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『心に通じる携帯電話』

この話は読み切り短編です。
ジャンルはMC・露出などです。
 
それでは、続きからどうぞ。
 
 
『心に通じる携帯電話』
 


 目の前から男の人が歩いてきた。
 『なんとなく見覚えがある気がして』、その人の顔を注視してみる。平凡な顔付きに、特徴のない髪型だった。例えば道ですれ違っても三秒後には忘れていそうな影の薄さだ。容姿は悪くもないが特別良いわけでもなく、見覚えがあると思ったことが気のせいではないかとさえ思えてくる。私はそう結論づけて、視線を逸らしかけた。
 その瞬間、『突然思い出した』。
 そうだ。高校時代にずっと同じクラスだった男子だ。特別親しい訳ではなかったけど、何度か話す機会はあった。隣の席になったこともある。もう三年は前のことで、どこの大学に行ったかどうかも知らないけど。今日はたまたま道が同じになって、偶然行き合ったみたい。向こうは私のことをきちんと覚えていたのか、笑顔を浮かべて近付いて来ている。
 彼のことを忘れかけていた気まずさを誤魔化すために、私は『満面の笑顔を浮かべて』、彼に『走り寄った』。
「『遅いよ! 結構待ったんだからね!』」
 彼は私の抗議に対して、にこやかに笑う。
(……あれ?)
「ごめんごめん。ちょっと電車が遅れてね」
 彼はまるでそれが当たり前のように――まるで駅で待ち合わせをしていたように――自然な態度で私に応じた。
(ちょっと待って)
「『許して欲しかったら、誠意を見せてよね!』」
 怒っているように聞こえるけど、そこに本当の怒りはなく、まるで彼女が彼氏に我が儘を言っているような声音を出す。
 名前も思い出せないかつてのクラスメイトは、いかにも「仕方ないなぁ」という風に笑いながら――我が儘な彼女に辟易しながらも喜んでいる彼氏のように――私にキスをしてきた。
 唇と唇とが当たり、彼の体温が敏感に感じ取れる。彼はそれだけで離れようとする。ちょっとちょっと。子供じゃないんだから。
(え!? なにこれ!?)
「『それじゃ、ダメ! もっと!』」
 私はキスをしてくれた彼の首に腕を回し、更なる繋がりを求める。彼が微かに苦笑したのがわかった。
 熱い物が私の中に入ってくる。私は喜んでそれを受け入れた。こちらからも舌を伸ばし、纏いつく唾液を交換する。
 たくさんの往来がある中で、私と彼は気にせず交わりを続けていた。
 スカートの中に彼の手が入り込む。当然ながら『スカートの下にはショーツも何も履いていない』ため、彼の指先はあっさりと私の秘部に触れた。
(え、あれ、どうして私、下着を履いてないの!?)
「ふぅん。こんな格好で、こんな人の多いところに立ってたんだ。全く、すごい変態だね」
 唇から口を離した彼が、耳元で囁く。私は反論しようとしたけど、キスで唇を塞がれて声が出せなかった。
 脇から後ろに回された彼の空いていた手が、私を抱きよせながらおっぱいを掴む。その感覚はブラジャーをつけていないことを示すものだった。
(なに、これ? なにが、どうなってるの?)
「『あふ……あっ……あん……」
 唇、胸、アソコ。三か所を同時に責められて私は思わず喘ぎ声をあげてしまっていた。自分で自分を慰める時より、ずっとずっと激しい快感が頭を貫いている。周りの人達は様々な反応を示しながら触らぬ神にたたりなし、というような様子で通りすぎていく。
 あまりの快感の激しさに、徐々に足から力が抜けてきた。もう立っていられない。
(私、どうしてしまったの?)
「『あっ、ああっ、い、イク、逝くっ、逝っちゃう!』」
 いよいよ快感の絶頂に昇りつめようとした時、急に彼は動くのを止め、乱れた着衣を軽く直してくれた。私は肩透かしを食らったような感で立ちつくすしかない。高ぶった感覚はそのままに、逝くに逝けない生殺しの状態だった。
「ここでこれ以上はまずいから、移動しようか」
 あっさり言って、彼は歩き出し始める。私はしばらく茫然とその背中を見送っていたけど、すぐ慌てて追い付いた。
