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『雑貨店へようこそ』 ~瓶~

 今回の話はTS系、変身?物です。
 結構短いです。





 ようこそいらっしゃいました。

 この店は様々な物品を売る店です。
 色々な品物がございます、ぜひごゆっくりご覧になってください。
 おや、お客様、それに興味がおありですか?
 それはあまりお薦めではありませんが……。
 とにかく、商品の説明をさせていただきましょうか。

 その『瓶』の使い方は――――

雑貨店へようこそ ~瓶~






 私は、部室の机の上に奇妙な瓶が置かれているのに気づいた。

 私は朝の練習のために、所属する陸上部の部室に来ていた。
 早朝のため、まだ誰も他の部員は来ていない。私はあまり苦にしないが、他の皆はこんな早朝に起きるのが億劫らしく、練習が始まるギリギリまでやってこない。
 そんなわけで早くに来て部室を開けるのは私の役目で、準備を始めておくのも私の役割だった。
 昨日、帰る際に片付けはしたけど、基本的にずぼらな部員たちは中々綺麗に片づけるということをしてくれない。
 色んなものが部室の机の上には散乱していた。
 その中から練習メニューを書いた紙を取り出そうとして、私はその瓶の存在に気づいたのだった。
 なんというか、不思議な形をした瓶だった。
 少し前にゲーム上の飲み物が実際に発売されたことがあったけど、そんな感じの、変な形をした瓶だ。
 たぶん、部員の誰かが面白がって持ってきたまま、放置したのだろう。
 私はため息を吐いて、その不透明な瓶を手に取る。振ってみたが音はしない。
 中身は空なのだろうか? それなら丁度明日は回収日だ。部員達が来たら一応訊いてみて、いらなかったら処分してしまおう。
 そう思った私は、瓶に栓をしていたコルク栓を抜いた。
 一応本当に空かどうかを確かめるためだ。
 そして瓶の中を覗き込む。何も――ない。
 だけど。
(あれ――?)
 便の口が大きくなったような気がした。
 目から放そうとしたけど、離れない。どころか、体の自由が利かない。
(えっ、なに、これ?)
 驚いているうちに瓶の口はますます大きくなっ――――




 誰もいない部室。
 その静寂が、ロッカーが開かれる音で破られた。
 いまは誰も使っていないロッカーに潜んでいたのは、中年の男性だった。頭髪には白髪が多く、非常に疲れた顔をしている。
 しかし、その顔が抑えきれない喜色で一杯に変わった。
「やった……!」
 男は慌てた様子で床に落ちていた瓶を取り上げた。
 コルク栓がしっかり嵌められたその瓶の中には、なにやらピンク色の液体が入っている。
「これで俺は、やり直せる……!」
 男はさきほど見た光景を思い出す。


 ロッカーの扉には、切り込みが入っていて、そこから外の様子は見える。
 夜の間にロッカーの中に潜んでいた男はそこから部室の中の様子を見ていた。
 生真面目そうな女子生徒が部室に入ってきて、いまは体操服に着替えているところだった。
 男は緊張で溜まった唾をごくりと飲み込む。ただし、この緊張は『着替えを覗いている』ことに関する緊張ではなかった。
 むしろ、着替えなどはどうでもいい。
 他の部員が来る前に、彼女が『それ』に触れてくれなければならないのだ。
 さらにその瓶の蓋を開けてくれなければ――意味がない。
 分の悪い賭けではあったが、もしも失敗しても別のところや人を変えて何度も挑戦すればいいだけの話だ。
 しかし、すぐ傍に隠れているのが見つからないという保証はなく、できれば今回で終わらせたいところだった。
 果たして、何も知らない少女は机の上を物色しだし――その瓶に目を止めた。
 それを持ち上げ、中身が入っていないかどうかを確かめるために振る。
 固唾を呑んで男が見つめる中、ついに少女はコルク栓を外してしまった。
 密かにガッツポーズを取る男。
 瓶の中を覗き込んだ少女は、まるで吸い込まれるように、瓶の中に入っていく。
 まず顔、そして頭、首、肩、胸……腕や腹まで入ってしまった。
 ずる、ずる、という効果音が部室内に響いている。
 指先がぴくぴくと痙攣していたが、それも吸い込まれる。
 腰まで入ってしまえば、あとはあっという間だった。
 足先まで瓶の口に吸い込まれ――自動的にコルク栓がその瓶の口を塞ぐ。
 ピンク色の液体となった少女は、完全に瓶に詰められてしまった。
 いままで不思議な力で空中に浮いていた瓶が、ごとり、と音を立てて床に転がる。
 男は、ロッカーの中で小さく快哉を叫んだ。
 そう、あの瓶は『蓋をあけた人間を液体状にして瓶の中に閉じ込める』道具だったのだ。
 周囲に人がいる状態では発動しないという欠点もあるが、男は上手く状況を利用して少女を瓶の中に納めてしまった。
 そして、もちろんその瓶の効能は、ただ閉じ込めるだけでは終わらない。


