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『雑貨店へようこそ』 ~牛~ その10

これは前書いた雑貨店シリーズ『牛』の続きです。
これまでの話はこちら→         

注意事項!
※今回は『牛』の屠殺の話です。死に至るグロ描写注意。
※グロ描写が苦手な方は、この章を飛ばしてエピローグを読んでください。
※当然ですが、屠殺・解体の方法は実際の牛とは異なります。


では、続きからどうぞ。

『雑貨店へようこそ』 ~牛~ その10



 『牛』になった子達全員が乳搾りを経験し、絞った乳の試飲も済ませた後――私達は少し軽くなった胸を揺らしながら、ある施設に向かっていました。
 いま向かっているその場所は、今回の牧場見学のメインイベントともいえるところで、私達人間が生きて行く上で目を逸らしがちな『屠殺』と言う行為をするところです。本来それをする施設は牧場内にはないらしいのですが、ここの牧場はそれが敷地内に存在しているのです。だからこそ、この場所が見学先として選ばれたのですが。
 その建物はまるで『箱』のようでした。飾り気がなく、窓もなく、無機質な単なる四角い箱と言った様子で敷地の一角を占めていました。その建築物から感じる圧迫感に思わず尻込みしてしまいます。のっぺりとした白塗りの壁が、得体の知れない不気味な雰囲気を助長させていました。
 『牛』になっている子だけでなく、いつも通りの姿の男子達も尻込みしているところを見ると、私がいま感じている不安は『牛』のみが感じる類のものではないようです。
 それ以上先に進むことを躊躇っていると、牧場主の方が私のお尻を軽く叩きました。
「止まってないで速く進みなさい。――君はこっちに。他の子達は彼女に付いて行ってください」
 建物に入る前、何故か私一人だけ牧場主の方に着いて行くことになりました。それがなぜなのか、何も説明もないまま私は牧場主の方に牽かれて建物の外周を回ります。疑問はありましたが、現在私は『牛』の身です。問うことはできません。
 建物の別の側面に回り込むと、トラックがそのまま入れそうな大きの扉の周囲で、たくさんの作業員が忙しく動きまわっているのが見えてきました。その人たちは、牧場主の方が近付いても反応はなく、牧場主の方も特に声をかけたりせずにその合間を縫って建物の中に入ります。すれ違うときにその作業員達の様子を窺ったのですが、帽子にマスク、さらに着ているツナギまで全員同じ物だったため、違いがほとんど見つかりませんでした。名札らしきものを胸に付けていましたが、『仕分け係』や『梱包係』といった役職名しか書いていませんでした。
 他の人との区別がつかない無個性さも相成って、まるで『その仕事をするためだけにいる』ような、人の形をした機械のような印象を作業員から受けました。作業員達が黙々と作業をする中を通り過ぎると、少し雰囲気が牛舎のそれに似た空間に辿り着きました。一頭の『牛』が柱に繋がれています。その『牛』はどこか消沈した様子で、俯いていました。
 牧場主の方は私をその場所に入れる前に、首輪のような何かを私の首に巻き付けました。首輪ほど重厚ではありませんが、しっかり私の体に張り付いています。それがなんなのかの説明もなく、私は最初からいた『牛』の隣の、空いていたスペースに入れられ、近くの柱の金具にリードが繋がれました。ここで待てということなのでしょう。牧場主の方はすぐにどこかへ行ってしまいました。
 暇になった私は、隣にいる『牛』に声をかけてみることにしました。
『あの……すいません』
 呼びかけに反応して、俯いていた『牛』が顔をあげて私の方を向きます。その顔を見て、私は驚きました。
『あれ? さっきのお姉さん……?』
『え……? あ、見学の……』
 その『牛』は、放牧地で私に声をかけてくれた『牛』のお姉さんでした。思えば、このお姉さんのアドバイスのおかげで、私は放牧地で乳房に怪我をせずに済んだのです。
 柱にリードが繋がれていて深くは下げられませんでしたが、出来る限り頭を下げてお姉さんにお礼を言います。
『先ほどはアドバイスをありがとうございました』
