『奪われたものは』
- 2012-02/12 (Sun)
- 短編小説
この話は読み切り短編です。
ジャンルは入れ替え(Not TS)・物質化などです。
それでは、続きからどうぞ。
ジャンルは入れ替え(Not TS)・物質化などです。
それでは、続きからどうぞ。
『奪われたもの』
ある日の満員電車。
通学に使っているためどうしてもその満員電車に乗らなければならない金沢美鈴は、大量の人に押し潰されそうになりながら耐えていた。
満員電車の圧迫に耐えるのはいつものことなのだが、今日は別のことにも耐えなければならなかった。
(んっ……もうっ。最悪……)
彼女のお尻に、誰かの手が当たっている。それは偶然という訳ではなく、明らかに狙って彼女のお尻に触れていた。彼女は特別気が強いという訳ではないが、それでも痴漢に対しては毅然とした態度を取ろうという意思がある。しかし、満員電車の圧迫に負け、上手く動くことが出来ず、痴漢の手を取ることも出来なかった。
(……くっ、この……っ)
なんとか逃れようとするが、痴漢の手はまるで張り付いているかのように彼女のお尻から離れなかった。
(次の駅についたら……少しは人が減るはず……その時がチャンス……ッ)
そう考えた彼女はそれまで不快感に耐えることを決意する。
だが、その決断は最悪の悪手だった。この時彼女は、多少強引でもこの痴漢から距離を取るべきだったのだが、それを彼女は知らない。
彼女が次の駅まで耐えることを決め、動きを止めると同時に痴漢は素早く動いていた。
(え――っ。うそっ、中、にっ)
痴漢の手が素早く閃いて彼女のスカートの中に手を差し入れていた。本来誰にも触れられるはずのないところに触れられ、彼女の背筋に悪寒が走る。
(……ッ? なに、なんか、変な……ものが……)
彼女は戸惑いを強くした。痴漢がスカートの中に入れて来た手。それはどうやら別の何かをその手に握っているようだった。柔らかい、ゴムのような感触を太股に感じた。
(なに……? バイブ? ううん、これ、バイブの太さじゃない……なんだろ……)
嫌な予感を彼女は覚えるが、もはやどうしようもなかった。
痴漢の手が上に上がり、手に持っていたそれが彼女の股間に押しつけられる。
ふっ、と――突然彼女はノーパンになったような奇妙な感触を覚えた。
「ひゃっぅ!?」
思わず出た声に反応して、周りの乗客が彼女の顔を見る。彼女は咄嗟に顔を俯けてしまった。
(あっ、しまった……助けを求めればよかった……脱がされ……たの?)
彼女は不思議な感触を覚えていた。確かにあそこはノーパンのような、風呂上がりに何もつけずにいるような感触を覚えているのだが、その他の場所はキチンとショーツを履いている感触のままだった。
それが何を意味するのか――彼女が考える前に、痴漢の手が彼女の股の間から消える。
その事実にほっとした彼女だが、股間から覚える違和感は相変わらず続いていた。
次の駅に電車が付いた時、彼女は大急ぎで電車を降り、そしてそのままトイレへと駆け込んだ。
個室に入り、鍵を閉める。そこまで来ても、まだ股間からは違和感が消えていなかった。
「全く……何なのよ全く……」
変な薬でも塗られたのかと思い、彼女はスカートをたくし上げ、ショーツを降ろす。
それを見た瞬間、彼女は声を上げるのも忘れてしまった。
彼女が見慣れているはずの、その場所に、あってあならない現象が起きていた。
暫く硬直した後、ゆっくりとそれに手を伸ばす。
「え……? なに、これ……?」
彼女の指先が『それ』に触れる。
美鈴が十数年付き合ってきたその場所は――あり得ないことに。
奇妙に柔らかく、冷たい感触をしたゴムに変わっていた。
彼女の身体の一部がゴムになっていた。彼女がそこに指先を触れると、グミのように柔らかい感触が返って来る。触った感触はあるものの、触れられた感触はなく、そこはまるで彼女の身体でなくなってしまったかのような、奇妙な状態になっていた。
もしもこの場に男性がいたなら、それがオナホールと呼ばれる物の形状と材質に極めてよく似ていることに気付いただろう。ダッチワイフの中には股間の部分に好きなオナホールを嵌めこんで使用するタイプのものがあるが、いまの彼女はオナホールを嵌めこまれたダッチワイフの状態に酷似していた。
