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『雑貨店へようこそ』 ~スーツケース~

久々の雑貨店新シリーズです。
『スーツケース詰めプレイ』というマニアックな嗜好でお送りします。
 
 
『雑貨店へようこそ』 ~スーツケース~
 


 自動開閉機能(しかもタイマー付き)、空気の循環機能、発汗吸収素材、軽量で強固な作り、マジックミラー形式で中から外が見える仕様――それは、本来ならありえない機能の目白押しだった。しかしそれらの機能は。
(これって……!)
 まるで私の理想が形になったかのような。そうとしか思えない。
(こんな機能、普通のスーツケースには絶対に必要がないし……なんでこんな……)
 値段はかなり張るが、それでも手の届かないものじゃない。貯金を切り崩せば大丈夫だ。
 でもこれを買うということは。
 自分の性癖を露わにする――ということと同義だ。
「その商品がお気に召されましたか?」
 いつの間にか背後にやって来ていた店員の声に、私は飛び上がるほど驚く。
「え、あっ、そのっ」
 思わず否定しようとした声が出ない。その間に店員はいくつか並んでいる内の一つを引っ張り出した。
「お客様のサイズでしたら、こちらのサイズが適当かと。念のため本購入前に試用も出来ますので、その時はぜひお声かけ下さいね」
 バレてる。いや、まあ、この棚の前で熱心に見てれば簡単にわかるとは思うけど。
 知られたからと言って特殊な性癖持ちであることを開き直れるわけじゃない。居たたまれなくなった私は、咄嗟にその場を離れようとした。
「いいのですか? これは当店でのみ取り扱っているのですが」
 そんな声が、私の足を止めた。まるで呪縛だ。
「なぜかは、あなたが一番よくご存じかと」
 明確に、そして的確に。店員の言葉は私の深いところを突いてくる。
 ここで買わないならば絶対に手に入らないものだろう。それは、確かだけど。
「当店ではお客様の個人情報を漏洩することはございません。秘密は徹底的に守ります」
 突っつかれていることはわかった。揺れている私の購買意欲を刺激している。
 私はまるで目の前に灯りを吊るされた蛾のような思いだった。どうしようもなく『これ』が欲しい。
「……っ」
 相手は店員。ただ商品を薦めているだけ。
 それでも、真人間としてのプライドが『それが欲しい』というのを邪魔していた。私はこれでも真人間であることに拘りがある。多少変わった性癖や趣味を持っている人は大抵そうじゃないだろうか。徹底的に突き抜けている人は除くとしても、やはりこういった類のことは出来れば知られたくないし、まともに思われたい。
「誰に迷惑をかけるわけでもありませんし。楽しみは人それぞれですよね」
 するりと、店員の言葉が耳に入り込む。もうダメだった。
 気付いたら、私は振り返っていた。
 店員は優しい笑顔で私を見ている。口が勝手に動く。
「し、試用出来るって、本当?」
 そして私は、蜘蛛の巣ならぬ箱の中に落ちた。
 私が見ていたもの。それは、スーツケースと言われる、本来ならば旅行の際に大荷物を運ぶための道具だ。
 実は私は、その中に詰められてしまいたい――という願望があった。
 マイナーな嗜好ではあるけど、そう言ったプレイには『ポゼッションプレイ』という名前がある。
 
 
 店員の誘導にまんまと乗って、そのケースを試用することになった私は、雑貨店のバックスペースに通された。
 そこは他の店のそこと変わらず、雑多な物が雑多に置かれている。照明が明るいおかげで汚い印象はなかったけど、正直もっと片付けた方がいいんじゃないかと思った。そしたらそれが伝わってしまったのか、店員は苦笑を浮かべる。
「すいません。散らかってて。趣味で始めたものの、案外店舗運営って忙しくて。つい色々放置しちゃうんですよ」
 私は愛想笑いをしつつ、密かに深呼吸をする。バックスペースのことを考えて現実逃避をしてしまっていたけど、これから私は初めて――
 