『え、ええ……役に立ったのなら、いいのだけど……あなた、なんでここに?』
 お姉さん『牛』は、信じられない物を見た、というように目を見開いて私を見ていました。
 なぜここに、と言われても、私自身説明を受けていないので答えようがありません。
『なんででしょう……牧場主の方に私だけここに連れてこられたのですけど。説明は受けていませんわ』
『そう、なの……』
 お姉さんはそう呟いたあと、意を決した表情で私のことを見つめました。
『落ち着いて聞いて。ここが終わりの場所であることはわかってる?』
 終わり、という表現にドキリとしました。
『え、ええ……』
『ここに来る『牛』はね……終わるためにここに連れて来られているの。長く生きたり、何らかの理由で乳の出が悪くなったりした『牛』がね。ここの『牛』達は乳が出なくなっても、もう一つ道があるから』
 背筋が凍るようでした。その言葉は――私がここにいるということは――ある可能性を示唆しています。
『で、でも、まさか……』
 私は牧場見学に来ている身です。まさか、そんなことはないはずです。
 何か言おうと再度口を開きかけたとき――扉が開く重厚な音が私の言葉を掻き消しました。思わず身を竦めて、私はその音がした方向を見ます。先ほどまでしまっていた扉が開いていて、作業員らしき人達が入って来ました。相変わらず無個性で、マスクのために表情は窺えません。彼らの履いているゴム長靴の立てる音が、奇妙に耳に響きました。
 作業員はお姉さんと私が繋がれていたリードを手にし、部屋から連れ出そうとします。
 その作業員の胸元の名札には『屠殺係』という文字が刻まれていました。その文字を確認し、意味を理解した時、私は心臓が締め付けられるような恐怖を感じました。
『ちょっと、待ってください! 私は、見学で来たのであって――』
 言葉が通じないのはわかっていましたが、私は思わずそう叫んでいました。リードが牽かれて生じる激痛を堪え、その場から先に進まないようにしようとします。お姉さんはすでに諦めているのか、一度だけ悲しそうな目でこちらを振り返っただけで、大人しく作業員に従って部屋から連れ出されて行きました。私は言葉が通じなくてもなんとか相手に自分が屠殺されるべき対象ではないことを示そうと踏ん張ります。
『お願いです、私、何かの間違いで――』
 そうしていたら、突然お尻に激痛が走りました。
『ひゃうっ!?』
 何が起きたのかと思って背後を振り返ると、鉄製の棒のようなものを持った作業員の姿がありました。それで叩かれたのではありません。作業員がそれを私のお尻に軽く触れさせると、パチッ、という音が響き、再度激痛が走ります。
『ひっ!』
 どうやらその棒には電気が流れているようです。電気ショックに追い立てられ、私は前に進むしかなくなりました。
 作業員に追い立てられ、鉄の扉を潜った先は広い部屋でした。『牛』が十頭は同時に入れるでしょう。その部屋の高い天井から垂れ下がっている鎖が私をさらに不安にさせます。無骨なそれらの鎖はどうやらレールによって動かせるようになっています。レールの先をたどってみると、入って来たのとは別の扉の先に続いていました。
『こ、ここは……?』
 私が落ち着かない気持ちで周囲を見渡していると、突然お姉さんの悲鳴が上がりました。驚いてそちらに視線を向けると、部屋の中央で立ち止まっていたお姉さん『牛』が地面に倒れていました。その手足が小刻みに痙攣していて、何か強いショックを与えられたようです。お姉さんの前には、作業員の一人が拳銃のような物を持って立っています。最初、その拳銃でお姉さんが撃たれたのかと思いましたが、それにしては出血がありません。
 慌てて私はお姉さんに近づきました。顔を覗き込むと、お姉さんの額から血が流れていました。白目を剥き、泡を吐いているお姉さんは、苦悶の表情を浮かべて、声にならないうめき声を零していました。
『お姉さん!? どうしたんですか!?』
 そう呼び掛けますがお姉さんから返事はありませんでした。作業員が私をお姉さんから引き離します。