当然ながら、彼女はその現実が受け入れられず、暫くの間、股間を丸出しにしたままで立ちつくしていた。
彼女がようやく衝撃から立ち直り、状況を把握しようと動き出したのは、たっぷり数分は固まってからだった。
まず彼女は自分の股間にあるそれに指先を降れさせる。相変わらずゴムを触っている感触はあるのに、股間に触られている感覚はない。そこだけ自分の体でなくなってしまったかのような感覚だった。
そこから少し指をずらし、無事な部分の肌に触れる。その部分の感触はあった。肌とゴムとの境界線はずれも乱れもなく、綺麗な線が走っているのみだ。変わってしまった範囲は大陰系をまるごと含み、直径五センチ位の範囲に及んでいた。本当に彼女の秘部とオナホールが入れ替わってしまったように見える。
彼女は思い切ってそのオナホールの中に指を入れてみた。ゴムの抵抗に遭いつつも、無理やり奥まで指を入れる。しかしやはりなんの感触もせず、その身体の不気味さがより増しただけだった。少なくとも彼女の指が届く範囲は、全てゴムに変わってしまっているようだ。
「なんなの……これ?」
何が起こっているのかわからない恐怖と不安で、彼女は泣きそうになっていた。
その時。
股間を舐めあげられるような不思議な感触が生じた。
「――ふぁっ、んっ!?」
彼女は突然生じた感覚に戸惑う。いままで触っても何の感覚も生じなかったゴムの秘部から、突然感覚が沸き上がってきていた。
だが彼女はもちろん、誰の手もその場所には触れていない。
「んぁっ、ふっ……な、なに、これぇ……?」
まるで誰かにそこを舐められているような感覚だったが、当然ながらいま彼女の股間には誰の頭も近づいていない。
美鈴が状況を理解出来ない間も、感覚はさらに続く。柔らかなものが無理やり彼女の奥へと割り込み、冷たい感触が広がって行く。
「――ッ、そんな……とこまでぇ……!」
その上、クリトリスへの刺激が加わっていた。彼女が自慰を行う際に弄るように、指でこねくり回されているような感覚があった。
性的な接触はさらに続く。普段なら――彼女が自分自身で行う自慰の時なら――すでに濡れてしまっているだろうそこは、しかし何の変化もなかった。あいかわらずゴムの感触しかなく、愛液が垂れてくるということもない。にも関わらず、彼女は確かに強い快感を覚えていた。
「う、うぅ……ッ」
彼女が得体の知れない感覚に耐えていると、不意に感覚が止んだ。風が直接当たっているような気はしたがそれ以上の動きはなくなる。
「はぁっ、はぁっ……なんなのよぉ……」
一瞬彼女が気を緩めた瞬間――あそこから激痛が走った。
「いぎぃッ!?」
無理やり中へ向かって何かが侵入してくる感覚。何か硬い物が彼女のそこを割り開き、侵入してくる。
(い、いやっ……入って、こないで……っ)
そう念じる彼女だったが、それで侵入してくるものは止まらない。どんどん奥へと入って来る。彼女は現在はフリーだが彼氏がいたことがあり、バージンではなかった。そのため処女喪失の痛みこそなかったが、それでも入って来る物はかなり太い物で、彼女にとってはかなりキツい。
「うぅ、うぅっ……」
周りの個室に声が聞こえては変に思われると考え、彼女は必死に声を堪える。
その侵入してきた物は、暫く彼女の中を蹂躙した後、あっさりと抜けて行ってしまった。
今度こそ終わったのかと希望を抱くが、すぐにそれが間違いであることを理解させられる。
彼女の膣の入口に――熱い物が触れていた。その正体を彼女は直感で読み取る。
(うそ――っ、まさか……)
それは、男性が持つ特有のもの――つまり、ペニスの感触だった。
(そんな……っ)
彼女はその事実に狼狽するが、そもそも彼女自体にはどうなっているのかもわからない。
何が起こっているのかわからないまま――彼女は自分が貫かれるのを感じた。
(ううっ、うぁぁっ)
美鈴は自分の中で誰かが好き勝手に動くのを声を殺して耐えるしかなかった。
身体の中を何度もそれは行き来し、彼女に強い衝撃を与えてくる。遠隔で快感を与えられているような感覚に、彼女は翻弄されてしまう。
「うっ――くぅっ――うぁ……っ!」
ぴくんっ、と体が跳ねてしまい、壁に身体を預けたまま、ずるずるとその場に崩れ落ちる。股間から生じる快感に彼女の腰が立たなくなってきていた。
(こんなっ……こんなに、なんで感じちゃうの……っ?)
