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『雑貨店へようこそ』 ~丸薬~ その3

 これは前に書いた『雑貨店へようこそ』シリーズの『丸薬』の続きです。
 前の話はこちら→  

 では、続きからどうぞ。

雑貨店へようこそ ~丸薬~ その3




 優しい、優しい触れるだけのキス。
 まるで、激しくしたらこちらが壊れてしまうと思っているかのように、繊細なキスだった。
 先輩は果たしてこれで満足しているのだろうか。本当は、もっと激しくしたいのではないだろうか。
 時折不安になる。
 でも、キスが終わった後、先輩はいつも嬉しさが溢れて、優しさが零れるような目をしているから。不安はそこで消えてなくなる。
 先輩が俺と同じように不安にならないように、こちらから先に口を開く。
「愛してます……美咲先輩」
 そんな、陳腐といえば限りなく陳腐な、けれど自分の嘘偽りない気持ちを乗せた言葉に、先輩は優しく頷いてくれて。
「私もだよ、真樹」
 こっちを驚かせないようにだろう。ゆっくりと、柔らかく、けれど力強く、先輩は抱き締めてくれた。
 どのくらいの間、そうしていただろうか。
 そっと離れた美咲先輩は、僅かに心配そうな光をその瞳に湛えて訊いてくる。
「本当に、いいんだね? 後悔しない?」
 それは、こっちの気持ちを疑っているわけではないだろう。それがとても大事なことだから。その場の勢いや、気の迷いで決断して良いことではないから。美咲先輩はこちらの最終意思を確認してくれる。
 即答はしなかった。その決意が、この想いが、確かなものであると確信するために、一度瞼を閉じ、ゆっくりと開く。
「はい」
 短く、けれどはっきりと。
 恥ずかし過ぎて、顔が真っ赤になっていることはわかっていた。けれど、その覚悟が確かに間違っていないことを証明するために。
 真っ直ぐ美咲先輩の瞳を見つめて、頷いた。
「わかった」
 美咲先輩はそれ以上重ねて尋ねて来なかった。それをしたらこちらの覚悟に対して失礼だと考えたのだろう。
 先輩の手が、そっとこちらの頬を撫でる。その感覚が軽く脳を痺れさせる。

