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死神輪舞6

 死神輪舞5の続きです

 前回の話はこちら→     

 では続きからどうぞ。

死神輪舞6




 お金を持っていないのでは、ホテルに泊まるどころか食べ物を買うこともできないのは人間界の常識だ。

 すっかり日も暮れた頃。
「……ほんと、どうしよう」
 僕は二十四時間営業のコンビニに身を寄せていた。雑誌コーナーの本を読むふりをしてかなりの時間を潰している。
 仮にも女の子の姿で夜中に出歩いているのは危ないからだ。
 かといって夜の間同じコンビニにずっといたら店の人に警察に通報されてしまうかもしれない。家出少女か何かと間違われて……補導なんかされた日には、元々この世界にいないのだから住所も戸籍も何もない。大騒ぎになってしまう。
 それは危険なので長くても一時間、夜も遅くなったらもっと早くに出なければならないだろうけど……。
(……ねえ、シェルちゃん。そろそろ返事してよ。どうすればいいと思う?)
 僕には出せる案がない。まあそれはシェルちゃんも同じだろうけど、でも彼女なら何かしら出来ることがあるんじゃないだろうか?
 なのに、シェルちゃんは何も言ってくれない。
 さっきレストランでコルドガルドさんから話を聞いてから、何も言ってくれない。
(……おーい。シェルちゃん? 聞こえてる? っていうか聞いてる?)
(…………聞こえてるわ)
(さっきからどうしたの?)
(…………)
(コルドガルドさんに話を聞いてから、なんか様子がおかしいけど……)
(…………)
 相変わらずまともに応えてくれないので、話題を変えてみた。
(……そういえばさ、昨日全死神に通達があったんだよね? それをシェルちゃんは聞いてなかったの?)
 名前は覚えてないけど、死神が人に体を乗っ取られたという通達があったなら、シェルちゃんもコルドガルドさんみたいに考えたはずじゃないだろうか?
(……私は昨日からずっと現世にいたから。最近は予定にないところで死ぬ人間が増えて、死神も大変なんだから)
(予定にないところ?)
(自殺よ。事故や自然死ならわかるんだけど、自殺だけはあらかじめ知っておくことが出来ないの)
(へえ……なんでだろう?)
(さあね。私もよくは知らないわ…………)
(シェルちゃん?)
 急に沈黙したシェルちゃんを不思議に思ってそう問いかけると、シェルちゃんは小さく呟いた。
(あのね……さっき話に出てた、アルミールアラミーナっていう死神なんだけど……)
(うん、その死神さんが何?)
(……その子、私の友達なの。……もちろん、女の子よ)
 なるほど……友達、か……友達がそんなことになってるなんて話を聞いたら、そりゃ冷静ではいられないか……。
(アルミールアラミーナ……大丈夫かしら……)
(…………)
 今度は僕が沈黙する番だった。
 なんとも言えない。僕は、まあ、なんというか自由にこの体を使えても……何かしようとは思わない。
 一応は年頃の男子である僕だけど。僕はあまりそっちの方に興味がないからだ。
 でも、もしも……いまの僕たちと同じように、男性の魂が女の子の死神の中に入っているのだとしたら……相当まずい。
 僕みたいな奴ばかりでもないだろうし……。
 シェルちゃんも気が気でないだろう。
 とはいえ、僕に出来ることはないし……そもそも、それ以前にこれから自分がどうなるかも定かじゃないのに……。
(友達が心配なのはわかるけど、それよりこれから自分たちがどうするか考えないと)
(……そうね)
(とりあえず……そろそろ移動しないとね)
 長時間いるからか、そろそろ店員が怪訝そうな顔でこちらを見始めている。
 本をコーナーに戻し、僕はコンビニを出た。次のコンビニに向かう。
 なるべく明るい道を選び、そこらにたむろしている集団に目をつけられないようにする。
 僕から見て、シェルちゃんは結構可愛い顔をしているけど、それはいまの状況下では不利な要素だった。
 すでに何度かあるが、男の人に声をかけられてしまうのだ。
「ねえねえ、君、暇?」
 あ、また来た。
 僕は近づかれないうちにその男の前をさっさと走り抜けた。
 下手に「急いでるんで」とか言うだけでも返答をするとまずいことになるっていうのは一番最初で学習した。
