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死神輪舞5

 死神輪舞4の続きです

 前回の話はこちら→    

 では続きからどうぞ。

死神輪舞5




 落ち着いて話せる場を、ということでファミリーレストランに入った。

 とりあえず経緯と状況を説明すると、コルドガルドさんはさすがに驚いた様子だった。
「……まさか、そんなことがあるなんて……私もかなり長く生きてきたつもりだけど、こんな話は初めて聞くわ」
 注文したチョコレートパフェを品よく食べながら、コルドガルドさんは呟く。
 それなりに真面目な話のはずなのに……いくら品がよくても……その行動で全て台無しだった。
 なんだか、真剣に悩んでいることがバカバカしく思えてくる。
 それを見越して、僕の緊張を解すためにやっていることなら逆に凄いんだけど……。
「やっぱり下界の甘味はおいしいわね~」
 などと言いながら嬉しそうにパフェを頬張る姿は、どう考えてもただの趣味でしかなかった。
 ちなみにシェルちゃんは憧れのコルドガルドさんのこんな姿は想像の外だったのか、先ほどから一言も喋ってない。大丈夫かな……?
 ショックを受けてなきゃいいけど。
 かくいう僕も、さっき格好よくイソギンチャクを倒して助けてくれた人の、予想外の行動にどう反応したらいいのかわからなかった。
 コルドガルドさんは相変わらずにこにこした笑みで話を続ける。
「とにかく、まずは大王様に報告ね。はむ。私は知らないけど、ひょっとしたら大王様なら対処策を知っているかもしれないわ。はむ。無理やり魂を剥がすことも出来るとは思うけど、その場合どうなるのかわからないし。はむ」
「はあ……」
 そんな僕の先行きを決めるシリアスな話を、パフェを食べながら言わないで欲しい。
「大王様って、やっぱり閻魔大王ですか?」
 なんとなく気になって尋ねると、コルドガルドさんは首を横に振った。
「違うわよ。閻魔大王は下の王。私たちの大王様は……大王様って言ってるけど、実際は議会みたいなものよ」
「へ?」
「重要な案件は死神の中でも最も優秀な死神八人の議論で決められるの。で、なぜか死神たちの間ではその議会のことを『大王様』って呼んで、その決定を『大王様のお達し』といっているわけ。なんでかはわからないんだけどね。……これはあくまでも死神たちの間の噂だけど」
 コルドガルドさんは続ける。
「遥か昔、人間が生まれるか生まれないかの頃には全ての死神を統べる『死神大王』という存在がいたらしいわ。でも、強大過ぎる死神大王はその力を抑えきることができず、八つに分かれてしまった。だから議会は八人で構成されているって噂」
 へ、へえ。
 もぐもぐパフェを咀嚼しながら、コルドガルドさんは続ける。
「さっき大王様なら対処策を知っているかもって言ったのは、死神として優秀な八人はその分知恵があるからね」
「そ、そうなんですか……あの、ところで」
「ん?」
 コルドガルドさんは「どうしたの?」というような顔になる。ちなみに声に出さないのはスプーンを咥えているから。
 それはあえて無視して、気になっていたことを聞いた。
「さっき、僕が最初にシェルちゃんと同化しちゃった時、『昨日までなら悪ふざけだと思った』って言いましたよね?」
「ええ、言ったわね」
「どういう意味です? 昨日、何かあったんですか?」
「んー、これ、部外者に言ってもいいのかしら……まあ、いいか」
 少し悩んだようだったけど、結局あっさりコルドガルドさんは教えてくれた。
「実は昨日……大王様から全死神に通達があったのよ」
「なんてです?」

