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ウサギ狩り 後編

この作品は卯年に関連して書いてみた短編の後編です。
ジャンルはMC・調教などです。

前半をアップしてからなんとなく続きを書かないでいたら、うっかり一年以上経過してしまいました……。
年変わっちゃってますが、とりあえず書き切りたいと思います。

(2012/01/21追記 完結しました)

では、続きからどうぞ。

ウサギ狩り 後編



『――狩りの終了十分前です――』

 アナウンス音が入り、ヘッドホンからそんな声がした。
「え。もうそんな時間か……」
 俺は時計を見て、そんなに時間が立っていることを知る。
 最初の一羽を捕まえるまでは早かったけど、結局その後は中々捕まえられず、そこそこの水準にあるものを二羽捕まえるのがやっとだった。その二羽の耳にはすでに沢山タグがついており、最初の一羽ほどの感動はなかった。
「つーか、案外難しいよこれ……」
 盛大に溜息を吐きだす。ウサギの逃げ方が上手いのか、それとも俺の射撃が下手なのか、とある一羽には目の前を堂々と横切られてしまったくらいだった。弾丸は支給分しかないのに、あれのせいでだいぶ弾を無駄にしてしまった。俺は残り時間ではとてもウサギを捕まえることは出来ないと判断し、『狩人の小屋』に戻ることにした。時間一杯粘る必要もないだろう。
「ま、上等なウサギを一羽捕まえられたんだからよしとするか」
 あれだけ簡単に捕まえられたのに、まだ手つかずだったウサギのことを俺は思いだす。あのしなやかな肢体を思うがままに出来ることを考えると、いまから笑みが止まらなかった。
「あれは絶対『個別ケージ』に入れるぞ……さすがに、あんなのを手に入れられる機会はそうそうないだろうからな」
 ぶっちゃけ『維持費』という名目で金がかかるから『個別ケージ』には入れなくていいかな、と思っていたがあれを入れずして何を入れるというのだろう。次に来た時に他の者のタグが着いてしまっていては無理だ。
 暫く極貧生活を送らなければならないだろうが……あのウサギにはそれだけの価値がある。
 どんな風にして楽しんでやろうかと考えながら『狩人の小屋』に向かう。その途中で終了のアナウンスが鳴った。あの三羽の中では、やっぱり最初に捕まえたウサギが一番だ。俺はうきうきしながら、というか、あからさまなスキップ状態になりながら、『狩人の小屋』を目指した。はしゃぎすぎかとも思ったが、堪え切れない。さすがに『狩人の小屋』が見えてきた辺りでスキップは止めた。
 小屋の扉を開くと、案内人が笑顔で出迎えてくれる。
「お疲れさまでした。狩りは楽しんでいただけましたか?」
「ああ! もちろんだよ」
 俺は笑顔で応じた。まあ、最初の一羽がいなければここまで喜んでいられたかどうかはわからないが……。それはまあ、彼に言う必要はないだろう。ウサギとはいえ人間を撃つ爽快感は、こういってはなんだが下手なゲームより余程ストレス発散になるしな。しかも相手が裸の綺麗な女性ともなればなおさらだ。
「お疲れでしょう。少し休憩ということで、お茶でも飲みませんか? 初回ですし、サービスさせていただきますが」
 そんな案内人の申し出に、俺は少し迷った。出来ればいますぐにでもウサギのところに行って、『遊び』たいが……。
「疲れた体ではウサギと『遊ぶ』時にも支障が出ることでしょう。ウサギを狩れる時間は決まっていますが、『遊ぶ』時間は基本的にフリーなので、しっかり体力を養ってからの方が良いかと思いますが……」
 それもそうか……休んだ方がいいな。いや、待てよ?
「その前にさ。最初に捕まえたウサギいるだろ? あれを俺の『個別ケージ』に入れたいんだけど。休憩する前に手続きしておいた方がいい? 休憩している間に誰かに狩られたりすると困るし……」
「狩られたウサギは、暫くウサギ小屋に入れておきますのでその心配はありませんが…………そうですね。わかりました。お茶を呑みながら手続きをしましょう。その方がご安心いただけるでしょう」
「助かるよ」
 これで確実にあのウサギは俺一人の物になった。俺は案内人にお茶を奢ってもらい、手続きを進めながらウサギを『食べる』時が楽しみで仕方なかった。
 しかしやはり野山を走り回って疲れていたのか、心地よいソファもあって、俺はそのまま眠ってしまった。
 
