FC2ブログ
  1. Top
  2. » スポンサー広告
  3. » 『雑貨店へようこそ』
  4. » 雑貨店 ~牛~
  5. » 『雑貨店へようこそ』 ~牛~ その7

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • ジャンル :

『雑貨店へようこそ』 ~牛~ その7

これは前書いた雑貨店シリーズ『牛』の続きです。
これまでの話はこちら→      

では、続きからどうぞ。

『雑貨店へようこそ』 ~牛~ その7




 学校から大型バスで出発して約三時間、バスはようやく目的地に着こうとしていました。都会から離れ、広い田舎の風景が広がり始めています。学校の行事とはいえ、このような田舎に来なければならなかったのは噴飯物ですが、仕方ありません。そういった学校の行事や規則に従うことも、社会勉強の内です。……そうですとも。そうでなければこのような場所に来るものですか。このような田舎に来ることになってしまったことを考えると、腹立たしく思えてきて、思わずバスの窓枠を指先でカツカツと叩いてしまいました。その音が思いがけず大きく響いたのか、二つ並んでいる座席のうち、通路側の席に座っているいちるが私の方を見ました。
「瑠美ちゃん? どうかした?」
 私の数少ない友達であるいちるは、軽く小首を傾げて私の方を見ています。私は横髪を後ろに軽く払いながら、いちるに応じました。
「なんでもありませんわ、いちる。少々憂鬱なだけです」
「えー、憂鬱なの? あたしは楽しみだけどなあ。牧場見学。牛さんとか羊さんとかわんちゃんとかいっぱいいるんでしょ?」
「……いちる。牛と羊まではともかく、犬はそこまでたくさんいるわけではないと思いますわよ。牧羊犬がいたとして、三匹か四匹……多くても十匹にはならないでしょう」
 常識的に考えて、犬が数十匹もいるはずがありません。そこまで大量に飼育するメリットがありませんから。
「そうなの!?」
 いまのいままで本気で犬もたくさんいると思っていたのでしょうか、いちるはその大きな目をまん丸に見開いて驚いている様子でした。
 そして私から視線を外し、前を向いたかと思うと、私の憂鬱さとは比べ物にならないほど、憂鬱そうな気配を発しながら、俯いてしまったのです。
「そっか…………わんちゃん、そんなに多くいるわけじゃないんだ…………」
 私は慌てました。そこまで落ち込むことなのかしら、とも思いましたが、これほど落ち込まれてしまうと、悪いことをしたかのような、罪悪感が芽生えてしまいます。
「え、えっと……いちる。牛や羊なら、たくさんいると思いますわ。それに、私の想像で言ったことですし……ひょっとしたら、犬もたくさんいるかもしれませんわ」
 我ながらあまり効果のないフォローだったような気がするのですが、いちるは勢いよく顔を上げました。
「そっか! そうだよね! 実際に行ってみないとわかんないよね! もしかしたら他の動物さんがいっぱいいるかもだし!」
 単純ですわ。
 思わずそう思ってしまってから、私は慌てて自分を戒めました。この切り替えの速いところは、いちるのいいところなのです。そういうところは手本にしなければならないところですし、そもそも入学当初、孤立しがちだった私が何とか皆の輪の中に入っていくことが出来たのは、いちるのこの性格のおかげでもあるのです。いまから思うと、本当に入学当初の私の態度は目に余る物がありました。それを気にせず、毎日のように話しかけてきてくれたいちるには感謝してもしきれません。
 私は、本来現在通っているような高校とは縁のない世界で暮らしています。言い方は少し良くないですがいわゆる上流階級の生まれなのです。幼い頃から英才教育を受けてきた私は、本来ならよりレベルの高い、歴史と伝統がある学校に通っているはずです。自分で言うのも何なのですが、私はそれくらいのうぬぼれが許されるほど優秀なのですから。
 しかし、我が家の方針で、高校は普通のどこにでもあるような県立高校に通うことになってしまいました。庶民の生活を直に感じることで、いずれ政界などで活躍する際、他の上流階級の者より、下々の者のことを考えられるようにするためです。
 私としては出来れば避けたかった県立高校への入学ですが、こうしていま隣にいる、いちるのような人との出会いがあって、いまではなかなか悪くないと感じていました。
 ただ、学校の行事で、いかにも獣臭そうで不潔そうな牧場という場所にいかなければならなくなったのは、非常に忌々しいことでした。無理矢理取りやめにしてしまおうかとも考えましたが、先ほどの行動からもわかるように、いちるがこの上なく楽しみにしていたようですので、結局こうして牧場へと来てしまっているのです。
 いくらいちるが楽しみにしていても、私自身は動物が嫌いなこともあり、今一つ気分が乗らないのです。
 私は近くなってきた牧場を見つめ、もう一度ため息を吐きました。

