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『思い通りになる世界』 ~家具売り場~ その3

『思い通りになる世界』シリーズの第十四弾の続きです。
(ジャンル:MC・形状変化・家具化)

以前の話はこちら→ その1 その2

では、続きからどうぞ。

『思い通りになる世界』 ~家具売り場~ その3



 常識的にあり得ない光景から逃げ出した木原留美は、息が続かなくなった辺りで立ち止まった。
 荒い呼吸を繰り返しながら、状況を整理して気持ちを落ち着ける。
(いったい、あれは……なんだったの?)
 明らかに常軌を逸した光景であり、異様な存在だった。それに従う女性たちも異常。
 人間が『椅子』のような物に変えられていくのを黙って見ているだけで、何の感情も浮かべていなかった彼女たちを思い出し、留美は震える。
(とにかく……少し前まで普通だった佐伊南さんが一瞬で『ああ』なってしまうくらいなんだから、他の人にも正気を取り戻してもらうのは無理、と考えるべきよね)
 まだ無事な人にも助けは求められない。騒ぎになっていなかったことを考えると、あの男の行動は当たり前のように受け取られているだろうからだ。
 しかし全力で逃げる彼女のことは奇妙な目で見ていたため、彼らに対する認識だけが狂わされているであろうことも同時にわかっていた。
(私だけ無事にデパートから逃げられたとしても、こんな状態じゃ、とても暮らしていくことなんて出来ないし……)
 デパート内を逃げ回った際、彼女はこれまで慣れ親しんだデパートが一変していることに気付いた。服飾店では異常な服や人の皮のような気色の悪いものが売られ、メガネ店の近くではアダルトグッズのオナホールらしきものが展示されていて、ペットショップに至っては人そのものが売られている始末。
 それはとても普通の神経では耐えられない光景で、現実だった。
(なんとかして、元に戻す……!)
 佐伊南を筆頭に、彼女と交流のあった人達にもその危害は及んでいた。異常であるということを唯一認識出来る自分が元に戻さなければならない、と彼女は強く感じていた。
(とにかく、まずは相手を知らないと……でも近付くのは危険だし……)
 留美は今後どう動けばいいのかを考え始めた。
 その時――不吉な足音が近づいてくる。
 それは本来デパートではありえない、裸の足音だった。それを聞いた彼女は、恐らく追っ手が近付いてきたことを悟る。咄嗟にその場を離れようとした彼女は、慌てたために袋小路へとはまりこんでしまった。
(まずい――この先は確か行き止まり――)
 咄嗟に踵を返したが、気付くのが遅すぎた。道の角で、彼女は下半身裸の追っ手と対面することになった。社長秘書のような風体の上半身に比べ、その下半身はギャップが激しく、ありえない光景の一つだった。
 常識ではあり得ないその姿に一瞬留美の思考が止まる。それに対しその女性の行動にはあまりにも躊躇いがなかった。両手を広げ、まるで子供が大人に抱きつくようにして彼女に向かって跳びかかる。しっかと捕まえられた留美は、彼女もろとも地面に倒れてしまう。
「――きゃああぁッ!? は、離して!」
 留美はそう叫びながら暴れるが、追手は一切言葉を返さず、その手を離すこともなかった。
「……」
 ただ無言のまま、留美を『捕まえる』という行動を続ける。
 そのまるで人形に埋め込まれたガラス玉のように、無機質な瞳を向けてくる追手を、留美は恐怖の対象としてしか見れなかった。

 夏帆子は逃げ出した店員を捕まえて――何もしなかった。
 捕まえた店員は暴れて夏帆子の手から逃げようとしたため、『捕獲』という状態を続行するため腕に力を込めたが、それ以上の行動は何もしなかった。
 これは久人から夏帆子に下された命令が、『あいつを捕まえろ』という単純なものだったためだ。そのため、夏帆子はとにかくその店員を捕まえることしかなく、例えば逃げないように相手の自由を奪う、というような行為までは行わなかった。
 実は、この状況は命令者である久人の余裕のなさが招いた事態だった。ただ単に彼女を捕まえるように久人が指示を出していたなら、本来ある程度は夏帆子の裁量が適用され、彼女の身体の自由を奪うなり、捕まえた後に久人の元へ彼女を連れていくようなことを行っていたはずだった。しかし、いまの夏帆子はただ彼女を『捕まえる』行動しかしていない。
 それは久人が咄嗟に『捕まえろ』と言ったために、彼の思考自体が『捕まえる』ことしか考えられていなかった。久人は自信に宿る力が『他者に言うことを利かせる能力』ではなく、『思い通りになる力』であることを失念していた。
 つまり、『久人の思い通りになる』ということは、『久人の思い通りにしかならない』ということだ。要は、彼が意識していないことは起こらない。冷静に『捕まえろ』と言ったなら『捕まえる』という行為が単に『相手の身体を捕まえる』というだけで達成出来ることではなく、『相手を逃げられないようにする』までして『捕まえる』と言えるということを無意識にでも考えられていただろう。
 久人の失念は、久人にとって、そして夏帆子にとっても、深刻な事態を招くことになる。




