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死神輪舞10

死神輪舞9の続きです。

 前回の話はこちら→         

 では続きからどうぞ。


死神輪舞10




「まず、死んだはずの俺達だが、幽霊になったわけではないこと――これはわかるよな?」
 セイトはまずそう話を切り出した。
 他の人からも見えていること、触れられること、物を食べられること、それらを考えればシェルちゃんから話を聞かなくてもわかることだったので僕は頷く。
「俺は自分の葬式を見に行ったから、この世界がいわゆる死後の世界って奴じゃなく、生きていたころと同じ世界だっていうこともわかってる。つまり、俺達はどういうわけだか知らないが、生きていた時とは別の体で蘇ったってことだ」
 セイトは相変わらず僕の手を優しく握ったままだ。
 彼を騙していることに関する罪悪感は相変わらずあったけど、一方でセイトの体温は僕の心を癒してくれた。
「よくわからないのが死ぬ前に出てきた少女……それがいまの自分と同じ顔をしてたってことは、その少女がいまの状況に関わりがあることは確かだ。そして、少女が持っていた大鎌――俺の予想としては、その少女っていうのは死神に近いもんなんじゃねえかと思う」
 凄い。当たってる。
 死神らしい大鎌を持っていたからわかりやすいって言えばわかりやすい。
 でも、セイトは『死神』とは限定しなかった。
 慎重で、冷静な判断が出来ている証拠だ。恐ろしい人だ……。
「恐らく死んだ俺達の魂を回収か何かするために俺達の前に姿を現したんだろう。それがなんでこうなっているのかは俺にもわかんねえ」
 僕は胸中で密かに思った。
 きっとセイトも僕と同じように生きたい、と望んだのだろう。
 その結果、アルちゃんの体を乗っ取ってしまった……のだ。きっと。
(でも、頭の中でアルちゃんの声はしてない……みたいだね)
(聞いちゃダメよ。そんなこと訊いたら……)
(わかってるよ)
 僕は何も知らない、ということになっている。
 なのに『頭の中で誰かの声はしてる?』と聞いてしまったら、僕が元の体の主と会話出来ていることがセイトに知られてしまう。かなり頭が切れるセイトのこと、詳しいことはわからないかもしれないけど、不自然だとは思うだろう。
 黙っているしかなかった。
 セイトが再び口を開く。
「こうなった最初、俺は混乱した。裸だったしな。とにかく適当に服を着て……俺は自分の部屋を出た。これだけ姿が変わっちまってたら親に言っても無駄だし。息子の部屋に侵入してきた頭の変な奴だと思われるのがオチだろ?」
 自嘲気味に笑うセイト。
 その話から察するに、どうやらセイトは自分の部屋で死んだらしい。それで服には困らなかったんだろう。
 『お前はなぜ服を持っていたのか』と訊かれたら説明に困っただろうけど、幸いセイトはそこは触れなかった。
 きっと男たちに襲われた傷が疼くだろうと考えて、遠慮してくれたんだろう。
「それで外に出たんだが……正直、途方に暮れた。金もなかったし、頼れるような場所もなかったからな。……初めの二週間くらいが一番きつかった。色々苦しいことも経験したし……正直、その二週間の話はしたくないから勘弁してくれ」
 セイトがこちらを気遣ってくれているのに、僕が無神経に訊くわけにもいかない。僕は頷いた。
 訊かなくても……きっと、僕と同じようなことがあったのだと予想出来る。
「転機が訪れたのは力を求めた時だ。その時、俺は理不尽な扱いを受けていて……その相手を殺したいほどに憎んだ。だが今のこの体の腕力ではそいつに勝てなかったから、何でもいいから『力』を求めた。――まさにその瞬間だった。俺の頭の中に『力の使い方』が浮かんできたのは」
「……浮かんできた?」
 思わず零れた僕の呟きに、セイトは頷く。
「そう。あれはまさに浮かんできたとしか表現できねえな。どうすればその力を振るえるのか、はっきりとわかった。俺は頭で、というか、こう、空間に、だな。『大鎌』を思い浮かべた。出来る限り正確に、出来る限り本物っぽく。するとただのイメージだったのに実際にそこに大鎌が発生したんだ」
 それは確かに、死神の力……具現化のやり方だ。
 もしもセイトの話が本当なら、彼は本当に死神の力の使い方がわかったということになる。
「……そして、俺はその大鎌を使って憎いそいつを切った。すると……どういうわけか、そいつは死んだ。体が真っ二つになったわけじゃない。まるで……そうだな、糸が切れるように崩れ落ちて死んだんだ」
(きっと、魂を体から切り離してしまったんだわ)
 セイトの話を聞いて、頭の中でシェルちゃんがそう呟く声が聞こえた。
「切ったそいつの上には、ふわふわした光の玉みたいなもんが浮かんでて、どうもそれは人の魂って奴らしい。それも頭の中に浮かんできた情報だから、正しいのか間違ってるのかよくわかんねえけど」
 セイトはいままでずっと扉の横に直立不動で立っていたメイド服を着た女の人を指さした。そういえば、彼女は僕たちの話を聞いていたけど……構わないんだろうか?
「力を使えるようになった俺は、色々応用して力を試してみた。その過程で、上手い力の使い方を見出したんだ。その中の一つが――そこにいる玲奈にもしている『操作』だ」
 初めて聞く能力の名前に、僕は首を傾げる。
「『操作』って、なに?」
「ああ、名前は俺が勝手につけたんだが、簡単にいえば洗脳って奴だ」
 あっさり、セイトはその言葉を口にした。
 あまりにあっさりとしていたので、一瞬言葉の意味が掴めなかった。
「洗脳……?」
「そう。大鎌で切り離した魂は体に戻すことが出来る。だが、戻す前に魂に向かって命令を言っておくと、目覚めた後、その命令に従ってくれるようになるのさ。玲奈には『俺に従え』と、命令した。魂そのものに命令してるわけだから、玲奈は絶対その命令に歯向かうことが出来ないって理屈だと思う。そもそも歯向かおうっていう気も起らないハズだ」
 そんな。
「そんなこと…………っ」
 してもいいと思っているのか。
 彼女には彼女の意思があり、それは絶対に尊重されるべきだ。
 それを異常な方法で捻じ曲げるなんて、しちゃいけない。
 そう抗議しようと口を開きかけたが、それを先読みしたのか、セイトが僕より先に口を開く。