 牧場についたバスは、牧場内の駐車スペースにゆっくりと止まりました。
「ついたー!」
 いちるは早速飛び出したがっていましたが、その前に先生からの注意事項があるようでした。
「さて、皆さん。牧場に着きましたが……勝手な行動はくれぐれも慎むこと。動物を驚かせたりしないこと。牧場主さんに迷惑をかけないように。牧場主さんの言うことはちゃんと聴いてくださいね」
「はーい!」
 いちるが大きく手を挙げながら先生に返事をします。子供ですか、と思いましたがいちるらしいです。
 バスから降りた私は、思ったより動物くさくないことに気づきました。むしろ、青青とした草などの匂いが心地よいくらいでした。
「思ったより、臭くありませんわね……」
「んー。牛舎からはまだ遠いしね」
 いちるは大きく息を吸い込んで田舎の空気を満喫しているようです。
「……あまり臭くないといいのですけど」
「動物飼ってるんだから、ある程度の匂いは仕方ないよー。うちのジョンだって、いい匂いばっかりでもないし」
 ジョンというのは、いちるが家で飼っている犬のことです。経験者の言う言葉には説得力があります。
「それに、そういうのも、実地でしか味わえない実感でしょ?」
「いちるは前向きで良いですわね……」
 私はそういいながらも、いちるの考え方には感服していました。どうせここまで来てしまったのですし、いちるのように考えておく方が精神衛生上良いことでしょう。普段お教室では学べないことを学びに来ているのですし、私もそろそろ観念することにいたしましょう。
 私は周囲の放牧地を見渡しました。牧草地には一頭の牛もいませんでした。青青とした草の景色だけが広がっています。柵によって囲まれた放牧地に動物がいないということは、恐らく牛舎などにいるのでしょう。とはいえ、すでに昼が近くなっている時間帯。なのに放牧していないのは、私たちの見学のために何か準備をしているのでしょうか?
「さあ、皆さん。先生の後に付いてきてくださいねー」
 牛が外に出ていない理由はよくわかりませんでしたが、先生の指示に従ってついていきます。柵で囲まれた放牧地と放牧地の間にある道を歩いて、広い景色の中で一番近いところにある建物へと向かいます。いま改めてみて思ったのですが、この牧場の側にはあまり建物がないようです。牧場の建物と思われる建物以外は、相当遠くに行かなければ建物がありません。別に孤立しているというわけではないのでしょうが、それとも牧場とは元々こういう立地にあるものなのでしょうか。そのあたりの事情も含めて、後ほど牧場主の方に質問してみましょう。
 建物にだいぶ近づいてくると、足音などで気づいたのか、建物の中から男の人が出てきました。恐らくあの人が牧場主なのでしょう。男の人は、にこやかな笑みを浮かべて私達を迎えてくださいます。
「ようこそ、いらっしゃいました。今日は牛や羊達と思う存分触れあって、命の大切さを学んで帰ってくださいね」
 決まりきった文句でしたが、それが目的ですから間違ったことは言っていません。
 命の大切さなどを学ぶのは、小学生や中学生辺りで済ませておくべきことではないか、と思われるかもしれません。しかし、今回の牧場見学ではそういう小学生や中学生では体験出来ない、そういう部分のことも見せていただく予定になっています。
 それは、命の大切さをわかるためには効果的で……けれど、小学生や中学生には少し見せづらい――『屠畜』という行為です。
 牧場主の方から、今日の予定の説明を受けながら、私は牧場の中を見回していました。
 まず奇妙に思ったのは、一匹の動物の姿も見えないことです。普通、牧場というくらいなのですから、動物はたくさんいるはずです。しかし、見た限りでは敷地内に動物の姿は見えず、牛や羊どころか犬の姿も見えませんでした。
(……全て畜舎などの建物の中に入れてしまっているのでしょうか?)
 牛達がいないのは見学しに来た私達のための準備をしているのだとしても……羊や犬など、全ての動物を入れておく必要があるのでしょうか? 牛にしたって、数頭以外は放牧させておいても良さそうなモノですが……。
「と、いうわけですので……安全に見学をしていただくためにも、私の指示や、この牧場のルールは遵守してください」
 あら。
 少し気が逸れ過ぎていたようです。いつの間にか牧場主の方の説明がほとんど終わっていました。
 ルールを遵守しなければならないのは、納得出来ます。牧場というような特殊な環境では、そこのルールに従わないと、何が起きるかわかりません。また、下手な行動は牧場主の方に大きな損害を与えてしまう結果になるかもしれないことを考えると、牧場主の指示に従わなければならないことも当然でしょう。
「それでは、早速ですが、ここでのルールです」
 人の良さそうな笑顔を浮かべて、牧場主の方が言います。
「まず一つ目は、先程も言いましたが『私の言葉は絶対です』。指示には必ず従ってください。そして、二つ目のルールは――」
 笑顔を浮かべたまま、言います。

