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『思い通りになる世界』 ~家具売り場~ その2

『思い通りになる世界』シリーズの第十四弾の続きです。
(ジャンル:MC・形状変化・家具化)

以前の話はこちら→ その1

では、続きからどうぞ。

『思い通りになる世界』 ~家具売り場~ その2



 何が起きているのかわからなかった。

 その光景を目にした時、木原留美は目の前で展開していた『その光景』が悪い夢であることを願っていた。
(夢……よ。こんなの。絶対夢)
 というよりも、彼女はそれが『夢でなければならない』という風に思っていた。何度も心中で同じ言葉を繰り返すほどに。
(そうよ、こんなの……悪い夢よ。夢以外のなんだっていうの)
 もう何度目かもわからないことを彼女は思う。
 その食い入るように見つめる視線の先では、見知らぬ男が見知った女性を好き勝手に蹂躙していた。この場合の『蹂躙』とは暴力的な意味でも性的な意味でもない。
 物理的に、あるいは物質的に。女性は男によって蹂躙されていた。
 男がその身体に触れて力を込める度、その女性――佐伊南さこはその身体を異常なほどに引き延ばされ、あるいは捻じ曲げられ、人の形を失っていく。腕が足よりも長くなっていたり、胸が異常なほど大きくされていたり、股間が異様に変形させられていたり、と――まともな神経の持ち主なら吐き気を催すほどの改変が行われていた。
 留美も例外ではなく、口を手で押さえ、思わずあがりそうになる悲鳴を堪えていた。出来の悪いホラー映画のCGでも見せられているような気分だった。人間の身体が紙粘土のように変形させられ、『椅子』のような形に整えられていくなど、現実ではありえない光景だ。
(佐伊南、さん……)
 留美は変えられている佐伊南を心の中で呼ぶ。
 彼女にとって佐伊南という女性は、職場の先輩であり、何度も飲みに連れて行ってもらったこともある間柄だった。人懐っこい性格をしていて、新しい職場で不安になっていた留美に声をかけてくれた最初の人でもある。
 噂話が好きで、デパート内の色恋沙汰や突如辞めた店員の事情も把握していて、しかし言いふらされたくないことは軽々しく人には言わず、誰かが悩んでいる時にはさりげない気づかいをし、人気者というには少し違うが誰もが最初に思い浮かべる相談役として職場になくてはならない人物だった。
 彼女は旅行好きで将来は観光に関する職業に就いてみたい、と言っていて働く傍ら様々な資格を取る勉強を怠らない人だ。
 不況の時代、どうしても暗くなりがちな中でも、明るく陽気で、留美は何度彼女という存在に助けられたかわからない。照れくさくて面と向かって言ったことはないが、留美にとって佐伊南は『こうありたい』と思う目標の一人だった。

 その目標は――いま、『椅子』としか言えないような姿に、形に変えられ、男に座られている。

 いつもの快活とした声も、陽気な表情もそこにはなく、ただ男に弄ばれるままにされている。
 夢だと頭では考えていても、このような悪夢を見るような覚えはなく、やけにはっきりとした意識は留美の見ている光景が現実のものだと告げているようだった。
(……なんなの?)
 男は佐伊南であった『モノ』に腰かけ、楽しげに身体を揺らしている。『椅子』の背もたれに身体を預ける姿だけを見れば、普段家具を買いに来て椅子の座り心地を確かめている客と何ら変わりない。
 しかし留美にはその男が化け物よりも気持ち悪い、得体の知れない存在にしか見えなかった。
 どういう方法でかはわからないにしても、その男が何らかの方法で佐伊南を『そう』してしまったのは留美にもわかる。
 危険な存在だということは、嫌でも理解出来た。
(逃げないと――)
 逃げてどうなると思ったわけではない。とにかく、その場を離れたかった。
 男は『椅子』から立ち上がって、何かを考えている。まだ留美のことには気付いていない。
 留美はその場から離れるべく、ゆっくりと後退し始めた。音を立てないように慎重に動く。
 相手から目は放せなかった。得体が知れなさ過ぎて、目を放すのが怖かったのだ。しかしそれは、裏目に出ることになる。
 怖れから来るその強い視線に、男が気付いてしまったのだ。留美の方を振り向いて、視線と視線が交錯する。
 極度の緊張で留美の心臓が収縮し、動きが完全に止まる。
 男は何気ない調子で留美に向かって口を開いた。
「よし! そこのお前、こっちに来い!」
 思考までもが停止していた留美は、その言葉を理解するのに一瞬の間を有した。
 一瞬の空白の後、彼女の脳裏に過ぎったのは変えられてしまった佐伊南の姿で、それと同じ姿に自分がされてしまう光景だった。
 悪寒というには明確すぎる恐怖に留美は駆られる。
「ひッ――」
 喉の奥から絞り出した声が漏れる。
 留美はとにかく全力でその場から駆け出した。何かを考えている余裕など彼女にはない。とにかくその場を離れるために、全力を振り絞って走る。