 
 
 
 目が覚めると、そこは部屋の中だった。
 私は身体を起こそうとして、それが出来ないことに気づく。両手両足が一つ括りに縛られている。昔の漫画か何かでタヌキがこんな風に縛られているのを見たことがある。
(……そうか、私、捕まっちゃったのね)
 心の中でそう思う。草原で駆けまわった記憶が恋しい。ここはどうにも落ち着かないところだった。四角くて、狭い部屋。こんなところに済みたがる『ニンゲン』の気持ちは私にはわからない。何とか縄が外れないかと、暫くもがいていたけど、結局縄は外れてくれなかった。
 部屋のドアが開き、白衣を着たニンゲンが二人現れる。その二人は、何かカルテのような物を見ている。
「なんとか、調整が間に合ったな」
 年老いた方のニンゲンが安心したようにそう呟くと、若い方のニンゲンがそれに同意する。
「ええ。お客様に薬を盛ってまで、時間を引き伸ばした甲斐がありました。完璧に仕上がっているはずです」
 二人の交わす話の内容は良く分からない。何の話なのだろう? そう思った私は、頭が鈍い痛みを発していることに気づいた。なぜかは分からないけど、鈍い痛みが頭の中で生じている。
 私がその頭の痛みに耐えている間も、二人は何かしきりに話していたけど、やがて若い方のニンゲンが私に近づいてきた。
「……ん? おや、もう起きていたか」
 私が起きていたことに気づいていなかったらしい。
「気分はどうだ? どこか気持ち悪いところとか、痛いところはないか?」
 その質問は理解出来た。私は口を動かし、意志を言葉を変えて、発音する。
「痛い…………痛い、頭…………」
 たどたどしい言葉。それを発するのも一苦労だった。本来『ウサギ』は言葉を発することなんてない。それを無理矢理言葉にしているのだから、苦労するのは『当然』だったけど。
 私は痛みを訴えたつもりだったのに、なぜか若いニンゲンは満足そうに頷く。
「それはそれでいい。暫くすれば痛みも消えるさ。急ピッチで色んな手術をしたのだから、どうしたって痛む」
 色んな……手術? 何のことだろう。
「『耳』に感覚はあるかな?」
 言いながら、若いニンゲンは私の頭頂部に手をやった。次の瞬間、そこから激痛が弾けた。
「――ひぎぃ!?」
 体を動く範囲で波打たせて、私は激痛をやり過ごす。どうやら、若いニンゲンが私の『耳』に触ったようだった。ウサギの耳はとてもデリケートで、少し触れられただけで物凄い痛みを発する。そんな『当たり前』のことも知らないのだろうか、このニンゲンは。
 涙を浮かべた目で私が若いニンゲンを睨むと、そのニンゲンは愉快そうに笑った。
「うん。ちゃんと痛覚も通ってるな……よし。それじゃあ行こうか。君を捕らえた狩人もそろそろ目覚めることだし……その前にウサギ小屋に入れておかないといけないからな」
 私の四肢を縛っていた縄は、案外簡単に解けるようになっていたのか、若いニンゲンが軽く弄るだけで解けた。私は即座に置き上がり、逃げ出そうとして――。
「おっと。そうはいかない」
「ぎゃぁッ!!!」
 『耳』を強く引っ張られる感触がして、その激痛に蹲ることしか出来なくなった。寝ている間に『耳』に穴が開けられたらしく、そこに通されたリングに紐が結び付けられている。それを引かれたために、激痛が生じたみたいだった。
「逃げられると思うなよ。ウサギ。ウサギ鍋になりたくはないだろ?」
 恐ろしい単語を呟かれて、私は震えることしか出来なかった。
 蹲る私を、若い人間は『耳』に触れないようにして私の頭を撫でてくれた。
「大丈夫。殺しはしないさ。あくまで逃げないでいれば、の話しだけど。ちゃんと言うことを聴いてれば、外で遊ばせてあげることも出来るからね」
 優しい言葉。私は恐る恐る頷いた。従うしかないけれど、従おうと思った。若いニンゲンは笑顔を浮かべる。
「じゃあ、ついてきなさい。教授。それじゃあこいつはウサギ小屋に連れて行きますね」
「ああ。私は今後似たような侵入者がないように『アンテナ』の整備をしてくるよ」
 侵入者? 私は首を傾げたが、その疑問に答えてはくれなかった。若いニンゲンが歩くのに合わせて、私はその後ろについていく。
 部屋の外には長い廊下が続いていた。ニンゲンの靴の足音と、私の素足の足音が廊下によく響いていた。
 やがて辿り付いたその部屋は、変な部屋だった。四角い箱のような物が幾つも積み上げられた、物置きのような部屋。けれど、私の聴覚は『仲間』が沢山いる気配を部屋中から感じていた。
(もしかして……この箱の中に……入ってるの?)
 よくよく見ると、それらは箱ではなく、ケージのようなものだった。こちらに向けられている側面には扉があり、開くようになっているようだ。しかし箱の大きさは小さい。私のような小柄なウサギはともかくとして、大柄のウサギだと相当窮屈になりそうな大きさだ。
 若いニンゲンは、そのケージの内、一つの扉を開く。奥行きはそれなりにあるみたいだ。ニンゲンが私の方を振り向いて、行って欲しくなかったことを言う。
「よし、入れ」
 縦横1メートルもないであろうそのケージにお尻から押し込められた私は、箱詰めにされた荷物の気持ちを味わっていた。
 『耳』につけられた紐をケージの扉の裏側に取り付けたニンゲンは、何も言わないまま扉を閉めてしまう。ケージの端にはほんの少しだけ明かりが灯されていて、完全な暗闇に閉じこめられることこそなかったけど、どちらにしても狭い密閉感が四方から襲いかかってきて、重圧に似たものを感じていた。気持ち自体は案外落ち着いていたけど、四方の壁が発するプレッシャーだけはどうにもならない。
(これから……なにされるのかなぁ。痛いことじゃなければいいなぁ)
 私はそんなことをつらつらと考えていたけど、答えが出るわけもなかった。
 じっとしていると、程なくして眠気が襲ってきて、私は窮屈な姿勢のまま眠りについた。
 