通常のピストン運動の感覚が止み、突然彼女の中に入っていた物がぐるり、と回転する。思いがけない感覚に彼女は体を跳ねさせた。
「ぁ、っ!」
その感覚は本来ならあり得ないことに、男性根がドリルのように回転した感覚だった。
「うぅ……っ」
その回転運動に加えて、速いピストン運動が加わる。まるで巨大な両手で腰を掴まれて上下のシェイクされているような、そんな凄まじい感覚だった。
「うあぁっ、あっ、ああっ」
声が外に聞こえるかもしれない、と言ったことを気にしている余裕がなくなってくる。身体の中で暴れまわる感覚は、彼女の頭に直接快感を叩きこんでいた。
彼女はその激しい快感に何度も気をやり、何度逝ったのかわからないくらいに翻弄され続けた。
そして、彼女がイキ疲れてぐったりした頃。
彼女の中で熱い感覚が広がり、それが中出しをされてしまった感覚なのだと彼女はなんとなく理解する。
逝かされ続けて疲労困憊の彼女だったが、ようやく中での感覚が止んでくれたことにほっとする――暇もなく、何かが抜けていく感覚の後、再び熱い物が彼女の中に潜り込んで来た。
(えっ……!? うそ、出したのに……こんな、すぐ……!?)
よほど精根逞しい人なのかと、彼女はそう思ったが、よくよく感覚を探ってみると、そうではないことに気付いた。
本当に微妙な違いだが、再び彼女の中に入りこんで来たそれは、さきほどまで彼女の中に入っていたものとは別のものだった。
(もしかして……複数いるの……!?)
絶望的になる彼女をおいて、再び彼女の中の物が動き出す。
彼女の中で暴れまわる感覚が止んだのは、それからたっぷり二時間は経ってからのことだった。
終わった時には彼女はすでに目も虚ろで、身体に力が入らず、トイレの床に倒れ込んで動けなかった。だらしなく開いた口からよだれが垂れ、目は白目をむきかけている。それだけ感じ続けてもゴムに変わってしまった彼女の股間には何の変化もなく、ただそこにあるだけだ。
暫く経って少し体力が回復した彼女は体を起こす。そこからトイレから出るまでには三十分という時間を有した。
いまのところ彼女は何の感覚も受け取っていないが、いつ感覚が生じるかと思うと彼女は生きた心地がしなかった。
ふらふらとした足取りで彼女は駅の改札へと向かう。
(家に……帰りたい……)
駅を行き交う人々は、彼女の異変に気付いていたものの、関わり合いになりたくないと考えたのか誰も声をかけなかった。
定期を通して改札を潜り、家に向かって歩き出そうとした時――その男が彼女の前に現れた。
男は一見するとどこにでもいそうなサラリーマンだった。しかし、彼らが浮かべている笑みは、普段彼女が道ですれ違うサラリーマンとは全く違う。美鈴のことを遠慮なく見て、しかも嫌らしく笑っている。それだけでも彼女にとっては嫌悪の対象だったが、そんな彼がこの場に現れたことと、自分に起きている異常とを結び付けて考えられないほど、美鈴は頭が回らない人間ではなかった。
「私に……何をしたの……?」
散々弄ばれて、すでに彼女の気力は尽きかけていた。彼を睨みつける目にも力はない。男もそれがわかっているのだろう。余裕綽々の笑みで応じる。
「何をした、か。そうだなぁ……教えてほしいなら、俺についてきな」
そう言うと、男は背を向けて歩き出す。美鈴は気力を振り絞って、彼の跡について歩き出した。
男はすぐ近くの喫茶店に入って行く。店内には客は少なく、店員は男を見ると他の客から死角になる席に案内すると見せかけて、店の奥に通す。
店の裏口から外に出た男は、さらに別の建物に入る。美鈴は男の一連の行動に危機感を募らせるが、それでも付いていく。考える余裕がそもそもなかったということもあるが、いずれにせよ付いていくしか選択肢はなかっただろう。
男が辿り着いた部屋は、ホテルの部屋のようにベッドと机がある以外は殺風景な部屋だった。その机の前にある椅子に男は腰掛ける。
「さて。座れといっても、そんな気分じゃないだろうから、手早く説明を済ませようか」
言いながら男は机の上に置いてあった包みを手に取る。その際、彼女はいまはないあそこが動いたような感触を覚えた。
「……っ」
「わかるかな? これが答えだ」
男が包みを解くと、それには肌色の円筒が入っていた。それを見た美鈴は息を呑む。
それは側面こそ何の変哲もない棒だったが、その上部。片方の端が奇妙な形状をしていた。男が指先でその部分に触れる。すると、美鈴のアソコでも触られた感覚が生じる。
「まさ……か……っ」
「そう、そのまさかさ。これは君のあそこ――俗な言い方をするなら、おまんこだな」
男が持つ円柱の端。そこは、女性器の形状をしていた。そしてそれは、美鈴が確かに見覚えのある形だった。もっとも、そんな風に客観的に見たのは初めてだったが。
美鈴が唖然としている中、男は得意げに説明を続ける。
「どうやって、ということが気になるだろう? 簡単にいえば、お前のあそことオナホールを交換したのさ。ちなみにこのオナホールが特別なものってわけじゃない。いうなればこれは俺の特殊能力って奴でな……漫画とかで見たことないか? そういう理屈も摂理も超越した能力を使うキャラとか」