 彼の腕に腕を絡め、その肩に頭を載せるようにしながら、私は彼と一緒に歩き出す。
「『イジワル……』」
 私が逝かせてくれなかったことに対して文句を言うと、彼は笑って答えた。
「知ってる」
 いかにも仲のいい――むしろ仲の良すぎる――カップルとして街を歩いて行く中で、不意に彼が口を開いた。
「さて。そろそろ百歩くらいかな。言いたいことがあるなら聞くけど」
 そう言われた私は『満面の笑みを浮かべながら』彼に対して問いかけた。
「ねえ、これは、どういうことなの? あなた、あたしに何をしたのよ?」
 大声で強く問いかけたつもりだったけど、その声は囁くような声量にしかならなかった。自由に話せるようにはなったものの、完全に自由にはなっていないみたい。
 彼はいやらしい笑みを浮かべて私の問いかけに応える。
「まあ、ちょっとしたことだよ。君はもう僕の指示から逃れられない」
「何を言って……」
「君の行動、思考、記憶や感情すら、全部僕は操ることが出来るんだよ。どうやってか教えようか?」
 そう言いながら彼は携帯電話を取りだした。ごくごく普通の携帯電話のように見えるけど……。
 彼はいいながらメール欄を開き、『送信済みボックス』の中身を私に見せる。そこには私の名前が宛先になったメールが山のように保存されていた。
「これは全部君に対して送信したメールなんだよ」
「……こんなにたくさんのメールを受け取った覚えはないけど」
 そのはずだった。大体、私と彼はクラスメイトだったというだけでメールのやり取りをするような仲じゃない。メルアドさえ教えてない。
 彼は楽しげに笑いながらその携帯電話を自慢げに振る。
「これは外見こそただの携帯電話だけどね。普通の携帯電話じゃないんだ。これは、『君という個人』にメールや電話をするための携帯電話なんだよ」
「……? 訳がわからないわ。もっとちゃんと説明してよ」
「要するに……そうだね。実際にやってみようか」
 言いながら、彼は私を人気のない道に誘導する。
「この辺りでいいかな」
 彼は携帯電話の電話帳を開き、私の名前を選択する。そして、通話ボタンを押した。普通に電話をかけるように、彼は電話を耳に当てる。
 私はその時、なんだか妙な感覚を覚えた。なんと表現するべきか迷うのだけど、得体のしれない軟体生物が足元から体中に這い上がって、徐々に体に溶け込んでくるような感覚。他の何かが自分の中に入ってくるような――純粋に気持ち悪い感覚。
 そんな感覚を私が気持ち悪く思っていると、彼が電話の向こうに向かって話す。
「前から歩いて来ている人に、スカートをめくりあげてアソコを見せろ」
 その言葉を聞いて、私は即座に動いていた。
 前から来ていたのはサラリーマン風の男性。私はその人に向かって、スカートの端を捲りあげて秘部を晒す。ショーツもスパッツも履いていなかったから、直接風がアソコに当たる感覚を明確に感じ取ることが出来た。その人は最初気付かなかったみたいだけど、何気ない様子でこちらを見たときに気付き、驚きの表情を浮かべた。
 すぐにすれ違ったものの、こちらのことをしきりに気にしている様子だった。
「よし、もう降ろしてもいいぞ」
 許可が出たのを心待ちにしていた私は、慌てて捲りあげていたスカートから手を離す。私は顔を真っ赤にしながら、彼の顔を見た。彼は楽しそうに笑いながら、携帯電話の通話を切る。
「わかった? いまのが君自身に電話をかけるってこと。命令も暗示も楽々ってわけさ。まあ電話をかけるためには細かな情報が必要だから、苦労したけどね」
 彼は携帯電話を操作し、また再びあのメール画面に戻した。
「電話はいまのみたいに直接そのまま命令を出すのに向いているんだけどね。やっぱり常に携帯を耳に当てながら――って言うのは面倒だし、余計なことまで君に届いたらまずい。それを解決するためにあるのが、メール機能さ。このメール機能がかなり便利でね……いちいち電話をかけなくても、あらかじめ送っておけばそれだけでいいんだ。ちょっと内容を見てみるかい?」
 彼はいいながら私にその画面を示す。さっきちらっとみた送信ボックスの一つのメールを選択する。
 