「そいつは、死のうとしていた」

 思わず、出しかけていた言葉を飲み込む。
 死のうとしていた?
「俺が当時根城にしていたビルの屋上から飛び降りようとしていた。最初は、俺も止めようとしたさ。何か深刻な理由があるのだろうってな。だけど――理由を聞かされて、俺は玲奈に同情する気をなくした」
 セイトはまるで親の仇を見るかのような、怒りに満ちた目で玲奈さんを睨んでいる。
「借金がかさんでとか、生活が苦しくなってとか、あるいは失恋してとかいう理由でもねえ。……ただ『生きることに飽きたから死ぬ』――玲奈は、そこのクズは、そう鬱陶しそうに言いやがったんだ!! 助けようとした俺に対して!」
 激昂するセイト。かなりの大声だったけど、玲奈さんはこちらに目の焦点を合わせなかった。待機を命じられているからだろう。
 セイトの気持ちは僕には痛いほどよくわかる。
 死神の体を乗っ取るほど強く『生きたい』と思った僕ら。
 セイトの死の状況はよくわからないけど、きっと理不尽な死だったのだろう。
 理を変えてでも、『生きたい』と願うほど。
 だから、許せない。
 生きるのに飽きたから、なんていう理由で死を選んだ彼女が。
 まだまだ二十歳代くらいで若そうなのに、生きるのに飽きたなんて口にする彼女が。
 絶対に、許せない。
「どうせ捨てようとしていた命だ。俺が有効的に使ったって文句はねえだろ」
 吐き捨てるようにしてセイトはそう言った。

 僕は頷きはしなかったけど――首を横に振ることも出来なかった。




~11へ続く~

Comment

No.67 / 名無しさん [#-]

手強そうですね・・・
「数日」無事でいられるのだろうか・・・
ただ鎌の力は大きな収穫ですね
集団相手でも何とかなりそう

2008-09/05 23:32 (Fri)

No.68 / 光ノ影 [#-]

コメントありがとうございます。
 亮としては何とか無難に切り抜けたいところですよね。
 鎌の力はかなり使えると思います。切ったとしても即死ではありませんから。それで動きを封じている間に実体を縄か何かで縛りつけて、それから蘇生させれば亮の良心も痛みませんし。
 これからの展開次第の話ではありますが。
 そろそろ説明部分は終えて、物語の展開を進めたいと思います。よろしければ、お付き合いください。

2008-09/06 12:39 (Sat)

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