彼女には男の話が理解出来なかった。あるいは、理解を拒んでいた。
「俺の能力は至極簡単なものなんだが、物と物を交換することが出来る。交換出来る条件は物と物を触れさせること。痴漢まがいのことをしたのは、極力物と物とを近づけないと交換できないからだ。正直冷や汗もんだったぜ。尻に触ってすぐに声を出されたら終わりだったからな……耐える相手じゃないと、その隙すらないし」
男は心底ほっとしたという顔をしている。
「わかってるとは思うが、警察やらなんやらに相談しても無駄だぞ。俺が捕まって一番困るのはお前だ。一生そのゴムの股間で生きていくことになる。子供を産めるかどうかもわからないな」
「……どうして、私なの?」
「たまたま、電車内でいい位置にお前がいたからさ」
あっさりと。
男は応える。
「だから、むしろ安心しろ。一通り楽しんだら解放してやる。俺も面倒はご免だからなぁ。お前と言う存在に拘っているわけじゃない」
男は奪った彼女の秘部を、再び包みに入れ直す。
「今日はここまでだ。お前もトイレの中でイキ過ぎて疲れてるだろう。この場でお前をどうこうしようという気はない。だが、俺の命令は絶対だ」
そう言って男はまず美鈴に携帯電話の連絡先を教えるように求める。
美鈴は抵抗する気も出ず、携帯電話を彼に渡す。男は携帯電話を操作し、データを自分の携帯に転送していた。
「以後、連絡はここに出す。安心しろ。お前の生活を壊そうとは思っていない。お前の異常が周りに知られては俺もまずいしな」
男は携帯を美鈴に向けて放り投げる。美鈴は辛うじてそれをキャッチした。
「帰っていいぞ。ちなみにここは一時的に借りているだけだから夜ここに忍びこんで取り返そうとしても無駄だ。そもそも、俺じゃなければその股間は元に戻せない。永遠にその状態でいるより、一時的に耐え忍んで元に戻ることを薦めるよ」
美鈴は何をいう気力もなくなり、部屋から出ていく。
彼女が部屋を出た後、男はほくそ笑む。
「上手く行った、か。さて……あとはあの子が賢いことを祈るとするか。捕まるのは面倒だしな」
男は言いつつ、包みに来るんだ彼女の秘部を改めてみる。
(気付いてはいないのだろうな。これが奪われていることの意味を――)
彼女は秘部にあたる部分を全て奪われている。代わりに身体に埋め込まれたオナホールには当然ながら神経が通っていない。それはつまり、彼女は強制的に禁欲生活を強いられるということである。
(これは事実上、変形的な貞操帯になるわけだ。時々刺激を与えてやれば……一体どうなるだろうな)
ただでさえ性欲が高まるであろう年頃。そんな頃に無理やり禁欲生活を強いられれば。
男は美鈴の未来を考え、笑みを深くする。
(次に呼び出した時には媚薬を呑ませて暫く放置してみるかな……はたまた、授業中を狙ってバイブでもツッこんでやるか……色々楽しめそうだ)
密やかに笑いながら、男は美鈴をどう責めようか考える。暫く美鈴が解放されることはないだろう。
彼女が奪われたものは――あまりに大きかった。
『奪われたものは』 終
ある日の満員電車。
通学に使っているためどうしてもその満員電車に乗らなければならない金沢美鈴は、大量の人に押し潰されそうになりながら耐えていた。
満員電車の圧迫に耐えるのはいつものことなのだが、今日は別のことにも耐えなければならなかった。
(んっ……もうっ。最悪……)
彼女のお尻に、誰かの手が当たっている。それは偶然という訳ではなく、明らかに狙って彼女のお尻に触れていた。彼女は特別気が強いという訳ではないが、それでも痴漢に対しては毅然とした態度を取ろうという意思がある。しかし、満員電車の圧迫に負け、上手く動くことが出来ず、痴漢の手を取ることも出来なかった。
(……くっ、この……っ)
なんとか逃れようとするが、痴漢の手はまるで張り付いているかのように彼女のお尻から離れなかった。
(次の駅についたら……少しは人が減るはず……その時がチャンス……ッ)
そう考えた彼女はそれまで不快感に耐えることを決意する。
だが、その決断は最悪の悪手だった。この時彼女は、多少強引でもこの痴漢から距離を取るべきだったのだが、それを彼女は知らない。
彼女が次の駅まで耐えることを決め、動きを止めると同時に痴漢は素早く動いていた。
(え――っ。うそっ、中、にっ)
痴漢の手が素早く閃いて彼女のスカートの中に手を差し入れていた。本来誰にも触れられるはずのないところに触れられ、彼女の背筋に悪寒が走る。
(……ッ? なに、なんか、変な……ものが……)
彼女は戸惑いを強くした。痴漢がスカートの中に入れて来た手。それはどうやら別の何かをその手に握っているようだった。柔らかい、ゴムのような感触を太股に感じた。
(なに……? バイブ? ううん、これ、バイブの太さじゃない……なんだろ……)
嫌な予感を彼女は覚えるが、もはやどうしようもなかった。
痴漢の手が上に上がり、手に持っていたそれが彼女の股間に押しつけられる。
ふっ、と――突然彼女はノーパンになったような奇妙な感触を覚えた。
「ひゃっぅ!?」
思わず出た声に反応して、周りの乗客が彼女の顔を見る。彼女は咄嗟に顔を俯けてしまった。
(あっ、しまった……助けを求めればよかった……脱がされ……たの?)