「『女の人はこの牧場内で、服を脱いで裸でいなければなりません』」

 皆からざわめきが広がりました。牧場主の方はこともなげに続けます。
「それがここでの『ルール』です」
 聴いた瞬間は衝撃を受けましたが、それがルールだというなら、仕方ありません。頭の片隅で妙な感じは覚えつつも、ルールは遵守しなければならないと思いました。
 しかし……このような場所で、服を脱がなければならないというのは、恥ずかしいです。皆その気持ちは一緒なのか、ざわめき続けていて、誰も動き出せません。先生ですら、躊躇いを覚えている様子です。
 その時、目の前にあった畜舎の扉が開き、中から人が出てきました。
「あら。皆さん、牧場にようこそお越しくださいました」
 どうやら牧場の人らしいのですが、その人はまだ若い、美人の女性の方でした。同性の私から見ても、凄く整った顔立ちをしておられます。
 そして、牧場主の方のおっしゃったルール通り、裸でした。
 乳房や秘部を惜しげもなく晒していましたが、特に恥ずかしがる様子もなく、バケツを抱えて私達の目の前を横切っていきます。そして、牧場主の方の傍までいくと、声をかけます。
「オーナー。準備出来ました。いつでも大丈夫です」
「ありがとう。御苦労さま。――さあ、皆さん。ルールに従ってください」
 牧場主の方は、あくまでも優しそうな笑顔で、そう言いました。
 それでも皆が恥ずかしがって動けないでいると、いちるがポンポンと気前よく服を脱いでいきます。あっさりと下着姿になってしまいました。
「いちる……貴女……恥ずかしくはないのですか?」
 思わずそう訊くと、いちるはいつもの天真爛漫な笑顔をこちらに向けました。
「うーん、少し恥ずかしいけど、ここのルールだから仕方ないよっ」
 全ての服を脱ぎ捨てたいちるは、さすがに少し赤くなった顔をしていましたが、いつもの無邪気な笑顔を浮かべていました。
 いちるの身体は、こう言ってはなんなのですが、決して豊かな体つきはしていません。しかし非常に健康的な体つきをしています。いちるは陸上部に所属しているので、ランニングの形に日焼けの後が残っていて、日焼けの部分と日焼けしていない部分の対比が眩しいくらいくっきりしています。
 私は、そんないちるに倣い、また躊躇いながらではありましたが、服を脱ぎ始めました。先生や他の皆も服を脱ぎ始めています。男の子達は、そんな私達から微妙に目を逸らしたり、楽しげに見ていたり、色々な反応をしていました。