 完全な『スーツケース詰め』を経験することになる。
 
 緊張で胸が張り裂けそうだ。
 実はこれまでにもスーツケース詰めプレイというものを経験したことはあった。家にあった古いスーツケースを使って、その中に入ってみたことがある。その時に感じた全身の圧迫感や息苦しさは普通のオナニーよりも何倍も強い快感だった。しかし、当然ながらパートナーがいたわけではないので蓋はそのまま閉めただけだったし、密閉度が良すぎて空気がなくなってしまうのですぐ出なければならなかった。その度に、ちゃんとしたスーツケース詰めプレイに対する憧れは募っていた。相応の場所を利用しようかと考えたこともあったけど、少し特殊過ぎるプレイだし、実現することなくいままで来てしまっていた。
 それが、まさかこんなことになるなんて。たまたまぶらりと入った雑貨店で実現することになるなんて、思わなかった。
 店員は部屋の片隅にあるスペースを示す。そこには絨毯が敷かれていて、そこに店員はケースを置いた。そのすぐ傍にはロッカーがあった。
「このスペースを使ってください。手荷物や脱いだ衣類はこちらのロッカーにお入れください。ケースに入る時には向きに気を付けてくださいね。取っ手側に頭を向けるようにしないと、ケースを立てられませんからね。入った後は私にお任せください。お客様の希望通りに運ばせていただきますので」
 30分したら入ります、と店員は言い残してバックスペースから出ていった。つまり30分で準備をしろと言うことだろう。
 私は高鳴る鼓動を抑えながら、まずは床に置かれたスーツケースを開いてみる。
 ケースの中はがらんどうになっていて、余計なものは一切なかった。内壁を手で触れてみると上質な絹みたいにサラサラとした手触りで、衝撃吸収材のように程好い反発があった。これなら硬さに辟易することもなく、長時間触れていてもストレスに感じないかもしれない。汗の吸収性も良さそうだ。まさに『人が中に入る』ことを想定している作りである。
 続いて付属のリモコンを見てみる。それはシンプルな構造だった。まず一番大きなボタンとして『開』と『閉』の二種類がある。さらにタイマー機能のためだろう上向きの三角と下向きの三角がある。それらのボタンの上には小窓があり、そこにはデジタル表示で『00:00』とある。これで拘束時間を決められるということなのだろう。ただ、今回はこれは使わない。スーツケース本体を弄っても設定は出来るそうなのだ。リモコンには最後に『視』ボタンがある。これはこのスーツケースの外装が透明になるスイッチだ。中に閉じ込められた状態で外の様子が見えるらしい。明らかにマジックミラーでもないのにどんな原理かと思うけど、あまり詳しく聞くのは野暮な気がして聞かなかった。試用だし、この機能もほとんど使わないことになっている。
 私は二度ほど深呼吸をしてから、いよいよ本格的な準備に取りかかる。
 まず服を脱ぐ。下着は脱ごうかどうしようかすごく迷ったけど、どうせ一人でやる時は裸になるだろうから、試しの時もそれでいくことにした。
 家や銭湯以外の場所で裸になるというのは、凄く強い違和感が伴い、ドキドキした。ましてやその目的が目的なのだから当然だ。
 私は店員に注意されていた通り、脚がケースの下に向くようにして、スーツの中に足を踏み入れた。リモコンと鍵は手に持っている。
 身体を折り畳むようにして、スーツケースの中に収まるようにした。ここまでは、家にあったスーツケースでも出来たこと。もっとも――こんなに見事に収まる感覚はなかった。サイズの問題もそうだし、普通のスーツケースは中に色々ポケットやら荷物を固定するためのバンドがあって、自分以外の異物感がどうしても生じてしまう。その点、このスーツケースはそれが全くなかった。
 私は髪や手が挟まらないように注意しつつ、リモコンの『閉』ボタンを押す。するとゆっくりと蓋が動いて、閉まって来る。普通のスーツケースの時はかなり苦労して蓋を閉めていたのだから、これは便利だ。
 やがて蓋が半分ほど閉まると、見える景色も蓋に邪魔されるようになる。これから暫く真っ暗な中に身動きできない閉じ込められるのだと思うと、心臓が壊れそうなほど跳ねまわっていた。何度か失敗しつつも、さらに『閉』ボタンを押しこむ。
 蓋が開いている角度はどんどん小さくなって行き、細い光しか差し込まなくなってくる。肩に触れそうなほど近くまで蓋は降りて来ていた。自分の呼吸音が妙にうるさかった。
 最後のひと押し。
 ぱたん、と蓋が閉まってしまった。一拍の間の後、すぐ近くから『ガチャガチャン』という鍵の閉まる音が響く。閉じてしまった。狭苦しい中、私が肩でいくら蓋を押しても、びくともしない。私はスーツケースの中に閉じ込められていた。
「――――ッッ!!」
 ケースから出られなくなった、ただそれだけのことなのに。
 何もかもを失ったような、破滅感覚とそれに伴う異常な快感が私の中で爆発した。力の限り暴れてみるものの、ケースは全く意に介さず、私の自由が取り戻されることもなかった。
 全方位から全身に感じる強力な圧迫感。私は閉じ込められて固められた肉だった。
「はぁ――はぁ――はぁ――」
 荒い呼吸を繰り返す。密閉空間は空気が薄く、空気を取り入れようと身体は動くのだが、どれほど荒い呼吸を繰り返しても空気が増えるわけじゃない。最低限の酸素は保証されているとはいえ、それでも必要とした空気が手に入らなくなった頭はだんだんぼやけてくるような気がする。苦しいのは苦しい。だけど、同時にその意識を失いそうになる感覚は、拘束されているのに解放されているような感覚で、思わず病み付きになってしまう類の感覚だった。
 待つ、というほどの時間じゃなかった。ケースの外でドアが開く音がして、店員がバックスペースの中に再び入ってきたらしいことがわかる。
 足音が近づいて来て、ケースがぽんと優しく叩かれた。
「大丈夫ですか? 苦しくはありませんか? ……まぁ、命に関わるような危険な状態になれば、安全装置が作動して自動的に外に出れるようになりますのでご安心ください」
 どこまでハイテクなんだとツッコミたかったけど、その事実は単純に嬉しい。窒息死などの危惧を気にせずに、ただ呼吸が制限される苦しみやそれに伴う快感を享受していればいいというだけのことなのだから――。
 と思った時、急激な体位の変更を感じた。いままで重力を横向きに感じていたのに、お尻の方が舌になったことを自覚する。
 どうやら店員が私の入ったケースを持ってきちんと立てたようだった。相変わらず全身に感じる圧迫感はそのままだったけど、体勢が変わったことでその感覚も微妙に変化する。
「さて、それでは参りましょうか。お客様。ご安心ください。安全は保障いたします」
 店員が言うのと同時に、少しだけケースが傾いてお尻の下辺りからコロコロという車輪の回転する微妙な震動が響いて来た。移動しているのだ。
 私は裸でスーツケースに詰められたまま――バックスペースの外へと運び出されて行った。
 