 お姉さんの脚を作業員が掴み、天井から下がっていた鎖を巻き付けます。輪を作って外れなくした後に、作業員の方が離れます。そして作業員は壁に設置されていた機械を動かしました。するとお姉さんの足に繋がっていた鎖が引き上げられ、鎖に引かれたお姉さんは空中に吊りあげられてしまいました。レールに沿ってカラカラと移動されられ、レールが続く先にある部屋の前で止まります。吊られた状態でも時折痙攣しているのが妙に生々しく感じられました。鎖は片足にしか巻き付けられていないので、もう片方の足は重力に従わざるを得ません。結果的に大股開きで――人間には堪えられない恥ずかしい格好で――吊り下げられることになります。
 そして、私の番です。作業員が例の銃を片手に私に近づいてきます。
『待って! 待ってください! 私は、ちがうんです!』
 私は自分が牧場見学でやってきた学生であることを必死に伝えようとしましたが、作業員には理解できないようでした。銃口が私に向けられそうになった時――不意に作業員が手を止めて私の首を触ります。牧場主の方が巻いてくださった首輪を確認しているようです。もしかして助かった――と思ったのも束の間。いきなり首筋に激痛が走り、私は立っていられなくなりました。自身の体が地面に倒れ込むのが遠くに感じます。意識に霞がかかったようになって、体が全く動かせませんでした。動かそうと力を込めると、筋肉が勝手に痙攣して、全く思い通りにならないのです。
 足首を触られる感覚はあったのですがどうしようもありません。作業員の手が離れてすぐ、足が強い力で引っ張られ、気付けば世界は逆さまにひっくり返っていました。少し軽くなったとはいえ大きな乳房が視界の下半分に写っています。呼吸を阻害される程ではありませんが、苦しい体勢と状態であることに変わりはありません。全体重がかかる足首は痛みを訴えています。膝や足の付け根といった関節にも負担はかかっていました。
『あ、う………あ……たす、け……』
 舌が回らず、うめき声しか出せませんでした。
 レールに沿って移動する際、揺れによって足にかかる負荷が増し、抜けてしまうかと思いました。動かされなくても逆さまに吊るされているわけですから長くは持たないでしょう。私よりも前にこの状態にされたお姉さんはすっかり頭の方に血が下がってきてしまっているのか、真っ赤を通り越して腐り落ちるほどに熟したトマトのような顔色になっています。
 開かれた扉をそのままの体勢で潜り抜け、お姉さんと私は次の部屋へと運ばれます。
 そこは無機質な部屋でした。コンクリートが剥き出しになった床には、排水口らしき穴がいくつも空いています。部屋の一方向は観覧席のような構造になっており、そこから学校の皆が逆さづりにされている私を見て驚いていました。助けを求めて何か行動しようとしましたが、舌は回らず、手も動かず、どうしようもありませんでした。
「それではこれから作業を始めます」
 牧場主の方がそう合図を出すと、作業員が一斉に動き出しました。ナイフを持った作業員が、吊るされているお姉さん『牛』に近づいていきます。
『――ッ!』
 首筋を晒させ、太いナイフでためらいなくそこを切り裂きます。肉がぱっくりと割れ、尋常ではない量の血が噴出しました。逆さまに吊られていたために血が集まっていたのでしょう。あとからあとから血が噴き出しています。しばらくするとさすがに噴くほどの勢いは無くなりましたが、血が流れ続けていることに違いはありません。よく見ると血が流れる勢いは一定ではなく、速くなったり遅くなったりしています。それは恐らく脈拍による変化なのでしょう。この時点ですでにお姉さんは致命傷を受けていました。お姉さんの体が陸に打ち上げられた魚のように跳ねています。それが激痛による物なのか――それとも、別に理由があるのかは私にはわかりませんでした。
「これは血抜きという作業です。血が肉の中に残っていると肉は生臭くなってしまいますから、生きている間になるべく心臓の拍動を利用して血を抜かなければなりません。殺してからでは中々抜けなくなってしまうので、生きているうちに血を抜く必要があるのです」
