FC2ブログ
  1. Top
  2. » スポンサー広告
  3. » 『死神輪舞』
  4. » 死神輪舞19

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • ジャンル :

死神輪舞19

死神輪舞18の続きです。

前回の話はこちら↓
         10
11 12 13 14 15 16 17 18

 では続きからどうぞ。

死神輪舞19




 咄嗟にどうすることも出来なかった。
 死神達が鎌を振り上げるのが、やけにスローモーションに映る。
 その刃はゆっくりと僕の体に迫って、僕の体を斬り――刻む寸前で、横から星斗が跳び付いてきて、僕を抱えてその刃を交わす。
 体の横ギリギリを刃が通り過ぎる。刃が風を切るのが肌で感じられた。すぐ傍を死が通り過ぎる感覚。
「星斗!?」
「ぼーっとしてんなよ、亮!!」
 僕を抱えているのにも関わらず、軽々と死神達から距離を取ってみせた星斗は、手の中に『鎌』を出現させる。続けて斬り込んできた死神達の斬撃を、その鎌で受け止めた。金属と金属がこすりあうような、嫌な音が部屋中に響く。
「ちぃ……! さすがに五人分は厳しいな……!!」
 そう小さく星斗が毒づくのが聞こえてきたけど、そうなのだ。
 驚いたことに、星斗は死神達五人の斬撃を、片手で支えた鎌で受け止めている。死神達が皆同じような軌道で斬り込んできたから出来た芸当だけど、普通なら単純な力に圧倒されてしまうだろう。
 これにはさすがの死神達もはっきりと驚きを顔に表していた。
「馬鹿な……!?」
「受け止められて……?!」
「なんで止められるんだ!?」
 死神達が驚いて動きが止まったのを見て、星斗がその隙に僕を放り出す。僕はたたらを踏んで床に倒れ込んでしまったけど、おかげで死神達から距離を取ることが出来た。
「亮、下がってろ!」
 星斗は僕を手放したことで自由になった片手を鎌に添えた。明らかに体格的にも数的にも圧倒されているにも関わらず、星斗は徐々に押し返している。
「く、くは、かはは、どーした、てめえら、非力にも程があるぞ!!」
 星斗が凶暴に吼える。だけど、死神達の驚きは正確には五人分の斬撃を止められたことにあるんじゃなかった。
「馬鹿な……ありえん! なぜ生身で死神の刃に触れられるのだ!?」
 それは余程あり得ない話のようだった。死神達は驚いてばかりでろくに動けていない。二人ぐらいがいったん離れて、違う角度から切り込めばいいのに、そんな簡単なことも出来ないほど、動揺していた。
 僕は慌てて起き上がりながら、星斗と死神達の戦いを見つめる。
「せ、星斗……!」
「下がってろっつったろ!? ――おい、玲奈!!」
 いつの間にか部屋から消えていた玲奈さんが、部屋の入り口から消火器を手に顔を覗かせていた。
「はい」
 瞬間、玲奈さんが手に持っていた消火器のノズルを握り込み、消火液を部屋にまき散らす。
「なにこれ!?」
「不明!」
 さすがに死神は消火器のことを知らなかったらしく、慌てている。僕は消火器を使用しているときのことをテレビでしか見たことがなかったけど、室内で使うと意外に煙幕としての効果を発揮するらしい。
 広いはずの部屋は消火器の煙に包まれて、あっという間に視界が悪くなった。
 思わず顔を覆うために挙げた僕の手を、星斗が掴む。
「来い、亮!」
 強く手を引かれて、僕は走り出す。
 玲奈さんが消火液をまき散らすその隣を走り抜けて、星斗は廊下に出て逃走を試みる。
「せ、星斗、玲奈さんは!?」
 玲奈さんを放置して、星斗は走り続けている。
「あいつも見てる余裕はねえ! さっきは余裕ぶっこいたけど、バラバラにかかってこられたら確実にアウトだ! いまは逃げるしかねえ!」
 僕達の部屋での騒ぎを聞きつけてか、下の階で騒ぐ人達の気配が感じられた。
 僕は星斗に手を引かれ、非常階段を駆け上がる。