 
 移動の時間は短かかった。僅かに斜めになっていた感覚が元に戻り、店員の手が離れたのを感じる。
「それでは暫くの間、ここでお楽しみください」
 ここってどこだろう。
 感覚的にさほど動いていないことから、店内であることは確かだけど……。
 私はそんな風に考えながら、苦しい呼吸を繰り返し、じっとしていた。じっとしているしかないのだけど。
 真っ暗闇の中、四方から圧迫感を感じる状態で、ずっと同じ体勢でじっとしていると、まるで自分が初めからそういう形で生まれて来たように思えてくる。歩いて走って食べて……そういう人間として当たり前の行動なんてしていなかったんじゃないかって……どうしてだかそんな風に思えてくる。それは酸欠状態になっている頭がぼやけているからか、それとも私自身の奥に眠る本能なのか……そんな取りとめもないことを考えていた。
 すぐ近くで、店員が何らかの作業をしているのが聞こえてくる。伝票の整理か、商品の陳列か……とにかく誰かが動いている気配がしていた。人がいるすぐ傍で、私は裸になってスーツケースに閉じ込められている。その背徳的な状況に私は興奮していた。
 そんな時、外でベルが鳴る音がした。思わずびくりと身体が動いてしまったけど、ケースの内壁はそんな私の動きを完全に抑えている。
「店員さーん。こんちはー」
 どうやら、客のようだった。学生と思わしき若い男の子の声だったが、気安い言葉はこの店の常連であることを窺わせる。足音が近づいて来て、私のすぐ傍で止まった。緊張で心臓が跳ねまわる。その客にそれが聞こえることなんてありえないわけだけど、もしも聞こえてしまったらどうしようかと思った。
「君はいつも元気ですねぇ……」
「まーな。毎日充実してるからな。それでさ。今日は買い取って欲しいものを持って来たんだよ」
「拝見しましょう。……ほぅ、これはまた可愛らしい……」
 私のことなど知らぬ気に――客の方は実際知らないのだけど――客と店員は会話を交わす。
「だろだろ? たまたま会った子なんだけどさ。トワさんのおかげで警戒されないから助かるぜ」
「ふむ……しかし見た目はともかく、これは中身に少々難がありますね」
 私のことなど構わず――二人は会話を続ける。内容自体はよくわからないけれど、その日常の傍でじっとしているだけの私はその異常なことに興奮していた。別に見られたいわけではないのだけど。
 それから暫く客は店員と交渉を続け、持ってきた物を渡した代わりに金銭を受け取っていたようだった。
「サンキュー。これでまた暫く凌げるぜ。やっぱどうしても食費とかかかってきちゃうからさー。でも、道具とかも買いたいし」
「当店は色々と取り揃えておりますので、その際はぜひ当店をご利用ください」
 すかさず入る店員の営業トークに、客が笑う。
「回収しようってか? さすがだね。…………ところで気になってたんだけど」
 ぞわりと、背筋が泡立つ。
 視線を、感じた。
「どっか旅行でも行くのか? でかいスーツケースをこんなところに置いて……それとも新商品とか?」
 スーツケースを――私を――見ている。
 私は心臓が痛いくらいに跳ねまわるのを感じていた。破裂してしまいそうだ。
「ああ、いえ。そういうわけではないのですよ。在庫整理をしていまして」
「あー、整理中ってわけね。確かに整理整頓は必要だよなぁ。いつ来てもこの店陳列ぐちゃぐちゃだし」
「……はっきりと酷いことをおっしゃいますね」
 苦笑を浮かべているのが明らかな店員の声。それに対し、客の方は悪びれる様子ことなかったが、「悪い悪い」と謝りはしていた。
「ま、頑張ってくれよ。用事も済んだし今日は帰るわ。また作って持ってくるから」
「はい、お待ちしております」
 カランカラン、と音を立てて、客は去って行った。私はバレなかったという安堵と、まさか裸の女がケースの中に入っているなんてあの客は思っていないだろう、という優越感というか、秘密そのものになったという高揚感で、身体の中で熱が暴れていた。身体が自由に動けば、いますぐにでもオナニーを初めてしまっていただろう。
(……あ)
 そう思った時、私は気付いてしまった。
 確かに私はいまスーツケースの中に閉じ込められている。いるけど、別に両手を繋がれているわけでもなければ、隙間なく緩衝材が敷かれているわけでもない。少し窮屈ではあるけれど――やろうと思えば、あそこに指が届く。
 すぐ傍で、相変わらず店員は何かの作業をしている。変に声をあげたら、変に動いたら、きっと彼に気付かれてしまう。
 それでも。
 気付いてしまった以上、もう止められなかった。出来る限り音を立てないように、少し苦しい思いをしつつ、手の位置を変える。途中危うく手がつりかけたけど、何とかあそこに手が当たるような体勢を取ることが出来た。
 そこに指が触れたことで、私は驚く。いままで感じたことがないほど、そこは濡れていた。シミになっちゃうんじゃないかと心配になるくらい、そこは濡れてしまっていた。指を入れてみる。どろっと分泌液が溢れ出した。
(私……こんなに……感じて……)
 心臓がバクバクと音を立てている。もうすっかり私はエッチな気分になっていて、指が勝手にそこを掻き回すのを止められなかった。
