は抑えようとして抑えられるようなものではなく、ビクビクという擬音が付きそうなほどに体が跳ねてしまう。
 こっちが達する直前、母親はその動きを止め、別のところに照準をずらして触って来る。それもそれで気持ちいいのだが、達するまでにはいかず、いうなれば焦らされていた。
 イキたいのに、最後の詰めをしてくれないからイケない。それは実に生殺しの感覚だった。
 こちらの気持ちを知ってか、母親が少し体を離してこちらの顔を覗きこんでいる。
「……はぁ、はぁ…………おか、あさ……」
「イキたい?」
 にこやかな笑みで――まるでいつもと変わらない笑みで――母親は問いかけてくる。
 自分がどんな姿になっているのか、どんな表情を自分が浮かべているのか、わからないけど、とにかくイキたいことは事実だったので急いで頷いた。母親の唇の端が吊りあがる。それは一児の母親として、娘に対して浮かべる笑みとしてはあまりにも相応しくない、邪悪とも言える笑みだった。
「さぁ……もっと、気持ち良くなりたいのでしょう? それなら……」
 ぺろり、と乳房を舐めあげられる。その感覚はあっという間に絶頂の縁までこちらの意識を押し上げた。けど、ギリギリのところでイキきれない。上手すぎる焦らしようにこちらの意識は千切れてしまう寸前だ。
「お母さんをもっと楽しませてちょうだい?」
 ばさり、と服を脱ぐ音がする。微かに涙で滲んだ視界の中で、母親があっさりと全裸になるのを見た。どうやら下着は脱いで来ていたらしく、上着を脱ぐだけで彼女は全裸になっていた。その豊満な身体が再び覆いかぶさって来る。
「さあ、咲ちゃん……?」
「うん……わかった」
 甘えたような声を出しつつ、『私』は彼女に向けて手を伸ばす。これも一種のロールプレイという奴だ。親と娘の禁断の秘め事。それを演出する。
 それに乗っかるように、母親の方も妖艶な笑みを浮かべていた。
 まずはその大きな乳房を触ってみる。ずしりと重いそれは自分のそれよりも遥かに大きく、また肌の張りこそこちらのそれには及ばないものの、重量感としてはこの上ないものだった。こちらが青い果実だとするのなら、これはいわば実りに実って熟した果実だ。
「おいしそう……」
 思わずそう呟いたのはそういうイメージがあってこそのことだったが、その感想には母親が噴き出してしまう。
「ぷっ、ぷふっ、ちょ、おいしそうって……っ」
 何だか折角演出していた艶美な雰囲気が一気に霧散してしまう。しくじったとは思ったけど、いまさら発言の事実は消せないから仕方ない。
「だって、本当においしそうなんだもん」
 この語尾が違和感なく発せられるのは若いからこそだろう。こういう自分にしか出来ないことは積極的に絡めていかないと。
 そんなことを考えつつ、少し身体を起こして母親の乳首に吸いついた。まだ笑っていた母親はその刺激に思わず身体を撥ねさせる。乳房が揺れる重量感が吸いついた自分の唇に伝わってきた。
「ん、ぅ、ぁっ、咲ちゃ、ん……ッ」
「ん……やっぱり、おいしいよ」
 乳首の先自体は無味だったけど、少し汗が滲んでいたのか、少ししょっぱい味がした。さすがに甘い香りはしなかったが、その柔らかな感触が目の前にあることでただの汗の匂いも芳しい何か別の匂いに感じられる。
 赤子に帰った気持ちで、その乳房を吸い上げると、彼女は堪えるようにその身体を小刻みに震わせた。
「んぉ……ッ、すごっ、きもちいっ……いい……ッ」
 唇の上下で乳首の上下をホールドし、舌先で軽く乳首の先端を舐める。その微妙な感覚が良かったのか、母親は身体を僅かに逸らせ、首を上に向けて顔を歪めていた。快感を堪えている顔だ。さっきの自分もこんな表情を浮かべていたのかと思うと、恥ずかしく思う。同時にそれをイメージして興奮も強くなったけど。
 片方の乳首を口で責めつつ、今度は反対の乳首を指で責める。もうすっかり硬くなっていたそれを、指先でつまんでコリコリと刺激した。
