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死神輪舞21

死神輪舞20の続きです。

前回の話はこちら↓
         10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

 では続きからどうぞ。

死神輪舞21




 いきなり触手に腕をからめ取られて、僕は地面に引き倒される。
「い……っ!」
 腕が取られているから受け身を取ることも出来ず、そのままの衝撃が身体に走る。
 さらに触手が両足にも絡み付き、逃亡の術を封じてしまう。触手は首にも絡み付き、無理やり顔を上げさせられた。
 サングラスをかけた悪魔の男は相変わらず掴めない笑顔を浮かべている。
「さて。他の死神に邪魔されるのも面倒ですし……我が住み家にご案内しますよ、死神モドキさん」
 次の瞬間、僕の体は暗闇の中に引きずり込まれていった。
 視界が真っ黒に染まって――何もわからなくなる――――ふと、気づいたら、僕は椅子に座らされていた。
 触手が身体を椅子に縛りつけているので動けないけど、いまのところ特に痛いところや違和感を感じるところはない。まだ何もされていないようだ。
 強いて言うなら、後ろ手に回された腕が捻られていて痛いくらい。でもこのくらいなら我慢できる。
 そう思って安心したのもつかの間。
 いつの間に目の前にあった机の向こう側に、さっきの男の人が座っていた。
 思わず緊張して身体を固くする僕の前で、男の人は何かをナイフとフォークを使って食べている。
「どうも。お目覚めですか?」
 僕はその言葉に応えることはせず、男が何を食べているのか確かめようと視線を机の上に向ける。
 見たことを後悔した。
 男は、ナイフとフォークを器用に使って、先ほど僕を追いかけてきたらしい死神の少年の頭の中を――食べていた。
 虚ろに見開かれた両眼は、フォークを使って抉られたのか、黒い穴を二つさらしている。唇が削ぎ落され、歯茎が覗いている。頭蓋骨がくりぬかれ、脳漿を掻き出している。
「うっ…………!」
 あまりにもショッキングな光景。男は何でもないことのように手を止めない。むしろこっちが顔を歪めているのを不思議そうに見つめていた。
「何でそんな顔を……ああ、これですか」
 自分で結論づけた男は、手を少年の慣れの果てに翳す。掌に生まれた凶暴な口が、料理となり果てた少年をものの数秒で骨ごと全て喰らってしまった。
 ぐちゃぐちゃ、と気味の悪い咀嚼する音が男の手から響いてくる。
「本当は霊体ですから、力そのものを飲み込んでしまえばそれで済むんですけどね。いまはあなたが目覚めるまでの余興ということで、口から食べてみていました。非効率的です。二度とやらないでしょう」
 楽しげに男は言葉を続ける。あれだけ猟奇的なことを行った直後だとはとても思えない朗らかな態度だ。騙されそうになる。
 だけどそのおかげで、僕は確信を持てていた。この男が人間ではないと。
 異常な行為を見るまでもなく――この男が人間であるはずがないと、確信した。
「当たり前じゃないですか。悪魔を人間と一緒にしてもらっては困りますねえ。悪魔の御馳走は人間の絶望なのですから」
 一瞬何を言われたのかわからなかったけど、すぐに心を読まれたことに気づく。これでは嘘を吐くことも出来ない。
「この状況で嘘を吐こうとするあなたの度胸は買いますけど……」
 不意に、男が指先を動かす。椅子の背もたれに縛り付けられていた腕の縄が一瞬緩む。
 そう思った瞬間、腕が捻りあげられて激痛が走った。
「っ……!」
「私は面倒な作業が嫌いでしてね? 殺さないまま苦痛を与える方法はいくらでもありますから、あまり手間を取らせないでください」
 男は折れそうに軋むこちらの腕をそのままにして、僕に向けて直接尋ねかけてきた。
「さて、あなたには訊きたいことがあります。あなたは何ですか?」
 やはり不思議そうな顔で、悪魔は続ける。
「あなたが理解している範囲でいいので、説明してくれませんか? 心を読めばすぐなんですが、尋問という余興も楽しいでしょう? 心を読むのは風情もないですしね。話してください。非効率的な手段にあえて甘んじる――それこそ、最高の娯楽なのですから」
 遊んでいる。
 僕はこの悪魔に駆け引きが通じないのを直感していた。しようにも心を読まれては意味がないし、なによりこの悪魔はこちらの発言が駆け引きに達するのを巧妙に避けている。悪魔が人間に出し抜かれる話は世界中にあるためだろう。駆け引きの場で最も簡単に勝つ方法は、敵を交渉の場に出さず、自分の主張を貫くことだ。どんな交渉のプロでも、交渉させてもらえなければ交渉は成り立たない。
 僕は観念して、自分自身のことを話し始める。