彼女は不思議な感触を覚えていた。確かにあそこはノーパンのような、風呂上がりに何もつけずにいるような感触を覚えているのだが、その他の場所はキチンとショーツを履いている感触のままだった。
それが何を意味するのか――彼女が考える前に、痴漢の手が彼女の股の間から消える。
その事実にほっとした彼女だが、股間から覚える違和感は相変わらず続いていた。
次の駅に電車が付いた時、彼女は大急ぎで電車を降り、そしてそのままトイレへと駆け込んだ。
個室に入り、鍵を閉める。そこまで来ても、まだ股間からは違和感が消えていなかった。
「全く……何なのよ全く……」
変な薬でも塗られたのかと思い、彼女はスカートをたくし上げ、ショーツを降ろす。
それを見た瞬間、彼女は声を上げるのも忘れてしまった。
彼女が見慣れているはずの、その場所に、あってあならない現象が起きていた。
暫く硬直した後、ゆっくりとそれに手を伸ばす。
「え……? なに、これ……?」
彼女の指先が『それ』に触れる。
美鈴が十数年付き合ってきたその場所は――あり得ないことに。
奇妙に柔らかく、冷たい感触をしたゴムに変わっていた。
彼女の身体の一部がゴムになっていた。彼女がそこに指先を触れると、グミのように柔らかい感触が返って来る。触った感触はあるものの、触れられた感触はなく、そこはまるで彼女の身体でなくなってしまったかのような、奇妙な状態になっていた。
もしもこの場に男性がいたなら、それがオナホールと呼ばれる物の形状と材質に極めてよく似ていることに気付いただろう。ダッチワイフの中には股間の部分に好きなオナホールを嵌めこんで使用するタイプのものがあるが、いまの彼女はオナホールを嵌めこまれたダッチワイフの状態に酷似していた。
当然ながら、彼女はその現実が受け入れられず、暫くの間、股間を丸出しにしたままで立ちつくしていた。
彼女がようやく衝撃から立ち直り、状況を把握しようと動き出したのは、たっぷり数分は固まってからだった。
まず彼女は自分の股間にあるそれに指先を降れさせる。相変わらずゴムを触っている感触はあるのに、股間に触られている感覚はない。そこだけ自分の体でなくなってしまったかのような感覚だった。
そこから少し指をずらし、無事な部分の肌に触れる。その部分の感触はあった。肌とゴムとの境界線はずれも乱れもなく、綺麗な線が走っているのみだ。変わってしまった範囲は大陰系をまるごと含み、直径五センチ位の範囲に及んでいた。本当に彼女の秘部とオナホールが入れ替わってしまったように見える。
彼女は思い切ってそのオナホールの中に指を入れてみた。ゴムの抵抗に遭いつつも、無理やり奥まで指を入れる。しかしやはりなんの感触もせず、その身体の不気味さがより増しただけだった。少なくとも彼女の指が届く範囲は、全てゴムに変わってしまっているようだ。
「なんなの……これ?」
何が起こっているのかわからない恐怖と不安で、彼女は泣きそうになっていた。
その時。
股間を舐めあげられるような不思議な感触が生じた。
「――ふぁっ、んっ!?」
彼女は突然生じた感覚に戸惑う。いままで触っても何の感覚も生じなかったゴムの秘部から、突然感覚が沸き上がってきていた。
だが彼女はもちろん、誰の手もその場所には触れていない。
「んぁっ、ふっ……な、なに、これぇ……?」
まるで誰かにそこを舐められているような感覚だったが、当然ながらいま彼女の股間には誰の頭も近づいていない。
美鈴が状況を理解出来ない間も、感覚はさらに続く。柔らかなものが無理やり彼女の奥へと割り込み、冷たい感触が広がって行く。
「――ッ、そんな……とこまでぇ……!」
その上、クリトリスへの刺激が加わっていた。彼女が自慰を行う際に弄るように、指でこねくり回されているような感覚があった。