 
 
 
 『狩人の小屋』のソファで爆睡してしまった俺は、苦笑を浮かべている案内人について施設の奥へと歩いていた。
「起こしてくれたら良かったのに。正直、恥ずかしかった……」
 熟練の狩人達の視線を思い出すと、まだ顔が火照る。大口開けていびきまでかいていたというのだから相当なものだっただろう。案内人は申し訳なさそうな苦笑を濃くして俺に向かって言う。
「申し訳ありませんでした、お客様。あまりにも気持ちよく寝ていらっしゃるようでしたので……起こすのが躊躇われてしまいまして」
「まあ、いいけどさ。手続きは終わったんだよな?」
 気持ちを切り替えるに限る。
「ええ。貴方様専用の『個別ケージ』をご用意させていただきました。ウサギは『ウサギ小屋』に入れてありますので、まずはそちらから回収する必要がございますが」
 長い廊下を歩く時間は暇で、俺はついでだから案内人に質問してみることにした。
「詮索するつもりはないんだけどさ。気になったから訊いてもいいか?」
「なんでございましょう。機密事項以外はお答えします」
「ここで『ウサギ』になってる女の人達って、皆自分から志願してきてるってマジ?」
「……そうですね、個々人の素姓の詮索はルール違反ですが、全体に関する質問ですのでお答えしましょう。端的に言えば、その通りです。実際は借金の返済のためなどやむをえない事情等もありますが、基本的には個人の自由意思がなければ、この庭には入れないことになっています。きちんと全てのウサギに対して調教は済んでおりますので、あくまで『人の形をしたウサギ』と思ってくださって構いません」
「ふーん。色々いるもんだなぁ……」
 普通に考えれば、素裸で野山を駆け回る『ウサギ』などにはなりたくない、と考えるだろう。それでも自ら志願する人が幾人もいるというのだから、世界は本当に広い。いくらこの辺りの野山が徹底的に整えられているとはいえ、素裸で駆け回るなんて普通に考えれば恥ずかしすぎるだろう。もしも自分が女性だったとしても、そんな風に駆け回ることはしたくない。そもそも、いくら怪我をしない皮膚浸透の睡眠ペイント弾とはいえ、『狩られる対象になりたい』という思考は俺には想像できない。
(まあ、色んな人間がいるってことだよな……度の過ぎたマゾ、ってところか)
 そんなことを考えているうちに、ついに俺と案内人は『ウサギ小屋』とプレートに書かれた部屋の前までやってきた。案内人が物々しいドアの横にあったパネルを操作し、扉のロックを解除する。
 中に入ると、そこは異質の空間だった。足元から肩の高さくらいまで、縦と横の長さが一メートルもない箱のような物が積み上げられている。どことなく倉庫のような広さを持つ無機質な部屋だった。それらの箱の手前の面には機械的なパネルがあり、その数字を押すことでドアが開く仕組みになっていることがなんとなくわかった。そのパネルのすぐ上には番号が振られたプレートがあり、俺が確認した限りでは900番台くらいまではあるようだった。つまりそれだけ大量のケージがこの広い部屋には置いてあるということだ。