「私が真樹を――女にしてあげる」

 初めて先輩と二人で入ったホテル。
 実際の行為に入る前に、先輩はいくつか確認を行う。
 この体には心臓病という持病がある。だから、そうやって確認をするのはある程度良識ある者なら当然のことだ。ましてや美咲先輩が、そういうことを怠ることはない。
「念のため、もう一度確認しておくけど……今日は調子がいいんだね?」
 俺が雑貨店で手に入れた丸薬を飲んで、女の子になり、心臓病を患うようになってから、すでに数週間が経過している。その間に何度か発作が起きたり、その発作が起きやすい身体の状態もちゃんと把握できるようになっていた。
 その経験に照らし合わせれば、今日の体長は非常に良いと確信を持って言える。
「はい。大丈夫です」
 嘘はつかない。嘘をつけば先輩に迷惑をかけることになるということをつい先日にも実感していたし、なにより美咲先輩の前で平然と嘘を吐けるほど俺は面の皮が厚くない。というよりもむしろ、美咲先輩の前で嘘をつける奴がいたらお目にかかりたいくらいだ。剣道で鍛えたのか、美咲先輩の眼光はそれこそ鬼神の如き鋭さなのだから。
 その上、先輩は嘘を見抜く眼力にも長けている。以前根性の据わった(というか筋金入りに曲った)剣道部員が美咲先輩に嘘を吐いたことがある。迫真の演技で、俺を含め傍にいた部員は全員騙されたのだが、先輩だけはその嘘を見破った。その後、ちゃんと話し合って問題は解決したそうだけど。
 色んな意味で、本当にこの人は凄いのだ。
「行為の最中でも、調子が悪くなったらすぐ言うように。我慢しなくていい。わかったね?」
 諭すようにいう美咲先輩。俺は軽く頷きかけ――ふと、悪戯心が湧いた。いや、ある意味本当に心配でもあることだ。
「それは、もちろんです。……けど」
「けど?」
 怖いくらいに(いままでもそうだったけど、それ以上に)真剣な顔になった美咲先輩に対して、俺はゆっくりと口を開く。
「……そういうことをしてたら、心臓が否応なくドキドキしてしまって、調子が悪くなったのか、それともドキドキしているだけなのか、わからなくなりそうです」
 一瞬虚をつかれたような顔をした美咲先輩は、次の瞬間堪え切れないという風に吹き出す。
「ふ、ふ、あははっ!! それもそうだね。可愛いことを言ってくれるじゃないか、真樹」
 そう言って頭を撫でてくる先輩。完全に子供扱いっぽかったが、不愉快な気分にはならなかった。
 むしろ、美咲先輩が笑って楽しんでくれて嬉しい。
「ま、気分が悪くなったと思ったらすぐに言うんだよ」
「はい」
「あまり激しいことはしないつもりだから。必要だと判断すれば、休憩も挟むからね」
「……先輩は、それで満足できますか?」
 俺は一番不安に思っていたことを尋ねた。こちらのことを気遣ってくれるのは嬉しいが、それで美咲先輩が満足できなかったら意味がない。
 先輩はスポーツをしていて、体力や精力も溢れているだろう。こちらに合わせてソフトなことしかしなければ、色々たまってしまうのではないか。
 そんな不安があった。
 しかし、美咲先輩はそんな俺の危惧を笑って否定する。
「問題はないさ。私は真樹とこういうことができる、というだけでもうほとんど満足しているからね。いまから帰ってもいいくらいさ」
 それもそれでどうなのだろうと思ったが、先輩が無理をしていなければいい。
「さて……確認はこれくらいでいいかな。まずはシャワーを浴びようか。……どうする? 一緒に入るかい?」
 楽しげに笑って、美咲先輩は意地悪くそう言ってくる。さすがに恋人関係にあったとはいえ、この数週間はそこまで見せたことはない。あっという間に心拍数が増した。
「……あ、っと……い、いえ、一人で……」
 これからシャワーなんてものとは比べ物にならないくらい恥ずかしいことをしようとしているとはいえ、やはり恥ずかしい物は恥ずかしい。
 それに汗やら何やらで汚れた身体を先輩に晒すのは抵抗があった。男の時は全く気にしなかったものだが……妙に、気になるのだ。匂いのきつい香水などは、男の時と変わらず苦手だったが、消臭スプレーなどは常備するようになっている。
 幸い美咲先輩もこちらの気持ちを理解してくれたらしく、軽く頷いてくれた。
「うん、じゃあ先に私からシャワーを頂くことにするよ。ちょっと待っていてくれ」
「ご、ごゆっくりどうぞ」
 美咲先輩がバスルームへ消えた後、俺はベッドの上で深呼吸を繰り返す。
 すでに緊張で心臓が張り裂けそうだった。


 美咲先輩の後、バスルームに入った俺は、頭からシャワーを浴びながらドキドキと高鳴る心臓を抑えていた。いまの自分は女の子そのものだ。
 元が男だからちょっと不思議な気分だが、この数週間でだいぶ慣れて、女の子っぽい考えや想いを抱いても強い違和感は感じなくなっている。精神は肉体に影響を受けるとはよく言ったものだが、俺はそれを実感として感じていた。
 ……いまだに心の中で自分のことを『俺』と言ってしまうのは、男だった精神の最後の抵抗だろうか。
 そんな取り留めもないことを考えつつ、シャワーで汗や汚れを洗い流し、泡立てた石鹸で全身をくまなく洗っていく。
 先ほど、バスルームから上がってきた先輩は物凄く色っぽかった。仄かに香る石鹸の匂いがあまりに心地よくて。もしも男だったら、その瞬間理性が飛び散ってもおかしくないほどの扇情さだった。
 そういえば、先輩は俺を『女にしてあげる』と言っていた。それがどういう意味なのかはわかるが、実際どうするつもりなんだろうか?
 まさか、先輩がふたなりってわけじゃないだろうが……プールに遊びに行った時も、普通に水着を着てたし……。
 いくらでも方法はあると思うが、それでもやっぱり気になる。とはいえ、すぐにわかるのだから考える必要なんてないかもしれないけど。
 しっかりと全身をくまなく洗って、バスルームから出る。ドライヤーを使って濡れた髪をざっと乾かす。これが意外と曲者なのだ。今日はそこまで厳密にする必要はないとはいえ、時間がかかり過ぎると湯冷めしてしまう。
 ある程度水気が飛んだと思えた辺りでドライヤーを切り上げ、バスローブに腕を通した。中は当然裸だ。ノーブラ・ノーパンで人前に出るというのはそれだけでドキドキするし、恥ずかしい。
 それでも、意を決して脱衣所からも出て、待っている先輩のところに向かった。