『駅で近づいてきた○○を恋人と認識し、満面の笑顔を浮かべて走り寄る』
『待ちぼうけを食らわされた恋人のような声音で「遅いよ! 結構待っていたんだからね!」と言う』
『謝罪を受けたら、「許して欲しかったら誠意を見せてよね!」と言ってキスをせがむ』
 
 一つずつ見せられたメールの内容は、彼と出会ってからいままでの内容を事細かに指示した内容だった。私はその内容通りに動かされたのだ。背筋に冷たいものが走る。
「わかった? ちなみに、無理やり命令を出しているというわけじゃないから安心して。君は僕の支配下に置かれているってだけだからさ」
 どうして、そんな風に笑えるんだろう。私はその場から走って逃げたかった。けど、私は『恋人に向けるような満面の笑みを彼に向かって浮かべながら、腕を組んでいる』状態を止めることが出来なかった。そういった指示の内容が、メールの中に含まれているのだと思う。
「ねえ、なんで、こんなことするのよ。ずるいじゃない。卑怯じゃない。そんな物で人をもてあそんで、人を手に入れて……それで満足するわけ?」
 私に出来ることは、許された範囲で彼を糾弾することだけだった。彼はそんな私の訴えにもまるで応えた様子を見せない。
「いやぁ、だって普通ならさ。君は僕なんて相手にしないだろ? 僕は何の取り柄もない平々凡々の男だからね。綺麗で可愛くて、人気の高い君は僕なんか見むきもしない」
「それはあなたが自分を磨こうとしないからじゃない。それで好きになって欲しいだなんて甘えもいいところだわ」

「そうだね。それで好きになって欲しいなんていうのは我儘だ」
 
 あっさりと彼は認めた。
「でも勘違いしないで欲しいのはさ、僕は君に僕を好きになって欲しいわけじゃないよ。思い通りに動くおもちゃが欲しいだけだから。飽きたら捨てるだけ。安心していいよ」
 まあでも、それまでは、と彼は笑う。
「思う存分、楽しませてもらうけどね」
 私はその言葉や表情を見て、何を言ってもダメだということを確信した。後ろめたさがあれば良かった。付け込む隙になったかもしれない。けど、彼にはそれが全くない。おもちゃのように私を扱うことに何の躊躇も引け目も感じていない。そんな彼に対して何を言えるというのだろう。何を言えばいいと言うのだろう。

 悪魔に対して、「あなたのやっていることは悪いことなの」と説いたところで何になるというのだろう。

 絶望して何も言えなくなった私は、自分がある場所に連れてこられたことを認識した。
 派手な看板を構えたラブホテル。私が本来付き合っている本当の彼氏と何度か入ったことがあるから、そこで何が行われるのかはわかっていた。けど、もうどうしようもない。早く彼が飽きてくれることを祈るばかりだった。
 私は『ラブホテルの前まで来てから、早速服を脱ぎ始めた。ブラウスのボタンを外して、前を肌蹴て行く』。これもまた、『メール』で出された指示なのだろう。そう自覚することすらかなり困難なほど、自然な行動として『メール』の指示は作用しているようだった。
「まだ早いよ。焦りすぎ」
 苦笑を浮かべた彼が言う。
「『えーっ、だって……もう、我慢出来ないんだもん』」
「じゃあさっさと入ろうか」
 私は服を肌蹴たまま、彼に従ってラブホテルの中に入った。彼が部屋のカギを購入している間に、別の利用者が近くを通りすぎる。私の格好を見たその利用者は「ヤル気満々だな」と揶揄するように呟きながら通りすぎていった。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「ほら、いくよ」
 彼が私の手を引いてエレベーターへと向かう。
 『エレベーターに乗った私は、素早くブラウスを脱ぎ去り、スカートも地面に落してしまう』。靴以外素っ裸になった私は、彼の腕に再びしがみついた。彼は私が脱ぎ落した服を拾い集め、鞄の中に素早く詰めてしまう。これで私はもう服を着直すことも出来ない。しばらく上がった後、エレベーターのドアが開く。私は彼よりも先にエレベーターから降りた。幸い誰もいなかったようで、私はほっとする。
 するとエレベーターの中にいるままの彼が言った。
「部屋は709号室だから。そこまで上がってきて。先に鍵は開けておくから」
「え!?」
 私が慌ててエレベーターを振り返るのと、扉が閉まるのはほぼ同時だった。私はほとんど裸のまま、ホテルの中に放り出されてしまった。
「ちょ、ふざけないでよ!?」
 思わずそう悪態を吐いて、私は普段のように考え、動けることに気付いた。そういうシナリオなんだろう。このまま逃げるか、誰かに助けを求めようと思ったけど――こんな格好ではどうしようもない。こんな格好を誰かに見られたら、それこそ終わりだ。
「とにかく……服を取り返さないと……」
 そう決意した時、突然ドアの鍵が開く音が近くからした。心臓が跳ねまわる。私は焦って、周りを見渡し、非常階段と書かれた扉を見つけてそこに飛び込んだ。ドアの開閉音がして、利用が終わったカップルが出てきたのだと会話から推測出来た。
 非常用階段は建物の外に出てしまっている。建物と建物の間だから見晴らしは良くないけど、どこかから見られてもおかしくはない。
(と、とにかく709号室に行かないと!)
 強迫観念のような思考に支配され、私は階段を上がり始める。鉄かアルミか何かで作られた非常階段はとても音が響く階段で、靴音がよく響いた。見つかりたくない私にとって、この非常階段は自分の居場所を大々的に示しながら歩くことになる最悪の場所だった。
(ど、どど、どうしよう……上がらないわけには、いかないし……)
 なるべく音を立てないように歩こうとするものの、どうしても音は響く。私はしばらく考えて、やむをえないと判断した。
 靴を脱ぎ、靴下も脱いで靴の中に詰める。そして片方ずつ片手に乗って、階段を歩き始めた。足音がなくなる代償に、完全な裸になってしまった私は、震える足で上を目指す。
(誰にも見つかりませんように……!)
 風が吹くたびに私は全裸であることを否応なしに理解させられ、どこかから誰かに見られているような気がして、気が狂いそうなほど恥ずかしかった。
 ようやく七階の扉まで辿り着いた時、私の足は震え過ぎてどうしようもないくらいになっていた。
 扉を開け、非常階段から建物の中に入る。
 廊下に誰もいないことを確認して、私は709号室目指して走った。
(よ、良かった。誰にも見つからずに――)
 済んだと、思ったのもつかの間。通りすぎたばかりの部屋の扉が開いて、カップルが出てきた。
「うおっ!?」
「きゃ!?」
 二人が驚く声が私の耳に入ってくる。私は背中に二人分の視線を感じながらも、振り返れなかった。
「露出プレイか。よくやるよ」
「あんな格好で……恥ずかしくないのかしら……」
 隠すつもりもないのだろうけど、そんな話し声がはっきりと聞こえてくる。
 私は709号室の扉に手をかけた。これで視線から逃げることが出来る。