「いぎッ」
 ちょっと刺激が強すぎたのか、びくりと母親の身体が動いて口が乳房から離れてしまう。だが指先でつまんでいた方は離れず、母親が身体を引いた分、乳房を引っ張るような形になってしまった。豊満で柔らかな乳房が大きく引き伸ばされ、その御椀のような形をミサイルのような円錐形に帰る。
「んああッ!?」
 その影響か、母親はさらに大きく快感を覚えてしまったらしく、慌ててその身体を元の位置に戻す。そうすると再び口に触れる位置に乳房がやってきた。すかさずその近づいて来た乳房に吸い付く。
「ふあっ、あ! もうっ、咲ちゃん、上手すぎ……っ」
「お母さんの娘だからね」
 くだらない軽口を交えつつ、『私』達はさらに行為に没頭した。
 責めては責められ、責められては責め……かわりばんこにお互いを高めて行く。
「おかあさ……もう……っ!」
「お母さんも……もう……だめ……っ」
 徐々にお互いが慣れてきた頃、どちらも絶頂直前の状態になった。絶頂直前で意識は遠くなるが、指や口は勝手に動きお互いをイカそうと動き続ける。
 そしてついにその時が来た。
「い、いくっ、いっちゃう!」
「いきましょ! いっしょに!」
 もう頭の中が真っ白になって、お互いにお互いを抱きしめながら、二人揃って絶頂に達した。
 それは生涯自分達が味わったことのない最高の快感で、すぐ傍で同じように達した者がいるということに不思議な安堵感を得れていた。そのため何にはばかることなくイクことが出来、その相乗効果で気持ち良さは途方もないほどの高みに達していた。
 抱き合いながらぐったりと暫く動かずに二人して呼吸を整える。
 先に喋れるほど回復したのは、年の功か母親の方だった。
「うふふ……気持ち良かったわね。咲ちゃん?」
 楽しげな母親に対し、苦笑を浮かべつつ頷く。
「まあね、お母さん」
 裸でベッドの上に寝転がり、二人で抱き合いながら笑い合う母子。こんなものが現実に起こり得るものだとは誰も思うまい。
 淫乱な家庭ならばそれもあり得るのかもしれないが、この家はそんな淫乱さとは無縁の過程で、この母子もこんなことに自分達が興じることになるとは思わなかっただろう。
 そんなことをつらつらと考えていると、不意に母親が口を開く。
「……なあ、ところで、さ」
 口調が変わったことにすぐ気付いた。先ほどまでの口調は母親としてこちらに対するに相応しいものだったが、いまは違う。
 それは別人に変わってしまったのかと思うほど、劇的な変化だった。その認識は半分以上間違っていないのだけど。
「そっちの快感を味わってみたいんだけど」
「ああ、いいよ。こっちもそっちの快感を味わってみたかったしな」
 こちらも口調を変えて求める。
 どちらともなく顔を寄せ、唇を合わせてキスを交わす。舌を伸ばし、執拗なまでに体液を交換する。唾液は特に味があるわけではなかったけど、それでも甘いような気がした。
 唾液が身体の中に入って来る――それと同時に不思議な現象が起きる。
 頭の中に記憶が入って来る。それは『崎山咲』の母親の記憶であり、それを乗っ取った者の記憶でもあった。目覚めてからの行動がわかる。同じように自慰に走った記憶。娘のことを思い出し、共に楽しもうと階段を上がる記憶。そしてその娘と行為に及ぶ記憶――と、視点を変えたいままでのことを経験しているようだった。
 やがて再生される記憶がいまのところまで来た時、どちらともなく口を放し、至近距離から見つめ合う。
「……咲ちゃん、どうだった? お母さんの記憶は?」
「中々、いいね。数十年分の記憶が流れ込んで来てる。『この子』を産んだ時の記憶までわかるよ」
「この子って。いまはあなたがその子じゃない」
「そうだったね」
 くすくすと二人して笑う。それは親子が浮かべ合うにしてはあまりにも不自然で、そして妖艶な笑みだった。

