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死神輪舞9

死神輪舞8の続きです。

 前回の話はこちら→        

 では続きからどうぞ。


死神輪舞9




 行方知れずになっていたという、死神。

 アルミールアルミーナは、その外見に似合わない堂々とした態度で僕の寝るベッドに勢いよく腰掛けた。
「世話役にきっちり体は洗わせたから、もう汚くはないはずだが……気分はどうだ?」
 心配そうにこちらを見つめる彼女の瞳に、嘘はない。本当にこちらのことを案じてくれている目だ。
 僕は混乱しつつも、なんとか頷いた。
「だ、大丈夫です……」
 答えつつ、頭の中でシェルちゃんに尋ねる。
(ね、ねえ、シェルちゃん……アルミールアル……えっと、アルちゃんでいいか。アルちゃんは前からこんな喋り方をしてたの?)
 半ば答えはわかっていたけど、一応尋ねてみる。
 案の定、猛烈なシェルちゃんの声が返ってきた。
(そんなわけないでしょう!? アルミールアルミーナは、ちょっと無愛想で、度が過ぎるくらいに無口だったけど、たたずまいは楚々として、淑女らしく、たまに見せる微笑みがめちゃくちゃ可愛かったんだから! こんな笑い方も、こんな言葉遣いも、仕草も、するわけないわよ!!)
 なるほど……と、いうことはやっぱり……。
 誰かの魂が、アルちゃんの体を乗っ取っている、ということでいいんだろうか。
 しかしそうなると……この人は僕みたいに頭の中でアルちゃんの声がしているってことになるけど……おかしいな。それなら、シェルちゃんみたいにシェルちゃんの姿に反応するはずだけど……特にそんな様子は見えないし……。
「えっと……助けてくださってありがとうございます。あの、あなたのお名前は……?」
 とりあえずそう訊いてみた。
 アルちゃんの身体をしたその人は、一瞬目を泳がす。何か考えているような仕草だった。
「あー、俺は……赤城星斗。そういうお前は?」
 訊き返され、僕は一瞬言いよどむ。本名を名乗ってしまっていいのだろうか……いや、構わないか。幸い僕の名前は女の子の名前としても使われていることがあるし、不自然ではないはずだ。
「えっと……青木亮です」
「……リョウ、か。いい名前じゃないか」
「あ、どうも……」
「ところでリョウ。話を戻すが……そこの猫が見えるうえに触れるらしいが、お前は生まれつきの霊能者か?」
 セイトの目が、鋭く細められた。
 それは何か見極めようとしているような視線で、思わず緊張してしまう。
 ここは、無難に霊能者だと答えておいた方がいいだろうか……。
 いや――それではダメだ。
 セイトは何かを感じて、その問いかけをしてきているように思える。と、いうことはここで霊能者だと嘘を吐くとそれ以上話が進まない。
 少し考えを纏めるだけの時間を空けてから、僕は首を横に振った。
「……いいえ。僕には霊感はありませんでした」
 ぴくり、とセイトの眉が反応する。
(ちょ、ちょっと、あなた、それじゃあ!)
(ごめん、ちょっと黙ってて)
 抗議するような声をあげるシェルちゃんを押さえて、僕はセイトを見つめる。
 セイトがいま、僕の言葉のどの部分に反応したかは明白だった。
 僕はわざと一人称を『僕』と言った。
 セイトが本当に『そう』なら、その意味は『そういう意味』にしか取れない筈。
 こういうとき、相手から欲しい情報を引き出すにはこちらから秘密をさらけ出すことだ。万が一、セイトが『そう』でなかった場合でも、頭がおかしいとしか思われないから問題ない。
 何気ない口調を装い、膝の上で丸まっている猫を撫でながら言う。
「僕はこの猫を助けようとして、自動車に轢かれました。そして、変な女の子の夢を見て、気づいたら――この姿になっていたんです」
 セイトの目が限界以上に見開かれる。
 その驚きは、明らかに『異常な話を聞いたから』という驚きではなかった。
 僕は緊張で高まる鼓動を抑えつつ、ダメ押しの台詞を呟く。
「信じてもらえないでしょうね、こんな話をしても」
 さらに不自然でないように、忘れてください、と付け加えた。
 話を聞いたセイトは、何か考えているようだった。
 やがて、こちらを見たセイトの目には、こちらに対する興味と関心で一杯になっているのがわかった。
「……その、夢で見たとか言う、変な女の子というのは……ひょっとして、死神のような大鎌を持っていなかったか?」
 どくん、と心臓が一つ大きく鳴った。
 それは、その言葉は。
 僕は緊張でたまった唾を飲み込みながら、逆に訊き返す。
「……なんで、わかったんです?」
 こう問い返すことで、夢に出てきた少女がセイトの言う通り大鎌を持っていたと認めることになる。
 セイトはしばらく目を閉じ、何か考えているようだった。
 そして、考えが纏まったらしく、目を見開く。
 彼女は――いや、セイトはその言葉を口にする。

