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『残酷ナ遊ビ場』第一章

 『残酷ナ遊ビ場』は、現在FC2小説の方で連載中の、色々酷い話です。
 主軸は『服従趣味の』シアンとその攻略対象である紗実になりますが、幕間として様々な趣味趣向を持つ者のエピソードも入れて行くつもりです。
 メインのジャンルは調教になりますが、幕間はTSやらMCやら拷問やら食人やら出るのでお気を付けください。

 それでは、本編にどうぞ。

『残酷ナ遊ビ場』第一章




 カチャリ、と金属と金属が擦れ合う耳障りな音がした。

 ゆっくりと開かれていくドアから外の光が中に射し込み、その部屋の暗闇を照らす。開いたドアから中に足を踏み入れたのは、これと言った特徴がない人物だった。少しくたびれたスーツに、無駄にきちんと締められたネクタイ。革靴が床を叩く足音が部屋に響く。
 顔も実に平凡で、覚えようと努力しない限り中々覚えられないだろう。浮かべている表情はどこか疲れている様子で、溜め息が似合いそうだ。実際に表情に似合った深い溜め息を吐きながら、その男性は部屋の中を見渡す。そして、目的のものを見つけた。
 『それ』は、部屋の入り口から一番離れた部屋の端にうずくまっていた。怯えた小動物のような丸い目が、男性を見ている。
 男性はのんびりとした調子で、野性動物を刺激しないようにするときのように、声を抑えて『それ』に話しかける。
「おはようございます。よく眠れましたか? 一応言っておきますが、叫んでも誰も来ませんよ。ここは郊外にある施設なので」
 さらに男性は話を続ける。
「あと、貴女を拉致するときに使った薬は特に悪影響が残らないタイプのものなので安心してください。そういうタイプのものもあったんですが、私は薬派ではないので……」
 応えが返ってこないのにも構わず、話を続ける男性。
「あ、私の名前は教えられないのですが、それじゃあ呼ぶとき困ると思うので呼ぶときはシアンと呼んでください。これは私が使っているハンドルネーム……ここではコードネームと言った方がぴったりでしょうかね」
 好き勝手に話を進めていくシアンに業を煮やしたのか、うずくまっていた『それ』が言葉を発した。
「わ、私を……どうするつもりなの?」
 気丈に振る舞っているつもりなのだろうが、明らかに声は震えていて、心中の怯えを隠しきれていなかった。
 その言葉を聴いたシアンは、不思議そうに首を傾げる。
「それは貴女も、ある程度予想できているのではありませんか?」
 暗い部屋、拉致監禁、男性と女性。それだけの要素があれば、確かにこれからシアンが女性に何をしようとしているのかは明確だった。
 捕らわれた女性は、恐怖に体を震わせながらも、気丈にシアンを睨んで吐き捨てる。
「最低……普通じゃ相手にされないからって……無理矢理犯そうなんて……恥ずかしいと思わないの?」
「ああ、勘違いされていますよ。色々な意味で」
 シアンはそういうと、無造作に女性に近づき、顔を近付けると、ぞっとするような笑みを浮かべた。
「別に犯したりしません。私は貴女を調教するだけです」
「調、教……?」
「この施設はですね、『人体改造精神調教遊戯施設』と言います。別に通称もあるのですが、まあそれは置いておくとして。……お分かりですか? 名前の通り、遊戯施設なんです。適当な――実はそうでないことの方が多いそうですが――対象を連れてきて、改造や調教を施すことが出来ます。全ての記録を取られることを代償に、様々な援助を得ることが出来ます。貴女を拉致するプランを提供してくれたのもここの施設員です」
 呆然とした様子で話を聞いている女性に向け、シアンは残酷な事実を口にする。
「助けが来るとは思わない方がいいでしょう。この施設を管理している組織はかなり大きな組織であるらしく、警察だろうと黙らせられるようですから」
 ちなみに、とシアンは人差し指を立てた。
「貴女を対象に選んだのは何となくです。たまたま街中でお見かけしたもので」
「な、なんとなく……って…………」