 話をしている最中、悪魔はずっと楽しげに眼を輝かせていた。
「ほほう。それはそれは。とても興味深い。死神の霊体と人間の魂の融合。私もこの世には長いですが、聴いたことのない現象ですね。実に興味深い。うん、興味深い」
 何度も興味深いを繰り返す悪魔。なんとなく予想してたけど……この悪魔は研究者みたいな性質をしているみたいだ。未知なものに対して過剰なまでに好奇心を抱く。マッドサイエンティストとかいう表現が的確だろう。
「ふふ、それは違いますね。科学者というわけではありませんから。私は魔学者。この世界の魔を研究せし者。おかげで天使や死神からは目の敵にされていますし、同類も研究対象にしてしまったので、私は爪弾き者なんですよ」
 楽しげに笑った悪魔は、ゆっくりと舌なめずりを行う。
「さて……どうしましょうか? あなたは実に興味深い。話を聞くだけ聞いたら食べてしまうつもりだったんですが、こんな貴重なサンプルをただ食うのはもったいないですね」
「…………」
「そうですねえ……こういうのは、どうでしょうか?」
 悪魔はぞっとする笑顔を浮かべたまま、僕に顔を近づけてきた。逃れたくても逃れられない。
「あなた、私の配下になりませんか?」
 僕は目を見開いた。それは意外な言葉だったからだ。最悪、実験動物みたいに実験を繰り返されると思ってたのに……。
 心を読む悪魔は唇をさらに歪める。
「それもそれで面白そうなんですがね。あなたという貴重な存在を、下手な実験で壊すのも勿体ないですし。んー……」
 考え込むように悪魔がこめかみを指先で揉む。僕は悪魔が言った台詞に違和感を感じていた。
 さっきは、僕は普通にただの貴重なサンプルというだけで、一息に喰らってしまうという選択肢を悪魔は考えていたように思う。なのに、いまの言葉は僕を絶対に壊したくないと暗に言っていた。わずかな違いだけど、それは大きい。さっきのいまでどうしてそんな違いが……。
「あなたは中々優秀な頭脳をお持ちですねえ。ですが、そんなに悩むことではありませんよ。喰うと言ったのは、あなたが怯えるのを見て楽しむためですから」
 考えを読まれるって、なんだか凄く屈辱を感じる……なんて言えばいいんだろう。心の中を土足で踏み荒らされているような、嫌悪感がわき上がってくる。吐き気がした。そんな僕の心の動きすら悪魔は楽しみ、喜んでいる。
「くふふっ、人間の負の感情は私達悪魔にとって、とっても美味しい香りがしますからね。もっと不快になってください」
「……僕は、そんなに貴重なの?」
 挑発に乗ってさらに嫌悪感を募らせれば、相手の思うつぼだ。僕は話題の転換を試みる。
 意外なことに、悪魔はあっさりと話題を変えた。
「ええ。本当に貴重ですよ。なぜか教えてさしあげましょうか?」
「…………」
 恩着せがましい物言いにどうしても不快感を覚えつつ、僕は無言で頷く。
 悪魔は本当に楽しげに説明を始めた。
「まず、天使と悪魔と死神の話をしましょう。天使は天国に、死神はこの世に、悪魔は地獄に住んでいます。本来、この三者は関わりを持たず、それぞれがそれぞれの使命を全うしています」
 話は続けられる。
「死神が人間の魂を刈り取り、天国と地獄に送る。天使は天国に来た魂に安らぎと幸せを与えて力を得、悪魔は地獄に来た魂に苦しみと絶望を与えて力を得るのです。――賢いあなたなら、あなたがとても重要な存在であることをこの段階で理解できるのではありませんか?」
 笑みに歪んだ唇から零れてきたその言葉。
 僕は、最悪の状況を思いついてしまった。心を読める悪魔の前では、思いついてしまった時点でアウトだ。悪魔は顔が裂けるのでは、と思えるほど笑みを深くする。
「そう、本来天使も悪魔も、やってくる魂からしか力が得られない。天国に送るか、地獄に送るかは死神が決めますから、数はどうしても限られるわけです」
 しかし。
 死神の身体を手に入れ、その力を振るうことができる僕がいれば。