――ガチャッ。

 一瞬安堵した私の心は、ドアの鍵がかかっていたことで瞬く間に絶望で塗り潰された。
「うそっ」
 少し乱暴に力を入れてみても、ドアは開かない。さっきのカップルはまだ私を見ている。恥ずかしさのあまり死んでしまいそうだった。ドアを叩いて中に訴える。
「ねぇ、開けてよっ。……人に、見られっ、見られてるのっ! 早くっ!」
 不安と恐怖と羞恥で泣きそうになる。ドアが開いたのは、一分は経ってからのことだった。部屋の中に飛び込んだ私は、そこで待ち構えていた彼に抱きとめられる。彼はずっとそこで立っていたのか、非常に楽しそうな笑みを浮かべていた。
「ごめんごめん。あんまり君の声がエロくて可愛いもんだからさ。つい鍵を開けるのが遅れちゃった」
 彼は片手で私を抱きしめながら、部屋のドアを内側からロックする。そして、改めて私の体に手を伸ばす。
「でも、かなり興奮したみたいだね? ドロドロだよ、ここ」
 そう言って彼が触った私のアソコは確かにドロドロだった。よほど興奮していたのか、愛液が幾多もの筋となって太ももから膝までを濡らしている。直接触れられると、異常なほど感覚が鋭くなっていて、私は体を跳ねさせてしまうほどだった。
「うあ……っ、ああ――んっ!」
 くちゃくちゃ、という卑猥な水音が私の耳にはっきりと聞こえてくる。彼に散々弄られ、今度こそ私は立っていられなくなった。足から力が抜け、その場にへたり込んでしまう。彼はそんな私の湧きと足膝の裏に手を差し入れ、いわゆる『お姫様だっこ』で私を持ち上げた。そのままベッドの上に寝かされる。
 彼が素早く服を脱ぎ、同じくベッドに上がってくる。すっかり大きくなったペニスが不穏に揺れていた。
「さて、と。それじゃあいただくことにしようか。これだけ濡れていれば、もう前菜はこれ以上必要ないよね」
 私の股を開かせ、彼はその間に入ってくる。屹立したペニスを構え、私の入口にあてがった。
「それじゃあ、行くよ」
「『うん、来て。……私を貫いて』」
 その私の言葉を聞くと、彼は頷き、一気に私の中にペニスを押しこんできた。十分濡れていたから抵抗はほとんどなかったけれど、感じる快感は予想以上だった。中を抉られる感覚がはっきりと伝わってくる。
「くぅ……っ、あっ!」
 凄い。明らかに彼氏としている時以上の快感が私の頭を揺さぶって来る。
 それは彼との相性がいいというような意味ではなかった。
「っ、気持ちいいよっ……挿入されたら良く締めつけるように送っておいたんだけど……ここまでとは……っ。君も、めちゃくちゃ気持ちいでしょ、っ」
「なに、をっ、したのぉ……ッ」
 快感に振りまわされながらも、私はなんとか質問を形にすることが出来た。それを聞いた彼は笑みを浮かべる。
「君が、彼氏とやる時の、倍は感じるように、した、だけさっ。それなりに気持ち良くはなれてるみたいだけど、その分だと、物凄く気持ちいい、って訳じゃなかった、みたいだねっ」
 見透かしたようなことを言う。確かに、彼氏とのセックスは互いにそこまで慣れていないこともあって、そこまで気持ち良くはなかったけれど……それでも、感じさせてくれようとする彼氏の気持ちが嬉しかった。
 人の心に繋がる携帯電話を使って無理やり快感を与えてくるこの男とは違う。
 そう憎々しく思っているのに。確かに私の頭はそう思っているのに。
 身体は彼に突かれるごとに強い快感を覚えてしまっていた。
 一突きごとにどんどん快感が高まっていっているかのようだ。彼のいうことを信じるなら彼氏とやってる時の倍の快感生じているだけのはずなのに。私の身体は浅ましくも、与えられた快感からさらに強い快感を生じさせ、好きでもない相手から与えられる快感を感受してしまっていた。
 走る快感が頭を震わせる。じわじわと私は追い詰められつつあった。
「はっ、はっ……と、ころで……今日は危険日?」
 腰を動かし続けて疲れて来たのか、息をさらに荒くしながら彼が聞いてくる。
 そう言われて、私は一気に快感から覚めた。
「だ、ダメっ! 中で出しちゃダメ! 今日は……っ」
 まさにその危険日だった。妊娠してしまう。それだけは絶対に避けなければならない。彼氏はちゃんとゴムをつけてしてくれているのだから、もしも子供が出来てしまったら……言い逃れできない。そもそもまだそんな子供を育てられるような状況にない。妊娠なんかしたら地獄を見る。
 なのに、彼は容赦がなかった。
「そう。じゃあ遠慮なく中出しするね。大丈夫! 僕には関係ないし」
 酷過ぎる宣告。