 言葉を失う女性に対し、シアンは笑顔を浮かべる。
「さらにちなみに、『誰でも良かったのなら私を開放して』とかいうのは無しですよ。確かに貴女である必要はありませんが、貴女を開放して別の人にする理由もありませんからね」
 それは、これから女性に対して酷いことを行おうとしている者が浮かべる物とは思えない、あまりに自然すぎる笑みだった。
 シアンは壁に手を伸ばし、部屋の電気を点けた。明るくなった室内で、絶句している女性の身体をゆっくりと眺め回す。
(……やはり、いい身体をしている)
 柔らかく膨らんだバストといい、程良く引き締まったウエストといい、細い手足といい、シミ一つない肌といい、艶やかな黒髪といい、極上の逸材であることは間違いなかった。
 二十歳という年齢にしては少し幼い顔付きをしていたが、それは愛嬌があるという意味で良い顔付きだった。
 服装は真面目そうなリクルートスーツだった。就職活動中だったのか、あるいはすでに会社員として就職しているのか、はたまたそういう服装が義務づけられているバイト帰りだったのか、それを着ている理由はシアンにはわからなかったが。
 シアンは女性の傍に片膝を突き、顔を近づける。女性は一層怯えた様子を見せたが、シアンは気にしなかった。
「実は、貴女のことはほとんど知らないのですよ。貴女を拉致をしたいと施設に申請したあと、詳細なデータが書かれた書類は受け取ったのですがね。私はそれを直接聴き出すのも楽しみの一つだと考えていますので」
 女性の顔を覗き込み、シアンはにっこりと笑って見せる。
「まずは、お名前から教えていただきましょうか」
 女性は、微かに涙目になっている目でシアンを睨みつける。
「だれが……あなたみたいな人に、教えるものですかっ」
 はっきりとした意思表明。シアンは思わず感心してしまった。
 ぱちぱち、と音を立てて手を叩く。
「素晴らしいですね。この状況でそこまではっきり断られるとは思っていませんでしたよ」
 シアンは本気で関心し、手を叩いたのだが、それは女性からすれば嫌味に聞こえたらしい。
 怒りの感情が瞳に燃え上がる。
「……っ、馬鹿にして……っ!」
「馬鹿になどしていません。本当に感心しているんです。だって――」
 いきなりだった。
 シアンは突然、予兆も何もなく、女性の頭を掴み、地面に向かって叩きつけた。傍目からは、目にもとまらぬ速度だ。女性が抵抗を考える間もない、一瞬の早業。
「――ふぐっ!!」
 とっさに手で庇うことも出来ず、もろに顔面を地面に強打した女性が、顔を抑えて痛みに呻く。たらり、と手の隙間から溢れた鼻血が地面に落ちる。ぱたぱた、と血が斑模様になっていく。
「う、うぅうう……っ」
 痛みに悶絶する女性の頭を、立ち上がったシアンが真上から踏みつける。今度は抑えた手がクッションになったとはいえ、すでにダメージを受けていた個所が床に抑えつけられ、さらに女性が痛みに苦悶の声を上げる。
 シアンは実に何気ない調子で、女性の頭を踏みにじりながら声をかける。
「反抗したら、こんな風に痛めつけられることはよくわかっていたでしょうに」
 人を傷つけ、頭を踏みにじりながら、シアンの声音には一切の乱れがなかった。怯むことはないことは当然とも言えるが、逆にシアンは興奮もしていなかった。人の頭を踏みにじりながらも、あくまでシアンは事務的な口調も、淡々とした声音も崩さない。
 だからこそ、逆に女性はシアンに恐怖を感じた。次に何をされるかわからない――そういう意味での恐怖だ。
 シアンが足を女性の頭の上から退けて、髪の毛を掴んで女性に顔を上げさせる。
「さて……もう一度聴きますよ。貴女のお名前は何とおっしゃるのですか?」
「…………っ」
 口を開こうとしたが、まだ打ちつけた鼻が痛く、まともに動けない。骨が折れているということはないようだったが、それでも一撃だけで十分痛手だった。もちろん、女性の生涯で顔を地面に打ち付けられた経験などない。
「今後はダンマリですか? …………ああ、まだ痛くて喋れないんですか? もう……仕方ないですね。十秒だけお待ちしましょう」