「俺も、死にそうになった時にそういう少女の夢を見た。そして――この姿を手に入れたんだ」

 その言葉は、セイトが僕と同じ、死んだあとに死神の体を乗っ取ったということを肯定していた。
 思った通りの言葉が引き出せたことで、僕は内心ガッツポーズを取る。
「どうやら、お前と俺は同じような立場にあるらしいな……」
 先ほどより、セイトは僕に近づいていた。
 興味というか、同じ境遇にあるという同族意識だろう。こちらに対して、身を乗り出すようにしている。
「一つ訊きたいんだが……お前は、いまの自分の状況をどの程度まで理解している?」
「……どういう、意味ですか?」
 なんとなくはわかったけど、一応そう訊き返しておく。
 セイトは相変わらずどこか嬉しそうな目で、こちらを見ていた。
「死んだはずの俺たちが、なぜ姿を変えてこうして生きているのか。夢に出てきた少女はなんだったのか、いまの自分に何ができるかわかっているのか――という意味だ」
 ここでは頷かない方がいい。
 頷いてしまうと、セイトが自分の状況をどこまで把握しているのか訊き出しにくくなる。僕に説明させることでセイトが自分のわかっていることを自然に聞けるわけだ。
 僕は首を横に振った。
「いいえ……全然わからないんです。訳がわからないまま、街を歩いていて……それで…………男たちに、絡まれて…………っ」
 話しながら、思わず凌辱された時のことを思い出してしまって身震いした。頭の中のシェルちゃんも小さく悲鳴をあげている。
 シーツを握りしめて嫌悪感を耐える僕の拳に、セイトの手が重ねられる。
「大丈夫だ。もう終わったことだ。ここにはお前を脅かす者はいない。俺がお前を守ってやる」
 その言葉は凄く力強く、不思議と聴く者を安心させる。体の震えも、嘘のように止まった。
 体中を這いまわっていた嫌悪感が、いつの間にか消えている。
「……すいません」
 自分の言葉で自滅するなんて、情けない……。
「気にするな。…………訳がわからないのは辛かっただろう。俺もそうだった。安心しろ。俺がどういう訳か教えてやる」
 そんな風に心底僕のことを気遣ってくれるセイトの言葉に、僕は罪悪感を覚えた。
 僕は、なんとなくアルちゃんの体を乗っ取ったという人のことを、悪いイメージで捉えていた。
 コルドガルドさんが『乗っ取り』という表現を使っていたから、というのもあるけど、なんとなく感覚的に。
 だというのに、実際のこの人は――セイトは――物凄く、優しい人じゃないか。
 傷ついているだろうこちらのことを考え、力強い言葉で励ましてくれる。
 そんな彼に対し、『何もわからない』と言って騙して、情報を聞き出そうとしている今の状況は、非常に心苦しかった。
 けど、今更言い直すことは出来ない。不自然すぎる。

 僕が握った拳を優しく撫でてくれるセイトに対して、本当に申し訳なく思った。




~10へ続く~

Comment

No.55 / nekome [#lWxbDKCI]

おお、これは……情報の引き出し方が上手いですねえ。
「死神の意識の有無」という差異――情報量の差を隠しつつ、交流を持てるわけですから、部分的にであれ優位に立てます。

もっとも、星斗がさらに演技をしている可能性もゼロではないでしょうけど。こんな姿にもかかわらず、「仕える者」がいるというのも気に掛かりますしね。まだ油断は早い、かな?

2008-08/31 16:15 (Sun) 編集

No.56 / 名無しさん [#-]

そのまさかでしたか・・・・・
っていうか猫ちゃんの力なら奴らを追い払えたんじゃ・・・

死神が何らかの力を持っていて
相手がどれ程の力を持っているか分からない今、物を言うのは情報ですからね
今は慎重に日にちをかせがないと

2008-08/31 16:34 (Sun)

No.59 / 光ノ影 [#-]

nekomeさん、名無しさん、感想ありがとうございます。

>nekomeさん
 人間、割合咄嗟にこういう思考が出来るものじゃないかな、と思うのです。いままでの亮の性格から考えるとちょっと頭が回りすぎかな、とも思うのですが、本などを読んで想像を膨らませていたなら、ある程度は回るのではないかと思いまして。
 無論、星斗がその上をいっている可能性もあります。仕える者の存在については……ふふ、次の更新で、ということで。

>名無しさん
 猫は霊体ですので、イソギンチャクのような霊体に近い存在や死神の体(生身になっているとはいえ)にしか触れられませんし、触れることも出来ないのです。自分であの暴漢たちを追い払うことが出来なかったので、亮と同じような存在である星斗に助けを求めた、というわけです。
 相手がどういう立ち位置がわからない状態で、相手がいきなり自分を攻撃してくる意思がない以上、できる限り自分のカードは伏せ、相手の立場などを確認することが必要ですから。名無しさんの言うとおり、慎重になるべきです。
 幸い亮はそこはクリア出来たようですが、相手の出方によっては失策となるかもしれず、油断はできません。

 続きにご期待ください……と言っていいものか……(力量的に)。
 色々な面で楽しんでいただけるよう、死神輪舞は進めていきます。
 お付き合いくだされば、幸いです。

2008-09/02 00:12 (Tue)

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