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死神輪舞8

死神輪舞7の続きです。

 前回の話はこちら→       

 では続きからどうぞ。


死神輪舞8




 リーダーによって処女を奪われた後も、凌辱は続いた。

「んっ……むぅ……」
 取り巻きの一人に、口にあれを無理やり入れられて、舐めるように言われた。
 いわゆるフェチラオ、という行為を強制されて、嫌悪感で泣きそうになる。
 相変わらずあそこからは注ぎ込まれた大量の精液が流れ出ている。その上、まだ入れてきて執拗に突かれ続けた。
 身体にも精液はかけられ、べとべとして気持ちが悪い。
 レイプされる心境というのは、人間としての尊厳を踏みにじられ、物のように扱われているのと同じだった。
 彼らは中身が何であれ関係がない。
 僕であろうと、シェルちゃんであろうと、とりあえず入れられて吐き出せればなんだって。
 それが悲しくて、悔しくて、腹立たしくて。
 シェルちゃんにも弄られている体の感覚は伝わっているらしく、少し前から泣きながら何かに耐えているような呻き声しかしなくなっていた。
 それから一時間――いや、もっとか。途中から時間間隔がわからなくなって、正確な時間はわからなかった――後、ようやく飽きたのか男たちが僕から離れた。
「そろそろ行くか。十分楽しんだしな」
 汚い裏路地の地面に転がされた僕は、体中が痛くて、気持ち悪くて、ようやくそれが終わるのだという想いしかなかった。
「始末しとかなくていいんすかね?」
「さすがに殺しはやばいだろ。ほっとけばいいって」
「じゃあな、楽しかったぜ」
 げらげらと品無く笑いながら、男たちが去っていく。
 静かになって暫くして、僕は身を起こした。
 その拍子に口の中に注ぎ込まれた精液がこぼれおちて、なぜか笑えてしまう。
 びりびりに破かれた衣服は当然修復不可能で、裸のまま、壁にもたれかかる。
 さんざんいたぶられたあそこが痛かったし、言いように揉まれ、摘ままれ、引っ張られた乳房も痛かった。
 頭はぼんやりとしていたし、なんかもう気力がなくなってしまっていた。
(……何にもならない死に方をして、死神と同化したと思ったら今度はレイプされて……ははっ)
 シェルちゃんも、僕なんかが同化しなければ、こんな目には合わずに済んだだろうに。
 頭の中のシェルちゃんの声はもうしなくなっていた。
 前じゃない、後ろの方に入れられた時にあげた悲鳴が途切れるようにして消えて、それっきりだった。
(なんのために僕は……)
 僕の存在は邪魔なのか。
 死にたくないと思った僕の願いは間違っていたのだろうか。
 ……確実に間違っていたんだろう。
 シェルちゃんに大鎌を突き付けられたとき、瀕死ではなくすでに僕は死んでいたのだ。
 それなのに『生きたい』と願うなんて、矛盾にもほどがある。
 これはその矛盾に対する罰なのかもしれない。
(……はは、はははははは。もう、いいや……)
 天国に行けるはずだから成仏してほしい、と言ってくれたシェルちゃんをこんな目に合わせたのは、僕自身だ。
 シェルちゃんに言われた時に、きちんと成仏しておけば……彼女をこんな目に合わせることはなかった。
(……この体から、出たい)
 せめて、これ以上の苦痛が訪れないうちに返してあげたい。たぶん俺が出ればシェルちゃんは霊体に戻れるはず。
 『生きたい』と思ったのと同じくらいの気持ちで、『この体をシェルちゃんに返してあげたい』と思った。

 だけど。

 シェルちゃんの体から、抜け出ることは出来なかった。
 僕と言う呪縛からシェルちゃんを解放してあげることさえできない。
 なんて、無様。
 喉の奥から笑い声があふれてくる。
 自分の情けなさ、馬鹿馬鹿しい生への執着、いまだにこの体にしがみ付き続ける無様さ――。
 全てが可笑しかった。
「……あははっ、ははははははっ、あははは、あははははははっ」
 小さな笑い声が裏路地に響く。
 その時。
 何か小さな黒い影が目の前に降り立った。
 笑うことをやめ、目を細める。
(……なんだ?)
 小さい影は、僕の方に恐る恐る、といった様子で近づいてきた。自分からは異様な匂いが発せられているだろうから、警戒しているのだろう。
 それは、一匹の黒猫。
「……きみ……は……」
 僕が助けようとして、結局助けられなかった猫じゃないか。よく耳を澄ませてみれば足音がしない。霊体なのだろう。
 いつのまにかいなくなっていたから、成仏したのかと思っていたけど……。
 お前にも、結局僕はなにも出来なかったな……。
 手を伸ばして触れようとすると、黒猫は一瞬身体を引いたけど、すぐに擦り寄ってきた。
 ぺろぺろ、と差し出した指先が舐められる。
 その舌使いはとても優しくて、強張っていた体中の力が抜けるような感じがした。
 人間よりも動物の方がよほど優しい。
 自分勝手な男たちにレイプされた後だと、一層そう思えた。
 気が抜けたからだろうか、急に視界が霞んでくる。
 意識が完全に途切れる瞬間――誰かが僕の前に立った気がした。