「……逃げられたか」
 青年の死神は、ようやく煙が晴れ始めた室内で、鎌を振って最後に残った煙を払う。
 その言葉に応えたのは、女性の死神だ。その足元には、消火器を持った一人の女性が倒れていた。目を開いたまま、まるで糸が切れたように倒れ伏している。
「この人間、どうやら死神の力を使って操っていたようね。……どうする?」
 死神の力を悪用するとは、と青年は毒づいた。それは人間に害を与えたからというよりも、言葉の通り死神の力を悪用されたこと自体に対して不快な思いを抱いたようだ。
「人間など、どうでもいいが……放っておくわけにもいかないだろう。力を使ってかけられている暗示を解いておけ」
「了解。自分がやる」
 少年の死神が倒れている女性の横にひざまづく。
 青年は他の死神達に指示を出す。
「我々は逃げた浸食者と逃亡者を追跡し、確保する。油断するな。理屈はわからないが、奴は上位死神に匹敵するほどの強大な力を取り扱っている。おまけに具現化しているのにも関わらず、霊体である死神の鎌を受け止めた……我らの知る理屈ではありえない」
「わかってるわ」
 そう言った女性の死神の他に、無言のまま頷いた他の二名の死神を従え、青年は床や壁を無視して逃げた二人を追い掛けた。


 余談だが。
 この後、放置された玲奈は騒ぎを聞きつけたホテルの従業員達に保護された。彼女は次に目が覚めた時、星斗によって洗脳を受けていた時のことを忘れていた。自殺しようとしていた記憶もおぼろげになっており、一時は無気力状態でほとんど動く気力すらなかった。
 彼女が所有していた身分証明書から身元が判明し、彼女は一時実家に戻ることとなる。
 そしてその後、回復した玲奈は洗脳時に、星斗に覚えさせられていた能力を発揮し始める。また、従うことに喜びを覚えた彼女は、とある資産家の元へ使用人として仕えることになった。さらに後には、別の資産家の次男坊に気に入られ、愛を育み、家庭を持つに至るのだった。
 彼女は死ぬ際、沢山の者に囲まれて、幸せだったと呟いたという。




 星斗は何も言ってなかった様子なのに――そもそもその余裕もなかった――なぜ玲奈さんは消火器なんかを持ち出して来たのだろう。
 訊いている場合じゃなかったのかもしれないけど、どうしても気になって星斗に訊くと、すぐに答えが返ってきた。
「万が一のために玲奈に仕込んどいた! まさか、あの命令が役に立つ日が来るとはな! 備えあれば憂いなしとはよく言ったもんだぜ!」
 どうやら予め命令を出しておいたらしい。本当に用意周到というか、なんというか……とても僕には真似できない。
 最上階へとやってきた星斗は、僕をエレベーターの中に放り込む。一階のボタンを押し、扉を閉めようとする。
「ちょっと、星斗!?」
 僕は慌てて星斗の腕を掴み、その動きを止める。
 星斗は早口で説明を始めた。
「いいか亮、これで一階まで降りたら全力で逃げろ。俺が奴らを引き付ける。お前を守りながら戦えるほど余裕はなさそうだ」
「で、でも、そんなことをしたら、星斗が……!」
「馬鹿、心配すんな。無理には戦わねえ。逃げて逃げまくってやる。……合流場所は……そうだな、遊びに行った時、最後に寄った店で。捕まるんじゃねえぞ、亮」
 とん、と軽く胸を押されて、僕はエレベーターの真ん中に倒れ込んでしまう。
「星斗!」
 慌てて立ち上がって止めようとしたけど、エレベーターの扉は無慈悲に閉まってしまった。最後、ドアの隙間から不敵な笑顔を浮かべた星斗の顔が見えて――完全に扉は閉じ、エレベーターが動き出す。
 咄嗟に僕はエレベーターを止めようと手を伸ばしかけたけど、思い直して止めた。確かに僕がいても彼の邪魔にしかならないからだ。
 それでも、不安は募る。いくら星斗が死神の力を使い慣れてて、おまけに五人と力比べをしても勝てるとはいえ、圧倒的に数が不利だ。ひょっとしたらもう会えないかもしれないと思うと、胃の底がずしんと重くなるような感覚がする。
「……星斗……」
 不敵な笑みを浮かべている星斗の顔が思い浮かぶ。体自体はアルちゃんの物で、窓際で外を眺めているような表情が似合う美少女だったから、その不敵な笑みは似合ってはいなかったんだけど……でも、僕はその顔に重ねて、見たこともない星斗の本当の顔を見た気がする。
「……っ」
 僕は胸元を抑えて、不安と恐怖を押さえつける。せめて、事態を理解しようと頭をフル回転させる。
 なぜ彼らはいきなり襲ってきたのか。浸食者とか逃亡者と僕らを呼んだのはなぜか。死神大王の命令だというあの一言は何を意味するのか。
 考えても考えても、最悪の結果しか浮かばない。
 そもそも、数日後にまた来ると言っていたコルドガルドさんはいったいどうしてしまったのか。なぜ、知らない死神が僕らを捕まえに来たのか。
 答えは出ない。不安な予測しか浮かばない。
 地獄に落とす、というあの青年の死神の言葉が頭の中で反響している。
「とにかく……いまは逃げるしかない」
 そう結論づけた僕は、エレベーターが一階についたと同時に走り出した。一階のホールにいた人たちが怪訝そうな顔を向けてくるのがわかったけど、立ち止まってはいられない。急いでホテルの外に出る。とにかく一端遠くへ――。