 こんなところで、スーツケースに詰められて、不自由な体勢で、拙いオナニーに没頭している。
 その全てが私を興奮させていた。声をあげなかったのは奇跡と言わざるを得ない。
 またたく間にイってしまった私は、狭いスーツケースの中で身体を突っ張らせて絶頂を味わう。これまでの性体験で経験したどんな絶頂よりも、それは激しい絶頂だった。
 荒い呼吸を繰り返す。当然スーツケースの中はそんなに空気が豊富にあるわけじゃないから、酸欠で意識が遠くなる。その気が遠くなる感覚が、また無性に心地よかった。ゆりかごの中にいるような、妙な安堵感と幸福感が満ちている。
 それが唐突に破られた。
 カランカランという店の扉が開く音によって。
 私は身体を硬直させた。酷く高まっていた熱がサァッと引いていくのが感じられる。見つかっていたら。そう思うと恐怖を感じる。
 けれど、まさかスーツケースの中に誰かが入っていて、しかもそこで自慰をしているなんて思わないはずだ、と必死に頭で納得しようと努めた。
 そんな私のことなど知らない来客は、さっきの客と同じように私の入ったスーツケースの傍まで歩いて来た。作業をしていた店員が声をあげる。
「おや――小林さん。お久しぶりですね」
 小林と呼ばれた相手の人は、なぜか苦笑しているようだった。
「ええ、まあ……ちょっと、色々ありまして……」
 その声は、どこか幼さを感じさせる女の人の声だった。声質は幼かったけど、子供ではないと私は直感した。本当に幼い子供にしては芯がある声だったからだ。
 二人は店員と客という間柄というよりは、なんだか知り合い以上恋人未満……要するに友達のような感覚で接しているようだった。店員がお茶を淹れ、それを小林さんは気負いなく受け入れている。話の内容も他愛ない世間話で、この店の特殊な物品とかは関係ない話をしていた。
 そうやって二人の会話が盛り上がってくると、私の方にも余裕が出てくる。どうせ気付かれないなら、さらに気持ち良くなってやろうと思った。
 私はもう一度あそこに指を伸ばし、気付かれないように声と音を殺しながらそこを弄り始める。今度は傍にいるのは二人。うち一人は同性。気付かれたら変態の誹りは免れない――というかこんなところに詰められている時点で変態呼ばわりは免れないけど――という事実が私をさらに興奮させる。真っ暗で何も見えないからこそ、身体はより敏感になっていたし、密閉空間だからこそ自分自身の呼吸音が響いて耳に入って来て、余計に私を興奮させる。
 私がそんなことをしていることなど知らないであろう店員と客は、世間話を続けていた。
「――で私を――くれたのが――なんと同――……という――輩だった――すよ」
「それは――――ですねぇ……と、なると――――のお宅で――――いたと?」
「……はい。――して貰ったり、――――ったり……色々。夜、一緒のベットで――――でしたけど」
「ああ、――はそうかも――――せんね。やはり女性として――――イドがあるでしょうし」
「ええ――――から、出来ればで――――――お願い――――って」
 自分自身の喘ぎが響いて、その会話の内容はほとんどわからなかった。
 なにやら店員が歩き回っていたのを感じたけど、何をしているかなんて全然わからない。ただ、彼が歩き回る震動がスーツケースを通して私の身体にも伝わって来て、それが妙に気持ち良かった。たかが歩く震動でこれなら、バイブとかローターを入れてたらどれほど気持ちいいのだろう――などと、私の頭はこのスーツケースを使って今後どんな自慰をするかを考えていた。
 そんな想像もしつつ、自慰を続けていると、唐突に客の声がこちらを向いた。
「さっきから気になってたんですけど、大きなスーツケースですね?」
 驚きのあまり身体が跳ねた。その動きは外にまで伝わらなかったのが幸いだ。
 店員の方は平然とした調子で受ける。
「ええ。人が入れそうなほどでしょう?」
 おまけにそんなことを言って、私を大いに慌てさせた。
 けれども、客の小林さんは私が心配した方とは違う方面で、その言葉が気になったようだった。
「それは……私ならこれに余裕で入れるだろうっていう意味ですか?」
「いえ、そういうわけでは」
「スーツケースの中に入りたいって思うような人がいるわけないじゃないですか」
 不機嫌そうに言う小林さん。いやいやいや。いままさにそのスーツケースに私は入っているんですけど。
 この人に入っていることがばれたら、変態だと絶対に言われる。絶対にばれないようにしないと。
 そう思う私だったが、私の身体はそんな私を裏切ってあそこを弄る手を止めてくれなかった。ばれたらまずいのに、ばれてもいいとも思ってしまう。勝手に動く手がそこに刺激を与え、私を高みへと持ち上げていく。
「ああ、でも……小林さんの場合、スーツケースやキャリーケースというよりは――」
「それ以上言うと怒りますよ」
 まだ言ってる店員と、それに応える小林さん。
 私はそんな二人の会話を聴きながら、最高の絶頂に達した。声が漏れて気付かれてしまったとしても悔いのないレベルの最高の快感だった。