 牧場主の方が見学している皆に向かって説明している間も、喉を切られたお姉さんは苦しげにもがいていました。確かに血を抜くことは必要かもしれません。けど、その苦しげな表情を見ていると、早く楽にしてあげてほしいと思ってしまいます。そんなお姉さんの様子に構わず、さらに作業は進みます。作業員が紐のようなもので大きな乳房の根本を縛り上げていました。根元を絞られた乳房は風船のような形になり、お姉さんの体の痙攣に合わせて大きく揺れ動いていました。作業員はナイフで削ぎ落とすように、乳房の根元を縛ったまま体から分離してしまいます。
 切り取られたその部位は牧場主の方に手渡されました。牧場主の方はそれを掌の上で転がしつつ、皆に見せながら説明をしています。
「このように根本を縛り上げてから分離することで、乳を乳房の中に残しておくことが出来ます。その性質上、長期間の保存は利きませんが、乳房は『牛』の部位のなかでもっとも美味で、一頭から二つしかとれないため高値で取引されます。このまま焼くだけで調理が出来て簡単ですしね。『牛』の乳は焼き肉のタレとして使っても、まろやかで肉の味が美味しく際立つようになるのです」
 そうして説明が続いているうちに、吊られたお姉さんは動かなくなっていました。出血が許容範囲を越えてしまったのでしょう。手足も力なくだらりと垂れ下がり、ただの肉の塊になっていました。生気のなくなった、虚ろな瞳がどこをともなく見ています。
 つい先程まで生きて、動いていた――私は会話まで交わしていた――『牛』がほんの数分で肉へと変わる。それは誰もが理解していることのはずだったのに、それをいざ目の当たりにすると、腹の底から不快感が込み上げて来ました。
『う、うう……うええっ!』
 その不快感は胃を突き刺すような痛みに代わり――気付けば私は胃の中にあったものを吐き出していました。逆さまの状態で吐いたために、吐瀉物は顔にかかり、それが鼻を塞いで思わず噎せ、胃酸の刺すような臭いが引き金となって咳き込んではさらに吐き、吐き出すものがなくなるまで吐いてしまいました。お姉さんの虚ろな目が脳裏に焼き付いています。
 気付けば観覧席の方で見ていた子達の中にも、気分を悪くしたのか口元を押さえている子がたくさんいました。実際に吐いている人はいないようです。逆さまにされている私とは違い、なんとか堪えられたのでしょう。

 死んだ『牛』に対してもさらに作業は続けられます――いえ、むしろ、そこからが本番でした。
 まずホースで水がかけられ、なるべく血が洗い落とされます。ある程度綺麗になったら、大きめの金だらいが運ばれてきて、吊るされているお姉さんの真下に設置されました。
 お姉さんの正面に立った作業員が、手にしていた分厚いナイフを振り上げ、『牛』のお腹に突き刺します。柔らかそうなお腹の皮はあっさりと破かれ、そこから作業員は下へとナイフを下げていきます。お姉さんの白いお腹には深く、広く切り込みが入り、その奥にピンク色の中身が見えます。その切り込みを左右に広げるのかと思えばそうではなく、作業員はお姉さんの両脇腹を掌で圧しました。すると内部からの圧力が高まり、切り込みから中身が『プルンッ』という擬音が付きそうな勢いで零れ出します。それらはまだ体と繋がっているのか、垂れ下がるだけで下に落ちようとはしませんでした。血抜きはされていましたが、細かな部分に血は残っていたのか、血がお姉さんの体の前面を汚します。垂れ下がった臓物はグロテスクで気味が悪いものでした。
 体の中に手を入れた作業員が、クリップのようなもので中身の何処かを挟んだようです。今度は小さなナイフに持ち換えた作業員はお姉さんの体の中に手を入れ、中身のどこかを切断したらしく、ぶら下がっていた内臓が金だらいの中に零れ落ちます。金だらいが撤去されてから、またお姉さんの体に水がかけられます。
 今度は大きな斧が持ち出されました。作業員が三人体制になります。
 『牛』の左右に別れた二人が『牛』の腕をそれぞれ取り、左右に引き延ばします。そして残った一人が、伸びきった腕の付け根――脇に向けてその分厚い斧を降り下ろします。鈍い音がして刃が『牛』の体に食い込みました。さらに二度三度と振り下ろすと、腕が切断されて体から離れてしまいました。もう片方の腕も同じ要領で体から分離されます。切断された腕は、肘、手首、指の関節のところで細かく切断されて、肉片へと変えられていきます。だんだん人型の『牛』の形を無くして行き、『食材』へと変化していきます。