『ニャア』

 その鳴き声が聞こえてきて、僕は思わずそちらを向いていた。向けた視線の先で、一匹の猫がこちらを向いて鳴いている。
 ずっと姿が見えなかったから忘れていたけど、そういえば僕が助けようとした猫も霊体になっているのだった。いままでどこに行っていたんだろう?
 猫はさらに鳴きながら駆け出した。思わず僕の足もそちらに向く。猫を追いかけるような形になってしまった。
 この不思議な猫についていけば、このどうしようもない状況がどうにかなるんじゃないかと。
 あり得ない幻想に惹かれて。



~20に続く~

Comment

No.188 / 名無しさん [#-]

玲奈さん・・・洗脳解除されたときはどうなるかと思いましたよ
真っ当な最期を迎えられて良かったです

2009-05/13 08:10 (Wed)

No.191 / toshi9 [#YK3S2YpI]

今回も楽しませていただきました。
死神と星斗の戦い、どきどきしますね。
そして猫の霊体の出現は彼らにとって吉となるのか、それとも・・
余談に光ノ影さんの優しさを感じますよ。
次回も楽しみです。

2009-05/16 23:00 (Sat) 編集

No.195 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

> 玲奈さん・・・洗脳解除されたときはどうなるかと思いましたよ
> 真っ当な最期を迎えられて良かったです
 洗脳解除した途端、再び自殺願望が蘇る可能性もあったわけですし、運が良かったと言えます。
 あえていうなら、臨死体験をしてしまったので自殺願望が薄れた、というところでしょうか。

2009-05/17 18:30 (Sun)

No.198 / 光ノ影 [#-] Re: タイトルなし

> 今回も楽しませていただきました。
> 死神と星斗の戦い、どきどきしますね。
> そして猫の霊体の出現は彼らにとって吉となるのか、それとも・・
> 余談に光ノ影さんの優しさを感じますよ。
> 次回も楽しみです。

 毎度毎度、感想ありがとうございます。
 余談は……ある意味蛇足ではありますが、やっぱり書いておかないと、と思いまして。優しさではなく、甘さにならないように気をつけます。
 次回をなるべく早くお届け出来るように頑張ります。

2009-05/17 18:34 (Sun)

Comment Form
コメントの投稿
HTMLタグは使用できません
ID生成と編集に使用します
管理者にだけ表示を許可する

Page Top

Trackback

Trackback URL

http://kuroitukihikari.blog60.fc2.com/tb.php/102-6395b19f

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Page Top

カウンター
投稿先サイト
『小説家になろう』ノクターンノベルズ
(ユーザーページに飛びます)
運営サイト
暁月夜色
 どんなジャンルでもOKな投稿小説サイトです。お知らせには必ず目を通してください。

黎明境界
 自己満足小説の展示サイトです。
 注意事項には必ず目を通してください。
 以下、連載中の作品概要


『私の名前はまだない』
(MC物、ペット化、女性視点)
(最終更新日:2013/12/07)

『思い通りになる世界 ~forガール~』
(カオスジャンル、世界改変系)
(最終更新日:2016/02/28)

最新記事
カテゴリ
最新コメント
リンク
プロフィール

光ノ影

Author:光ノ影

連絡先は kuroitukinokage×yahoo.co.jp (×を@にしてください)

つぶやき
作品紹介
検索フォーム
FC2アクセス解析
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。