 ふと気付くと、私の身体は横向けに寝かされていた。
(あれ……? 私……)
 目を開いても真っ暗闇なのは変わらない。窮屈な身体の感覚はまだスーツケースの中に閉じ込められていることを示している。
 状況の把握に時間を必要とした。
(……そうだ、私……イキすぎて……気を失ったんだ……)
 元々空気の少ないケース内のこと、何度も達すれば呼吸も早くなるし、酸欠の頻度も高くなる。その結果、完全に気を失ってしまったのだろう。
 外からは何の音もしない。どうやらバックスペースに戻されているようだった。
 私が目覚めたのを感知したのか、スーツケースから音がして蓋がゆっくりと開いていく。差し込んで来た光は決して強いものじゃなかったけど、暗闇に慣れ切っていた私の目には物凄く眩しく感じた。
「っ――ッ、そっか……終わりか……」 
 試用は以上ということなのだろう。私は名残り惜しい気がしつつも、ケースの中から起きあがる。窮屈な姿勢でずっといたから身体を動かせるようになるまでに結構な時間が必要だった。
 なんとか立ち上がった私は、全身が汗まみれな上、あそこは大洪水だったことを知る。スーツケースの方には特に痕跡が残っていない辺り、スーツケースの性能の高さが窺えた。
「シャワーでも浴びたいな……」
 さすがにそれを雑貨店のバックスペースに求めるのは酷だとわかっていたけど、ついそう呟いてしまう。
 しかし、すぐ傍の机の上にぬれタオルとメモが置いてあるのを見つけた。そのメモを手にとって読んでみる。
「『良ければこの濡れタオルで身体をお拭きください』……用意周到ね」
 タオルを手にするとそれは若干暖かく、気持ち良く全身を拭くことが出来た。さすがにシャワーには及ばないにしても、家に帰るまでの道のりだけなら十分凌げる。
 私は身体を拭いた後、ロッカーに入れておいた服を身に付けて、バックスペースから店舗側に出る。
 店員は相変わらず何かの整理をしているようだった。出て来た私に気付くと、微笑みを浮かべる。
「いかがでしたか? 気を失っていらっしゃったようでしたので、とりあえず向こうに運ばせていただきましたが……」
「ええ、ありがとう。とてもよかったわ」
 では――と念を押すように確認してくる店員に対し、私は頷く。