「お客様が捕まえた『ウサギ』の番号は……782ですから……ここですね」
 プレートに782番と書かれたケージのパネルを案内人が操作する。すると機械音がして、ゆっくりとケージの蓋が開いた。何となくコインロッカーを開ける時のような感覚だ。
 蓋が全開まで開くと、俺はようやくその中を覗き込むことが出来た。前に立っていた案内人は脇に避け、中を見やすいようにしてくれる。
 ばっちりと、目があった。音に気付いて顔を上げていたのか、体を折り畳んでケージの中に詰め込まれていた『ウサギ』が俺の方を見つめている。頭頂部にはさっきはなかった『耳』があり、それはまるで血が通っているかのように動いていた。その耳にはピアスを通す穴が開けられており、その穴には紐のようなものが通されていた。紐は開いたケージの蓋の内側と繋がっていたが、案内人がそれを外し、長さを調節して、軽く引っ張った。
「ひゃぁっ!!」
 ケージに入っている『ウサギ』が悲鳴を上げ、体をずり動かすようにしてケージの外へ出てくる。地面に倒れた『ウサギ』は、四つん這いのまま、立ち上がろうとはせず、じっと俺の顔を見上げてきた。そのあどけない表情といい、かすかに傾げた首といい、恥ずかしげもなく全裸を晒している状態といい、全てが俺の好みにどストライクだった。俺は最初の狩りでこんなにも理想的な『ウサギ』に出会え、しかも狩れたことに大きな喜びを覚えずにはいられない。
 感動していると、案内人が手に持っていた紐の端を渡してくれた。
「これを離さないようにして持っていてください。これは犬でいうリードのようなものでして、もしも逃げようとしたら容赦なく引っ張ってください。『ウサギ』は耳を引っ張られる激痛が走るため、大人しくなります。連れていく方向を誘導したい時にも便利ですよ」
「わかった。……ところで、ウサギは四つん這いでしか歩けないってことはないよな?」
「ええ。大丈夫です。貴方が望むなら、ちゃんと二足歩行させることも出来ますよ」
 色々な面で、完全に『ウサギ』に扮することしか出来ないということになると面倒なことになりかねなかったので、そこはいい柔軟性を持っているといえた。
「思考力とかはどの程度? 基本命令は理解して動くってことで構わないのかな?」
「はい。問題ありません。あまり複雑すぎる命令は『ウサギ』に扮している関係上できませんが、基本的には命令に従順に動きます」
 案内人に向けて必要なことを確認している間に、『ウサギ』は赤ん坊のような四つん這いから少し体勢を変えていた。M字型に足を開き、そうやって出来た足の間に軽く拳を作った両手をついているという形だ。いうなればカエルが座り込んでいるような体勢というべきか。
 両足の間で手を突いているため、はっきりと見えているわけではなかったが、M字型に足を開いているのだから、きっとアソコも御開帳状態だろう。その様子を想像すると、体が少し興奮するのを感じた。早くそこ目がけて硬くなった『それ』をぶち込みたいと思う。
 その想いが伝わったのか、案内人が言う。
「それでは、参りましょうか。お客様の専用ケージに」
 