 ロッカーから出て、瓶を手にした男は、急いで瓶のコルク栓を抜く。
 そしてその瓶の中身を一気に煽った。
 甘い味がする、元人間だった液体が男の喉を滑り落ちていく。
「ぷはっ……」
 男は呑み終わると、体中が熱くなるのを感じた。目を閉じ、体を抱きしめるようにして耐える。
 やがて、男が目を開けると。
 自分の視点が低くなっていることに気づいた。
 さらに身体を確認すると、明らかにいままでの自分のものではなくなっている。あってはならないものがあり、なくてはならないものがない体。
 服装までもが、先ほどまでのさえないサラリーマン風の服装から、健康的な体操服に変わっている。
 男――いや、外見的にはすでに少女――は、低く笑った。
「く、くくく……成功だ……!」
 あの瓶によって液体にされた人間を呑み干せば、その人間になることが出来るのだ。
 ただし。

 元に戻る方法は、ない。

 だが、男にとってはその方が好都合だった。
「会社に捨てられ……家族に見捨てられ……借金だけが増えていく、あの地獄の生活から、俺は解放されたんだ!」
 人生をまたやり直せるのだ。
 男は笑いが止まらなかった。
「そうだな……この娘はどうも運動が得意のようだし……スポーツ選手でも目指してみるか?」
 失敗したら、また別の人生を送ればいい。
 人生にリセットボタンはない、というが、男は『瓶』というリセットボタンを手に入れたのだ。
「この娘の記憶によると……ふーん。この後は練習の準備を行えばいいのか」
 全てを飲み干した彼は、少女の記憶も全て受け継いでいた。
 これでうまく記憶を引き出していけば、周囲に怪しまれることもない。
 もっとも、怪しまれたところでもう元の少女は存在しないのだから意味はないが。

 少女の人生を、いや、少女そのものを乗っ取った男は、瓶を少女の――いまは自分の――鞄の中に大事そうにしまい、練習の準備をするために運動場へと出て行った。




~その2へ続く~

Comment

No.45 / tamago [#K8enJE0I] 少女になれるのは羨ましい感じです。

少女の身体と記憶を奪った男はどんな人生を送るのでしょうね。記憶も受け継いでいるわけですから、少女になりすまして教師も友達もクラスメートも親も部活仲間も騙して、少女の人生に満足するまで、少女の身体で生き続けるのでしょうね。僕も近所の中学か高校の少女の身体と記憶奪って生活してみたい気がします。

2008-08/30 09:12 (Sat) 編集

No.47 / toshi9 [#-] これはいい壷だ

これはツボです(笑
この子の人生が嫌になったら、また別な他人に壷を使うんですかねぇ。
しかし雑貨店シリーズ、快調ですね。楽しませてもらってます。

2008-08/30 12:50 (Sat)

No.51 / 光ノ影 [#-]

 tamagoさん、toshi9さん、感想ありがとうございます。

>tamagoさん
 人の人生の乗っ取り……美味しいシチュエーションですよね。人生をやり直したいと思う願望は誰にでもあると思いますから。

>toshi9さん
 たぶん使うでしょうねえ。たとえ人生に成功してももっといい人生を求めて流離い続けるのでしょう。そういう意味では、この男は無限地獄に嵌ってしまったと言えるかもしれません。

 雑貨店シリーズは本当に快調です。
 これからも小難しいことは考えず、思いつくままに書き続けていきたいと思います。

2008-08/30 22:46 (Sat)

No.54 / nekome [#lWxbDKCI]

人そのものを飲み干しているのですから、その人物の、文字通りすべてを奪い取っているわけで、たまらない征服感ですね。

この道具なら、ある程度歳をとったら、また若い子に……ということも可能ですねえ。なんて魅惑的なんでしょう。

2008-08/31 16:04 (Sun) 編集

No.58 / 光ノ影 [#-]

 nekomeさん、感想ありがとうございます。
 人そのものの吸収はほとんど反則ですよね。演技する上でも最強ですし。
 しかしラノベでバッカーノ!という作品があって、それでは全く経緯などは違いますが、片方が片方を記憶や人格を含めて完全に吸収するという似たような設定があります。
 その中でも言われていることですが、記憶や意思を完全に吸収してしまうと、表面に出ている意識が変わるだけで乗っ取った方が逆に吸収されている、という状況になるかもしれず、実はとても危険な行いのようです。
 バッカーノ!を知らない方には解り辛い話ですね。すいません。

 たぶん、この道具を使った男は、少女が女性となり、三十か四十を過ぎた辺りで別の少女に乗り換えると思います。たぶん、ではなくきっと、かもしれませんね(笑)。

2008-09/02 00:04 (Tue)

No.64 / nekome [#lWxbDKCI]

おおっ、そういえば『バッカーノ!』の不死者は相手を丸ごと吸収しますねえ。
その結果、自分が考えもしなかった「悪意」を知ってしまうことも……。

『バッカーノ!』ですと、「双子」の設定にも心惹かれるものがあります(^^
あれが性別限定でなかったらっ!

2008-09/04 22:07 (Thu) 編集

No.66 / 光ノ影 [#-]

nekomeさん、どうもです。
 そうですよねー、知りたくもなかった悪意を知ってしまうこともあるんですよね。バッカーノ!の設定では。……「記憶よりも、身体をくれ!」となるのはTS好きの宿命ですか?(笑)

 双子の設定、いいですよね!
 本当に性別限定なのが惜しいところです。あ、でも確か一人、女の子が双子の男の方と情報を共有していたような……。それと、確かホムンクルスで、男だった奴が女の子の体に意識を移す話もありましたね。

2008-09/05 00:54 (Fri)

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