 留美は恐怖していた。
 無感動に無表情で自分の身体にしがみついてくるその女性に対して。
 映画に登場する出来の悪いロボットのような、ただプログラムされたことを実行することしかできない無機質な物。それがその女性という存在だと留美は直感的に感じとっていた。留美のように、あるいは留美が知る『変えられて』しまった人達のように、この女性にも背景があり、歩んで来た人生があるはずだった。それを全く無視して、ただ留美を捕まえるための人形にされているその女性が――気味が悪くて仕方なかった。その気色悪さを、彼女のガラス玉よりも濁った目が助長する。
「は、離してよッ!」
 そんな存在に触れられていることにも耐えられなくなった留美は、渾身の力を込めて彼女を引きはがし、そのまま彼女を力任せに突き飛ばした。
 いかに異常な存在であっても、一般女性の力しか持たないその女性は、突き飛ばされて留美との距離が開く。
 留美はその隙に立ち上がって逃げようとしたが、相手もすぐに置きあがって両手を広げ、再び留美に向かって跳びかかってくる。
「――――ッ」
 その時、留美が思い出したのは聞きかじった護身の知識だった。帰りが遅くなることもある社会人として、また一人の若い女性として、痴漢や暴漢などに対する対策は取っておくべきだと考えていた。その際仕入れた知識に、『金的を狙う』という単純ながら男性の暴漢には極めて有用な知識があったことを思い出す。
 それは相手が自分自身の防衛を考慮に入れていなかったがゆえに、突けた弱点だった。
 留美は跳びかかってくる女性の股間――そこに刺さった太いバイブ――に向けて、渾身の力で脚を振り上げた。
 硬いバイブを足の甲で蹴飛ばした留美も相当な激痛を覚えたが、当然ながら体内を抉られたに等しい相手の女性はそれ以上だ。
 彼女の意思に関係なく、身体が跳ねあがりながらひきつけを起こし、そのまま痙攣を続けながら地面を転がり、涎や涙や尿までも垂れ流し、悲鳴こそ上がらなかったがどれほどの激痛が
あったのか、蹴った留美が思わず彼女を心配するほどの惨事になる。
「あ――っ、その、ご、ごめ――ッ!!」
 思わず謝りかけた留美だが、直後、戦慄で背筋が凍った。
 痛みが継続しているのか、身体を痙攣させながらも蹴られた彼女は立ち上がろうとしていた。ほとんどゾンビのような動きで留美の方に手を伸ばして来る。
「ひっ――」
 息を呑む留美の前で、無理に身体を動かそうとしたのが祟ったのか、吐瀉物をぶちまけた。床を汚しながら広がる吐瀉物――だが、それでもその女性は止まらなかった。
 あまりの様子に硬直する留美に手をかけようとする女性――その形相も凄まじいものになっていた。
「――っ、いやぁああ!!」
 迫ってくる女性を、留美は本能的な反応で思い切り突き飛ばす。
 すでに限界が近かったのだろう。突き飛ばされた彼女は、あっさりと後ろに向けて倒れ、頭部を地面で強打した。それで死ぬことこそなかったが、彼女の意識が寸断される。
 身体の限界を越えて命令を実行することが出来ないように、意識を失ってしまえば命令を実行することは出来ない。留美はいまの状態の彼女に対し、もっとも効果的なことを行っていた。
「はぁ、はぁ……っ」
 同様と緊張と恐怖。ひとまず脅威から逃れることが出来た安堵感から、留美はその場に座り込む。身体から力が抜けてしまっていた。
 留美は荒い呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着ける。そして、白目を剥いて気絶している女性を見詰めた。
(これは――なんとしても、元に戻してあげないと……!)
 人を操ってこんなことをすることなど、許されていいはずがない。
 留美はこんなことをその女性にさせる男に殺意さえ覚えていた。
 その留美の指が、床に落ちていた『何か』に触れる。
「…………? これは……メモ帳?」
 普段留美が使っているメモ帳とは違うものだった。どうやら、相手の女性が落とした物であると気付く。