 私はなんとか体を動かして彼のペニスを抜き取ってしまおうとしたけど、なぜか『彼から離れられなかった』。あらかじめそういう旨のメールを送っておいたのだろう。私の知らないところで私の行動が制限されているということに改めて恐怖を感じる。
 彼のピストン運動はさらに速くなり、私の体内をさらに激しく掻き回す。
 その動きに押し出され、零れた愛液がシーツを濡らし、あとから滲み出た液が掻き回されていやらしい音を立てる。
「やめっ、やめて、ぇ……ッ」
 私は我ながらか細い声で懇願する。人生がめちゃくちゃにされてしまう――そんな恐怖に声が震えていた。
 しかし彼にとって、その私の行為はむしろ火に油を注いだようなものだったらしく、私の中で動く彼の物がさらに硬くなったような気がする。
「……っ、そろそろっ、限界だっ!」
 突然彼が私の背中に手を回し、抱き上げるようにして私の上半身を持ち上げる。真正面から抱きしめるようにして体同士を密着させたため、顔と顔が急接近する。すると彼は半ば無理やり唇を合わせ、舌を伸ばしてくる。私はその舌に応えて自分の舌を伸ばし――
(むぁ――うぅっ!?)
 電気が流れたのかと思った。
 舌と舌が触れ合った瞬間、まるで『それがスイッチだったかのように』全身で感じる快感が強まった。繋がっているあそこも当然その範疇に含まれており、一突きごとにさらに強い快感が頭の芯まで揺らしているようだった。
 その上口を塞がれてしまったことで、十分な酸素を吸い込むことが出来ず、私の頭は朦朧とした状態に陥り、なす術もなく快感に振りまわされてしまう。
 一際大きな痙攣があったかと思うと身体の中で熱い感覚が広がる。中出しされてしまったのだと悟った。
 暫くじっとした後、彼が私の上半身を引きはがすようにして離した。
「ぷはぁっ」
 私は自由になった口で大きく息を吸い込む。酸素が身体の中に取り込まれて、茫洋としていた頭もはっきりとし始める。
 仰向けに倒れた私から、彼は少し小さくなったペニスを抜き取り、膝立ちの状態で移動して私の顔の上にそれを持ってくる。
 そしてそれを私に向けながら言った。
「舐めて綺麗にしてくれるかな? 中に残ったものも吸いこむようにして絞りつくしてくれよ」
 そんなことは彼氏にもしてあげたことがない。当然拒絶したかったけど、私の身体は勝手に笑顔を浮かべて、頷いていた。
「『いいわよ、綺麗にしてあげる』」
 そう言った私は、彼がさらに近づけてきたそれを口の中に受け入れた。口の中に苦い味が広がる。気持ち悪いと思うのに、吐き出そうとすることは出来ず、むしろ味わうように舌を巻きつけていく。
 ストローでも使う時のように吸いこむと、どろっとして苦い液体が口の中に飛び込んで来た。生臭いニオイが口の中に広がり、吐きそうになる。それを堪えてその液体を呑み込み、さらにペニスを舐めまわして綺麗にしていく。仰向けでじっとしている私の股間からは何やら生温かい物が零れているような感覚があった。
 完全に綺麗になったかというところで彼が離れて行く。
「よし、身体を起こしてもいいよ」
 彼に言われた通り、私は身体を起こす。上半身だけを起こした状態で、私は彼の次の指示を待っていた。服を身に付けた彼は、私の服を鞄から取り出して来た。
「さて……と。今日はもう服を着て帰っていいよ。あ、拭いたりしないで、そのまま身につけてね」
 抵抗するのも無駄だとわかっていたので、汗だくで気持ち悪かったけど、渡された服をそのまま身につける。
 あそこを拭くことも禁止されたので、私は色んな物が垂れている状態のまま、スカートを身につけなければならなかった。シミになって滲まないかと不安だったけど、むしろ彼にしてみればシミにすることが目的だったらしく、わざわざ履かせたスカートで私の股間を拭き、染みを浮かび上がらせた。それはまるで感じるあまり滲んでしまったような、物凄く恥ずかしい状態の染みになっている。
「これでよし。うん、思い通りの姿になったね」
 彼はいやらしく笑いながら、立たせた私の背中を叩く。
「じゃあ帰っていいよ。チェックアウトはしておくから」
 またね、という彼から逃げるように、私は急いで部屋の入口へと向かう。
(最悪、最悪、最悪……っ。早く、帰って、シャワーを浴びないと……っ)
 気休め程度かもしれないけど、とにかく体の中から精子を掻きだしたかった。
 部屋のドアを開けて、外へと出る。ドアを閉める寸前、彼が能天気な笑顔で手を振っていることに気付く。殺意が湧いた。
(……ッ。絶対、許さないんだから……っ! 絶対、どうにかして殺し――)
 彼の姿を断ち切るように、ドアを閉めた。