 
 専用ゲージとは、要するに個別の部屋のことだ。
 ここなら自分が捕まえた兎を長期間に渡って『飼育』することが出来る。時間をかけて調教して『芸』を身につけさせたい場合や、お気に入りのウサギを他の狩人の手に渡さないようにする際に使う場所だ。
 案内人の後について辿り着いた部屋は、殺風景な部屋だった。十畳程度の広い部屋の隅に白いシングルサイズのベッドが置かれている。
「初期状態の場合は、シングルベットのみ備え付けとなっております。それ以外の家具や『オモチャ』は別途ご購入ください」
 十畳程度の割りと広い空間が確保されているのは、そう言った物品が入ることを前提としているからなのだろう。
 まだまだ殺風景な部屋だが、これから充実させていくことを考えればやりがいのある部屋だ。ますますこれまで以上に仕事を頑張らないとな。
「それでは、ごゆるりとお楽しみください。なお――お帰りになる際には内線でお知らせください。お見送りいたしますので」
 それはおそらく、施設内を勝手に出歩かれては困るからだろう。この手の巨大施設だ、なにかしら危ういことに手を染めていても驚かない。そんな秘密を暴くつもりもなかった俺は案内人に了承する旨を伝える。
「ああ、わかった。ゆっくり楽しませてもらうよ」
 その俺の返答を聴いた案内人は、部屋から去っていった。
 あとに残されたのは、今日の俺の戦利品……あるいは狩猟の成果である『ウサギ』のみ。一見すれば裸で頭にウサギの耳を着けただけの女性だが、これはあくまで『ウサギ』なのだ。そういう設定なのだから、そのつもりで精一杯楽しませてもらおう。
「よし……まずは名前でも決めるか」
 じゃないと呼ぶ時に困ってしまう。番号で呼ぶのは味気ないし。
 しかし、あまりペットを買ったことがないので、どういう名前がいいのか悩むな……人の形をした『ウサギ』だから、多少人間っぽい名前でも構わないだろう。その方がやってる間もいいだろうし。
 名前を考えていると、不意に直立していた『ウサギ』が疲れた息を吐いた。その息を聞き、俺はウサギを立たせたままだったことに気づく。
「楽にしてていいぞ」
 そう声をかけてやると、まるでそれを待っていたかのように『ウサギ』は腰を落として両手を股の間に就き、四つん這いの状態になる。俺はドアがしっかりしまっているのを確認してから、ウサギの耳についていた紐を外してやる。ウサギは四つん這いのまま部屋の中をうろうろし始める。ぴょん、ぴょん、とウサギそのものの動きだ。彼女自身からすればウサギになり切っているだけなのだろうが、傍から見れば裸の女性が四つん這いで動き回っている姿だ。ふるふると揺れる胸や、張りのあるお尻など――実に性的な魅力を感じる。
(うーん。やっぱ、ウサギになるだけあっていい体してるなぁ。すげえ活き活きしてるっつーか……)
 誰でもウサギになれるというわけではなく、ある程度の審査はあるという話だし、それを潜り抜けただけあって実に相応しい体つきをしている。
「さて……どうしようかな、名前」
 俺は落ち着かない様子で部屋の中をうろうろする彼女を見ながら、ベッドに腰掛ける。何気なく後ろに回した手に硬い感触が帰ってきた。
「ん?」