 それが――絶望的な鬼ごっこの始まりだった。
 



 声をかけた店員が逃げ出した時、久人はそのことに驚きを隠せなかった。
 『思い通りになる』力を持つ彼にしてみれば『思い通りにならない』ことがあってはならないのだから仕方ないだろう。
「なっ――ま、待て!」
 逃げる店員に対して久人は咄嗟にそう叫んだが、店員は止まらない。
 力を得てからここまで、絶対の命令として働いて来た久人の言葉は虚しくフロアに響いただけだった。
 間違いなどではなく、確かに命令が利かないことに久人は驚く。
(なんでだ!? どうしていきなり命令が利かなくなってるんだ!?)
 久人は『思い通りになる』力を得てそれほど長い時間を過ごしているわけではない。だが、ここに至るまでの道のりで、散々世界を『思い通り』に歪めて来たために、彼は『思い通りになる』ことに慣れてしまっていた。
 そのため、突然訪れた『思い通りにならない』事態に軽く混乱してしまっていた。
「クソッ――夏帆子! 逃げたあいつを捕まえろ!」
 咄嗟に彼が夏帆子に命じたのは、連れ回していた奴隷の中でも、夏帆子に呼び掛けることが最も多いからだ。そもそも他の奴隷はストックとして用意しているだけのため、名前すら知らない。だから、真っ先に夏帆子の名前が出てしまったのはある意味仕方のないことだった。
「はい」
 夏帆子は久人の命令に対し、即座に応じて走りだす。
 久人はその夏帆子の迷いのない動きから自分から『思い通りになる』力が失われたわけではないことを理解する。
 さらに、力が消失していないことを確かにするため、久人はたまたま周囲を歩いていた女性に声をかけた。
「おい、そこの!」
 声をかけられた女性が足を止め、久人を見る。
「なんですか?」
 その表情に乱暴に呼びとめられたことに対する不満や苛立ちの感情はない。久人は念のため普通ならば絶対に許容できないことを命令してみる。
「その場で逆立ちして股を開け!」
 普通なら、拒否するだろう命令。
「わかりました」
 それを通りすがりの女性は受け入れ、即座に行動に移した。久人の命じた通り、その場で逆立ちをして、大きく足を開く。彼女はスカートを着用していたため、ショーツが丸見えになってしまったが、それを恥ずかしがる様子はなく、ただ『逆立ちして股を開け』という久人の命令を忠実に実行している風だった。しかし久人が命じるだけでは身体能力を無視して命令が実行されるわけではないらしく、久人が「もういい」という前にバランスを崩し、床に背中から倒れてしまった。苦しげに咳き込む女性。
 確かめたいことを確かめられたため、久人はその女性のことは無視し、逃げた店員について思考を巡らせる。
(俺の力が消失した訳じゃない――となると、なんであの店員には利かなかったんだ?)
 久人は必死になって考える。
(命令が届いていなかった? あるいは、別の内容として認識された? いや……あれだけはっきりと大声で言ったんだ。その可能性はないか)
 首を振って自分で考えた内容を否定する。
(同じような力の持ち主だとか? ……いや、それなら向こうから俺に関わってくるだろう。偶然俺を見つけたにしても、あそこまで怯えた顔で逃げるのはおかしい……)
 店員が逃げる前に見せた表情は明らかに目の前で起きていることが理解できていない顔だった。同じような超常的な力を持っているのだとすれば、そのような顔をすることはない。
 そこまで考えた久人は、彼女を見た時の違和感の正体に気付く。
(そうか……あいつはこの光景を『異常』なものだと認識してたのか)
 そう言った表情を久人はここまでの道のりで見ていなかった。そのため、その表情を浮かべた彼女に違和感を覚えたのだ。
 一つ疑問は解消されたが、それは現在重要なことではない。
(……理由はわからないが、とにかくあの店員には俺の力が利かないことは確かだ)
 久人はそう考えることにした。いまの段階でなぜ自身の力が及ばないのかということを考えても答えは恐らく出ない。
 ならば、『力が利かない』という事実を認めて、とにかく行動することが必要だった。
「力が利かない、とすると……このデパートから外に出られるとまずいな」
 デパートの出入りは禁止しているが、それは力による強制のため、力が利かない者はそれを素通り出来る。
 久人はストックとして用意しておいた女性達を見る。残りは六人。
「……手元に二人は残しておきたいな。よし、左の端から四人。お前らでデパートの出入り口を閉鎖しろ。あの女が通ろうとしたら手段は選ばなくていいから絶対に止めろ。そして捕まえて逃がすな。わかったな?」
 命じられた四人は、はっきりと頷く。久人はその反応に満足しながら四人を送り出した。
 四人は全速力で階下へと向かう。
 それを見送った久人は、少し余裕を取り戻していた。