 『俺』は元々ただの学者だった。
 ウイルスというものに興味を持ち、それの研究をしていた。ウイルスというと悪い印象しかないかもしれないが、使いようによっては人の生活にも役立つ相棒となる。俺はそういうウイルスを作り出す研究を行っていた。
 長い年月かけても成果らしい成果はなかったのだが、ある時俺はとんでもないウイルスを開発してしまった。
 名称は特につけていない。だから具体的な効果を口にするしかないのだが、そのウイルスは『感染すると俺になる』ウイルスだ。このウイルスには俺の記憶や意識というものが含まれており、感染して暫く経つと感染者は『俺』になる。いわゆる霊魂による憑依であり、意思の乗っ取りとも言えるが、このウイルスが素晴らしいのは無限に増殖するという点にある。人から人に感染して行くことで『俺』はどんどん増え、やがては世界中が『俺』となるだろう。
 人類が続く限り『俺』は死なない。こう称するにはささやかな存在ではあるが、『俺』は神になったともいえる。
 さらにこのウイルス、好都合なことにそれが多く含まれる体液を交換することで双方間での記憶の共有が可能になるというメリットもあった。
 『崎山咲』になった『俺』がその母親になった『俺』とやったように、ディープキスをすることによって記憶が移るのだ。
 これによって『俺』達はそれぞれの主体性ごとに不公平さを感じることなく、心置きなく全人類に乗り移っていける。
 まさに最高のウイルスだ。