性的な接触はさらに続く。普段なら――彼女が自分自身で行う自慰の時なら――すでに濡れてしまっているだろうそこは、しかし何の変化もなかった。あいかわらずゴムの感触しかなく、愛液が垂れてくるということもない。にも関わらず、彼女は確かに強い快感を覚えていた。
「う、うぅ……ッ」
彼女が得体の知れない感覚に耐えていると、不意に感覚が止んだ。風が直接当たっているような気はしたがそれ以上の動きはなくなる。
「はぁっ、はぁっ……なんなのよぉ……」
一瞬彼女が気を緩めた瞬間――あそこから激痛が走った。
「いぎぃッ!?」
無理やり中へ向かって何かが侵入してくる感覚。何か硬い物が彼女のそこを割り開き、侵入してくる。
(い、いやっ……入って、こないで……っ)
そう念じる彼女だったが、それで侵入してくるものは止まらない。どんどん奥へと入って来る。彼女は現在はフリーだが彼氏がいたことがあり、バージンではなかった。そのため処女喪失の痛みこそなかったが、それでも入って来る物はかなり太い物で、彼女にとってはかなりキツい。
「うぅ、うぅっ……」
周りの個室に声が聞こえては変に思われると考え、彼女は必死に声を堪える。
その侵入してきた物は、暫く彼女の中を蹂躙した後、あっさりと抜けて行ってしまった。
今度こそ終わったのかと希望を抱くが、すぐにそれが間違いであることを理解させられる。
彼女の膣の入口に――熱い物が触れていた。その正体を彼女は直感で読み取る。
(うそ――っ、まさか……)
それは、男性が持つ特有のもの――つまり、ペニスの感触だった。
(そんな……っ)
彼女はその事実に狼狽するが、そもそも彼女自体にはどうなっているのかもわからない。
何が起こっているのかわからないまま――彼女は自分が貫かれるのを感じた。
(ううっ、うぁぁっ)
美鈴は自分の中で誰かが好き勝手に動くのを声を殺して耐えるしかなかった。
身体の中を何度もそれは行き来し、彼女に強い衝撃を与えてくる。遠隔で快感を与えられているような感覚に、彼女は翻弄されてしまう。
「うっ――くぅっ――うぁ……っ!」
ぴくんっ、と体が跳ねてしまい、壁に身体を預けたまま、ずるずるとその場に崩れ落ちる。股間から生じる快感に彼女の腰が立たなくなってきていた。
(こんなっ……こんなに、なんで感じちゃうの……っ?)
通常のピストン運動の感覚が止み、突然彼女の中に入っていた物がぐるり、と回転する。思いがけない感覚に彼女は体を跳ねさせた。
「ぁ、っ!」
その感覚は本来ならあり得ないことに、男性根がドリルのように回転した感覚だった。
「うぅ……っ」
その回転運動に加えて、速いピストン運動が加わる。まるで巨大な両手で腰を掴まれて上下のシェイクされているような、そんな凄まじい感覚だった。
「うあぁっ、あっ、ああっ」
声が外に聞こえるかもしれない、と言ったことを気にしている余裕がなくなってくる。身体の中で暴れまわる感覚は、彼女の頭に直接快感を叩きこんでいた。
彼女はその激しい快感に何度も気をやり、何度逝ったのかわからないくらいに翻弄され続けた。
そして、彼女がイキ疲れてぐったりした頃。
彼女の中で熱い感覚が広がり、それが中出しをされてしまった感覚なのだと彼女はなんとなく理解する。
逝かされ続けて疲労困憊の彼女だったが、ようやく中での感覚が止んでくれたことにほっとする――暇もなく、何かが抜けていく感覚の後、再び熱い物が彼女の中に潜り込んで来た。
(えっ……!? うそ、出したのに……こんな、すぐ……!?)
よほど精根逞しい人なのかと、彼女はそう思ったが、よくよく感覚を探ってみると、そうではないことに気付いた。
本当に微妙な違いだが、再び彼女の中に入りこんで来たそれは、さきほどまで彼女の中に入っていたものとは別のものだった。
(もしかして……複数いるの……!?)