 よく見ると、ベッドの上に一冊の本が置かれていた。シーツの色と同化してわからなかったのだ。
「なんだこれ?」
 それの中身を開いて見てみると、それは『ウサギの飼育の仕方』と『オプションの道具目録』のようだった。
「……教えておいてくれよ」
 なんというか、案内人に不備がありすぎな気がする。いや、まあいいんだけどさ。これではまるで予想外のことがあって色々急ピッチで準備したせいで色んなところが抜けているみたいじゃないか。こんな正直怪しげな商売をしているところが、そんな間抜けなところでは困る。
「まあいいか……とりあえず、どれどれ……」
 名前が決まらなかったため、とりあえずその飼育の仕方を熟読することにした。時間制限はないのでゆっくり楽しむとしよう。
 『ウサギ』の特徴は大まかに以下のようなことがあるようだ。
 一つ、ウサギは人の『主人』の命令をよく聴く。
 一つ、ウサギは万年発情期で、人間とのセックスに応じる。
 一つ、ウサギは高い知能を持っているため、『芸』を覚えさせることが可能。
 大まかな内容を読んだ俺は、顎に手を当てて考え込む。
(……ふむ。まあ、セックスするためにあるような内容だな、やっぱり)
 『狩り』や『トレード』と言ったゲーム的な要素もあるとはいえ、基本的にはそれが目的だ。
「精一杯、楽しませてもらうことにしようかね」
 今度はオプションの目録を見る。基本的な家具なんかもあったが、俺がまず興味をひかれたのは『食べ物』の部分だった。
「『ニンジン』……『このニンジンはウサギ専用に作られた物で、このニンジンを与えたウサギは強い性欲を発揮します。初めて遊ぶウサギに服用させると、効果は倍増します。※極めて強力な媚薬が含まれています。人間が服用しても問題ありません』、か……安いし、これ与えてみるかな」
 俺は入口脇の壁に設置された電話――例えるならカラオケボックスでメニューを注文する時に使う電話――を手に取り、『ニンジン』を注文する。それはすぐに届いた。
 それは外見だけを見れば、単なる皮を剥いたニンジンだった。与えやすく、食べやすいようにか細長いスティック状に加工されている。
 届けに来た従業員が去った後、俺が部屋の中に向き直ると、いつのまに近づいて来ていたのか、『ウサギ』が足元に来て、俺をじっと見上げていた。その目は期待に輝いている。どうやら、この『ニンジン』に惹かれて来たようだ。
「待て待て。こっちだ」
 俺はひとまずお預けし、ベッドに腰掛ける。その目の前にウサギはやって来て、待ちきれないというように俺のことを見詰めていた。当然ウサギの格好は四つん這い出し、座りこむとちょうど俺から見て真正面にアソコが見えるわけだが……恥ずかしがる様子はなく、純粋にニンジンスティックを欲しがっている。
「……よーし、じゃあ、まずは一本だ」
 まず一本目のスティックをつまみ、『ウサギ』の目の前に差し出してやる。『ウサギ』は喜んで首を伸ばし、ニンジンスティックに噛みついた。パリポリ、という小気味のいい音が響く。『ウサギ』は美味しそうにスティックを齧って行った。あっという間に一本目のスティックがなくなる。スティックをつまんでいた俺の指まで舌を伸ばして舐める。
「そんなに美味しいのか?」
 俺はもう一つスティックをつまんで彼女の前に差し出してやる。言葉はもちろん返って来なかったが、すぐに齧りついたところから答えられるまでもなく喜んでいることはわかる。
 残り三本の内、二本まであっという間に消えた。俺は最後の一本を見詰め、同時に説明書の文章を思い出す。
「……ちょっとだけ」
 俺は最後に残ったそのスティックを自分の口元に持って行った。あんまりウサギが美味しく食べるのでおどんな味が気になったのだ。
 齧ってみると、思った以上に甘い味がした。混ぜられているという媚薬の味だろうか。ウサギ用というだけはあって、人間が食べるには少し薄味過ぎるが。