「本来天国に行く魂を、地獄に送ることが出来ます」

 それは、人の魂を正邪に関係なく、地獄に落とせるということ。
 人の魂が地獄に来なければ力が得られないらしい悪魔がそれを利用すれば、労せずして大量の力が手に入る。
「ですから、あなたに配下として協力して頂きたいんですよ。出来ればあなたの意思で。力だけ奪い取る、ということも出来なくはないかもしれませんが、万が一にもその力を失いたくないのです。あなたがあなたの意思で力を振るい、人の魂を手当たり次第に地獄へ落としてくださるのが一番いい」
 語られる言葉に、体が震える。
「……っ! 絶対に、嫌だ!!」
 それは考え得る中で最低最悪の行為だ。本来天国に行ける無垢な魂を地獄に落とし、永遠の苦しみを味あわせる……そんなの、最低なんて言葉じゃいい表せない。まさに悪魔的な所業だ。
 明確に拒絶した僕に対して、悪魔は微笑んでいる。
「そう言うとわかっていました。んー。魔法で洗脳することも出来るでしょうが、死神の身体に入った人間の魂にかける洗脳魔法なんて、ありませんからねえ。弄るのは怖いというのが本音です。奇跡のようなバランスで成り立っている状態かもしれませんし。……ああ、ちなみに。死神を洗脳は出来ないんです。基本的に天使と死神と悪魔はそれぞれ干渉しないというのが基本でして。出来ないと言った方がいいかもしれませんね。攻撃魔法などで殺すことは出来ても、魂そのものに干渉は出来ないんですよ。何度か死神を捕まえて実験してみた結果、わかったことなんですけどね?」
 まあ、小難しい話は脇に置いておきましょう、と悪魔は勝手に話を進める。
「どうしても協力してもらえませんか?」
「絶対にしない!」
「そうですか。力は奪えない、洗脳魔法は使えない、自主的に協力はしていただけない……あなたの話ではもう一人あなたと同じような存在がいらっしゃるようですが、あなた以上に言うことを聞いてくれるような御方ではなさそうですしね……」
 ふぅ、と悪魔はため息を吐く。諦めてくれ、と僕は心から願った。
 殺されてもいい。人の魂を弄ぶくらいなら、自分が死んだ方が遥かにマシだ。体を借りてるシェルちゃんには悪いけど……シェルちゃんだって、殺される方がいいって言うに決まっている。
 悪魔は、再びにやりと笑った。僕は背筋が凍るような感覚を覚える。
「仕方ありません。非常に面倒で本当はやりたくないのですが、せっかくの力を失うのは惜しい以上、手は一つです」
 悪魔は微笑む。
 場違いなほど、優しく。

「あなたの方から『協力させて』と泣き叫ぶように……『調教』して差し上げます」




~22に続く~


Comment

No.216 / 名無し [#-]

・・・ですよねー

グロい、グロ過ぎるw
あとどうしても悪魔さんの顔がタモリで脳内描画されるのはなんでなんだぜ

2009-06/04 08:21 (Thu)

No.217 / 光ノ影 [#-]

コメントありがとうございますー。

いままで書いた中では一番グロかったかもしれませんねー。
タモリ……濃い黒サングラスとか書いたからでしょうかー。

2009-06/05 00:06 (Fri)

No.218 / toshi9 [#YK3S2YpI]

うーん、ハードな展開ですね。
悪魔と死神の関係を象徴的に描くには必要なのかもしれませんが・・
亮への調教か。さて最終章どうなってしまうのか楽しみです。良いエンディングを迎えんことを。
それにしても天使、悪魔、死神の中での人間って何なんでしょうね。単なる食料?それとも4者の関係には大いなる意思が?

2009-06/06 11:25 (Sat) 編集

No.220 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

 コメントありがとうございます!
 最終章、全力で頑張りたいと思います。
 張った伏線を全部回収できるのか……何か伏線を忘れていたら遠慮なく指摘してやってください(笑)。

2009-06/07 23:44 (Sun)

No.228 / nekome [#lWxbDKCI]

またしてもまとめ読みです(^^;
長編は溜めてしまうと後が大変だというのに……と思いきや、いざ読み始めたら一気に最新話まで追いついてしまいました。
これも光ノ影さんの文章力ゆえですね。
キャラクターの人格がよく表れた会話に、主人公の心情が伝わってくる状景描写。素晴らしいです。

コルドガルドの思惑に、星斗の命運、そして突如現れた悪魔の脅威。
気になることがいっぱいです!

2009-06/21 19:57 (Sun) 編集

No.230 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

nekomeさん、感想ありがとうございますー! ご無沙汰していてすいません。
素晴らしいとのお言葉、本当にありがとうございます。凄くうれしいです。

続きは結構書けているので近日中に公開します!
気になることも、順次解決していく予定です! がんばりますー!

2009-06/22 00:08 (Mon)

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