絶望的になる彼女をおいて、再び彼女の中の物が動き出す。
彼女の中で暴れまわる感覚が止んだのは、それからたっぷり二時間は経ってからのことだった。
終わった時には彼女はすでに目も虚ろで、身体に力が入らず、トイレの床に倒れ込んで動けなかった。だらしなく開いた口からよだれが垂れ、目は白目をむきかけている。それだけ感じ続けてもゴムに変わってしまった彼女の股間には何の変化もなく、ただそこにあるだけだ。
暫く経って少し体力が回復した彼女は体を起こす。そこからトイレから出るまでには三十分という時間を有した。
いまのところ彼女は何の感覚も受け取っていないが、いつ感覚が生じるかと思うと彼女は生きた心地がしなかった。
ふらふらとした足取りで彼女は駅の改札へと向かう。
(家に……帰りたい……)
駅を行き交う人々は、彼女の異変に気付いていたものの、関わり合いになりたくないと考えたのか誰も声をかけなかった。
定期を通して改札を潜り、家に向かって歩き出そうとした時――その男が彼女の前に現れた。
男は一見するとどこにでもいそうなサラリーマンだった。しかし、彼らが浮かべている笑みは、普段彼女が道ですれ違うサラリーマンとは全く違う。美鈴のことを遠慮なく見て、しかも嫌らしく笑っている。それだけでも彼女にとっては嫌悪の対象だったが、そんな彼がこの場に現れたことと、自分に起きている異常とを結び付けて考えられないほど、美鈴は頭が回らない人間ではなかった。
「私に……何をしたの……?」
散々弄ばれて、すでに彼女の気力は尽きかけていた。彼を睨みつける目にも力はない。男もそれがわかっているのだろう。余裕綽々の笑みで応じる。
「何をした、か。そうだなぁ……教えてほしいなら、俺についてきな」
そう言うと、男は背を向けて歩き出す。美鈴は気力を振り絞って、彼の跡について歩き出した。
男はすぐ近くの喫茶店に入って行く。店内には客は少なく、店員は男を見ると他の客から死角になる席に案内すると見せかけて、店の奥に通す。
店の裏口から外に出た男は、さらに別の建物に入る。美鈴は男の一連の行動に危機感を募らせるが、それでも付いていく。考える余裕がそもそもなかったということもあるが、いずれにせよ付いていくしか選択肢はなかっただろう。
男が辿り着いた部屋は、ホテルの部屋のようにベッドと机がある以外は殺風景な部屋だった。その机の前にある椅子に男は腰掛ける。
「さて。座れといっても、そんな気分じゃないだろうから、手早く説明を済ませようか」
言いながら男は机の上に置いてあった包みを手に取る。その際、彼女はいまはないあそこが動いたような感触を覚えた。
「……っ」
「わかるかな? これが答えだ」
男が包みを解くと、それには肌色の円筒が入っていた。それを見た美鈴は息を呑む。
それは側面こそ何の変哲もない棒だったが、その上部。片方の端が奇妙な形状をしていた。男が指先でその部分に触れる。すると、美鈴のアソコでも触られた感覚が生じる。
「まさ……か……っ」
「そう、そのまさかさ。これは君のあそこ――俗な言い方をするなら、おまんこだな」
男が持つ円柱の端。そこは、女性器の形状をしていた。そしてそれは、美鈴が確かに見覚えのある形だった。もっとも、そんな風に客観的に見たのは初めてだったが。
美鈴が唖然としている中、男は得意げに説明を続ける。
「どうやって、ということが気になるだろう? 簡単にいえば、お前のあそことオナホールを交換したのさ。ちなみにこのオナホールが特別なものってわけじゃない。いうなればこれは俺の特殊能力って奴でな……漫画とかで見たことないか? そういう理屈も摂理も超越した能力を使うキャラとか」
彼女には男の話が理解出来なかった。あるいは、理解を拒んでいた。
「俺の能力は至極簡単なものなんだが、物と物を交換することが出来る。交換出来る条件は物と物を触れさせること。痴漢まがいのことをしたのは、極力物と物とを近づけないと交換できないからだ。正直冷や汗もんだったぜ。尻に触ってすぐに声を出されたら終わりだったからな……耐える相手じゃないと、その隙すらないし」
男は心底ほっとしたという顔をしている。
「わかってるとは思うが、警察やらなんやらに相談しても無駄だぞ。俺が捕まって一番困るのはお前だ。一生そのゴムの股間で生きていくことになる。子供を産めるかどうかもわからないな」
「……どうして、私なの?」
「たまたま、電車内でいい位置にお前がいたからさ」
あっさりと。
男は応える。
「だから、むしろ安心しろ。一通り楽しんだら解放してやる。俺も面倒はご免だからなぁ。お前と言う存在に拘っているわけじゃない」
男は奪った彼女の秘部を、再び包みに入れ直す。
「今日はここまでだ。お前もトイレの中でイキ過ぎて疲れてるだろう。この場でお前をどうこうしようという気はない。だが、俺の命令は絶対だ」
そう言って男はまず美鈴に携帯電話の連絡先を教えるように求める。
美鈴は抵抗する気も出ず、携帯電話を彼に渡す。男は携帯電話を操作し、データを自分の携帯に転送していた。