 私と母親は玄関に立っていた。
「それじゃあ、行こっか。準備はいい?」
 隣に立つ母親にそう呼びかけると、彼女は柔らかな笑みを浮かべて頷く。
「ええ、行きましょ。咲ちゃん」
 玄関扉の鍵を開け、二人して外に出る。
 外気が開いた扉から流れ込んで来て、体中を撫でて通りすぎた。
 続々と背筋に不思議な感覚が走る。
「うぅ……やっぱ、ちょっと恥ずかしいね」
「何言ってるの。これがいいんじゃない」
「それは…………そうだけど」
 さすがに少し不安になったこちらの心情を読んだように、母親が手を握って来る。この辺り、多少意識に差が出るのは奪い取っている身体の違いがあるからかもしれない。
 母親に手を引かれ、二人して玄関を出る。鍵を閉める必要はないから開けっぱなしで外を歩く。
 たかが外に出るだけで緊張する理由は身体の状態にあった。
 というのも、いま自分達は一枚の布切れさえ身につけていないからだ。さすがに足元は危険なのでサンダルを履いているが、それ以外は完全に全裸状態。この状態ではもちろん隠すことなんて出来ない。
 いわゆる露出行為という奴だが、母子でやっていることもほとんどあり得ないことであり、その上あり得ないのは時間帯である。
 夜中でもない、朝方の光景の中を裸で出歩く。
 そんな破滅を覚悟しなければ出来ないような行為を、いま自分達は行っている。
「さあ、どんどん行きましょ!」
 楽しげに笑う母親に連れられて、私達は歩き出す。
 途中、何人もの人とすれ違ったが、誰も自分たちのことを咎めたりはしない。この付近にいる者は皆『俺』になっているのだから当然だ。
「あらあら~、さっそく楽しんでるわね~」
 のほほんとした声で話しかけてきたのは少しぽっちゃりとしたおばさんだ。
 身体に注目されて思わず赤面する私達に対し、おばさんは頬に手を当てて溜息を吐く。
「あまり意味がないことはわかってるけど、やっぱり若い人の方がいいわねえ。この身体はだいぶスタイルが崩れてきてるから……」
「共有します?」
「お言葉に甘えて、そうさせてもらいましょうか」
 母親の提案に、おばさんはすぐに乗り、母親とおばさんがキスを交わす。
 正直、あまり見栄えのする絵ではなかった。こういう辺りは不便だとは思う。
 それでも、二人は口を離すと、満足していた。
「ほんとに早速楽しんでるわねえ」
「どうも。でも、そっちも凄いじゃないですか」
「うふふ」
 口を抑えて笑うおばさん。
「どういうこと?」
「咲ちゃんも共有する?」
 言うが早いか、母親が唇を重ねてきた。
 暫くして浮かんできたのは、おばさんの記憶と思われる映像だった。その映像を見て驚いた。おばさんはなんと息子夫婦と同居していたようなのだが、その息子の嫁とSMプレイをしていたのだ。息子は出張で家にいなかったらしく、嫁とレズプレイでもしようとしたところ、嫁からSMプレイに興味があることをカミングアウトされたらしい。息子ともやっていなかったらしいので、もしも『俺』が乗っ取ることがなかったらきっとそれが表に出ることもなかっただろう。
「いまは放置プレイ中なの。色々ホームセンターで買いこんで帰ろうと思って」
「ふぅん。いいわねえ」
 ちなみに、『俺』全体の取り決めとして『店などの営業には影響が出ないように楽しむ』ということをウイルスをばらまく前に決めている。
 そうしないと社会が維持出来ないし、思う存分楽しむことも出来ないからだ。
 今後色々と困ることも出来てくるかもしれないが、その時はその時考えればいい。
「それじゃあ、行くわねー。今度は一緒に楽しむのもいいかもしれないわねえ」
「そうですね。その時はよろしくお願いします」
 にこやかな会話を交わし、おばさんと別れる。
 これまではたまたま道ですれ違っても視線すら交わさなかった間柄なのに。
 ある意味、この世界はいいところになるかもしれない。
「さ、ちょっと寄り道しちゃったけど、行きましょうか」
「うん」
 再び歩き出す。露出プレイというのも楽しいのだけど、緊張感はあまりない。何せ絶対捕まることもないし、問題になることもないとわかっているからだ。
「……ちょっと、こういうところは善し悪しよね」
 いまはまだ恥ずかしいという感覚があっていいが、これが慣れると面白みは半減以下だろう。
「でも、そうなったらもっと凄いことしようよ。SMプレイを混ぜるとか……」
「ああ、いいわね。体中を緊縛された状態で歩いたらまた違う快感があるでしょうし」
 そんな風に親子としては交わすとは思えない会話を交わしながら、町中を歩き続けた。その道中、見かけた人達はいつも通りの人もいれば、自分達のように得た身体を楽しんでいる者もいた。道行く者と手当たり次第にセックスする女性や、飼い犬と性行為に及んでいる中年女性や、道端でオナニーに耽る女子学生、さらには庭先で犬のように四つん這いで歩き回るプレイをしている者など、とにかく普通と異常が混沌としていた。
「すごい世界になったわねえ」
「私達もその一部だけどね……どこまで感染は広がったのかな?」
「さぁ……少なくとも」
 ようやく目的の場所に辿り着いた私達はその『場所』を見上げる。
「ここは完全に感染してるでしょうね」
 そこは私が通っていた学校だった。ウイルスの感染力は伊達じゃない。一人でも感染した者がいればその者の生活圏は軒並み感染する。
 つまり感染していた私が通っていたということは、この学校も感染しきっているということだ。
「それじゃ、いきましょ。先生達に挨拶もしたいし」