 あくまで言葉は普通のまま、シアンは十秒を数える。
「はい、十秒経ちましたよ。貴女のお名前は?」
「………………鈴原……紗実」
 女性――鈴原紗実は、小さく答えた。まだ鼻血が止まっておらず、鼻声だった。
 シアンは、笑みを一層濃くして何度も頷く。
「鈴原紗実さんですね。わかりました。紗実さんとお呼びしましょう。あ、『ちゃん』の方がいいですか?」
「…………どっちでも」
 投げやり気味に紗実が答えるが、シアンは特に怯まない。
「年齢は?」
「…………二十歳よ」
「おや、そうなんですか。もう少し若いかと思っていたのですが……二十歳、というと大学生ですか? スーツを着ているということは、就職活動中なんですか?」
「……そうよ。面接に行くところだったのに……就職できなかったらあなたのせいよ」
 精一杯の嫌味を紗実が口にするが、シアンは楽しげに笑った。
「就職の心配なんてしなくていいですよ。ここから出られる日が来るとすれば、それは死んだ時ですから。永久就職出来たと考えればいいのではないでしょうか?」
「…………っ」
 紗実自身、わかっていたことだが、はっきりと『永遠に生かして出すつもりがない』と言われると胃の奥が冷えるような嫌な感覚に身体が支配される。
「おや? ご不満そうですね……ここでの生活も、慣れれば悪くないと思いますけどね……」
「……勝手に、連れて来て置いて、勝手なこといわないで」
 相変わらず、紗実は気丈に食ってかかる。先程シアンに顔面を叩きつけられたというのに、まだまだ屈服するつもりはないようだった。
 シアンは唇の端を持ち上げる。
「いいですねえ。やはりこうでなくては……少し前に別の人を調教しましたが、ちょっと叩いただけで、あっさり堕ちてしまいましてね……気の強そうな人だったのに、あまりにあっけなくて……」
 深い溜息を吐くシアン。懐から一枚の写真を取り出した。
「あまりにつまらなかったので、-103号室の方に差し上げてしまったんですよ。これが貴女の前任者です」
 手にした写真を、紗実によく見えるように示す。それを思わず見てしまった紗実は、目を見開いた。
「――――っ!!」
 頭がその映像が何なのか理解した瞬間、紗実は声もなく悲鳴を上げていた。
 その写真には、こんがりとトーストのように焼かれた女性の肢体が映っていたのだ。内蔵を引きずり出され、代わりに様々な食材が詰め込まれた、一つの料理。そんな姿になり果てた女性が、その写真にはくっきりと映っていたのだ。
「……う、ぅ、うええええぇッッ!」
 あまりにリアルなその写真を、何の備えもなしに見てしまった紗実は、込み上げた嘔吐感を我慢できず、腹に残っていた物をその場にぶちまけた。
 シアンは軽いステップで吐瀉物から距離を取る。
「危ない危ない。急に吐かないでくださいよ。汚いなあ。私はそういう趣味じゃないんです。201号室の汚物趣味の方なら、喜ぶかもしれませんが」
 ちなみにですね、とシアンは嘔吐を続ける紗実に構わず、自分の話を続けた。
「この施設には様々な趣味嗜好を持つ人がいます。監禁趣味、拘束趣味、百合趣味、汚物趣味、洗脳趣味……レアなところではこの写真の行為をした食人趣味の方や、獣化趣味の方もいらっしゃいますね。なお、私は服従趣味です。と言っても当たり前ですが、私自身が服従するわけではありませんよ? 全ての言葉、命令、質問に素直に服従する奴隷……それを作るのが私の趣味です。基本的に手段はなんでも取ります」
 だからですね、とシアンは言う。
「あまり簡単に堕ちてしまわないでくださいね。他の趣味人の方の中には、命を奪うことに躊躇しない人の方が多いんですから。この施設の中で、私は割といい方ですよ。少なくとも、殺したら意味がないので殺しませんから」
「う、うう……ううぅ……」
 呻く紗実の前で、シアンは堂々と宣告する。
「他の趣味人との間ではトレードや譲渡が認められています。その対象にされたくなければ……生きていたければ、私に気に入られるように、頑張ってください」
 貴女には期待しています、とシアンは締めくくった。