 何となくそのまま半分ほど食べた時、俺は目の前のウサギに変化が生まれていることに気付く。
 ウサギは激しい運動の後の全身を赤く染め、その頬にも朱が差していた。さらには呼吸も荒くなっていて、目にも涙が浮かんでいる。明らかに感じている様子で身体を捩らせ、内股が小さく痙攣している。突き出した舌からは涎が零れ、ウサギの胸をどろりと濡らす。それは実に扇情的で、性的に魅力の溢れる姿だった。
 思わずごくりと喉が鳴る。僅かに、身体の奥が熱を持ち始めた。
「……おい、ウサギ」
 俺はそう呼びかけながら残ったニンジン咥え、ウサギに向けて示す。ウサギは潤んだ目でこちらを見た後、跳び付くようにして俺の咥えたニンジンに食い付いて来た。そしてニンジンを齧り始める。ポッキーゲームのように彼女の口は徐々に俺の口に近づいて来て――自然と唇が重なった。それだけでは止まらず、ウサギの舌が俺の中にまで伸びて来て、ニンジンの味を少しでも感じようと口内を舐め始める。俺もその舌に応じて舌を伸ばし、ウサギの口内を探る。
 咀嚼され、唾液が混ざってドロドロになったニンジンの味が感じられた。お互い、ひたすら相手の中を堪能する。
 そうこうしてる間に本格的に欲情して来たのか、ウサギの全身は熱を発し、俺の膝に当たっているウサギのアソコからは糸が引くほどに凄まじい愛液が分泌されていた。それに伴って雌の匂いが立ち上り、部屋を満たして行く。俺の分身もすでに硬くなって存在を主張し始めていた。
(ニンジンの効果なのか……? いつもより、なんか……)
 いつもより遥かに強く、それは解放を望んでいるようだ。俺は一度ウサギを自分から離し、来ていた服を脱ぐ。脱いだ服はベッドの上に放り出しておいた。
 その服を脱ぐ間の僅かな時間で、ウサギはニンジンの効果が完全に回ったのか、物凄くエロい顔で俺の方を見ていた。その切なげというか、実にすばらしい媚態を見て、俺のあそこはさらに強く存在を主張する。
 俺はウサギを抱えて持ち上げ、ベッドの上にあおむけに寝かせる。俺がそうしたわけでもないのにウサギは自然と股を開き、濡れそぼったそこをアピールする。よくみるとそこは別の生き物のように動いて、それの挿入を待ち構えていた。
 ベッドの上に上がった俺は、もはや我慢することなど出来ず、さっそくウサギのそこ目がけて自分のイチモツを刺し入れる。
「くぅ……っ、中々……キツイ……っ」
 いくら発情しまくっているとはいえ、その穴はかなり狭かった。ぎちぎちと音が聞こえてきそうなほどだ。
 なんとか奥まで押し込む。その穴は非常に気持ちが良く――根元まで入れた瞬間には達してしまっていた。奥めがけて熱い物を吹き出す。
 いつもの倍の量はありそうだった。身体の中で熱い物を吹き出されたウサギの方も、びくんびくんと身体を痙攣させて達したことを示す。
 こんなに早く出してしまって勿体ない、と思いかけたが、俺のいちもつは一度射精に至ったにも関わらず硬度を保っていた。どうやらニンジンの威力は凄まじい物があるようだ。
「中々、いいなっ。この調子でガンガンいくぜっ」
 俺はさっそくストロークを開始しする。彼女自身が出した愛液と精液が混ざった物がピストン運動に伴って噴き出す。
「ハァ……っ、ハァ、ハァ、ッ、フッ、アァッ……」
 ウサギは喋らないため、人間らしい喘ぎ声はなかったが、その荒れた呼吸だけでも十分興奮出来た。安っぽい演技が入っていない分、確かに感じていることがわかるからだ。
 立て続けに三度は絶頂に至っただろうか。その回数分彼女の中に精液を吐き出した俺は、さすがにどっと疲れが襲って来てベッドに倒れた。もちろん、ウサギの方の疲労はそれ以上だ。うつろな目をして、ただ喘ぐだけの生物と化している。
「くそっ、可愛いな」
 何がクソなのか。思わずそう呟いてしまっていた。
 これからこいつで色々出来ると思うと……最高の気分だ。