「以後、連絡はここに出す。安心しろ。お前の生活を壊そうとは思っていない。お前の異常が周りに知られては俺もまずいしな」
男は携帯を美鈴に向けて放り投げる。美鈴は辛うじてそれをキャッチした。
「帰っていいぞ。ちなみにここは一時的に借りているだけだから夜ここに忍びこんで取り返そうとしても無駄だ。そもそも、俺じゃなければその股間は元に戻せない。永遠にその状態でいるより、一時的に耐え忍んで元に戻ることを薦めるよ」
美鈴は何をいう気力もなくなり、部屋から出ていく。
彼女が部屋を出た後、男はほくそ笑む。
「上手く行った、か。さて……あとはあの子が賢いことを祈るとするか。捕まるのは面倒だしな」
男は言いつつ、包みに来るんだ彼女の秘部を改めてみる。
(気付いてはいないのだろうな。これが奪われていることの意味を――)
彼女は秘部にあたる部分を全て奪われている。代わりに身体に埋め込まれたオナホールには当然ながら神経が通っていない。それはつまり、彼女は強制的に禁欲生活を強いられるということである。
(これは事実上、変形的な貞操帯になるわけだ。時々刺激を与えてやれば……一体どうなるだろうな)
ただでさえ性欲が高まるであろう年頃。そんな頃に無理やり禁欲生活を強いられれば。
男は美鈴の未来を考え、笑みを深くする。
(次に呼び出した時には媚薬を呑ませて暫く放置してみるかな……はたまた、授業中を狙ってバイブでもツッこんでやるか……色々楽しめそうだ)
密やかに笑いながら、男は美鈴をどう責めようか考える。暫く美鈴が解放されることはないだろう。
彼女が奪われたものは――あまりに大きかった。
『奪われたものは』 終
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Comment
こんばんは、今日も楽しく拝見してます。
今回登場した彼のアメとムチはなかなか見事ですね、いいオチです。『貞操帯』なだけに人妻や彼氏持ちに効果バツグンでしょうね。
個人的には彼女が堕ちるまでを長編で見てみたかったです。まあ、短編だからこそのあのオチなのかな?
2012-02/17 00:20 (Fri)
乙
相変わらず面白い。
普通のエロより作者独創エロが好きな俺にはダイコーだ
2012-02/17 07:46 (Fri)
ごんべーさん、毎度コメントありがとうございます!
>今回登場した~
今回の男はあの能力を使って楽しむだけが目的なので、女性を我がものにしようとしていないのでああいう感じに落ち着いちゃったんです。女性を落とすことを目的としていたならば……もっと色々したんでしょうけどね。
弱っているところに付け込むのは常套手段ですしねー。
>『貞操帯』なだけに~
思えばそうでした(笑)夫や彼氏に相談出来る類のことでもないですし、かといって秘密にしようとセックスレスになれば不信感が募るのも当然……このネタで一本かけそうな気がしてきました。
>個人的には彼女が堕ちるまでを~
今回の話では前述した通り、力を使って楽しむことしか考えていない男でしたが、同じ能力を使って女性を落とすことを目的とした男(女もありちゃっありかなーとか思ってますが)をメインにした話も書いてみたいなぁ、と思います。
それでは、どうもありがとうございました!
2012-02/17 22:44 (Fri)
コメントありがとうございます!
>相変わらず面白い。
いつも見てくださってありがとうございます。
>普通のエロより~
カオスジャンルの名に恥じない独創的な話をどんどん書いていきたいと思っています。
まだまだ未熟者ですが、見守ってくださると幸いです。
それでは、どうもありがとうございました!
2012-02/17 22:46 (Fri)
遠隔で膣に挿入される感覚を味わわせる作品は見たことがありますが、道具と交換するとは!
オナホと交換されたことで、複数の人間に何度も「使用される」というシチュエーションには新鮮な驚きと興奮がありますね(^^)
2012-03/09 07:31 (Fri)
nekomeさん、コメントありがとうございます!
お褒めいただき、嬉しいです。
> 遠隔で膣に挿入される感覚を~
何気なく思いついた内容を文章に起こしただけだったのですが、我ながらこのアイデアはナイスアイデアだと思いました。コメントにもありましたが、変則的な貞操帯としても機能し、恋人持ちや婚約済みの女性に効果絶大の状態を強いることができますし。
こういういいアイデアが絞りだせると、なんというか、創作者にしか味わえない快感が味わえて最高の気分です(笑)。とはいえ慢心せず、これからも努力していいアイデアを出し、それを元にいいものを書いていきたいと思います。
それでは、どうもありがとうございました!
2012-03/10 00:12 (Sat)
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