 吐瀉物の匂いで、僅かに空気が悪くなった部屋の中で、しかしシアンは実に平気そうな様子だった。吐瀉物を避けた割に、匂いを顔を顰める素振りも見せず、それどころか一度は避けた吐瀉物を平然と踏んで、紗実に近づく。
「それでは紗実さん。質問のコーナーにしましょうか。質問しますから一つずつ丁寧に応えてください。口をつぐむのも嘘を吐くのも構いません。どうぞご自由に。自分の判断で好きなように言ってくださって構いませんよ。その結果がどうなるか、それは貴女の責任になりますが」
 脅しとも言えない形で、シアンは言葉を紡ぐ。紗実の反応を見るわけでもなく、試しているような素振りでもなく、ただ、言いたいことを言っているような、そんな何気ない言葉の羅列だった。
「…………」
 紗実は今の彼女に出来る精一杯の抵抗として、シアンの顔を睨むが彼はやはり動じない。
 部屋の端に置かれていた椅子の方に歩き、その椅子に腰かける。
「まず、単純なところから訊いていきましょう。貴女は、男性経験はありますか?」
 単純とは言うものの、本来なら女性に対してその質問はタブーである。
 しかし、いまの現状を鑑みれば、それほど予想を外す質問でもない。紗実は嫌悪感を覚えながらも、その質問に答えた。
「…………あるわよ」
「ほう。誰とです? ああ、お相手の名前は別にいいですが、その人との関係とか、どういう場所でとか、そうことを教えてください」
「……前の彼氏とよ。別れたし、いまは誰とも付き合ってないけど。……場所はホテル。全部で五回くらいかしら」
「特殊な行為をしたことはありますか? 例えば、野外露出とかSMとか。もっと言うなら……スカトロとかペットプレイとか」
「…………そういうのは、ないわ。彼もノーマルだったから。あなたみたいな異常者と違って」
 最後に嫌味を付け加えたが、紗実が予想した通りにシアンは「お褒めに預かり光栄です」と、嬉しそうに笑ってみせた。
 嫌味や皮肉がシアン相手に通じないことは、すでに紗実もわかっていることだ。それでも言わざるを得なかったのは、紗実なりの意趣返しというところだ。全く効果がないのでは、意趣返しになっていなかったが。それどころか自己満足にもならない。
「前の彼氏……と、いうことは……最近は、そういう性行為はしていないのですか? 自慰も?」
「……まあ、たまにするけど」
「どのくらいの頻度で?」
「………………一週間に、一回か二回」
 赤裸々な告白をさせられている紗実だったが、あまり恥ずかしいという感情は湧いてこなかった。そもそもが異常な場所でのことであったし、シアンという異常者に対しては、そう言った『恥ずかしい』というような、当たり前の感情が湧いてこないのだ。
 それはシアン独特の異常性が感じさせるものだっただろうし、それで紗実が救われてるというわけでは勿論ない。
「ふむふむ……なるほど……と、いうことは……それなりに慣らさないと、厳しいかもしれませんね」
 一人で頷きながら、シアンは椅子から立ち上がり、部屋の隅に置いてあった箱を開けた。シアンが入ってくるまでは部屋の中は真っ暗だったし、彼が入って来てからはシアンに視線が集中せざるを得なかったので、紗実はここで初めてその箱の存在に気付いた。
「……なに、それ」
 ある程度予測は出来ていたが、あえて紗実はシアンに直接尋ねる。シアンは一瞬だけ紗実の方を振り返り、また箱に視線を戻した。
 そして、箱の中を物色しながら紗実の質問に答える。
「いわゆる、道具類という奴ですよ。貴女のために取り揃えられた品の数々がこの中には詰まっています。施設はそういったサービスが豊富でしてね。望めば、西洋で実際に使われていた拷問器具だろうと取り揃えてくれるのですよ。-109室の拷問趣味の方が良くそう言った物を注文なさっているようです」
 シアンは何気なく口にしたが、拷問器具、という言葉の響きに紗実が身体を震わせる。背を向けているのにも関わらず察知したのか、それとも単に予測しただけか、あるいは気まぐれか、とにかくシアンがそんな紗実に向けてフォローを入れる。