「『先日から行方不明になっているアルミールアラミーナは、人間の魂にその身体を乗っ取られた可能性がある』って」

 ……はい?
「ちょ、ちょっと待ってください。それって……」
「そう、今のあなたと同じ状況ね。あなた場合、乗っ取ったっていうよりも同化したっていう方が正しいみたいだけど、見方を変えたら乗っ取りになるわよね。実際、シェルフェールフールは自分で自分の体を動かせないんだから」
「た、確かにそうですけど……でも、なら、前例があるなら、僕のことだって信じられたんじゃあ……」
「違うわよ。可能性があるって言ったでしょう? 実際、この通達を信じている死神はほとんどいないわ。だって前例がないんですもの。誤報かなにかだと思っている死神がほとんどなの」
 コルドガルドさんは溜息を吐いた。
「ちょっとややこしいけど、私はアルミールアラミーナが体を乗っ取られたなんて話は信じてなかった。けど、そう言う話が出ているところに、シェルフェールフールが実際に乗っ取られたっていう。だから完全に嘘だとは思わなかったわけ。で、いま事情を聴いて、あなたとも話して、確信した」
 コルドガルドさんはこれまでで、一番真剣な顔になった。
「乗っ取りは実在するってね。ということはアルミールアルミーナも本当に人間によって体を乗っ取られた可能性が高い。それも――」
 そこでコルドガルドさんは僕の方を見た。
「あなたより、数段性質の悪い人間に」
 僕が性質のいい人間かどうかは微妙だと思うけど、下手な人間が死神の体を乗っ取ったら、確かにまずいんじゃないだろうか。
 コルドガルドさんは食べ終わったパフェを机の廊下側に置く。その店員が回収しやすいようにする気遣いは手慣れていて、きっとこの人はたびたび食べているんだろうな、となんとなく思った。
「とにかく、人間に死神の力を自由に振るわせるのはまずいわ。一刻も早く報告にいかないと。行くわよ」
 そう言って立ち上がるコルドガルドさんを、僕は慌てて引きとめた。
「ちょっと待ってくださいコルドガルドさん!」
「なに? ……って、あー、そっか。あなた霊体化出来ないんだっけ……と、なるとまずいわね……大王様のところへは霊体化しないといけないし……」
 悩むコルドガルドさん。
 とりあえず話し合いは終わっていたので、僕たち二人は店を出た。
「お金なんて持ってたんですね」
「あら、さっき払ったのは具現化したお金よ?」
「……いいんですか? 贋金扱いになっちゃうんじゃあ?」
「いいのよ、どうせ数分もしたら消えちゃうんだから。ちょっと会計が合わなくなるでしょうけど」
 ほんとうにいいの? そう思ったがあまり気にしないほうがいいのかもしれない。死神だしなあ……。
「うーん、仕方ないわ。とりあえず私はこれから報告に行ってくるから、あなたはこの街で待ってなさい。数日で戻ってこれると思うから」
「そんなに時間がかかるんですか?」
「行くの自体は簡単だけど、大王様と謁見するのに時間がかかるのよ。かなりの重要案件だから伝言だけで済ますわけにもいかないし」
 そういうものなのか。重要案件なら、優先して謁見させてもらえるもんじゃないのかな?
 コルドガルドさんはなんとなく釈然としない僕の両肩に手を置いた。
 真剣な瞳に真正面から覗きこまれて思わず背筋が伸びる。
「な、なんでしょうか?」
「あなたはどうも『いい人』みたいだからあんまり心配していないけど……死神の力をむやみに使ったり、このまま逃走したりしないでね? そんなことをしたら……私は私の権限においてあなたの魂を地獄に落とさなければならなくなるわ」
 あまりに直接的な脅し文句に、震えが走る。
 死神だからまさに洒落ではない。
「き、肝に銘じておきます……」
 がくがく頷く僕に、コルドガルドさんはにっこりと笑顔を浮かべた。
「よろしい。シェルフェールフールの言うことをよく聞くのよ? じゃあ数日後にね」
 そう言ってコルドガルドさんはいつの間にか体の具現化を解いていたらしく、ふわりと浮かびあがり――消えた。
 雑踏に取り残された僕は、さてどうしようか、と頭の中のシェルちゃんに訊いてみる。
(数日か……どうしよう、シェルちゃん)
 ところが、返答はなかった。そういえば全然声が響いてこない。
(あれ? シェルちゃん? どうしたの?)
(え……あ、なに?)
 やっと返答が来たけど、どうも様子がおかしい。
 なぜかを考えてみた。わかるわけがない。
(これからどうしようかって話なんだけど……どこか安いビジネスホテルにでもとま……って)
「ああ!?」
 思わず声に出してしまった。
「僕、お金持ってないよ!?」

 ……いきなり、前途多難だった。




6へと続く

Comment

No.31 / nekome [#lWxbDKCI] そんな通達があったとは!

死神の社会に、そんな事件が!
「昨日までなら~」というのは気になる伏線でしたけど、ここまで驚きと納得をともなう出来事が用意されていたとはっ。
おおう……わくわくしてきましたよっ。

2008-08/27 23:11 (Wed) 編集

No.34 / 光ノ影 [#-]

この事件、とても重要な事件です。
なぜ重要なのかはすぐ判明すると思います。
続きにご期待ください。

2008-08/28 00:44 (Thu)

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