 瞬間、私は『何かを忘れて』しまう。

 ドアノブを握ったまま、私は首を傾げる。
(あれ――私、いま何を考えてたんだっけ?)
 何か大事なことを考えていたような気もするのだけど、私はそれが思い出せない。
 しばらく考えていたけど、『思い出せないなら仕方ない』と諦めることにした。
(『思い出せないなら――きっと大したことじゃなかったんだろうし』)
 私は建物から出るため、エレベーターホールへと向かう。
 途中、なんだか妙にイチャイチャしたカップルとすれ違ったけど、特に何事もなく、私はエレベーターに乗って一階まで降りて、建物の外へ出る。
(家に帰ろうかな……いや、今日は確かあの雑誌の発売日だ)
 本屋に寄ってから帰ろうと思い、私は本屋の方向へと歩き出す。その途中、すれ違った男の人が私の方を見て目を剥く。その反応を不思議に思い、自分の姿を見下ろしてみたけど――ノーブラで、ノーパンで、あと着ているスカートの股間の辺りに染みがあって――特に問題があるとは思えなかった。
(なんなんだろう? ま、いっか)
 注目されるのは悪い気分じゃない。私は何も恥ずかしいことをしていないのだから、堂々と歩き続けた。
 自分の股間から零れ落ちら白っぽい液体が、道路に落ちる。

 液体が道路に落ちる音が、妙に大きく聞こえた。
 
 
 
『心に通じる携帯電話』 終
 
 
 
 

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