 気が付いたら、僕はどこかの部屋にいた。
 そこはかなり広い一室で、どことなく豪華なホテルを思わせる。
 僕はかなり広いベッドに寝かされているようだった。
 一瞬自分がどこにいるのかわからず、呆然とする。
(……夢でも見てるのか?)
 でも、体の感触は本物だ。夢ではないように思われる。
「……?」
「目が覚めましたか?」
 突然声をかけられて、驚いた。
 ずっといたんだろうか――気配を感じなかったけど――ベッドの脇に、マンガやアニメでくらいしか見たことがない、メイド服を身に付けた女の人が立っていた。
 綺麗な顔立ちをした人だった。
 その人は僕に向かって軽く頭をさげると、よくわからないことを言い出す。
「主にあなたが目覚めたことを伝えてまいります。少々お待ちください」
 僕が何か口にするより早く、その人は部屋から出て行ってしまう。
 何なんだろう、訳がわからなかった。
 どうやら自分はバスローブのようなものを身につけさせられているようで、裸ではなかった。
 ベッドの上で身体を起こす。
 その時、体にかけられていた布団の中で、何かが動く気配がした。
 脇腹辺りで蠢くその何かがなんなのかを確かめるために布団をのけてみる。
 例の黒猫が、丸くなった状態でそこにいた。
 恐る恐る触れてみると、柔らかい毛の肌触りが心地よい。
 なんとなく穏やかな気持ちになって、僕は猫の体を撫でる。
 そうしていて、ふと思った。
 この猫はあの時僕と一緒に死んだはずで、ここにいる猫は霊体のはずだ。
 それなら、生身の体になっている僕が触れられるのはおかしくないだろうか?
 こんなリアルな感触、気のせいではありえない。
 よくわからない事柄がまた増えて、僕は混乱しっぱなしだった。
「…………そうだっ」
(シェルちゃん! シェルちゃん!)
 彼女のことを思い出した僕は慌てて呼びかける。シェルちゃんの精神が不安だった。
 まさか消滅した……なんてことはないだろうけど。全く呼びかけに応答がないと最悪の可能性が頭をよぎり、不安になる。
 しつこく呼びかけ続ける。返答は、ない。
(まさか……本当に……?)
 僕がその可能性に青ざめた時、ガチャリ、とドアノブが回る音がした。
 その音につられてドアの方を見ると、さっきのメイドさんが戻ってきた。
 ぺこり、と僕に向けて一礼した彼女は、ドアを開いた状態で止める。そして脇に退いて、後ろにいた誰かを部屋の中に通した。
 一瞬、僕は状況をつかめなかった。
 さっきメイドさんは『主を呼んでくる』と、言った。だから、きっと厳つい顔をした男の人か、威厳のあるお爺さんを想像していたのだけど……。
 現れたのは、どうみてもいまの僕と……つまりシェルちゃんと同年代の、少女だった。
 しかも……かなり可愛い。浮世離れした美しさ、というのは彼女のような美しさを言うのかもしれないと思った。
 まだ顔つきには幼さが残るけど、間違いなく成人したら絶世の美女になるだろう。
 その美少女は、体を起こしていた僕を見ると、楽しげに笑った。
 その笑い方はなんだか彼女の印象とはちぐはぐで、違和感を覚える。
 何と言うべきか……そう、儚げな美貌にそぐわない、やけに自信満々で、男らしい笑みとでもいえるような……。
「目覚めたか。災難だったな」
 鈴が鳴っているかのような、綺麗な声だった。
 だったけど、だからこそ言葉の内容との食い違いが激しい。
 そして彼女は僕が撫でていた猫に目線を移動させる。
「そいつが見えて、触れるってことは……やはりお前は普通じゃないようだな。その猫が纏わりついてきたときは何かと思ったが……」
 どうやら、彼女はこの猫に誘導されて僕のところにやってきたらしい。そして、助けてくれた、と……?
 やはりこの猫は霊体であるらしい。彼女にも見えているようだけど……なら、彼女は何者なんだ?
 頭の中が疑問符でいっぱいになった、その時。
(……う)
 頭の中で、うめき声が聞こえた。
 シェルちゃんの声だ。彼女が消えていなかったことに心の底から安堵する。
(シェルちゃん! よかった、消えてなかったんだね!)
(……ん…………どう、なって……?)
(通りがかった親切な人に助けられたみたいなんだ。いま、その人と話を――)
 一瞬の空白。
(……っ!)
 頭の中で、シェルちゃんが息を呑む気配が伝わってきた。
(ど、どうしたの? シェルちゃん)
 まだレイプされたときのショックが残っているのか、と思ったけど、そうではなかった。
 シェルちゃんは、目の前にいる美少女を見て、驚いていたのだ。

(あ……アルミールアラミーナ……っ!!)

 そう呟いた。
 行方知らずになっていたという死神の名前を。
 シェルちゃんの友達だという死神の名前を。
 彼女と同じように――人間の魂に体を乗っ取られてしまったという、死神の名前を。
 驚愕に満ちた声で、呟いた。




~9へ続く~


Comment

No.37 / 名無しさん [#-]

レイプ脱出ならず...orz

あまりにも予想外の御方が出てきて泊まる場所は確保できそうですね
でも正体が気付かれてないってことはもしや・・・・

2008-08/29 12:51 (Fri)

No.39 / 光ノ影 [#-]

コメントありがとうございます。

もしや……かもしれません。
彼女に助けられたのは主人公にとって幸と出るか不幸と出るか……お楽しみに。

2008-08/29 23:41 (Fri)

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