 先輩に女にしてもらうために。

 部屋で、先輩は悠然とベッドに腰かけて待っていた。先輩に聞いた話ではこういうことをするのは先輩も初めての筈だったけど、とてもそうは見えない落ち着きようだった。
「……先輩」
 バスローブの前をしっかり合わせ、部屋に踏み込んだ俺はそう先輩に声をかける。
 先輩はゆっくりとこちらを向き、安心させるように微笑んだ。
「こっちにおいで。真樹」
 その声に従って先輩の傍に行く。先輩は立ち上がって俺を迎えてくれた。
「真樹」
 優しく、名前を呼ばれて、ゆっくりと抱きしめられる。先輩の体は柔らかかった。力強く、包み込むように抱きしめられる。
 思わず深く息を吸った拍子に、いい匂いが胸の中一杯に広がる。先輩も、俺の匂いを嗅ぐかのように深く呼吸をしていた。お互いの匂いを嗅ぎ合うなんて犬みたいで間抜けだが、でもそのおかげで落ち着くことが出来た。
 とはいえ心臓の方はもう破裂しそうなほど鼓動を奏でている。ふと、俺は先輩の柔らかい胸に押し当てた耳から速い鼓動の音が聞こえてくるのに気が付いた。先輩も同じように緊張しているのだとわかると、不思議と穏やかな気分になる。自分だけではないということがわかったからだ。
「真樹……」
「先輩……」
 小さな声でお互いにお互いを呼び、少しだけ身体を離す。真正面から向き合った俺と先輩は、次の瞬間にはキスを交わしていた。そうしようと思ったわけではなく、自然とそうなったというような、実に自然な流れ。
 先輩とのキス自体は、軽い物から深い物まで、何度もしていたが今回のはそのいずれとも違った。唇と唇が触れあっただけで、そこを起点に全身に熱が回る。頭に霞がかかったように意識がぼんやりとして、知らない間に唇が開いて舌が出ていた。先輩が同じように舌を出し、先端と先端を掠め合う。ぴりぴりと衝撃が舌先に走った。溢れた唾液が垂れ、バスローブの胸元にシミを作ってしまう。もったいない。
 半開きにした唇と唇を合わせるようにして、唾液が零れないようにする。舌が吸われて先輩の口内で軽く嬲られた。
「んっ……」
 思わず呻く。先輩は、今度は俺の口内に舌を入れてきた。深く、歯の裏側まで舐められる。身長の関係上、こっちは上を向いている。だから溢れ出した自分の唾液と、流れ込んできた先輩の唾液で喉が詰まりそうになった。慌てて飲み干す。その間も先輩は責める手を、いや、舌を緩めなかった。
 息苦しくなって咄嗟に離れようとした俺の後頭部を先輩の手が押さえる。髪が乱れる気配がしたが、そこを気にしている余裕はなかった。離れたくてもがっちり押さえられていては離れられない。
「ん、んっ、ふ……!」
 どれほど長い間そうしていただろうか。呼吸困難に陥るほど激しいディープ・キスだった。口内だけの刺激で何度かイったような気がする。途中から足が震えて崩れ落ちそうになったのだが、先輩はこちらの腰に手を回して抱き締めるついでに倒れないようにずっと俺の身体を支えていた。
 いくらこっちの身体が小柄で、先輩がスポーツをしているからとはいえ。凄かった。こちらは腕からも力が抜けてされるがままになるだけだったというのに……。
 ゆっくりと先輩が顔を離す。溢れた唾液がこちらのバスローブに点々と落ち、バスローブの胸元はすっかり唾液によって汚れていた。
「……脱ごうか」
 そう言った先輩が、こっちが着ているバスローブの結び目を緩める。咄嗟に抑えようと手を動かしたが、快感に体が痺れていて、まともに動かなかった。
 あっさり結び目が解かれ、前を肌蹴させられる。先輩の目の前に乳房の膨らみや股間の陰りが晒されていると考えたら、あっという間に頭に血が昇ってしまった。たぶん、いまの自分の顔は熟れた林檎のように赤いだろう。
 先輩は軽く微笑み、俺の身体を軽々と持ち上げてベッドの上に横たえた。




『雑貨店へようこそ』 ~飲み薬~ その4へ続く

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