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死神輪舞1

死神輪舞1(TS憑依物)




 皆に質問したい。

 見知らぬ女の子にいきなり刃物を突きつけられたら――どうすればいいと思う?
 この僕、青木亮はどうしたらいいのかさっぱりわからなかった。

 馬鹿みたいにその女の子を見つめることしか出来ない。
 その女の子は、かなり可愛い容姿をしていた。
 涼やかな目元に柔らかそうな相貌……ほっそりとした体つきに、黒いワンピースみたいな可憐な服を着ていた。
 まさに美少女という表現が的確だった。
 その美少女はその丸くて大きい、小動物のような瞳で僕を睨んでいる。
 白くて細い華奢な手に持っているのは、鎌。

 まるで、死神か何かが持つような、大鎌だった。

 その鈍く光を反射する刃がそれがまぎれもない本物だと告げていて、何でそれを喉元に突き付けられているのか、わけがわからなかった。
 なんでこんなことになってるんだろう……。
 混乱する僕の前で、女の子が口を開く。
「あなたの魂、刈り取らせてもらう」
 ぐっ、と刃が喉元に食い込んできた。
 魂ってなんだよ?! 刈り取るって!?
 僕は気圧されて一歩下がる。それに合わせて女の子も一歩踏み出してきた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 訳がわからないんだけど!! 魂を刈り取るってなに!? 殺すってこと?」
 少女はゆっくりと首を横に振った。

「あなたはもう死んでる」

 は?!
 何を言ってるんだこの子は。
「僕が死んでるって、そんなわけ……」
 女の子は僕の背後を指さした。
 思わずそれにつられて後ろを振り返る。

――血まみれの、僕が倒れていた。

 息を呑んだ。いや、実際には体がないんだから息を呑んだような感じがしただけだ。
 ちょっと待てよ……なんだよ、これ。
「なん、で、僕…………」
「あなたは道路に飛び出した猫を助けようとして車に跳ねられた。全身を強く打って、二〇××年四月十六日十六時三十一分、十八歳で死亡――」
 倒れている僕は、ぴくりとも動かない。血が、徐々に道路に広がっていく。
 そんな――。
 腕の中には、同じように血まみれになった猫がいる。
 助けようとして、結局助けられず、しかも自分まで死んだっていうのか――?
 でも、確かに思い出した。
 僕は通学途中でよくみかけていた猫が道路に飛び出すのを見て、思わず助けに飛び出して――車に跳ねられたんだ。
 なんだよ、これ。
 こんな、何にもならない、死に方をしたっていうのか?
 僕は……。
「私は死神。現世に想いを遺す霊を、天国か地獄かに送る役割を果たすもの」
 かちゃり、と鎌が構えられる音がした。
「あなたは善行の――例え結果が伴わなかったとしても――果てに死んだ。きっと天国に行けるはず。だから出来れば自分で未練を断ち切って成仏してほしい」
 でも、もしも現世にしがみつくようなら。
「悪いけど、私は私の名において、あなたの魂を現世から刈り取る――」
 僕は、ふつふつと怒りが湧いてくるのが感じられた。
 情けない死に方をした自分に対してと、好き勝手に話を進める自称死神の少女に対して。
 なにが成仏してほしいだ。
 なにが善行の果てに死んだ、だ。
 なら僕を生き返らせろよ!
 天国なんて行きたくもない。僕はまだ生きていたかったのに!!
「……納得できるか!!」
 思いっきり怒りを込めて怒鳴ったけど、女の子はほとんど反応しなかった。
「みんなそう言う。だから私のような存在がいる」
 ぶん、と鎌が振りかぶられる音がした。
 振り向くと、その子が掲げた鎌の刃がうっすらと光り出していた。
「荒っぽくなっちゃうけど、あなたの魂、あの世に送る!!」
 鎌が大きく振りかぶられる。
(あの世に送られる――本当に死ぬ? そんなのは、嫌だ!!)
 咄嗟に僕は、彼女に向って体当たりをかけた。
 まさか向かってくるとは思っていなかったのだろう、虚を突かれた女の子の動きが一瞬止まる。
 長い獲物を振るってくる相手なら、間合いに飛び込めばいい!
(僕は…………生きる!!)
 全力を込めたタックルを、彼女の腰に喰らわせた。
 その瞬間、何か物凄い衝撃が感じられて、僕の意識は一瞬で暗転した。