「ご安心ください。私は別に拷問趣味ではないので……あの手の物は拷問用だけあって、取り扱いを間違えると取り返しのつかないことになりますしね……あ、あったあった」
 楽しげに呟いたシアンが、箱の中から一つの道具を取りだした。
 シアンが道具箱から取り出したもの――それは紗実の知識に無いものだった。
 材質は黒色のゴムのようだ。大きさはそれほど大きくなく、両手を広げた面積よりもやや小さい。形状としては布に近いが、単なる布というわけではなく、少し変わった形をしていた。それには金属らしき銀色の部分があり、それは円形だった。指三本分は間隔を開けて二つ並んでいる。厚さはせいぜい1センチくらいだろう。一部僅かに膨らんでいるようだが、それが何を意味するのか紗実にはわからない。シアンはそれを紗実によく見えるようにしていたが、紗実としてはそもそもそれが何なのか、何に使う物なのかわからなかったため、きょとんとした顔でそれを見ることしか出来ない。
 予想していた反応が得られなかったからか、シアンはかなりがっかりした顔をする。
「知りませんか……まあ、普通は縁のないものですし、仕方ないですか……」
 そう言いながらシアンは溜め息を吐く。もっといい反応をしてくれるものだと考えていたらしく、相当気落ちしていた。思っていた反応が得られなかった。確かにそれは反応が欲しい場合落ち込むものだが、たかが反応が返って来ないことくらいで、そこまでシアンが落ち込むとは紗実には予想できなかったことだ。
 シアンの意図を外せた、ということはある意味意趣返しが成功したということでもあるが、紗実は気が気でなかった。いい反応をしなかったことに対し、いきなり激昂して殴ってこないとも限らない。いや、激昂などしなくても、単に気に入らないからと言う理由で殴られる可能性はあった。
 出会ってから数分。その短い時間だけでもシアンが異常者であることは紗実も身に染みてわかっていた。
 シアンは興が削がれ、やる気がなくなったのか、その手に持っていた物を紗実の方に放った。紗実は思わずそれを受け止める。だが、ゴムの生々しい質感が気持ち悪く、すぐ手放してしまった。それは床に落ちた際、硬いもの同士がぶつかる音がした。
「何なの……これ……」
 まるで忌み嫌う害虫を見た時のように、紗実は恐れ戦いていたが、シアンはそんな紗実をもう見てもいなかった。道具箱を改めて漁っている。
「何だか、今日は気が削がれてしまいました。それは貴女に渡しておきますから、明日私が来るまで身に付けておいてください」
 道具箱の中から、別の何かを取り出し、それも紗実に投げ渡された。片方は液体の入った瓶、そしてもう一つは紙の小冊子だった。瓶はガラス製ではなかったらしく、紗実が受け取らないまま地面に落ちても、割れたりしなかった。
「瓶の方はまだ慣れていないでしょうからサービスです。冊子の方はいま手渡したものの説明書みたいなものです」
 言いたいことだけ言うと、シアンは立ち上がり、自然な歩みで部屋の外へと向かっていく。
 ドアのところまでシアンは言った後、肩越しに紗実を振り返る。
「別に装着したくないなら装着しないでも構いませんよ。その代わりに他の何かをするだけです」
 最後にそんな言葉を残して、シアンは去っていってしまった。
 金属製のドアが閉められ、外から鍵がかけられると、部屋の中はとても静かになる。シアンがいなくなってからも、たっぷり数分間、紗実は動かなかった。シアンが戻ってこないことを確信できるだけの時間を身動き一つとらないままやり過ごした紗実は、安堵の息を深く吐き出す。
「……なんなの……アイツ」
 シアンの行動パターンが全く読めず、紗実は戸惑いを隠せなかった。
 電気が点けられたままの部屋で、紗実は暫くの間、床に転がっているゴム製の何か、液体が入った瓶、そして説明書のいずれも手に取ることが出来ず、その場に座り込んだままだった。




『残酷ナ遊ビ場』第二章に続く



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