 私は羞恥を覚えながらも、『ルールだから仕方ない』と服を脱いで行く女の子達を見ながら、顔はあくまで優しげな笑みを維持していた。
 表情は維持しながら、女の子達の観察は忘れない。
(最近の若い子は、発育がいい子ばっかりだな……)
 食べ物がいいのか、それとも何か別の要因があるのか、それはわからないがどの子もこの年頃の女の子とは思えないプロポーションのいい体つきをしている。最も、最初に服を脱いだ女の子のように、年齢相応……というか以下の体つきをしている子もいたが。
 一人ずつ順々に値踏みをしていく。眼鏡をかけた理知的な『委員長』然とした女の子。髪が中途半端に長く野暮ったいが磨けば光るであろう『地味な』女の子。真っ直ぐで綺麗な髪をした『お嬢様』のような女の子。『ボーイッシュ』で元気そうな女の子。色々なタイプの女の子が揃っていた。この学校が見学を申し出てきたのは偶然だが、これだけ沢山のタイプが揃っているのは幸運だった。
 誰を選ぼうか悩んでいると、世話役の女性が声をかけてきた。
「オーナー。皆さん、準備が出来たようです」
 ふと気付くと、確かに女子生徒全員が裸になっているようだった。私は一つ咳払いをして、全員に呼びかける。
「さて、皆さん。改めまして、今日は我が牧場にようこそいらっしゃいました。今日は沢山勉強し、体験して帰ってくださいね」
 真面目な生徒が多いのか、皆私の話に注目している。まあ、男子生徒の方は隣に裸の女子生徒がいたりする関係でそれどころじゃない子もいるようだが。
「まず、皆さんに見学していただくのは、牛の放牧の様子です。それから、続いて牛の乳搾り、そして――最後に、『屠畜』も見てもらおうと思っています。ここの牧場では、本来他の所にお任せする『屠畜』を行えるようになっています。少々ショッキングな光景かもしれませんが、私達人間が生きて行く上で必要な行為でもあります。しっかり見つめて欲しいと思います」
 それっぽいことを言いながら、私は女子生徒達を見回していた。大体『決まった』。
 私は全員を先導して歩きながら、放牧地の方へ誘導する。いまの放牧地には何の動物も放っていない。世話係の一人に命じ、牛達を解放させにいかせた。
「今から、牛達を放牧します。それと……せっかく皆さんここに来ているのですから――」
 女の子達の方を見て、にっこりと笑う。
「皆さんも、放牧を体験してください」
 ざわざわ、と女の子達がざわめく。当然だろう。放牧を見学、ならともかく、私は体験、と言ったのだ。言い方がおかしいことに皆気づくはず。
 その時、世話役が『牛』達を連れて、戻ってきた。それらの『牛』達は全部女性の姿をしている。牛達の姿自体は牛の一種として認識されるため、それを見ても生徒達が騒ぎ出すことはなかった。
「ご覧の通り、当牧場で飼育している『牛』は、人間の女性に近い姿をしています。それゆえ、同じように皆さんに放牧を体験してもらおうと思ったのです」
 四つん這いの『牛』達が、生徒達の足元に辿り憑き、鼻を鳴らして生徒達の身体を嗅いでいた。動物らしい行動と言えるだろう。
 そんな『牛』達の行動には楽しげに応じている女の子達だったが、私の言ったことには戸惑いを覚えているようだった。一人の女子生徒が、私の前に歩いてきて、堂々とした態度で訊いてくる。
「牧場のオーナーさん、お聞きしたいのですけど、よろしいですか?」
 先程見回した時にも見た、『お嬢様』のような女の子だった。顔を赤くしているが、毅然とした態度は崩れていない。
「ええ、勿論。なんでもどうぞ」
「『牛』達は平気かもしれませんけど……私達は、こんな地面で手足を付いたら、怪我をしてしまうと思いますわ」
 冷静な判断だった。まずそこに注目出来るこの子は、相当賢いのかもしれない。
「ええ。それはわかっています。大丈夫ですよ。なぜなら……」
 私はポケットを探り、予め入れておいた『それ』を取りだした。それは簡易版のスタンプ。

 人の身体を『牛』のそれへと変えてしまう――例の『スタンプ』だった。




『雑貨店へようこそ』 ~牛~ その8へ続く



Comment

Comment Form
コメントの投稿
HTMLタグは使用できません
ID生成と編集に使用します
管理者にだけ表示を許可する

Page Top

Trackback

Trackback URL

http://kuroitukihikari.blog60.fc2.com/tb.php/150-c6fbadcd

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Page Top

カウンター
投稿先サイト
『小説家になろう』ノクターンノベルズ
(ユーザーページに飛びます)
運営サイト
暁月夜色
 どんなジャンルでもOKな投稿小説サイトです。お知らせには必ず目を通してください。

黎明境界
 自己満足小説の展示サイトです。
 注意事項には必ず目を通してください。
 以下、連載中の作品概要


『私の名前はまだない』
(MC物、ペット化、女性視点)
(最終更新日:2013/12/07)

『思い通りになる世界 ~forガール~』
(カオスジャンル、世界改変系)
(最終更新日:2016/02/28)

最新記事
カテゴリ
最新コメント
リンク
プロフィール

光ノ影

Author:光ノ影

連絡先は kuroitukinokage×yahoo.co.jp (×を@にしてください)

つぶやき
作品紹介
検索フォーム
FC2アクセス解析
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。