 食材というものが作られる過程を目の当たりにすることは、衝撃的ではありましたが覚えておかなければならないものであると感じました
 さらに作業員は解体を続けます。先程開けた切り込みから手を入れ、中身を次々取り出していきます。最初に引き出されたのは子宮でしょうか。先程で大部分の内臓は取りだされていましたが、一部残留していた内臓を次々取り出しているようです。取り出されたものはそれぞれ別にして分けられていきます。やがて大体のものが取り出されると、さらに切り込みを広げていました。喉元までナイフは切り込みを広げ、作業員は肋骨を一本ずつ外側に向けてへし折って傷口を広げます。そこからさらに中身を取り出し始めます。いままで写真でしか見たことのない肺や心臓を実際に見ることが出来ました。すでに死んでから時間は経っているはずですが、取り出された掌大の心臓はまだ動いているようにも見えます。
 長机が用意され、その上に色々な物を失ったお姉さんが下ろされました。後はほとんど流れ作業です。
 斧によって首が落とされ、腰の辺りから体が真っ二つにされ、両足も手と同じ要領でばらされました。胴体の部分は皮と肉と骨に分割されます。頭部の方はほとんど手を加えられませんでしたが、スプーンによって眼球を抉って取りだし、ナイフで舌を根本から切断してしまっていました。
 私は一頭の『牛』が単なる食材になる過程を目の当たりにして、ショックを受けていました。そして、次は自分の番だ――そう思うと恐怖がこみ上げてくるのが感じられます。何とか逃げられないかと儚い抵抗を試みましたが、当然ながら逆さまの状態ではどうすることも出来ません。
「これで『牛』一頭の屠殺および解体作業は終わりです」
 私に『牛』としての草の食べ方を教えてくれたお姉さんは、ただの食材へと成り果て、どこかに運ばれていってしまいました。恐らくこれから先ほど通って来たところで、さらに細かく仕分けされ、梱包されて出荷されるのでしょう。
 逆さまの状態が長く続いたこともあり、私の頭はぼんやりとしていました。それに従って次第に何もかもがどうでも良くなって、殺すなら早く殺してほしいとまで思うようになっていました。
 近づいてきた作業員が私を部屋の中央に引き出して、作業を開始します。作業員は私の首筋をさらけ出させ、そこにナイフを突き立てようとしました。しかし、私の首筋には牧場主の方が巻きつけた首輪のようなものがあります。その首輪の存在に気付いた作業員は、学校の皆に向かって話していた牧場主の方を呼びました。呼ばれた牧場主の方は話を中断し、私のところにやって来ます。
「やあ。どうでしたか? 誰よりも近くで、『牛』と同じように扱われ、屠殺を体感した感想は?」
 どうやら、この扱いも学習の内だったようです。私はもう十分であることを示そうと、何度も頷いて見せました。
 牧場主の方は朗らかに笑っています。
「本当なら、一人くらいは実際に食材にして、食べてもらえばより食の大切さがわかるかと思うんですがね……さすがに殺すのは『ルール』で誤魔化し切れないかもしれませんし。下手に騒がれるのも面倒ですし」
 よくわからないことを言いながら牧場主の方は私の体を掌で叩きます。ペチペチ、という軽く緊張感のない音がやけに大きく感じられました。
「御苦労さまでした。彼女を降ろしてあげてください」
 逆さまに吊るされ続けていた私は、牧場主の方がそう指示を出してくださったおかげで、ようやく地面に降ろしてもらえました。ずっと体重を支えていたがを降ろすことが出来て、私は少し安心しました。伸び切っていた筋や、鎖の触れていた部分に少し痛みを感じましたが、特に問題はなさそうです。
 これで牧場見学で予定されていたイベントは全て終了しました。




雑貨店へようこそ ~牛~ エピローグに続く



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