 幸いその人はすぐに諦め、他の子に声をかけに行っていた。
 ふう、とため息を吐く。
(……ああいう人に取り込めば宿は確保できるけど)
 ベタだけど確かだ。
 しかし。
(絶対に嫌!!)
 当然シェルちゃんが嫌がるのでその策は取れなかった。
(そういえば、さ……死神も人間と同じように生まれてくるわけ?)
 つまりセックスは出来るんだろうか?
 シェルちゃんは微妙に恥ずかしそうだったけど、応えてくれた。
(……ええ、そうよ。性教育も受けたし…………でも、人間みたいに四六時中発情しているわけじゃないわ)
 発情って……酷い言い方をするなあ。
(ねえ、そんなことはいいじゃない。これからどうするか、だけど……誰かを襲って財布を奪えば)
 とんでもないことを言い出した。
 僕は即座に首を横に振る。
(だめだよ。犯罪者になっちゃうだろ)
(別にいいじゃない。殺すわけじゃなし……)
(いや、あのさ、そういう問題じゃないよ。純粋に罪を犯すっていうのにも抵抗があるけど、考えてみて? 追い剥ぎなんかしたら、警察が動くでしょ)
(…………まあ、そうかもしれないけど。じゃあどうするのよ?)
(一番いいのは誰かに頼んで、その誰かが、事情も聞かず、何もせず、家に泊めてくれたらいいんだけど)
 そんな都合のいい人、いるわけない。
(あー、もう。シェルちゃん、コルドガルドさん……じゃなくても、死神の誰かにこっちから連絡は出来ないの? そしたらそれでいいのに)
(無理よ。いくら死神が人間の生活を真似してるって言っても、携帯電話みたいな連絡手段はないもの。魔術にもテレパシー系はないし)
 詳しく聞けば死神は予定が決められており、それに従って行動するだけのようだ。
 人間の魂と同化して生身の体になり、死神の世界に帰れなくなるなんてことありえないはずだったのでその時の対応策もないってことか。
(死神は病気や怪我をすることもないから、不測の事態に陥るってこと自体がそもそもありえないし)
(死神って、すごいな……)
 完全なる生物、というのは死神のことをいうのかもしれない。
 そんなことを考えていて、思わず前方不注意になっていることに気付かなかった。
 前から歩いてきた誰かと肩がぶつかる。
「いってぇな!!」
 げ! よりにもよって柄の悪そうな集団だし!
「す、すいません!」
 いいながら頭を下げ、逃げだす。
 その場所にそのままいたらやばいと思ったからだ。しかし勢いがよすぎたらしい。
「あ、てめ、待ちやがれ!!」
 追いかけてくる!! やばっ!!
 少し先の方に交番があるけど、警察に保護してもらう方がまずい。
 仕方なく横道に逸れた。
 くそ、まだ追いかけてくる。
 なんとか逃げ切らないと! つかまったら洒落にならない状況になっちゃうじゃないか!
(シェルちゃん! 魔法で移動か、撃退は出来ないの!?)
(移動魔法には地面に魔法陣を描くための時間が必要なの! 数分はかかるし……攻撃魔法は……人間相手じゃ、使えなくて……)
 大ピンチじゃないか!
 幸い、シェルちゃんの体の運動能力はそれほど低くはないようだ。
(これならなんとかにげ――っ!?)
 足もとに転がっていた瓶に足を取られて転がる。
 しまった、速く走るのに集中していたから、足元への注意が疎かになってた……!
 自分の迂闊さを呪っても、もう遅い。

 立ち上がる前に、僕は男たちに追いつかれてしまった。




7へと続く


Comment

No.21 / 名無しさん [#-]

泊まる場所・・・・自宅でもかなり微妙なところ・・・・

と思ったら早速大ピーンチ!

2008-08/25 19:44 (Mon)

No.24 / 光ノ影 [#-]

実際、こういう状況に陥ったら大変だと思うのです。
全く別人になってるわけだから自宅に帰るわけにもいかないし、お金がなければホテルにも泊まれない。
一番手っ取り早いのは作中でも言っていたように男にたかることですが、心情的には中々厳しい。

大ピンチです。そしてラノベ的とはいえ、この世界はラノベの世界ではないのでヒーローは現れません。
続きはなるべく早くアップします。お楽しみに。

2008-08/27 09:44 (Wed)

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