 彼女は何気なく、そのメモ帳を手に取る。




 家具と化した定員のところまで戻ってきた久人は、急いでその店員に尋ねる。
「逃げた女の名前を教えろ!」
 思わず強い声が出てしまった久人は、一端深呼吸をして気持ちを落ち着ける。
(焦るな。予想外のことがあっただけだ。力が消えていないのならいくらでもやりようはある――)
 そう考える久人は、いまだに質問に対する返答がないことに気付く。
「おい、さっさと――」
 そこまで言って久人は息を呑む。『椅子』は何も答えない。考えてみればそう定めたのは久人自信だった。
(そうか! しまった!)
 久人は力を振るう際、『人に言うことを聞かせる』といった基本的なこと以外は夏帆子の持つメモ帳に書き込むことによって発動させていた。それは出した内容を忘れないためと予想外のところで力が発揮しないようにする――だけのつもりだった。
 だが、そのメモ帳を持つ夏帆子が傍を離れてしまった今、久人の力はかなり限定されたものになってしまう。
「まずい……! もしもあのメモ帳が失われたら――」
 力を失うのと同じだ。
 そう思った久人は、それ自体が失態だと気付いた。
(『思って』しまった……! このままだと、本当にメモ帳の喪失がそのまま力の喪失になりかねない!)
 全てを統べるほどの力を味わってしまった久人は今後普通の方法では満足できないだろう。力の喪失はそういった意味でも絶対避けなければならないことだった。
 久人はまず夏帆子の持つメモ帳を再び手にしなければならないと考える。
(逃げた方向を追いかけてみるか? いや、もはやあいつと夏帆子がどこにいったのか、何階に行ったかもわからない。相手に時間を与えるのはまずいか……)
 久人は頭を振り絞って対策を考える。
(夏帆子自身に戻って来させるのが一番速いな)
 デパートの放送で呼び掛けることを思い付いた久人は、近くにいた店員から放送する場所を聞き出し、そこへ急いだ。
 なんとかたどり着いた久人はここしばらくなかったことに息を切らしていた。
(……くそっ、いまさらこんな苦労するなんて……!)
 それでも休むより先にやるべきことは山のようにあった。久人は荒い呼吸を整え、マイクに向けて指示を出す。
「夏帆子、いますぐ戻ってこい。メモ帳を忘れるなよ。それからデパートにいる者、全員に告げる。出入り口付近に移動してそこから動くな。物理的に入り口を塞げ。出ようとする奴がいれば殴ってでも止めろ。あと入り口にやった四人。俺と合流しろ。それから指示を出す」
 久人は思い付いた指示を次々告げていく。デパート内を無人にしたのは逃げる相手を追い詰めやすくするためだ。雑多に人々がいる中では、そこに紛れてしまう可能性が高い。
 人の気配をなくすことで相手をいぶり出す作戦だ。
「……夏帆子が戻ってきたらまず物理的に逃げられないようにデパートの構造自体を変えないとな」
 正式な出入り口は塞いだとはいえ、その気になれば二階から飛び降りるなりなんなりして逃げられる可能性があった。そういったことが出来ないように窓も何も存在しない状態にする必要がある。
「……とはいえ、窒息とかには気を付けねぇとな。そんなんで死ぬわけにはいかないし」
 そう呟きながら久人が動きを待っていると、出入り口にやった四人が久人の元に戻ってきた。
「ご苦労。お前ら、逃げた女はわかるな?」
 こくりと頷く四人。久人は直接目視さえしていれば相手の認識に問題が無いことを確信する。
「よし……なら……っと。夏帆子の奴が戻って来てないな?」
 余裕を取り戻しつつあった久人は、その事実に気付いて少し焦る。
「……デパートのどこにいようと、もうやって来てもいいはずだ……ということは……まさか、やられた、のか?」
 冷や汗が久人の頬を滑り落ちる。もしもそうなら非常にまずい状況だ。
 すぐに四人に向けて指示を出す。
「それぞれデパートの中を捜索しろ! 夏帆子を見つけたら俺に場所を伝えに来い!」
 久人の命令に従い、奴隷四人が一斉に走り出す。
 ドツボに嵌まっているような感覚を久人は覚えていた。




『思い通りになる世界』 ~家具売り場~ その4 に続く



Comment

No.461 / [#] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2011-12/20 00:37 (Tue)

No.462 / 十里一元 [#-]

遅れてしまいましたが、急転直下ですね。
こういう相手こそ、永久機関化に相応しいと思います。
そのまま、デパートのオブジェにして人々に親しまれるとか。

2011-12/25 11:09 (Sun)

No.463 / 十里一元 [#-]

追加です。
最初の加工過程が面白く、工場化出来ればいいのにと思ってしまいました。
その場合、本作よりは家畜人ヤ○ーみたいになってしまうのでダウトですが。
人が人外を、人外が人を家具・家畜化する話は、一つの世界が出来るので好きです。

本シリーズは、それらとはまた違った世界像と世界の創造者を産んでくれているので面白い。
今後とも期待させて下さい。

留美の様なイレギュラーから見れば地獄絵図なのが、加工する側とされる側からすればただの日常。
そんなギャップがいい。

2011-12/25 17:31 (Sun)

No.464 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

十里一元さん、コメントありがとうございます。
毎度元気を頂いております。

> 遅れてしまいましたが~
一応、この話は現段階で最後の展開まで考えていますので、書けさえすればすぐお届けできると思います。
今年中には上げたいと思っていますので、もうしばらくおまちください。

> 最初の加工過程が面白く~
工場化は……久人がやろうとさえ思えば出来ると思います。
既存の作品と被ったりするのは避けたいですね。
でも、そういう作品を参考に書いてみたいような気もしますし……難しい話です。

> 本シリーズは~
ご期待頂けるように尽力します。
頑張ります。

> 留美の様な~
そういうギャップは私も好きなので、これからもガンガン書いていきたいと思います。

それでは!
またよろしければお越しくださいませ!

2011-12/25 23:22 (Sun)

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