「そうだね」
 ここに来たのには理由がある。それは先ほど少し触れた『店などの営業には影響が出ないように楽しむ』という取り決めがあるためだ。だが、学校にはそれは適用されない。ゆえに学校だけは完全に異常な世界と化しているということになる。
 楽しむのであればこの舞台を利用しない手はない。
「生徒達は来てるのかしら?」
「さあ……どうだろ? 私達と同じ考えになるだろうから、結構来てるような気はするけど……」
 校門のところで母親と話していると、ふと運動場の方が騒がしいことに気付いた。
「なんだか、運動場がにぎやかだね」
「じゃあ、たくさん来てるってことかしら?」
 母親と一緒にそちらに向かうと、そこにはたくさんの人だかりが出来ていた。同じ考えに至ったのか、見覚えのある顔も多い。母親が一緒にいるパターンが多かったけど、父親なんかも混ざっているみたいだ。
 適当な者を捕まえて話を聞いてみる。
「あ、咲ちゃんやっほー。そっちもお母さんと一緒?」
「峰ちゃんおはようー。峰ちゃんもなんだ」
「まあねー、いまは男の先生とセックスしてて傍にいないけど……。やー、それにしても咲ちゃん楽しんでるねー。そんな格好で来るなんて」
「結構ドキドキしたよー」
 そんなガールズトークを交わしつつ、話を進める。
「ところで、なんだかすごい人だかりができているみたいだけど、何これ?」
「それはねー……んー。口で説明するよりこっちの方が早いか」
 言うと同時にその友達は唇を重ねてきた。体液交換で共有をしようというのだろう。確かにそっちの方が早いし確実だ。
 目を閉じてディープなキスを楽しんでいると、情報の山が頭の中に広がる。学校に来てから相当な数の人と共有を行っていたらしく、たくさんの経験が流れ込んで来た。
 それら一つ一つを味わうのは後にして、まずは肯定に人だかりができている理由を探って行く。
 するとすぐにその原因がわかった。思わず目を見開いてしまう。
「え、それじゃあ……」
「そうなんだよー。さすがコーチって感じ? あの人。キツイ感じだし、確かに支配されるよりは支配する側だもんねー」
 そんな風に峰ちゃんと言葉を交わしつつ、私達は移動を開始する。
「あれ? ちょっとちょっと! 私とは共有してくれないの?」
 母親が困ったような顔になって後ろを突いてくる。私は峰ちゃんと顔を見合わせ、少し笑った。
「お母さんは実際見てみてよ」
「そうそう。そうした方が色んな経験になっていいでしょ?」
 私達二人の言葉に、母親はそれもそうかと納得してくれたみたいだった。
 大回りして『それ』が見える位置まで行くと――何の前情報も得ていなかった母親は目を剥く。
 そこでは、一人の女性が周囲をたくさんの人に囲まれた状態で、素っ裸にされて立たされていた。
 しかしその身体には素っ裸と表現してもいいものか迷うほどの装飾が成されている。というのも、その柔らかそうな身体を無数の縄が縛りあげていた。乳首にはクリップが取り付けられ、口には布によって猿轡が施されていて、はっきりとした声を一切出せないようにさせられていた。目は鉢巻きによって覆われており、視界を完全に奪っている。
 その執拗なまでの校則ぶりに、母親は怪訝な顔をする。
「SMプレイ……なの? でも、なんであの人だけ?」
 確かにそういうことをすること自体はいまの状況では普通だけど、その人一人だけを縛りあげているのは不自然だ。さすがにそのことにはすぐ気付くか。
 私は早々とネタばれをしてしまうことにする。
「実はね……あの先生、ウイルスに感染していないんだって」
「え!」
「凄いよねえ。体質かなんなのか……もしもこのウイルス感染が普通のパンデミックであったなら……その抗体から世界を救うきっかけになったり、何かしら英雄になれる可能性があっただろうにねぇ」
 ウイルスに対する抗体があった――というのは、このウイルス感染においては単なる不幸でしかない。周りは全て敵となり、『俺』ではない『その他』として甚振られるレアな存在にしかならない。
「まあ、早めに確保出来て良かったね」
「そうね……下手に騒がれても面倒だものね」
 世界全てが感染するまでは、の話だけど。
 騒がれたところでどうなるものでもないし、問題はないとは思うけど。
「運よく綺麗な女の人が『そう』だったんだし、『学校の皆の公共の奴隷にしよう』って話しがまとまったとこ。色々やって屈服させようって話しになってね? 何人かに道具を取りに行ってもらってるところなの」
「ふぅん……なるほどねえ」
 母親は納得したように頷き、顔を峰ちゃんの方に向ける。
「私も参加してもいいのかしら?」
「もちろん。ぜひ参加してください。大人の女性同士が絡む姿も見たいし」
「じゃあ、私はその間に男の子とセックスしてこようかな。せっかくだからこの子が好きだった子としてみたいし」
 身体の恋心が満たされて幸せな気分を満喫出来そうだ。相手も断らないだろう。
 その時、校門の方から大荷物を持った男性陣が運動場に入ってきた。
「色々道具持ってきたぞー。公開凌辱の準備はOKか?」
 すでに舞台は整えられていた。朝礼台が運動場の真ん中に移動され、その周りを集まった人達が取り囲んでいる。
 これから公開凌辱が始まる。四面楚歌の状態でどこまであのコーチの気力は持つのか……少し気になったけど、後で母親にでも共有してもらえばどんなことをしたのかはわかるはずだから問題ない。
 私は運動場に思い人の姿がないことを確認すると、未練なく運動場から校舎の中に入る。
 