 すでに頭の中では、次はこのスーツケースを使ってどんな風に楽しむか――そのことで一杯だった。
 
 
 
 
『雑貨店へようこそ』 ~スーツケース~ 終
 
 
 
 

Comment

No.508 / 名無しさん [#-]

男か女か、それが重要だ

2012-02/02 08:03 (Thu)

No.509 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

女性のつもりで書いていましたが、言われてみると女性だと判断できるところがないですね……(汗)。

2012-02/02 18:13 (Thu)

No.510 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

※12/02/02 追伸
最後まで書いたらちゃんと女性だとわかるようになりました。
序盤、男女をはっきりさせることを意識していなかったので、次から気をつけたいと思います。

2012-02/02 23:06 (Thu)

No.511 / ごんべー [#-] No Title

こんばんは、今日もまた楽しく拝見してます。

新品なせいか汗や匂いがあんまり無いのが残念かな?まあ『人間の人形』と同じく使い続けて真価を発揮する商品なんでしょう。

相変わらずトワさんのオーナーは鬼畜ですねw
二話冒頭の複線回収、楽しみにゆったりのんびり待っています。

黒幕的な意味で一番鬼畜なはずの店員が、鬼畜な客を相手にしてるとちょっとだけマトモに見える・・・人間は恐ろしいですねw

2012-02/02 23:40 (Thu)

No.512 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

ごんべーさん、毎度感想ありがとうございます。

> 新品なせいか~
かなり優秀な素材で作られていますからね。汗などの匂いもかなり抑えることができます。ほんと魔法の素材としか思えないほどに(笑)。
とはいえ限度はあるので使い続けているうちに自らの匂いが染み込んで、閉じ込められるだけで強い快感を得ることができるようになると思います。一瞬でその気分になるというのか。

> 相変わらずトワさんのオーナーは~
ええ、本当に相変わらずです(笑)。
今回ちょっとだけ出しましたが、続編の構想は練っていますので気長にお待ちください。

> 黒幕的な意味で一番鬼畜なはずの店員が~
客が望む物が置かれているということは、店員は全ての客の望みを想定しているということですからねえ。
物腰こそ柔らかい青年ですが、きっと本当は誰よりも鬼畜だと思います。
人間はどこまでも恐ろしくなれる生き物です。それが恐ろしくもあり、興味深くもあり……奥が深いというべきでしょうか。

それでは、またどうぞお越しください!