(…………て)
 ん…………?
 誰かに呼ばれたような気がした。
 気のせいか……? なぜか頭がぼんやりして上手く考えることが出来ない。
(…………おき………………よ……)
 何なんだ、一体…………。
 僕は耳に、というより頭に直接響いてくるような声に辟易した。
 もう少し寝かせてくれ……。
(ねぼ…………さと…………う、起きなさいよ!!)
 頭を殴られたかと思った。
 それくらいその声には勢いがあった。
 おかげで少しばかり意識がはっきりしてくる。
 何だっていうんだ。くそ。
 目を開くと、そこは広い原っぱだった。
 家の近くに川があって、その河原にこんな感じの原っぱがあったような気がする……人の通りが少ない、寂れた河原だ。
 なんで僕はこんなところに倒れてるんだ?
(あなたねえ…………!! 絶対に許さないんだから!!)
 な、何?
 今の声……頭の中からしたような……?
 手をあげて頭に触れようとした僕は、体の感覚がいつもと違っていることに気づいた。
「え、なにこの手……――ッ!?」
 呟いた声もおかしい。明らかにいつもの僕のものよりも高い。
 なんでだ? どうなってるんだ?
 恐る恐る視線を下に向けると、そこには、

 女の子の裸の体があった。

「……!?」
(見ないでよ馬鹿!!)
 頭の中で響く声は微妙に涙声だった。
 僕は状況が把握できず、呆然とする。
「ちょ、なに、なにこれ……どうなってるんだ、これ?」
(こっちが知りたいわよ!! あなたが私にぶつかってきて、そしたら私の体の中にあなたが入り込んできたのよ!! おまけに、なぜか私の体は実体化してるし!!)
 この声……怒りのあまり、ところどころ裏返っているからわかりにくいけど……さっきの死神?!
(とにかく! 私の体だから力は使えるはず……早く『外套』を出して!!)
「が、がいとう? なんのこと?」
 街の明かりって意味じゃないよね……?
 イライラとしているらしい声が響く。
(『外套』っていうのは……要するにマントよ! マントが肩から広がっているイメージを思い浮かべて!)
 死神に言われるまま、僕は肩にマントを羽織るイメージを思い浮かべてみた。
 ばさり、という音が響き、どこから飛び出したのか黒いマントが体を覆う。
「うわ、便利だな……」
(うそ……一発で出しちゃうなんて……)
 なぜか驚いているようだったけど、それよりもいまは状況を把握することが必要だろう。
 裸、というのは落ち着かないのでそのマントでしっかり体を覆いながら、僕は頭の中の声に訊く。
「えっと……とりあえずいま僕の頭の中でしている声は、さっきの死神……ってことでいい?」
(……そうよ)
 不機嫌そうな声が返ってくる。
「そして……えーと、僕が君にタックルしたら、なぜか僕は君の体に入ってしまって……しかも君の体が実体を持ってしまった……ということで?」
(……そう。たぶん、『生きたい』というあなたの気持ちが私の体に実体を持たせたのね……死神の力は精神力が強ければ強いほど引き出せるから)
 なるほど……。
(あなたはあの時、霊体だった……だから、死神の体と同化出来たのね)
「大体の状況は掴めたけど……なんでこんな場所に? 確か事故現場にいたよね?」
 俺が疑問をそのまま口にすると、頭の中で死神は激しく声を荒げる。
(あんな場所にあんな格好で倒れたままでいられてはたまらないもの!! かなり苦労したけど、転移魔法を使って移動させたのよ!! さっさと追い出したかったけど、なぜか出来ないんだから仕方ないじゃない!!)
 うわぁ……本気で怒ってるよ……。当たり前か。
 自分の体が全裸で道路のど真ん中に寝ている状況なんて、女の子には耐えられないだろうな。
 それにしても、死神って人間と同じ生活をしているのかな?
「死神っていうくらいだから、もっと人間とは全然違う考え方とかをしているものだと思ってたけど……人間とあまり変わらないね?」
(昔は違ったらしいわ。最近……といっても数百年くらいは前だけど、人間の生活を模倣し始めてそれに伴い考え方が変わったって話を聞いたことはあるわね)
「生活を? 死神たちにも住む場所があるの?」
(あたりまえじゃない。どんな生物にだって住み家はあるでしょう? 私たちの住み家は雲の中にあるわ)
「雲の中?」
 それは……どちらかというと、天使の住む場所じゃないのかなあ?
(それはあなたたち人間の勝手なイメージでしょ。天使が住むのは、文字通り『天』……ロケットじゃ決していけない上にあるわ。逆に悪魔は下……地面を掘ってもたどり着くことは出来ない『下』だけど)
 はああ……なるほど……?
 正直よくわからなかったけど、まあいいや。
「ところで、これから僕はどうすればいいんだろう?」
(知らないわよ!!)
 怒られた。

 まあ、当然か。




~『死神輪舞2』に続く~



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