 運動場では『俺』になれなかった哀れな女性の悲鳴がいつまでも響いていた。
 
 
 
 
『全てが俺になる』 終
 
 
 
 

Comment

No.764 / チョビ [#-] いい…いい!

おいしいです(*^p^*)
もう一方のほっぺも落ちますた
もうほっぺがないよ!どうしてくれるの!
あと、コーチはちょっとジブンと代わってもらうわよせなにをする(ウィルス

2012-07/29 23:57 (Sun)

No.765 / [#] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2012-07/30 00:51 (Mon)

No.766 / 名無しさん [#-] No Title

これはいいや、素が残ったままでってのが最高です

2012-07/30 01:00 (Mon)

No.767 / 名無しさん [#-]

良かったです!ウイルスといっても実質的に男性人格による乗っ取りですね。
最終的に人類補完計画みたいになりそう

2012-07/30 01:12 (Mon)

No.768 / Torainu [#CNtCm3fU]

執筆お疲れ様です

う、う~ん…
自分にはあまりビビッと来ませんでしたねぇ…
感染したらみんなが「俺」になるというのは面白そうではありますが、ただ淫乱な世界になった、という感じがして…

多分、好みの問題でしょうね(笑)

2012-07/30 01:44 (Mon) 編集

No.769 / バリオドール [#-] No Title

発想は非常に面白いと感じました。

情報の共有も自分が広がるという感じが強く良いと感じました。ただ元の人格が消えてしまうというのは少し残念かなと。

2012-07/30 07:30 (Mon)

No.770 / 名無しさん [#-]

個人的にはツボってて良かったです!

2012-07/31 00:37 (Tue)

No.772 / 名無しさん [#-]

良かったです。インベーションを彷彿とさせますね。

2012-08/04 15:24 (Sat)

No.777 / [#] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2012-08/12 17:30 (Sun)

No.779 / 光ノ影 [#-] Re: いい…いい!