「さて……あとは店員を捕まえるための人手を増やすか。所詮は女一人。捕まえるのなんて簡単だ」
 デパート内にいる人間はストックしていた女性達だけではない。客として訪れている者が何人もいる。それらに命じて人海戦術を展開すれば、逃げようと潜もうといずれは捕まえることが出来る。
 将棋で例えるなら、相手は自分と言う王将一つで、久人側はいくらでも手駒を増やせるようなものだ。その条件で負けることなどあり得ない。
「ま、たまにはこういう刺激もあると退屈しなくて済みそうだしな。気楽に狩りと洒落込むか。……いつかこういう狩りが出来る狩り場みたいなのを作ってみるかな」
 悠然と歩きだした久人は、残った二人に対して指示を出す。
「お前達。俺の背後を守れ。逃げ出したあの店員に限らず、俺の背後に忍び寄ってきた奴は遠慮なく殴っていいぞ」
 まずは自身の安全を確保する。逃げ出したことからまずないことだとは思っていたが、力が利かないあの店員はもしかすると久人を殺しにかかってくるかもしれない。
 こんなところで死にたくない久人は二人の奴隷に身を守らせることで当面の安全を確保したのだ。
「さあて、と……いい手駒は……いるかな?」
 久人はフロアを見渡して、手駒に使えそうな人間がいないかどうかチェックする。相手を取り抑えなければならないのだから子供は使えないし、お年寄りも論外だ。若くて、出来れば容姿も整っている者が好ましい。
(ふむ……あんまり人がいねえなぁ。出入り禁止しちまってるから増えないし、下の階で変えて来た物の影響を受けたら人じゃない物に変わっちまうこともあるしな……このデパートもそろそろ潮時かもしれねえな)
 そんなことを考えつつ、久人が歩いていると、丁度目の前から綺麗な若い女性が歩いて来た。いかにもセレブのような格好をしている。本来一般市民である久人なら思わず恐縮してしまうような風格を纏っていた。しかし、今の久人にはその女性はただの『セレブの女』としか思えない。にやり、という擬音が生じそうな笑みを浮かべてそのセレブに近づいていく。
「お前。ちょっと止まれ」
「? なにかしら?」
 不躾な言葉にもセレブの女性は特に不快感を露わにすることはない。久人はその対応こそがしかるべき態度だと感じていた。
 久人は立ち止らせたセレブの女性の容姿をまじまじと観察する。その女性はいかにも巨乳という外見をしていて、実際その胸の大きさは久人が現在連れている二人の奴隷よりも遥かに大きい。豊かな財力のたまものかもしれない。久人は断りを入れることもなく、おもむろにその胸を掴んで感触を確かめる。
「んっ……」
 突然見ず知らずの人物に胸を揉まれたセレブの女性だが、特に不平不満を口にすることはなく、ただ久人の行動を受け入れる。
(ふぅん……やっぱいいもの食ってるとこういう胸になるのかねえ)
 服の上からでもわかるほどに柔らかく、その張りも極上のものだと感じていた久人はその胸の感触を暫し楽しむ。
「あとでこの胸を使って抜くかな…………と。その前に、俺に協力しろ」
 セレブの女性の胸は後の楽しみに置いておくことにして、まずは逃げ出した店員の対処を行うことにする。
「ええ。わかったわ」
 あっさり頷いた女性の態度に、久人は満足する。
「よしよし……いいか。まずは逃げた女を捕まえる。俺の力が利かない理由を知りたいしな。お前はそいつを見つけ次第、飛びかかってでも止めろ。わかったな?」
 この調子で手駒を増やしていけば、逃げた女性一人、簡単に捕まえることが出来るだろう――そう久人は考える。
 だが。
 命じられたセレブの女性が、予想外のことを口にする。

「逃げた女って誰?」

 久人は余裕の笑みを凍りつかせる。
「……いま、夏帆子の奴が追いかけている奴だ」
「夏帆子はわかるけど、それが追いかけている人はわからないわ」
 再び久人の心中で疑問が渦巻く。
(夏帆子はわかるのに逃げた店員のことはわからない、だと? どういうことだ?)
 『逃げたあいつを捕まえろ』と命じた夏帆子は躊躇いなく追いかけた。
 夏帆子とセレブの女性の違いは何なのか。
(直接あの店員を見ているか見ていないか、か? だとすると……俺の考えていた方法は使えないということに……)
 探す相手がわからなければ、いくら探す人手を増やしても無駄だ。
(名前がわかれば探せるか?)
 久人はそう考え、まずは店員の名前を知らなければならないと考えた。
(同じ店員なら、名前くらいは知ってるだろう……さっき『椅子』にした奴に……!)
 僅かに早くなった鼓動を自覚しつつ、久人は早足で『椅子』に変えた店員のところに向かう。




『思い通りになる世界』 ~家具売り場~ その3 に続く



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