 初めての狩りの翌日――。
 俺は再びバスに乗り込むところだった。本当はもっとあの『ウサギ』と遊んでいたかったのだが、俺にも仕事がある。ここの会員費や専用ケージの維持費を稼ぐためにも、仕事に戻らなければならなかった。 
「またお戻りになる時まで、あの『ウサギ』は当方で管理しておきます。ご心配なく」
 そう言って案内人は頭を下げる。
「頼むぜ。あんなにいい『ウサギ』はもう手に入らないかもしれないしな」
「お任せください」
 力強く答えてくれる案内人の態度に、俺は安心してバスに乗り込む。
 バスはすぐに出発し、手を振る案内人に見送られて俺は帰路についた。
 次に来て俺の『ウサギ』に再び会える日のことを考えると、いまからその日が楽しみで仕方ない。
 俺は幸せな未来を想像しつつ、目を閉じる。
 
 
 
 
 とある新人狩人を見送った後――『ウサギの庭』の案内人はひっそりと溜息を吐いた。
「やれやれ……なんとか無事にやり過ごせましたか……」
 彼はそう呟くと、従業員が待機している中央管理室へと向かう。
 中央管理室では疲労困憊した職員達が思い思いのところでぐったりしていた。
「皆さんお疲れ様です」
 そう案内人が声をかけると、職員の一人が力なく応じる。
「全くだぜ……この庭始まって以来の騒動だったんじゃねえか?」
「まさか、あんなところから部外者が『庭』に入ってくるなんてねぇ。女性で良かった……というべきなのかな」
 この『庭』にいる女性たちは全て自ら『ウサギ』になることを志願してやってきた――というのは、対外的な嘘である。
 実際は、特殊な洗脳装置『アンテナ』を利用して彼女達に自分のことを『ウサギ』だと思いこませることにより、この施設は成り立っていた。施設には通常ならバスに乗って入って来る以外の道はない。外周部には『アンテナ』がいくつも設置されており、自然とUターンするようになっているからだ。しかし新人の狩人が捕まえた『ウサギ』はそれを掻い潜るようにして庭の中枢部にまで入り込んでしまっていた。もっとも女性だったため、庭中に満たされている洗脳電波に触れ、自分のことを『ウサギ』だと思いこんでくれたのが幸運だった。もしもそうでなければこの施設のことが外部に漏れ、相当厄介な事態に陥っていた可能性もあったのだから。
「それで、あの『ウサギ』の個人情報は調べられたのですか?」
「ああ、どーやら庭の噂を『秘境』のことだと勘違いして、それを調査するために来た記者みたいだな。幸いこの会社なら圧力かけれるし、なんとか穏便に済ませられそうだぜ」
「狩人に捕まる前に見つかっていれば……そのまま帰すことも出来たんですけどね」
 その方が面倒がなくて楽だったという想いはある。しかし狩人に捕まって、しかもその『ウサギ』を専用ケージに入れられてしまった以上、その『ウサギ』はその狩人のものとして処理するしかない。
「ま、『ウサギ』として扱われている内は食いっぱぐれることはねえし、基本的には幸せに暮らしていけるんだからいいんじゃねえか?」
「そう考えるしかありませんね……」
 案内人は机の上に放り出されていた『ウサギ』の個人情報を纏めた書類を見る。そこには快活な笑顔で写っている『ウサギ』の姿があった。人間として、暮らしていた時の物。
「ああ、大体の手続きは済んだし、その情報はもう捨ててもいいぜ。『ウサギ』にするための調整も済んでるしな。俺はもう寝る。全く疲れたぜ……」
 そういってその職員はあくびを落としながら退室していった。
 案内人はその書類を持って、壁際のダストシュートに近づいた。
「……恨まないでくださいよ」
 そう呟きながら、案内人はその書類をダストシュートの中に放り込む。『ウサギ』の人間だった頃の記録はダストシュートにあっさり消えていった。
 案内人が一つ息を吐いたところで、その彼に向って声がかけられる。
「おい。また新しい狩人が来たってよー。出れる奴が行ってくれー」
「はーい。わかりましたー」
 そう応じた案内人は、軽く身だしなみを整え、外に出る。
 ほどなくして彼の前にバスが停まり、その中から緊張した面持ちの新人狩人が降りて来た。
 案内人は新たな狩人に向け、笑顔を浮かべながら丁寧にお辞儀をする。
 
「『ウサギの庭』へようこそ。歓迎いたします」
 
 今日もまた、『ウサギ狩り』が始まる。
 
 
 
 
ウサギ狩り 終
 
 
 
 

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