チョビさん、コメントありがとうございます。
返信が遅れに遅れて申し訳ありません……。

> おいしいです(*^p^*)
> もう一方のほっぺも落ちますた
> もうほっぺがないよ!どうしてくれるの!
拙作を堪能してくださってありがとうございます。
落ちたほっぺは私が美味しくいただいておきますね(笑)。
なくなってしまったほっぺに関しては……とりあえず、何か代わりになるものを調達しておきますね。こっぺぱんとか(笑)

> あと、コーチはちょっと~
公開凌辱どんとこいな方ですか!(ナカーマ
私もコーチにはちょっと代わって欲s

それでは、どうもありがとうございました!
またどうぞお越しください。

2012-08/13 00:15 (Mon)

No.780 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

返信が遅れて大変申し訳ありません。
コメントありがとうございます!

> これはいいや、素が残ったままでってのが最高です
主体が代わってしまっただけで、本人は本人なため、素は残ります。
完全に変わってしまうと変化が乏しくて『俺』自身もつまらないでしょうしね。

それでは、どうもありがとうございました!

2012-08/13 00:19 (Mon)

No.781 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

返信が遅れて申し訳ありません。
コメントありがとうございます!

> 良かったです!ウイルスといっても~
こんなウイルスがあるか、というツッコミ待ちです(笑)。
どういう原理かはたぶん男にも分かってないと思います。

> 最終的に人類補完計画みたいになりそう
エヴァは良く知らないのでわからないです……申し訳ありません。
創作者として、有名どころの作品は抑えて置きたいのですが、なんだかんだと期を逃しているうちに知らないままでして。

それでは、どうもありがとうございました!

2012-08/13 00:22 (Mon)

No.782 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

Torainuさん、コメントありがとうございます!
返信が遅れて申し訳ありません……。

> 執筆お疲れ様です
ありがとうございます。感想をいただけると疲れも吹っ飛びます。

> う、う~ん…
今回の作品はTorainuさんのお気に召さなかったようで……残念です。
確かに、ただ淫乱な世界になっただけではないかというのは、実際その通りなんですよね……。
最終的には何をしても刺激にならず、社会が崩壊して行きそうな気がします。今回はそうなる前の、いいところだけ抜きだして書いたみたいな、そんな感じになっちゃってます。

> 多分、好みの問題でしょうね(笑)
好みに関してはどうしようもない要素ではありますが……個人的な目標としては、『趣味に合わないはずのものでも、思わず目を通し、思わず嵌って、思わず新しい扉を開いてしまう』、そんな作品を書きたいと思っています。
まだまだ未熟で、先は長いですが……頑張ります。

それでは、どうもありがとうございました!
またお越しくだされば、幸いです。

2012-08/13 00:29 (Mon)

No.783 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

バリオドールさん、コメントありがとうございます。
返信が遅くなってしまい、申し訳ありません。

> 発想は非常に面白いと感じました。
リクエストを募集した甲斐がありました。
ウイルスで乗っ取りなんて、思いつきませんでしたから……こういうことがあるので、リクエストは積極的に受けていきたいと思います。ただ、リクエストばかりだとそれはそれで困るので難しいところです。

> 情報の共有も~
情報の共有はたぶん不細工な人の主体となってしまった『俺』が一番嬉しいと思います。
元の人格が消えてしまうことについては……さすがにオンオフが切り替えられるのは都合が良すぎるかと思い、完全に乗っ取る形になりました。いつかそれも自由に出来る形式のものを書けたらいいのですが……いまのところ、いい方法が思いつかないです。

それでは、どうもありがとうございました!

2012-08/13 00:36 (Mon)

No.784 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

コメントありがとうございます!
返信が遅れて申し訳ありません……。

> 個人的にはツボってて良かったです!
気に入っていただけたなら幸いです。
自分の作品で人を楽しませられるということがわかって、非常に励みになります。

それでは、どうもありがとうございました!

2012-08/13 00:38 (Mon)

No.785 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。
返信が遅れて申し訳ありません。

> 良かったです。インベーションを彷彿とさせますね。
ググりました。なるほど、これは確かに彷彿としますね。
男はここからウイルスの着想を得たのかもしれません(笑)。

それでは、どうもありがとうございました!

2012-08/13 00:49 (Mon)

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