2012-02/03 02:29 (Fri)

No.517 / 十里一元 [#-] No Title

お疲れ様でした。
てっきりスーツケースにされる話かと。
>女性だと判断できるところがないですね
これはこれで、「人間椅子」のような面からも楽しめてよかったかもしれません。

2012-02/05 12:45 (Sun)

No.518 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

十里一元さん、毎度コメントありがとうございます。

>てっきりスーツケースにされる話かと。
それはそれで面白かったかもしれませんね(笑)。
ジャンルとしては物品化というものになるのでしょうか。ポゼッションプレイはあくまでそういうプレイですが、スーツケースの形に変えられて、物を入れられる=膣内に何か入れられる感触を覚える、という風な物品化も中々味があっていいかもです。

> >女性だと判断できるところがないですね
> これはこれで、「人間椅子」のような面からも楽しめてよかったかもしれません。
正直どうしようか迷ったところはありました。あの指摘を受けて、「いっそ女性か男性かは読者の想像に任せた方が面白いんじゃないか?」とも思ったんですが、当初の予定が女性だったので、それを無理に変えるにもあれかな、と思いそのまま女性視点で書き切ることになりました。

それでは、コメントありがとうございました!
またどうぞお越しください。

2012-02/05 13:30 (Sun)

No.579 / ジェイ [#ga6vRZxg] No Title

『スーツケース詰めプレイ』なら、こんなネタはどうでしょう。
 まず、友だちに頼んで、スーツケース詰めのまま、意中の男性の部屋へと運んでもらう。クレオパトラがシーザーを魅了するのに使った方法と、同じ発想です。
 もう一つ、彼氏にリモコンを渡して、「自分をスーツケース詰めにして欲しい」と頼む。自分から望んで、自分の意志では出られない状況を作るわけです。

2012-03/25 20:17 (Sun) 編集

No.580 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

ジェイさん、面白そうなネタをありがとうございます!

> まず、友だちに頼んで~
問題はその意中の相手がそういう趣味を持っているかどうかですね……。
マイナーな嗜好であることは確かですから、引かれはしないかと考えて、女性は踏み切れないかもしれません。
私なら大歓迎ですけどね!

> もう一つ、彼氏にリモコンを渡して~
これも受け入れられるかどうか際どい面はあるにしてもそそられるシチュエーションですねえ。
自ら首輪に鍵をかけ、それをご主人様に渡す奴隷の感覚に近いのかも……。

どっちのアイデアもいずれ書いてみたいと思います。
スーツケース詰めプレイがもっと流行りますように(笑)。

2012-03/26 00:04 (Mon)

No.740 / 玲 [#dlg/xXMc] No Title

凄いよかったです!
是非スーツケース物で新作を書いて欲しいです。

中から時間がくるまで出れないようなのがいいなぁとか。

気が向いたら是非書いてくださいませ。

2012-07/09 00:38 (Mon) 編集

No.742 / 光ノ影 [#-] Re: No Title

玲さん、コメントありがとうございます!

> 凄いよかったです!
> 是非スーツケース物で~
スーツケース物はまた書きたい話ですので、時間とネタさえあれば書くと思います。
いつになるかはわからないので、気長にお待ちください。

> 中から時間がくるまで~
スーツケース詰めの醍醐味ですね。
高機能性スーツケースを活用し、そういう展開も書いてみたいと思います。

> 気が向いたら~
ぶっちゃけ、気は向いているのですが時間がないという状態です(笑)。
だからこそちょっとした息抜きとかそういう時に書くかもしれません。

色々頑張ります。
それでは、どうもありがとうございました!

2012-07/11 07:33 (Wed)

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